鈴登場から鈴を持ち上げまくってますが、一夏ヒロインになれるかどうかは別の話。
ルリです。サブタイトルで予想はついちゃうと思いますけど、今回はちょっと一悶着あります。その原因が誰かは、本編で確かめて下さい。けど、一言だけ言うなら…あれはないです。 じゃ、本編へどうぞ。
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―――side 鈴―――
「お前、もしかして鈴か?」
「そう。あんたの幼馴染の凰 鈴音よ。久しぶりね一夏」
あたしを見て不思議そうに聞いてくる一夏。よし、取り敢えず出だしはバッチリね!ルリ達の方を見ると、力強く頷いて激励してくれた。
正直不安だけど、ここまでお膳立てしてもらったんだから出来るとこまで頑張らないとね!
「本当に久しぶりだなー。だいたい1年ぶりくらいか?」
「そうね。中2の終わりにあたしは中国に帰ったからそのくらいで当ってるわ」
「いつ日本に帰ってきたんだ?つーか、何で鈴がIS学園にいるんだよ」
「一気に質問しないでよ…日本に帰ってきたのは一昨日。ここにいるのは編入してきたからに決まってるでしょ。IS学園の制服を着てるのが見えないの?」
「おぉ、そう言えばそうだな」
「はぁー…相変わらず変なとこで抜けてるわねあんた」
あたしが軽く溜息を吐くと、一夏は苦笑いで返してきた。
うん。ISを動かしていきなりここに放り込まれたって聞いたからどうなってるかと思ったけど、一夏は一夏のままみたいね。軽く女性不信にでもなってたらどうしようかと思ったわ。
「鈴はどこのクラスに編入するんだ?同じクラスだったら楽しくなりそうで嬉しいんだけどなー」
「んなっ! …あ、あたしは残念だけど隣の2組よ」
あ、あたしと一緒のクラスだったら嬉しいって…! はぁ…無自覚にこんな事言うのも変わってないのね…一瞬期待しちゃったじゃない。
「そっか。まぁ隣だったらすぐそこなんだから、休み時間にでも遊びに来いよな!」
「言われなくても来るつもりよ。ルリにも会いたいしね」
「ん?何でルリに会いたいんだ?というか、何で鈴がルリを知ってるんだよ」
一夏が不思議そうに聞いてきた。そりゃ編入してきたばかりのあたしがルリを知ってたら変に思うわよね。
「ルリがあたしのルームメイトだからよ。ルリー!ちょっと来てちょうだい!」
「え?」
あたしが呼ぶと、ルリは少し戸惑ったみたいだった。あの子、邪魔しちゃ悪いとか思ってるわね。
「別に気にしなくていいから、こっち来なさい!」
「う、うん…」
「気にしないでいいって、何をだ?」
「あんたは知らなくていいことよ」
「なんだそれ?」
もう一回呼ぶと、ルリは遠慮しながらあたしの傍に来た。まったく、遠慮なんかしてるんじゃないわよ。
頭を軽く撫でてあげると、ルリは嬉しそうにあたしを見上げてきた。いちいち反応が可愛いわね…。
「えへへ…」
「おぉ…なんか凄い喜んでるなルリ。何で鈴はこんなにルリに懐かれてるんだ?」
「それはあたしとルリだけの秘密。それより一夏。あんたルリにお兄さんって呼ばせてるって聞いたわよ」
「あぁ。ルリが今まで束さんとしか話したことないとか言うから、俺が兄ちゃんになって守ってやろうと思ったんだよ」
「はぁ…」
予想通りの理由ね。昔あたしが苛められてた時に助けてくれたのも、似たような理由なんだろうけど…なんか誰にでも同じことをされてたら色々と複雑になるわね。そこが一夏の良いとこでもあるんだけど。
「一夏。あんたこれからルリにお兄さんって呼ばせるの禁止ね」
「なっ!?なんでだよ鈴!」
「千冬さんならともかく、あんたがお兄さんなんて呼ばれてたら違和感しかないからよ。そもそもルリも乗り気じゃないみたいだし」
「そ、そうなのかルリ!?」
「え?えと…お兄さんより一夏さんの方が呼びやすいです」
「Oh…」
ルリが答えると、一夏は膝から崩れ落ちた。いや、どんだけ兄呼びされたかったのよ。
「…鈴はルリからなんて呼ばれてるんだ?」
「『お姉ちゃん』よ」
「り、鈴がお姉ちゃんで良いなら俺もお兄ちゃんでいいだろ!?」
「って言ってるけど。どう?」
「イヤです」
「何故!?」
「お姉ちゃんは私からそう呼びたいってお願いしたんです。一夏さんは…まぁ、あれですから」
「あれって何だよ…!」
ルリがきっぱり拒否すると、一夏は頭を抱えて益々落ち込んじゃった。何でこんなに落ち込んでるんだか。
「まったく…これくらいでいつまでも落ち込まないでよ」
「ルリにお姉ちゃん認定された鈴に、我の哀しみは分かるまい…ッ!!」
「キャラ変わるくらいショックなの!?」
いや、そりゃあたしもルリに名前呼びなんかされたら凹むと思うけどここまでは…どんだけシスコンを拗らせてんのよ。
このままじゃ話も出来ないし、取りあえず、適当に励ましときましょうか。
「今認めて貰えないなら兄らしい事でもしてたらそのうち呼んでもらえるんじゃない?」
「っ!その手があったか…!よし、見てろよルリ!俺は必ずルリに兄と認めて貰うからな!」
「はぁ…頑張ってください?」
「任しとけ!」
うわぁ。予想以上の立ち直りっぷりね…暴走しないといいけど。
さて、ルリのおかげで緊張も解れたし。す、酢豚の感想を聞くわよ!
