丁度五反田食堂編が終わったタイミングだったのがまだ幸いである。
なんか評価1の数が3になったり4になったりしてるのは何でじゃろ?
本編の前書きやサブタイトルの言葉をルリ以外も混ぜてみようかと画策中。試しに今回の前書きは鈴にしてみよう。学園での話では出番の少なくなってしまう弾や蘭にさせるのも良いやも。
ハーイ、凰 鈴音よ。なんかいきなり呼ばれて、何でもいいから本編について喋って欲しいって言われたんだけど……いきなり言われてもねぇ。え、何よそのカンペ……今まではルリが33回もやってたって? はぁ……正直メンドくさいんだけど、ルリにばっかりさせるのも可哀想よね。
んと、前回までは一夏とルリと一緒に弾の家に行ってたのよね。一夏のバカがルリの兄の座を虎視眈々と狙ってるんだけど、まさか蘭まで参戦してくるとか完全に予想外だったわ。ルリに構ってないで一夏にアピールしてなさいよ! ったく、ルリとアドレス交換までして油断ならないんだから……弾にちゃんと妹の手綱を握っておくよう、キツく言っとかないと……!
……あんまあらすじになってないけど、こんな感じで良い? あ、良いんだ。じゃ、本編でも宜しくねー。
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――――side 千冬――――
「……どうしたものか」
私は今、職員室で二枚の書類を睨んでいた。
その書類は、私と山田君が担当している1年1組に編入予定の2人の転校生についての書類だ。その2人がどちらも問題の塊というのが、私がここまで頭を悩ませている理由である。
1人はフランス代表候補生の【シャルル・デュノア】。驚くべきことに、世界2人目となる“男”のIS装者だという事だが――――どう考えてもこいつは“女”だ。というよりも、隠す気があるのかすら怪しい。一夏以外に男のIS装者がいないとは言い切れないのは確かだ。束が言うには現時点では有り得んらしいが、何事にも例外や予想外は付き物だからな。
だが、この【シャルル・デュノア】は間違いなく違うと言い切れる。仮に国が隠していた男性装者だとしても、何故“今”公表する? 世界唯一の男性装者を隠したかったと言うならば、一夏の存在が公表された時点で隠す必要は無い。なのに男性装者の存在が明るみになって3か月は経とうかと言う、今のタイミングでの発表に編入だ。しかもフランス代表候補生だと? 女尊男卑の風潮の中で、今までひた隠しにしていた筈の男性装者がいきなり代表候補生なぞ、どう考えても矛盾している。
加えて【シャルル・デュノア】などという“息子”は、デュノア家には存在しない。男性装者という事はともかく、息子の存在自体をなんの理由もなく秘匿していたというのは考えられん。となると、どこかの訳ありの“女”を男装させて送り込んで来たというのが妥当な線だろう。何が目的までかは分からんが……大方、同じ男性装者の一夏に接触しやすいようにというところだろうな。
無理やり突っぱねても良いが、明らかに“黒”だと判明するまでは放置でも構わんか。いっそ望み通りに一夏と同室にでもしてやれば、案外早くボロを出すかもしれんな……それでいくか。更識に監視と調査を依頼しておけば間違いは無いだろう。現当主の楯無は普段はあれだが、仕事となれば頼もしいの一言だ。
デュノアの方はそれで良いとして、問題はもう1人の方だ。個人的にはデュノアよりもこちらの方が色々な意味で厄介だと思っている。
「ラウラ……か」
【ラウラ・ボーデヴィッヒ】。2年前の第2回モンド・グロッソ後からの1年間、私がドイツで教官をしていた頃の教え子の一人。そしてルリと同じ“試験管ベビー”である。産まれた場所はルリとは違うだろうが、銀髪に幼い容姿、そして金眼とルリとの共通点は多い。ラウラはルリと違い、左目だけが金眼だがな。確か
