GANTZ:S   作:かいな

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いい加減な性格

 煙の向こうから現れたお兄さんは小さい銃を降ろして、ホルスターに差し込む。

 冷たい目で私を見つめていたお兄さんは、無言のまま近づいて膝を付き、視線を合わせてくる。

 

「……おい……」

 

「……」

 

「……行くぞ」

 

 お兄さんは膝を抱えて俯いていた私の手を取って、無理やり立ち上がらせる。

 

「……あっ」

 

 そして私の手を引いて歩き出したお兄さんは、私に怒るでもなく、意外なほど静かだった。

 手を引かれながら私が転送された路地裏から出ると、そこは地獄の様相を呈していた。

 

「な…んですか……これ……」

 

 地面に円形の陥没が大量に有る。ノイズの残滓が空に舞い、ついさっきまでここで戦いが有ったことが窺えた。

 

「……こいつで……押しつぶした」

 

 私の独り言にお兄さんは反応して、道路に放り捨てられてあった巨大な銃を拾って、私に見せてきた。

 

「……押し潰し……」

 

「……そーいう武器なの。今は気にすんな。それより行くぞ」

 

「えっ?」

 

 お兄さんはまた私の手を引いて歩き出した。

 

「……あ、あの……どこへ……」

 

「点数を取りに行く」

 

 端的にそれだけ言うと、お兄さんは私を連れて足早に歩いていった。

 

◇

 

「よし、間に合ったな」

 

 暫く道路を歩いて行くと、ノイズの群れが遠目に確認できた。

 ノイズは何故か動かずジッとしている。

 

「おい新人。こいつ持て」

 

「え? あ、はい……」

 

 お兄さんは持っていた巨大な銃を私に持たせた。

 訳も分からず言う通りにその銃を受け取る。 

 

「お、重っ!?」

 

「……そのままノイズに向けろ」

 

 何これ凄い重い。

 さっき部屋で渡された銃よりもずっと重い。

 こ、これをノイズに向けるの!?

 

「っ、ふっんんんっっ!」

 

 頑張ってノイズに向けようとするも、腕がプルプルして安定しない。

 というかそもそも持ってられな──。

 

「えっ、あ……ありがとうございます……」

 

 なんて思ってたら、お兄さんが巨大な銃を下から支えてくれた。

 

「……いいか? そのままスコープを覗け」

 

「あ、はい……」

 

 また私に指示を出してくる。

 一応言われた通りに、巨大銃に付いているスコープを覗く。

 

「上のトリガーを引いてノイズの上に赤い円が重なるようにしろ」

 

「……か、重なりました」

 

 上のトリガーを引いたら、お兄さんの言う通りに赤い円がノイズに重なった。

 

「よし。上のトリガーと下のトリガーを同時に引け」

 

 言われるがままに従って、巨大銃に付いてある上下のトリガーを同時に引く──。

 

『──!?』

 

「えっ?」

 

 ドンッ、という破壊音と共に地面が円形に陥没し、ノイズが地面と同じように押しつぶされた。

 

「えっ? なっ、なん」

 

「よし……後のノイズは…………いや、今回は……」

 

 お兄さんは手元の機械を見ながらぶつぶつと呟くと、軽く息を吐いた。

 でも私はそれを聞いてる余裕はなかった。

 あのノイズを拘束したYガンよりもずっと破壊に特化した銃。あれ程いたノイズを一瞬で全滅させてしまった暴力が今、私の手の中にあるという事実に慄く。

 

「……おい」

 

「……」

 

「……おいっ」

 

「うぇっ!? あ、す、すみません!」

 

 しまった!? ぼーっとしてしまっていた!

 反射的に謝るも、しかし何故か、お兄さんはバツの悪そうな顔をするだけだった。

 

「……別に、怒ってねーッつの。一々謝んじゃねぇよ鬱陶しい」

 

「ご、ごめんなさい……あ」

 

 し……しまった! 謝るなと言われながら謝ってしまった。

 びくびくしながらお兄さんの顔を窺うと、お兄さんは軽くため息を吐くだけで何も言わなかった。

 

「それ、返せ」

 

「あ、はい……」

 

 呆れた様子のお兄さんに言われて、巨大銃を渡す。

 

「お前……」

 

「……」

 

「……」

 

「? あの、何か……」

 

 銃を受け取ったお兄さんは私に声を掛けた……のかな?