―――side 箒―――
なんだあの凰とかいう女は!私が気まずくて一夏に話せない時に突然現れて一夏と仲良さげに…!ホシノとも仲が良いようだが、一体どういうことなんだ…。
それにしても幼馴染と言っていたが、どういう事だ?私が一夏といた小学4年生までにあんなヤツは見たことがないが…私が転校した後に出会ったのだろうか?くっ…一夏に問い詰めたいが、今は一夏に近づく勇気が出せない…。
…何故私はあの模擬戦の終わった時、一夏を素直に褒めれなかったのだろう。ホシノにも言われて気付いたが、素人の一夏が代表候補生と引き分けた事はどう考えても誇るべき事だ。油断をしていたのは確かだが、あの状況で全く油断をしないというのはそれこそ学園の教師でもない限り無理な話だろう。
…自分よりも小さなホシノに言われるまで、私はそんな事にも気付けなかった。あの時は一夏が誇らしいという事より、勝てる試合を勝てなかった事に腹が立って仕方なかった。だが自分がその、す、好きな男には常に凛々しくあって欲しいというのいうのは当然だろう?しかしあそこで怒鳴るのは…いや、でも…くそっ!私はあの時どうすれば良かったんだ!
「難しい顔してるね~しののん~」
「…?」
声の方に顔を向けると、そこにはホシノとよく一緒にいる女子が立っていた。
「お前は…確か布仏だったか。私に何の用だ?」
「ん~?しののんが難しい顔して悩んでるみたいだったから、どうしたのかなって思って~」
「…要らん世話だ。私の事は放っておいてくれ」
私は布仏を拒絶した。今は余計な事を考える余裕はないんだ。
だが、次の布仏の言葉に私は思わず声を出してしまった。
「もしかして~おりむーとりっちゃんが仲良しなのに悩んでる~?」
「なっ!?何故分かる!」
「あ~やっぱしそうだったんだ~」
「くっ…!」
図星を刺されてつい認めてしまった…私はそんなに分かりやすいのだろうか?
「うん~すっごく分かりやすいよ~。しののんっておりむーの事大好きでしょ~?」
「……っ!?わ、私が一夏を!?そんなわけないだろう!」
「顔を真っ赤にして言われても~」
布仏がニヤニヤしながら指摘してきた。そ、そこまで分かりやすいか…。
「大好きなおりむーが知らない女の子と仲良しなのが嫌なんでしょ~?」
「………気にしてなどいない」
「まったまた~…でもねしののん」
「…?」
布仏は急に真面目な顔になると、真っ直ぐ私を見てきた。どうしたんだ?
「自分の思ってる事は素直に言わないと~いつか取り返しがつかなくなっちゃうよ~?」
「…お前に私の何が分かる!」
いきなり何だというんだ!
私が強く言い放つと、布仏は寂しそうに続きを言った。
「しののんの事はそんなに知らないけど~。私の大事な人達が、最近まで自分の思ってる事を言わないですれ違ってばっかりだったんだ~」
「………」
「るーるーのおかげでちゃんと仲直り出来たけど~あのままだったら多分近い内に二度と仲直り出来ないくらいになってたと思う~…」
「……それが私に何の関係がある」
「人間素直が一番ってこと~♪」
「……素直…」
素直が一番、か…。私には縁のない事だな。素直も何も、自分が何をしたいのかも分からないのだから。
「また難しい顔になってる~。取りあえず~今はあの3人を見てたら何か分かるんじゃない~?」
「3人?」
布仏が指した先には、一夏とホシノと…一夏に何か切り出そうとしてる凰がいた。顔を赤くしてるが…まさか一夏に告白する気か!?そ。それだけは駄目だ!
3人の元へ行こうとすると、布仏が両手を開いて道を遮ってきた。
「どけ布仏!」
「ダメだよしののん~。しののんだって自分が邪魔されたら嫌でしょ~?」
「そ、それとこれとは別だ!」
「おんなじだよ~!それに決めるのはおりむーなんだから、邪魔したらきっとおりむーも怒るよ~!」
「ぐっ…!」
くそっ…!そんな事を言われては、邪魔なんか出来ないではないか…!