私が初めて出会ったラウラは、完全に塞ぎ込んでしまっていた。何でも以前は軍でも最強の兵士だったらしい……当時10歳程だったであろうラウラが軍最強だったというのを考えると、遺伝子強化体という存在には正直末恐ろしいものを感じるな。だが、その最強だったラウラはISの適正が限り無く低かったらしい。そこでラウラの部隊に移植されたのが、件の【越界の瞳】だそうだ。あれには疑似ハイパーセンサーとしての役割以外にも、ISとの適正を底上げする効果もあるらしい。
移植の結果、確かにIS適正は上がったらしい。ラウラ以外の部隊の者は、能力の底上げを受けて軍のエースとなった。だが――――ラウラは【越界の瞳】に上手く適合出来なかった。移植自体は上手くいっていたのだが、遺伝子強化体故だろうか? ラウラという存在が越界の瞳を受け入れなかった。能力の底上げどころか逆の結果になったラウラを待っていたのは、心無い誹謗中傷だったそうだ。最初はラウラも必死で訓練していたそうだが、上手く越界の瞳と適合できた者達を見ている内に塞ぎ込んでしまったらしい。
これまでの話をラウラの副官――――クラリッサ・ハルフォーフから聞いた私はラウラを放っておけなくなった。今思い返せば、両親に捨てられた自分達とどこか共感していたのかもしれんな。
ラウラは最初は生きる気力さえ無くしていたようだったが、しばらく一緒に過ごしている内に私の熱意が伝わったのか、少しずつ瞳に光が戻っていった。ラウラに意思が戻ってからは早かった。いや、早いというのは語弊があるか。時間で言うと確かに早かったが、ラウラは血反吐を吐く程の訓練を自分から望むようになった。元ブリュンヒルデの私から見てもやりすぎだと思うほどの訓練だったが、ラウラは決して譲らなかった。そんなラウラを見て、いつしか私もラウラの熱意に応えようと全面的に訓練に協力するようになっていた。
訓練のかいもあってか、10ヶ月が過ぎる頃にはラウラはかつての実力を取戻し、越界の瞳さえも使いこなしてドイツ最強部隊の隊長の座に返り咲いていた。……何で不適合だった越界の瞳を使いこなせるようになったかは、正直私にも分からん。意志の力は何よりも強い、という事だろう。
だが、1つだけ新たな問題が出来ていた――――ラウラが私に依存してしまったという事だ。いや、ただの依存ならまだ可愛いものだが……あれはもう崇拝に近いものを感じた。それこそ、私こそが神だと言わんばかりにな。絶望の中にいた自分を救ってくれたと恩人という事で多少の依存はされるとは思っていたが、あれは異常だ。どうしてああなったかは、私には分からん。私の知らないラウラの過去に原因があるのかもしれん。
そんなラウラに恐怖を感じたのは、ラウラに一夏の事を話した時だ。最初は拗ねたような表情で話を聞いていたラウラだったが、私がドイツへ出向する原因になった第2回モンド・グロッソの話になると、途端に表情が変わった。言葉では表せない程の憤怒……いや、怨嗟に満ちた表情に、だ。それこそ一夏が目の前にいたら、すぐにでも殺してしまいそうな程に。
私がドイツへ出向したのは、第2回モンド・グロッソで何者かに誘拐された一夏を助けるための情報を提供してくれた恩返しのためだ。一夏を助けるために決勝を放棄する事になったが、それについては全く後悔していない。応援に来ていた一夏の為に、護衛の1つでも頼んでおけば良かったとの後悔はあるがな。棄権せずにもし手遅れになっていたらと思うと、今でも想像するだけで震えがくる。