 話しかけてる途中で何故か黙ってしまったので良く分からない。

 

 何かを言おうとしてまたやめて。それを何度か繰り返して、漸くお兄さんは口を開いた。

 

「……別に怒って…ねぇから……今度から…スーツ……忘れんなよ……」

 

「……ぇ?」

 

「…………悪かったよ……怒鳴ったりして……」

 

 小さくそれだけ言って……お兄さんはそっぽを向いてしまった。

 ……もしかして、気を……使ってくれてる? 

 

 ……あ、もしかして……わ、私が泣いてたから?

 

 気まずそうに言いながら、どこかこちらを伺うような姿勢のお兄さんは……確かに、泣いてる子供をあやす親の様で。

 そう思うと一気に恥ずかしくなってきた。

 

「……あ、あの! 私もうっ、気にしてないですからっ!」

 

「……」

 

「私の方こそ、助けて……くれて……」

 

 そこまで言って、ぽろぽろと涙が溢れてきた。

 

「っ!? な、なんだ!」

 

 お兄さんは今までにないくらいに焦った表情をして私に迫る。

 

「あ、ち、違くて……ちょっと安心して……すみません……」

 

 今の今まで生きることを諦めていたというのにこれだ。

 あんなに惨めな思いをしていたというのに……もう帰る場所もないと言うのに、みっともなく生にしがみついている。

 

「……そうか」

 

 とめどなく溢れる涙を止めることは出来なかった。

 お兄さんはどこか気まずそうにしながら、けれど何も言わずに傍にいてくれた。

 

 暫くの間、私とお兄さんの間に静謐な空気が流れる。

 

 けれどその空気は一人の来訪者によって切り裂かれた。

 

「……なに……これ……」

 

「え?」

 

 私たちの背後から、どこか聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「……翼……さん?」

 

 声の出どころを見てみれば、そこには翼さんが呆然とノイズが居た場所を見ていた。

 

「なんでまた…………誰が……これを……」

 

「……あ! あの! これはですね!?」

 

 とっさに言い訳をしなくちゃ、と思ってしどろもどろに話しかけてみるも、何故か翼さんは私達には目もくれず、すたすたとノイズの残骸へと歩みを進めていってしまった。

 

「あ、あのぉ……翼さん?」

 

「……無駄だ。ミッション中は外部の人間に俺達の姿は見えない」

 

「へ?」

 

「ガンツがそーやって隠蔽してんだよ。しかし……意外と遅い到着だったな……」

 

 さっきまでのよそよそしさは何処へやら。お兄さんは調子を取り戻したように翼さんを観察し始めた。

 しかし暫くしたら興味を失ったように翼さんから視線を外した。

 

「ま、風鳴が来たって事は他の所も終わったって事だろ。ガンツ! 転送を始めろ!」

 

 そしてその声に呼応するように、私の頭から電子音が聞こえてきた。

 

「……あのっ!」

 

「あ?」

 

「……聞きたいことが……有るんです」

 

「……ああ。知ってる事なら話してやるよ」

 

 そして徐々に視界が消えていき──。

 

「翼さん! ノイズはどうなりましたか!?」

 

 最後に、どこか聞き覚えのある声が聞こえた。

 

◇

 

「……は? なんで新人がもう一人……」

 

 立花が転送された後、残された青年は巨大銃……Zガンを携えながら呟いた。

 

 視線の先、先ほどまで自身の近くにいた少女に瓜二つの存在を見て、思わずZガンを構える。

 

「……なんだ………漫画……アニメ? ……のコスプレ…か……」

 

 しかも何か妙な格好をしている。

 全体的に肌が出ているというか……何というか……。

 

「……風鳴翼……の……あの変なカッコの奴……か……」

 

 しかし青年にはどこか覚えがあった。風鳴翼が、何時もノイズと戦う時も同じ……際どい変な格好をしていた。

 それと同じか?

