けど箒もだけど、一夏もあれくらいは原作通りですよね? ラウラにキスされて告白まがいの事を言われても華麗にスルーするくらいだし……本当にヤバいな一夏。何でモテるんだろ。
一夏に対する制裁を希望する声がちらほらあるので『彼女』にやってもらいましょうか。ルリの代理として。
逝 く が よ い !
ルリです。本当にもう織斑さんは…あぁもういいです。思い出したくないです。
お姉ちゃんが心配なので、織斑さんへの制裁はあの人に任せてさっさと本編です。
――――――――
――――side 箒――――
「……何で鈴とルリはあんなに怒ったんだ?」
「一夏……」
凰にぶたれホシノに拒絶されても、一夏はその理由に全く気付いていないようだった。昔から多少は鈍感だったが、まさか6年の間にここまで酷くなっているとは。
……一夏が凰の告白を受けずに済んだことは私にとって喜んでもいい事なのだが、流石に告白に気付いても貰えなかったというのは同じ女として複雑な物があるな。
「しののん」
「ん? 何だのほと……け?」
呼ばれた方に顔を向けるとそこにいたのは――――布仏の姿をした‘何か’だった。
え、いや……誰だこれ。先程までののんびりとした布仏はどこへ行った? 何やらドス黒いオーラのような物が見えるのは、私の目の錯覚か?
「さっきは素直が一番って言ったけど、付け加えとくね。素直と馬鹿は違うから」
「そ、そうですね……?」
いつも間延びしてる喋り方が無くなっているせいか謎の威圧感を出す布仏に対し、思わず敬語になってしまった……な、何故布仏がこんなに怒っているんだ?
「私の大事なお友達を2人も泣かせたおりむーには、ちょっとオシオキしてあげないと……じゃあ殺ってくるねー」
「待て! 今何か物騒な字で言わなかったか!?」
私の制止する言葉にも耳を貸さず、布仏は未だに呆けている一夏の元へと近づいて行った。クラスの皆も布仏の異変に気付き始めたのか、布仏の歩く先はモーゼのように人が分かれていった。普段から布仏と仲の良さそうな谷本や夜竹に至っては、顔を青くして震えている……何が起きると言うんだ?
「おりむー」
「あ……何だ布仏さ……」
「答えて下さい」
「え?」
「答えて下さい」
「え、あ……はい」
布仏の有無を言わせぬ迫力には一夏も直感で危険を感じたのか、すぐに従った。
「何でりっちゃんが泣いたか分かってますか」
「……い、いいえ」
「何でるーるーが怒ったか分かってますか」
「…………いいえ」
「自分が何を言ったか分かってますか」
「え、鈴の約束に対する返事を……」
「分かってますか」
「………………わ、分かってません?」
「そうですね。じゃあ――――」
布仏はそこまで言うと、満面の笑顔で袖を捲りながら拳を構えた……って拳!?
「あの世で二人に詫び続けろ織斑一夏ァ――――――――――――ッッ!!」
「ゥゴフッッ!!?」
それは武道を嗜んでいる私から見ても惚れ惚れするような、見事な正拳突きだった。
小柄な布仏の拳は吸い込まれるように一夏の鳩尾へ直撃し、喰らった一夏は白目を剥いてその場に崩れ落ちた…………うん、これから布仏だけは何があっても怒らせないようにしよう。
――――side ルリ――――
「お姉ちゃん!!」
お姉ちゃんを追いかけて部屋に戻った私が見たのは――――ベッドの上で膝を抱えて泣いているお姉ちゃんだった。お姉ちゃんは私の声に気付くと、泣き腫らして赤くなった目で私を見上げてきた。
「…………ルリ?」
「…………ッ! お姉ちゃん!」
そんなお姉ちゃんを見ていられなくて、私は思わずお姉ちゃんを抱きしめた。
お姉ちゃんは最初はビックリしたみたいだったけど、すぐに泣き顔になって私を抱き返した。
しばらくそうしてると、お姉ちゃんがぽつぽつと吐き出すように話してくれて……私はお姉ちゃんを抱きしめながらそれを聞く事しか出来なかった。
「ルリ……」
「お姉ちゃん?」
「…………私、頑張ったんだよ?」
「……うん」
「中学の頃も何回も告白しようとしたんだけど……勇気が出せなかった」
「うん」
「でも今日は本音達が沢山手伝ってくれて……ルリが傍に居てくれて……だから頑張れたの」
「うん」
「一人だったらきっと勇気が出なくて……適当に約束の事を誤魔化してたと思う」
「…………」
「それで……やっと告白出来て…………一夏が『良いぞ』って言ってくれて……本当に嬉しかったのよ?」
「………………うん」
お姉ちゃんがそこまで話すと、止まっていた涙がまた溢れ出していた。
「なのに……なのに…………!」
「…………」
「一夏はあたしの告白を、告白だなんて思ってなかった!! あたしが……あたしが何年も温めてきた思いを、あいつは無自覚に踏み躙ったのよッ!!」
「…………ッ!」
お姉ちゃんの悲痛な叫びを聞いた私は、さっきまでよりも強くお姉ちゃんを抱きしめた。
そしたらお姉ちゃんも強く抱き返してきて、気づいたら私もお姉ちゃんと一緒に泣いてました。
