第一回ラブライブ! は各宇宙によって設定も展開も異なったりするのだが、アニメ宇宙ではμ's不参加ということになっている。その理由は学園祭のライブの時、己の体調管理を怠っていた穂乃果が倒れるという失態を犯し、理事長に叱責を受けたからだ。
その時理事長はこんな事になるためスクールアイドルを云々かんぬんと説教していたが、誰もライブ中に倒れるためにスクールアイドルなどやっていない、と心の中で思っていたかどうかは分からないが、とにかく反省してますという意味を込めて大会へのエントリーを辞退したという流れである。この後、ことりの留学問題が発覚、色々と責任を感じた穂乃果が自棄になってμ'sを脱退したり、精神的支柱が折れたため内部分裂が起きμ'sが実質壊滅したり、とか壮絶な展開が待ち受けているのだが、ここでその話は省く。
この時、一部のμ'sファンの中にはある疑問が浮かんだりしたと思う。どうして希が穂乃果の体調不良に気付けなかったのか、というところだ。カードの声を聞くことで未来を予知していた(風な言動をしていた)彼女が、何一つアクションを起こしていないのだ。既にイメージとして定着する彼女なら、カードの声を聞きμ'sの危機を察知、ついでにことりの留学問題や穂乃果の頑張り過ぎによる体調不良も把握し、
「穂乃果ちゃん、大会が近くて焦る気持ちは重々分かるんよ。でもな、そうやって無理して穂乃果ちゃんが倒れたら、皆が悲しい気持ちになると思うねんな。だからな、少し休もか。大丈夫やって、穂乃果ちゃんは一人やないん、海未ちゃんもことりちゃんも、皆もおる。勿論、うちだっておるし。なっ、ここはうちの顔を立てると思って」
とやんわりと説得にかかり、言う事を聞きそうになければ強硬手段に出る(ワシワシMAX! なるセクシャルハラスメント)ぐらいはやっても不思議ではない。ことりにしても、
「何か言いにくいことでもあるん? んっ、何で知ってるのかって? それはな、カードがうちに告げるんや。皆に、いや、穂乃果ちゃんに何か言いたいことがあるんやろ。大切なことなんやろ? うちも付き添うから、今からちょっと話に行こか?」
と父親に話があるけど中々切り出せない娘の為に、優しく寄り添ってくれる母親のようなことをしてくれる筈(願望)である。それがないのが少なくともわたしには不思議で仕様がなかったわけだ。まさか本当に気付いていないわけではあるまい。
しかし、アニメ宇宙の希は一応普通の少女という括りに入る。もし全てを事前に察知して対処しだしたりすれば、もうそれは超能力者の分類になって普通の少女とは言えない。だから神の意思的な存在は、彼女が奇想天外な異能者になるのを防ぐため、活躍の場を与えなかったのではあるまいか。あくまで普通の少女であり、未来予知なんて出来ないと我々(わたし)に知らしめてくれたのではないか。
もう一つ邪推するならば、知っておきながら敢えて放置していたというもの。獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言う。μ'sの母として(立ち位置的に)、穂乃果達に試練を与え、成長させようと思っていたのではないだろうか。大会に出ることよりも、可愛い娘達が逞しく大きくなってくれることの方が大事で、だから傍観していた、と私の邪推である。
さらにさらに邪推を極めれば、μ's伝説に傷を付けないようにするためとも考えられる。仮に何らかのIFルートが発生して大会に出場が叶った時、彼女達がA-RISEに勝てたかと言えば、恐らく難しかったのではあるまいか。μ'sが負けることは許さないという、黒い勢力の手が混入した結果、負けるのであれば端から出なければ問題ない、という結論に至ったのやもしれない。この黒い勢力に希を加えれば、希がμ'sの敗北を察してそれを無くすため動いていたと考えれば、穂乃果達に何の対処もしていないのには納得が行くのだった。
別の宇宙を覗いて見れば、大会に出場した上勝ってしまっている宇宙も存在するが、それは別のスクールアイドルが主役の、しかも何年か後のお話の宇宙。μ'sを主役に考えた場合、序盤でA-RISEに勝ってしまえば、この後どうするんだという問題が浮上する。
A-RISEの裏に、大魔王的隠しボスを用意する必要が出て来るかもしれず、際限なきインフレスパイラルに陥る危険性もあった。諸々少なくない事情を顧みて、アニメ宇宙のμ'sは、大会への出場叶わなかったわけである(勝手な妄想)。
翻ってこちらの宇宙では、希(孔明)が色々と手を打った為に、大会に出場を果たした(果たしてしまった)。ここでは結果を先に、いや結果のみを書かせてもらうが、A-RISEのハリケーンレベルの猛威は他グループを寄せ付けなかった。
これに関しては予想の範疇だから、大多数の人はさして驚きを示すこともない。μ's内でも、私達はよくやりましたと自分達の健闘を讃えている。希も負けたことなど一切気にせず、
「さもあろう」