 少なくともその格好で街中をうろついてたら後ろ指を差されるような格好だ。

 

「……星人? 星人か?」

 

 何であれあの新人と寸分違わない顔で妙な格好をしているというのは怪しい事この上ない。

 

 自身の格好を棚に上げつつ、Zガンのトリガーに指を掛ける。

 そして手元のコンソールをいじり、マップを表示させる。

 しかし。

 

「……いや、信号は……出てないか……」

 

 ホルスターに差し込んである小さい銃を取り出し、今度はそれをもう一人の立花へと向ける。

 小さい銃に付けられたモニターには、まるでレントゲンを撮った時のように立花の骨だけが表示されていた。

 

「……!? んだこれ……」

 

 小さい銃を構えていた青年は、立花の胸……心臓の辺りを巣食うように広がる謎の影を見て疑心が強まる。

 

「……なんだ……やっぱ……擬態するタイプか……?」

 

 答えは出ないままガンツの転送が始まってしまう。

 いつ襲い掛かられても良いように銃を構えつつ……何も起こることはなく視界が完全に切り替わった。

 

「……」

 

 部屋に戻った青年は険しい表情のまま、“こちら”の立花に語り掛ける。

 

「……あ、あの……何か…あったんですか?」

 

「……お前……双子の姉妹とか……居るか……?」

 

「えっ?」

 

 いきなり妙な事を聞かれた立花は一瞬、質問の意図を掴めないでいた。

 しかし転送の直前に聞こえてきた声を思い出し、質問の意味に気が付く。

 

「……もし…かして……会った……んですか…『私』……もう一人の私に……」

 

「……姉妹とかじゃ、無いんだな」

 

 青年は神妙な表情のまま呟くと、軽く息を吐いて眉間を揉んだ。

 

「……ガンツ。採点始めてくれ」

 

「……あ、あの……」

 

「……採点が終わったら……話す」

 

 眉間に皺を寄せ、苦々しい表情で青年はそう言った。

 

「……ガンツ……早くしろ……」

 

『それぢわ ちいてんをはじぬる』

 

「……」

 

ひーろー

31てん

つぁんでれおつ(笑)

total 121てん

百点めにゅ~からえらんでください

 

「あ、百点……」

 

 百点。

 青年の言う所によると、この部屋から解放される点数だ。

 自然顔が青くなる立花だったが、青年は迷いなくガンツに告げた。

 

「二番だ。すぐに用意しろ」

 

「……二番?」

 

 え? という顔で青年を見ていた立花だったが、彼が足元から消えていくのに更に驚いた表情を浮かべた。

 

「お、お兄さん!?」

 

「気にすんな。すぐ終わる」

 

 彼の言葉通り一度足元から消えていった青年はまたすぐに出てきた。

 

「あっ……」

 

「……よし。ガンツ、採点続けろ」

 

 異様な光景に眉一つ変えることなく、青年はガンツに命令する。

 

ビッキー(笑)

13てん

total 15てん

 

「13点……」

 

 ガンツの採点……前回立花が獲得したものよりもずっと多い点数だ。

 あの押しつぶす銃で倒したノイズの分だろう。

 

「ま、こんなもんか」

 

 青年の方はというと、特に意外な表情を浮かべるでもなく。予想通りといった感じだった。

 

「……さ、て……」

 

 そしてガンツに向けていた目を立花に向けて、ジッと見つめてくる。

 

「一応聞くが……さっき言ってた聞きたい事ってのは──」

 

「……はい。もう一人の……『私』について……」

 

「もう一人の……私……ね……」

 

 ふん、と息を吐いた青年は立花に小さい銃を向けた。

 

「え、ちょっ、何を!?」

 

「ふ、む……?」

 

 何を!? と思った立花だったが、青年もどこかびっくりしたような表情を浮かべて、すぐに銃を取り下げて何か考え事をし始めた。

 かと思えばまた顔を上げ、立花に話しかけてくる。

 

「お前……心臓に何か……あるのか?」

 

「え? あ、はい。二年前に事故で……」

 

 二年前に事故……青年はまた眉を揉み、小さく呟く。

 

「…………じゃあ擬態って線はない……か?」

 

「えっ? 擬態?」

 

「擬態するタイプの星人……の可能性が低いってんなら後は……」

 

 どこか不穏な言葉に戦々恐々とする立花だったが、構わずに考えを続け。

 

「……あっ」

 

 そして暫く考えこんでいた青年は、漸く何か一つの答えに辿り着いた様に顔を上げる。

 

「…………いや…まさか……起こりうるのか……本当に……」

 