しばらく泣いたら少し落ち着いたのか、お姉ちゃんは続きを話し出した。
「…………ねぇルリ。あたしの昔話を聞いてくれる?」
「うん」
「あたしね。小学校5年で日本に来たとき……その時はまだ日本語に慣れてなくて。喋り方が変って言われたり、名前をからかわれたりして苛められてたの」
「お姉ちゃんが!?」
私は思わずお姉ちゃんの顔を見ると、お姉ちゃんは苦笑いで頷いた。
「何よルリ。あたしだったら苛めっ子なんか返り討ちにするとか思った?」
「う、ううん。そうじゃなくて……お姉ちゃんを嫌う人がいたのにびっくりしただけ」
「そりゃいるわよ。あたしは聖人君子じゃないんだから」
「そうなんだ……」
「それでしばらく苛められてて……日本が大嫌いになりそうな時に助けてくれたのが一夏だったの」
「……織斑さんが」
私が織斑さんと言うと、お姉ちゃんは不思議そうな目で私を見てきた。
「織斑さん? さっきまで一夏さんって呼んでなかった?」
「…………お姉ちゃんを泣かすような男の人は、名字呼びでいいの」
「……ありがとね、ルリ」
「わぷっ」
訳を話すと、お姉ちゃんは私の頭をいつもより強く撫でてくれました。
「話を戻すわね。それが切欠で一夏と仲良くなって……気づいたら好きになってた」
「……」
「……ううん。好きだと思ってた」
「今は違うの?」
「……分かんなくなっちゃった」
「分かんない?」
「……うん。あたしは一夏に恋してたんじゃなくて、ヒーローみたいに憧れてたんじゃないかなって」
「憧れ?」
憧れと恋って、間違える事なのかな……? 恋をしたことないから分かんないです。
「あたし、一夏に会うまで男子と縁なんか無かったから一夏が初恋だったの。けど、今考えたらもしかしたら違うのかも……って」
「…………」
「でも、それを認めちゃったら……一夏に告白するために頑張ってきた今までのあたしは何なの?」
「お姉ちゃん……」
「あたし、中国に帰ってすぐの検査でISの適正が高いって言われたの。それでISのテストパイロットをやらないかって誘われてね。最初は嫌だったんだけど、国家代表になれたら日本に行く機会もあるんじゃないかって思って受けたの。一夏と再会する時は凄くなったあたしを見てもらいたいっていう気持ちもあったし……ほんとバカよね」
「お姉ちゃんはバカじゃない!」
私が思わず大声で否定すると、お姉ちゃんは一瞬驚いてから私を抱きしめてきた。
「ありがとルリ。そう言ってくれるのはあんたくらいよ」
「わ、私は本当にそう思って!」
「うん。もうルリの前ではそんな事言わないから。……それで必死に1年頑張ってね。なんとか中国代表候補生になれたの。……1年で代表候補生とか、どんだけ一夏に会いたかったんだって話よね」
「お姉ちゃん……」
「…………だから、あたしが一夏を好きじゃないかもなんて思ったら……今までの頑張ったあたしを、全部否定しちゃうじゃない!」
「そんな……」
お姉ちゃんがこんなに悩んでたなんて……私じゃお姉ちゃんを元気づけてあげられないの?
「……ねえルリ。あたし……どうすればいいかな?」
「それは……」
「あたしの気持ちがどうでも、一夏があたしを何とも思ってないのは事実なの。……あはは……自分で言ってもキッツいわね……無自覚にフラれるとか」
「…………ッ!」
私が織斑さんへの憤りを隠せずにいると、場違いに元気な声が部屋中に響いた。
『だったらその行き場のない気持ちをいっくんにぶつけちゃおー! ただし物理的に!』
「お、お母さん?」
「束さん!?」
いきなりTVに映ったお母さんは、凄い事を言い出した。物理的に気持ちをぶつけるって、どういう事?
「えと、束さん?」
『ぶー。まだ束さん呼びなのりっちゃん。ママって呼・ん・で♪』
「無理。それで、一夏に物理的に気持ちをぶつけるってどういう事よ」
『おふぅ……落ち込んでても一蹴するりっちゃんのたくましさに束さんちょーショックー』
「はよ言え」
『うぇーい。んとね、りっちゃんはいっくんを本当に好きだったかどうか悩んでるんでしょー?』
「……そうよ」
『だったら殴り合いしかないよね! いや、むしろ殴り愛!』
「ふざけるんなら消すわよ。流石に今、束さんの冗談に付き合う元気は無いの」
『ふざけてないよ』
お母さんは珍しく真面目な顔になると、お姉ちゃんを真っ直ぐ見つめました。お姉ちゃんもいつもと違うお母さんにびっくりしてます……お姉ちゃんとお母さんって、本当に仲良しだったんですね。
『天才の束さんが言うのもなんだけどさーりっちゃん。頭で考えててもどうにもならない事だって世の中にはたーっくさんあるんだよ。束さんもちーちゃんと仲良くなるまでに、どれだけ拳で語り合った事か!』
「千冬さんと!?」
『束さんは頭脳だけじゃなく、肉体的にも天才なんだよー!』
「こっそりパワードスーツとか着てたんじゃないの?」
『何故バレたし』
「やっぱしか!」
お姉ちゃんがツッコむと、お母さんは楽しそうに笑い転げました。……なんかお姉ちゃん、元気になってる?