…一夏は凰にどう返事をするのだろう。 今の私には、3人のやりとりを見つめることしか出来ず、それがどうしようもなく悔しかった。
―――side ルリ―――
一通り話終えたお姉ちゃんは、一夏さんに酢豚の感想を聞きました。
…上手くいくんでしょうか。不安に思ってると、お姉ちゃんが私の手を握ってきました。…お姉ちゃんも不安なんですね。なら、私に出来る事はお姉ちゃんの傍にいて支える事だけです。
手を握り返すと、お姉ちゃんは私に笑いかけてくれました。頑張ってお姉ちゃん!
「あぁ!あの酢豚は鈴が作ったって言ってたな。いやー旨くてびっくりしたぜ。お前昔からしょっちゅう俺に味見させてたけど、あの頃は微妙な味だったのになー」
「む、昔の事はいいのよ!それより…酢豚って聞いて何も思わないの?」
「酢豚で?………あぁ、もしかして鈴が転校する時のあの約束の事か?」
「っ! そ、そう!それよ!」
一夏さんが答えると、お姉ちゃんは期待と不安が混じったみたいな顔で肯定しました。
…酢豚の約束ってどんなんだろう。
「その、約束がどんなんだったか覚えてる…?」
「ああ、ちゃんと覚えてるぞ。確か…『料理が上達したら毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』だろ」
「………そ、そう…よ」
お兄さんはちゃんと約束を覚えてたみたいです。お姉ちゃんは顔がこれ以上ないくらいに真っ赤になってます。…けど、毎日酢豚を食べて欲しいって何で?
『オモイカネ。その約束ってどういう意味?』
『鈍いなールリは。あれは『俺のために毎日味噌汁を作ってくれ』っていうのの変わった言い回しだよ。所謂プロポーズだね!鈴ったら大胆だなー』
『プロポーズ!?』
ちゅ、中学生でプロポーズしてたんですかお姉ちゃん…!凄いです!
…一夏さんはお姉ちゃんの告白にどう返事をするつもりなんだろう。
「そ、それで一夏…返事はどうなのよ…」
「おう、良いぞ!こんな旨い酢豚だったら大歓迎だ!あ、でも毎日酢豚は流石に飽きるから、他のも作ってくれよな」
「…………ほ、ホント!?」
一夏さんが承諾すると、お姉ちゃんは満面の笑顔で喜びました。良かったですねお姉ちゃん…!
クラス中もお祝いムードになってたのですが、一夏さんの次の言葉に一瞬で雰囲気が変わりました。
「でも毎日作りに来てくれるなんて大変だろ?材料費もかかるし、出来る時だけでいいからな」
……………あれ?
「…一夏」
「ん?何だよ鈴」
「…あたしの約束聞いて、どういう風に思った…?」
「どう思ったって…そりゃ毎日作ってくれるなら食費が浮くなー…とか?」
「「「「………………………」」」」
私もお姉ちゃんもクラスの皆さんも、開いた口が塞がりませんでした。あの箒さんまでです。
まさかお姉ちゃんのあの告白を、告白と受け取ってなかったなんて…!
「でも鈴。さっきも言ったけど無理はしないで良いからな?俺って結構食べるから食費が」
パァンッッ!!
一夏さんが言い終わる前に、教室中に響くくらい大きな音が鳴りました。
慌てて視線を音の方に向けると―――――お姉ちゃんが一夏さんを平手打ちしていました。お姉ちゃんの目には、今にも零れ落ちそうなくらいに涙が溜まってました。
「り、鈴…?」
「ぅ……ぅう゛………!!」
「お姉ちゃん…」
一夏さんの声を聴くと、お姉ちゃんは耐えきれなくなったのかボロボロと涙を流しました。
握っていた私の手を、真っ赤になるくらい握ってきてます。お姉ちゃん…告白が上手くいったと思ったら、気づいてももらえてなかったなんて…悲しいですよね。
「……よく分かったわ」
「え?」
「アンタがあたしの事なんかなんとも思ってないって事がよく分かったって言ったのよッッ!!」
吐き出すように一夏さんにそう言うと、お姉ちゃんは教室を飛び出していきました。
一夏さんは何が起きたかここまできても分かってないみたいです…最低ですね。
「…
「る、ルリ…?どうしたんだ織斑さんなんて呼んで…」
「もうお姉ちゃんと私に関わらないで下さい…!」
「な…」
織斑さんの言葉を最後まで聞かないで、私はお姉ちゃんを追って教室を飛び出しました。
協力してくれたクラスの皆さんには悪いですけど、織斑さんの傍にはあれ以上いたくなかったです。
『オモイカネ!お姉ちゃんはどこ!』
『……部屋に戻ってるよ』
『分かった!』
オモイカネに場所を聞いた私は、急いで部屋に戻りました。今はお姉ちゃんの傍にいてあげないと…!
はい。一夏が最悪の場面で朴念神っぷりを発揮してしまいました。
あ、一夏がクラスから孤立するような事はありませんよ。今までの行動で良い人だっていうのは知れ渡ってますから。ただ【女心が微塵も分かってない。友人にはいいけど、恋人には絶対したくない女の敵】と認識されました。
次話は明後日になると思います。