「あ、あの……?」

 

 口元を押さえながらしきりにぶつぶつと呟いたかと思うと──。

 

「……クソがッ」

 

 ガンツを思いっきり叩いた。

 

「ひっ!?」

 

「そういう事か…………舐めた真似しやがって……クソッ!」

 

 いきなり怒り出した青年は、しかし怯える立花を見てハッとする。

 

「……チッ……これも……俺が言うのか……あぁ……くそ……」

 

 青年は片手を額に押し当てながら、心底嫌そうな顔で唸る。

 

「……お前……生きたいか?」

 

「……え?」

 

「自殺願望とか……無いよな」

 

「えっと……どういう」

 

「重要な事だ。答えろ」

 

 何が何なのか良く分からない立花だったが……しかし、青年がふざけている様には見えなかった。

 

「言ってる事……全然わかりません」

 

「……」

 

「でも……私は……」

 

 立花の脳裏によぎるのは……自身の事を命を賭して助けてくれた恩人の言葉。

 

 『生きるのを諦めるな』

 

 ノイズに抗おうともせずに自分の命を諦めて。でも死ぬ寸前になって、彼女の言葉が脳裏によぎって……漸く気付けたことが有る。

 

「私……生きたいです……自分が……どういう存在でも」

 

 死にたくない。生きていたい。

 どれだけ惨めでも情けなくても貶されても。

 

「私は生きて……生きて生きて、足掻いて、それでも死んでしまうその時まで……生き延びたい……です」

 

 それが立花響の出した一つの答えであった。

 

「それが……お前の答えか」

 

 青年も、今までのどこか嫌そうな表情は鳴りを潜め……覚悟を決めた表情を浮かべていた。

 

「前に、ガンツが事故で死んだ人間を生き返らせている、と言ったな」

 

「……はい」

 

「実際の所、それは正しくはない」

 

「え……」

 

「正しくは……死んだ人間(オリジナル)を、ガンツがコ(・)ピ(・)ー(・)し(・)て(・)ここに再生している」

 

 コピー。

 自身の仮説を裏付けるかのような言葉に、立花は嫌な汗が滴る。

 

「言うなれば俺達は……FAXで送られてきた書類のよーなもんだ」

 

「……FAX……」

 

「それで……ガンツは相当いい加減な性格でな。こいつは……」

 

 青年はガンツに手を突きながら、一瞬言葉を詰まらせるも、そのまま続けた。

 

「前……ずっと前にこの部屋に来たそいつは、オリジナルになった奴が死んでいなくて……」

 

「……同じ人が二人になった……って事ですか?」

 

「……そうだ」

 

 それはどこか確信していた答えであったが、残酷な真実でもある。

 自身が思い描いていた最悪の予測が完璧に当たっていたという事だ。

 

「そっ…か……」

 

「……」

 

「私……偽物……なんっ……だ……」

 

 分かっていた事でも、明言されると中々に来るものがあった。

 立花の目には自然と涙が溢れてくる。

 

 ただ純然とした事実を目の前に突きつけられた喪失感だけが……立花の中に有った。

 

「お前……」

 

 そんな喪失感に苛まれていた立花の頭に……青年はチョップを繰り出す。

 

「え? ──い、痛ぅっ!?」

 

 何で!? いきなりの攻撃にビビった立花だったが、しかし青年はチョップを止めない。

 

「いたっ、いたいっ!? あ、あのっ」

 

「お前俺を馬鹿にしてんのか?」

 

「え?」

 

「お前が偽物って事は同じコピーの俺も偽物って事になるだろーが」

 

「あっ……」

 

 た、確かに……。

 

 青年に指摘されてハッとなった立花は、同時に肝が冷えた。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 しどろもどろになる立花を見て、青年は漸く手を止めて……言葉を続ける。

 

「命は命だ」

 

「え?」

 

「偽物だとか……本物がどーとか……関係ない……今、生きて……ここにいる……」

 

「……」

 

「もしも……もう一人お前が居たとして……どっちも変わらない……同じ……命だ」

 

◇

 

 びっくりした。まさかお兄さんにそんな事を言われるとは思わなかったから。

 でも……。

 

「……ありがとう……ございます」

 

 そうだ。私は……生きている。

 偽物とか、本物とか……関係ない。

 