『ふっふっふー…りっちゃん。お前はもう束さんの策にハマっているのだ!』
「はぁ?」
『少しは元気出たでしょ?』
「ッ!」
……やっぱし。お母さんはお姉ちゃんを元気づけるためにわざとふざけてたんだ。
お母さんは凄いな……私はお姉ちゃんの話を聞くしか出来なかったのに、あっという間にお姉ちゃんを元気にして。
「はぁ……あんた達親子には負けるわ。さっきまでこの世の終わりみたいに思ってた筈なんだけど」
『束さんとるーちゃんにかかれば家族を一人立ち直らせるなんて、3分クッキングより簡単だよ!』
「あたしの心はカップ麺以下か!」
「え?」
私も?……私は話を聞いてただけなんだけど。
「ん? どうしたのよルリ。そんなビックリして」
「え、あの……お姉ちゃんが元気になったのはお母さんのお蔭じゃ?」
「はあ? 何言ってんのよルリ。ルリが傍に居てくんなかったら、あたしは束さんの話なんか聞かずにさっさと電源を切ってたわよ」
『ひどっ!? ふふん。でもこのTVは束さんが占拠してるから外からの操作は受け付けないよ!』
「じゃあコンセント抜くわ」
『スンマセンでした――――!』
「…………」
……私、お姉ちゃんを元気づけれてたんだ。
そう自覚したら、私は嬉しくて思わずお姉ちゃんに抱き着いてしまった。
「わっ! もう、どうしたのルリ?」
「……お姉ちゃんが元気になって嬉しいから」
「はぁ……甘えん坊ねルリは」
『あー! ズルーいりっちゃん! 束さんも抱きしめられたーい!』
「はいはい。また今度ねー」
『ぐぬぬぬぬ…………!』
「……ぷっ」
お姉ちゃんとお母さんのやり取りに、つい笑ってしまいました。……何だか本当に家族みたい。
『ちぇー。それでりっちゃん。気持ちは固まった?』
「…………少しはね」
『おけおけ。ではそんなりっちゃんに束さんが機会を与えて進ぜよう!』
「機会って何の機会よ」
『殴り愛の』
「まだ続いてたの!?」
『そりゃ続いてるよー。束さんは冗談は言っても嘘は言わないからね!』
「はぁ……それで、機会って何よ」
『ズバリ!クラス対抗戦!』
「あー……」
そう言えばお姉ちゃん、2組の代表になるって言ってましたね。織斑さんの事で忘れてました。
『りっちゃんが2組のクラス代表になって、いっくんをぼっこぼこにしちゃえば良いんだよ。愛とか恨みとか色々込めて!』
「えらく相反する感情ね……間違って無いけど」
『で。どうするりっちゃん? りっちゃんが嫌なら束さんがボコるけど』
「一夏がボコられるのは決定なの!?」
『だって今回のは流石の束さんもムカついたからねー。いっくんと言えど、束さんの大事な娘達を泣かすヤツには容赦しないよ!』
「う……あーもう! 出れば良いんでしょ! あたしがこの手で直接一夏をぼっこぼこにしてやるわよ!」
お母さんに大事な娘って言われて、お姉ちゃん照れてますね。
『りょーかーい! んじゃ束さんは色々と準備しとくねー』
「準備って何の?」
『撮影とか』
「あっそ……」
『ではでは。また会おうるーちゃん! りっちゃん!』
「………………ありがと……
『え!? ちょ、今りっちゃん何て――――』
お母さんが言い終わる前に、お姉ちゃんはTVのコンセントを抜いちゃいました。
恥ずかしいなら言わなきゃいいのに……お姉ちゃん、可愛いです。
「ルリにも心配かけちゃったわね……あたしはもう大丈夫! ルリも一夏をボコるのに協力してくれる?」
「勿論!」
2人で笑いあった後、今日はもう休むことにしました。
待っていて下さい織斑さん……お姉ちゃんを泣かせた罪は重いですよ。
のほほんさん万能説。ボケ、ツッコミ、マスコット、魔王と戦闘以外は何でもイケるぜ!
というわけで、鈴が一夏ヒロインになるフラグはへし折りました。これは箒にもうワンチャンあるでー! ……シャルという最大の敵がやってくるけど。
次話は明日の今頃予定。