恐らく、ラウラは私が決勝を逃す原因になった一夏が赦せないのだろう。普通に考えれば一夏を誘拐した奴等が一番の原因なのは明白なのだが、ラウラにそれを伝えても全く効果が無かった。正体不明の誘拐犯よりも、近くにいる一夏の方が怒りをぶつける対象にしやすいからかとも思ったが、それだけではないと思う。あれは――――あのラウラの目は、一夏の存在自体が赦せないという目だ。
そう感じた私は、それ以上ラウラの傍に居る事が出来なかった。大事なたった一人の弟に害を成すかもしれない存在と、今までのように接する自信が無かったからだ。丁度ドイツ軍との契約期間でもある1年が過ぎるという事もあり、私はラウラから逃げるように日本へと帰ってきたのだ。
そのラウラが、IS学園に編入して来る……各国のISの情報収集が目的との事だが、ラウラ自身の目的は間違いなく私と一夏だろうな。ラウラと一夏を会わせるとどういう事になるのか、正直想像がつかん。私と別れてからの1年でラウラに何か良い変化があればと思うが、望みは薄いだろうな。本音を言えばラウラは一夏と別のクラスにし、極力近づけないようにしたい。だが、それは間違いなく悪手だ。私の目の届かないところにラウラを置くと、目を離した隙に何をするか……どう考えてもろくな事にはならんだろう。
ならいっそのこと、一夏と同じクラスにするのが最善だ。私がラウラを監視出来るし、ラウラも直接一夏を見れば少しは考えが変わるかもしれん。それに……1組にはルリがいる。自分と似た存在であるルリがクラスに溶け込んでいるのを見れば、ラウラにも良い刺激になるかもしれん。まぁ、流石にルリに関しては希望的観測が過ぎるが……ラウラとルリを接触させて悪い結果になる事はないだろう。
まったく、オルコット、凰と続いて次はデュノアとラウラか……一夏のせいで問題が次から次へと舞い込んでくるな。この溜まったストレスは、また今度一夏に何らかの形で癒して貰うか。八つ当たり? そんなもの知るか!
――――side ルリ――――
『ってわけでー。もうすぐIS学園に編入してくる“男”は“女”だから2人とも気を付けてねー。どうせ目的はいっくんのデータだろうけど、もしかしたらるーちゃんの方にも来るかもしんないから』
「……は?」
「男装スパイ?」
『そーそー。るーちゃんに手をだしたら本気出すって世界中に言っといたから、るーちゃんは大丈夫だと思うんだけど。もし手を出してきたら言ってね! フランスやっちゃうから!』
「やりすぎはダメです。後々メンドくさくなっちゃいますよ」
「いや、ちょっと」
『おぉ! お母さんを心配してくれつつ後の事も考えるなんて、さっすがるーちゃん!』
「それほどでもないです」
「ちょ、待ちなさいって……」
『いやいやそれほどでもあるってー。さっすが束さんの娘! 流石の束さんだね!』
「普通に自分褒めに移行しましたね」
『束さんだからね!』
「待てって言ってんでしょゴラァァァァァ――――――――ッッ!!」
『「え?」』
お母さんと話してたら、急にお姉ちゃんが叫びだしました。何か変なとこあったかな。
お母さんの方を見ると、首を横に振りながら肩を竦められました。アメリカ人風の困ったポーズです。私もつい首を傾げちゃいました。
「何2人揃って『何で急に叫んでるんだろう』みたいな顔してんのよ!」
「何で分かったの?」
『束さんも正にその通りの事を思ってたよー。以心伝心だねりっちゃん! これぞ親子の絆!』
「あ・ん・た・ら・ねぇぇぇ……! かあさ……束さんはちゃんと一から説明しなさいよ!ルリもあまり束さんに毒されちゃダメ!」
「『ん?』」
今お姉ちゃん、お母さんの事を“母さん”って言いかけなかった?