 私は生きて、ここにいる。

 

「はっ。分かッたんなら、もう二度とそんな下らない事言うなよ」

 

 そう言ってぶっきらぼうに語るお兄さんの表情は、まるで本当のお兄ちゃんの様な表情で。どこか暖かさすら感じられた。

 

 服を脱がしたりしてきたけど。

 会うたびに口は悪いし酷いこと言ったりするけど。

 ……でも。

 

「……」

 

 よくよく思い返してみれば……お兄さんは……ずっと私の事を……。

 

「じゃ、俺は帰るわ」

 

「……え?」

 

 ん? あれ……。

 暖かい気持ちに水を差すようにお兄さんは撤収しようとしている。

 

 お兄さんは前みたいにガンツの中に腕を突っ込んで、何かぐりぐりと操作しだした。

 

「あ、あのっ!?」

 

「話はもう終わっただろ。それとも……まだなんか聞きたい事があんのか?」

 

 ガンツに腕を突っ込みながら、お兄さんは面倒くさそうな顔でこちらを見てくる。

 

「えっ……と……」

 

 いや、その……聞きたい事……というか……何というか……。

 

「私……どうすればいいんですか?」

 

「……どう、とは」

 

「だって私……もう一人いますし……そのぉ……帰る場所……とか……」

 

「……」

 

 ……そこまで言うと、お兄さんはぴたりと固まってしまった。

 

 ……え? もしかして……お兄さん、本気で気にしてなかった……?

 

「……前の人って、どうしてたんですか?」

 

「……この部屋を使ってたらしいな」

 

 この部屋……。

 殺風景な部屋でガンツが邪魔だけど、確かに暮らせそうではある……。

 水道とか通ってるのかな。

 

「だが正直……ここで暮らすのは……あまり……」

 

「え? ど、どういう事ですか」

 

「俺も前に、ここで暮らした事あるんだが……まぁ不便でな」

 

 え? お兄さんも使った事あるのこの部屋。

 

「一度部屋を完全に出ちまうと締め出されるし……コンビニ遠いし……」

 

 予想外の使用感レビューは意外と所帯じみたもの──。

 

「何より襲撃が有る可能性も有る」

 

「え? 襲撃?」

 

 なんて思ってたら途端に物騒になった。

 

「前に住んでた時……オフだってのに……星人に襲撃受けて……まあ皆殺しにしたが……ありゃ点数がもったいなかった」

 

「……」

 

 皆殺し……って。

 

「あの時の星人どもは巣ごと潰したはずだが……生き残りが居る可能性も有る。そういった意味でもここは過ごすのに適さないな」

 

「……そう……ですか」

 

「……しかし……そうか…暮らす場所……」

 

 お兄さんは思いもしなかったと言わんばかりに考え始めた。

 

「……あの」

 

「あ?」

 

「お、襲われる可能性とか……有るんですか……」

 

「まぁ……そうだな。最近ノイズとか妙に多いし……組織立って行動する星人もいたりする……」

 

「あの、その『せいじん』って何ですか……」

 

 さっきからお兄さんがちょくちょく言っている言葉だけど、何なのだろうか。

 そんな襲われることのある存在なの。

 

「……そういや、お前はまだ見た事ないのか」

 

「……」

 

「星人ってのは……本来ガンツがミッションの標的としている相手の事だ。一言でいえば化け物だな」

 

「……そ、その星人が襲ってくる……?」

 

「知能が高い奴とかは、まぁそれなりに」

 

 それなりに……。

 ノイズを雑魚と言い切れるほど強いお兄さんが……化け物と呼ぶ『せいじん』。

 そんなのが、それなりに襲ってくるの?

 なんでお兄さんはそんな平気そうにしてるの? 考え方が紛争地帯だよ。

 

「……」

 

 だんだん自分が生き抜くことに不安を覚えてくる。

 このままでは……普通に生活することすら……。

 

「あ」

 

 しかし一つの答えを思いついた。

 ……けど、これは……いや、結局動かなきゃ『せいじん』に殺されちゃうかもしれないし。

 

 ……よし。

 

「……あの」

 

「なんだ?」

 

 私は意を決して、お兄さんに頭を下げる。

 

「私を……お兄さんの家に住まわせてください!」

 

「………………………は?」

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