と深く頷くにとどまった。μ'sの仲を深めたりとかやりはしたし、合宿で確かな成長を実感したけども、それだけで勝てるようになったら苦労はしないわけで、まだまだこれからが勝負と言いたい。負けたら音ノ木坂滅亡というわけでもなし、気楽なものだ。
にこや花陽のガチ勢も、A-RISEと一緒にイベントをやれたということで満足しており、勝敗はやっぱり棚置き。それで良いのか宇宙ナンバーワンアイドル。
凛、ことりの最初から勝つことなどに興味のない二人は、
「楽しかった」
の一言で済ませており、真姫、海未、絵里の負けず嫌い組は、
「次は負けない」
と意欲益々盛んにして、リベンジを誓っている。
穂乃果は穂乃果で、正々堂々と戦って負けたのだから、悔しいけど後悔はしていないと、晴れやか笑顔。
少し拍子抜けしているのはA-RISEのツバサと英玲奈だ。ツバサは、希が何か仕掛けて来るかもと警戒していたが何事もなく、英玲奈もあれだけ啖呵を切ってさぞ熱い展開になると思っていたのが、この様だ(μ'sはベスト四入りすら果たしていない。八には辛うじて入った)。不完全燃焼気味で、もう少し暴れたい気分。μ'sがいつも通りハチャメチャに舞台で暴れ回ってくれれば、A-RISEとしても多少の羽目は外せたのだが、大会中のμ'sは空気を読んだか(ある意味読んでない)お利口さんのアイドルだったのがいけない。
戦隊ものよろしく火薬を使ったり、突然希が剣舞をやり始めたり、穂乃果の大演説で会場を狂気の渦に叩き込んだり、というのをA-RISEや会場の観客、審査員達も期待していたのだが、普通に踊って歌うだけだったのだ。個性をきちんと出していれば、それこそ英玲奈が望む大激闘もやれただろうし、ベスト四に入れたかもしれない、たぶん、きっと、メイビー。
さても本人達は順当な結果で次だ次、と割り切り始めていた頃、外野ではμ'sの信奉者達が大盛り上がりをしていた。いつだって盛り上がるのは、当事者よりも第三者の外野であることが多いのだが、今回も例に漏れずと言ったところ。
μ'sファンの一部には、今回の結果に納得がいっていない者がいる。この宇宙にもμ'sが負けるなんてあってはならないと考えている者達がおり、だからこそ優勝どころかベスト四にすら入っていないのはおかしいと声高に叫んでいるのだった。
そうしてこんなおかしな(彼彼女らの中では)結果になった理由を真面目に考察し始めるのである。
その一、
「μ'sが手加減をしていたに違いない」
と、言ったのは三十代のサラリーマン男性だ。だがこの説は、μ'sが神聖なる舞台で手を抜くような悪ガキどもだと認めるようなもので、即刻却下された。男性も言ってみただけだったようで、この説を直ぐに取り消した。
その二、
「A-RISEの陰謀よ」
と、陰謀論を持って来たのは女子大生。だがこれも無理があると言われて却下された。希がいながら陰謀をみすみす逃すわけはなく、逆に陰謀返しを図って己が有利に事を進めるに違いない、とファンの希に対する信頼感が説を認めなかったのだ。過激なファンであっても公平さや客観性を少しは保持しているようで、希は陰謀をする側という真っ当な見解は持っているようだった(因みに真姫は持っていない)。
だったらとうしてと考え続けても一向に答えは出ない。当たり前だ、理由だなんてμ'sの現時点での実力がA-RISEより低かったというだけの話なのに、拗らせようとしても上手く行く筈はないのである。それでも信奉者としては、何とかこじつけてμ'sこそがナンバーワンなのだと証明したいのだ。そうして悩み抜き一つの論が飛び出て来た。
「μ'sは九人の女神を表す言葉なんだ」
力説する男子高校生曰く、希と花陽が舞台に立っていない時点で、将棋で言うと飛車角落ちの状態を示し、その状態であそこまでやれたのはやはりμ'sの実力を証明しており、μ'sこそが最強のスクールアイドルだと認めるに足る理由となるらしい。
この説、信奉者の中では大いに的を得ていると話題になった。ツッコむべきところは沢山あるのだが、そこは目を瞑ってでも魅力ある説なのである。
なまじっか顔出し声出しをしてしまい、マネージャーでありながらファンを作ってしまったからこそ出た説だ。彼女達が舞台に立ったところを見たことはないけど、でも立ったらそれは凄いことになると根拠もなく信じているようだった。
信奉者達はついにその妄想的願望を叫び始めた。
「孔明先生の踊りが見てみたい」
「かよちんの美声を広く天下に知らしめるべき」
すると信奉者だけでなく一般的なファンも同調し始め、とうとう他のスクールアイドルやA-RISEにまで伝播、希と花陽のメンバー入りを望む声は日に日に大きくなっていく。特に英玲奈は、九人のμ'sを叩き潰してこそ真の勝利だと再び導火線に火をつけている。
さて、とうとうこの時がやって来たか、裏方でひそひそと暗躍していた希が表舞台に躍り出るのか、私と花陽を入れて九人です、みたいな展開が実現するのだろうか。
全ては次回で明らかに。