お母さんも気付いたみたいで、2人でお姉ちゃんを見詰めると、お姉ちゃんは顔を赤くして目を逸らしてました。無かったことにしようとしてますね。
『……りっちゃん、束さんの事を母さんって言いかけなかったかにゃー?』
「い、言ってないわよー」
「私も聞いた」
「ぐっ……! ちょ、ちょっとした言い間違いよ!」
お姉ちゃんは必死で誤魔化そうとしてるけど、あそこまで言ったらお母さんが見逃すわけがないです。ほら、あからさまに泣き真似をし始めました。
『あーあー寂しいなー。りっちゃんが遂に束さんを母さんって呼んでくれたと思ったのに、言い間違いで済ましちゃうなんて。寂しさのあまりに【甲龍】を束さん柄にしちゃうかもー』
「はぁっ!? な、何でそうなんのよ!」
『具体的には龍咆を人参型にして、ハイパーセンサーをるーちゃんや束さんとお揃いのウサミミにして、ISスーツをゴスロリに! あれ、これ普通に可愛くない?』
ゴスロリで兎耳のお姉ちゃん……可愛いかも。
期待を込めてお姉ちゃんを見ると、凄い勢いで目を逸らされました。お姉ちゃんは不満みたいです……可愛いと思うけど。
「ふ、ふん! 【甲龍】はあたしが肌身離さず持ってるんだから、そんなのいくら束さんでも出来るわけないでしょ!」
『そこはほら。りっちゃんを物理的手段で眠らせてる間に忍び込んでちゃちゃっと』
「物理的手段って何!?」
『たららたったた~ん! 釘バット~♪』
「永眠するわ!! はぁー……分かったわよもう」
お母さんが本気でやりそうなのが分かったのか、お姉ちゃんは諦めた様子で溜息を吐きました。
こういう時は諦めが肝心です。
「それで束母さん。男装スパイが来るってどういう事?」
『りっちゃんが母さんと呼んでくれる……こんなに嬉しい事は無い……!』
「私も“母さん”って呼びましょうか?」
『るーちゃんは“お母さん”でおねがーい! もしくは“ママ”で!』
「ママは流石にちょっと……恥ずかしいです」
『ひゃほー! 久々のるーちゃんの赤面、いっただきぃ!』
「聞けや!!」
質問をスルーされたお姉ちゃんがまた叫びました。流石にふざけすぎたみたいです。反省反省。
『いやメンゴメンゴー。りっちゃんに母さんって呼ばれたからつい嬉しくって』
「はいはい。それで?」
『と言ってもねぇ。もうすぐフランスとドイツから編入生が来るみたいなんだけどさー。フランスの方のが“2人目の男性装者”って言ってるんだよね。で、そいつがどう見てもどう考えてもどう調べても“女”って事なんだよー。理由はさっきも言ったけど、いっくんと【白式】の調査だろうね』
「ふぅん……何でわざわざ男装なんかさせてるのかしらね。3年間も隠せるわけないと思うけど……あぁ、調べ終わったらすぐに退学するのか」
「でもお姉ちゃん。男性装者が退学なんかしたら騒ぎになると思うけど」
それくらいの事も分からないなんてのは、流石に無いと思うんだけど。
確かに男装したら一夏さんに近づきやすいとは思うけど、それ以外はデメリットしか無いと思うし……分かんないですね。
『男装する理由までは束さんも調べてないから分かんなーい。【白式】のロックは凡人が破れるほどやわじゃないし、ほっといてももーまんたいだよ。ただ、るーちゃんは必要以上に近づかないようにしてね。もしかしたらバカをやらかすかもしんないし』
「バカ?」
『例えば――――束さんが警告してあげたのに、るーちゃんやオーちゃんを嗅ぎまわったり、とかね。嗅ぎまわるだけならともかく、直接るーちゃんに手を出したら……』
「ちょ、落ち着きなさいよ! 顔がヤバいから!」
おぉ、お母さんの顔がどんどん悪者顔に。
私が心配なのは嬉しいけど、オモイカネもお姉ちゃんもいるんだから大丈夫ですよ。
「束……母さんが心配しなくても、ルリの事はあたしとオモイカネがしっかり守るから大丈夫よ。楯無さんにも声かけとくし」
『んー……そだね。りっちゃんとたっちゃんが付いてたら大丈夫かな。でも何かあったらすぐにお母さんに言うんだよ!』
「ん。任せといてくださいお母さん」
フランスからのスパイかぁ。大丈夫だとは思うけど、用心はしとかないと。
そう言えば、もう1人のドイツからの転校生ってどんな人なんでしょう? 怖い人じゃないと良いけど。
今回はめっちゃ説明回になりました。自分は千冬さんがラウラとシャルを一夏と同じクラスにしたのはこんな理由じゃないかなーと思ったので。うちの千冬さんはルリが絡んでないとそれなりにキレ者です。原作では対応が後手ばかりだったりラウラの問題を放置してたり、何考えてんだこの人って感じだけど。
モンド・グロッソは3年に1度との事なので、千冬がドイツにいたのは2年前~1年前と勝手に判断。まだ第3回モンド・グロッソは開催されてない筈だし……第3回モンド・グロッソのネタを書いたりする予定は無いのであしからず。