GANTZ:S   作:かいな

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参戦

 サンジェルマン。

 彼女の人生を語る上で……『支配』という言葉は欠かせないだろう。

 

 そう。

 彼女の人生とは正に『支配』の連続だった。

 奴隷の母の元に生まれた彼女は……いわれなき数々の暴力と辱めを受けてきた。

 

 今日の食事すら満足に用意できないような生活は、当時の彼女には普通のことであった。

 

 何時からだろう。

 『支配』を打ち破ろうと思ったのは。

 何時からだろう。

 その様な世界が異常であると思い始めたのは。

 

 少なくとも、彼女にとって大きな転換点となったのは……彼女の母の死である事に違いは無い。

 

 そんな彼女が、死に物狂いで抗い続けた数千年の時の果て。

 

 彼女は遂に、人類を支配する『呪い』を打破する手段を手に入れようとしていた。

 

 ──しかし。

 

 その最終段階に置いて……彼女は立花響の言葉に揺らいでいた。

 

 それは、神の力をアン・ティキ・ティラへと注ぎ込む際に行われた戦い。

 

 立花響と暁切歌の両名との戦いの中……彼女は圧倒され、また諭された。

 

 神の作り出した『支配』に対抗するために必要なのが……本当に『神の力』なのか?

 人は人のまま……変わらなければならない、と。

 

 それは酷く、彼女の心を揺らがせた。

 

 何故なら。

 彼女がこれまで戦い続けて来られた力こそ。

 人の持つ……不撓不屈の思いだったのだから。

 

 だからこそ。

 

「──教えてください統制局長! 本当に……本当に『神の力』でッ! 人類は支配の軛から解き放たれるのですかッ!?」

 

 彼女は今、目の前で行われている儀式の意味を──問わなければいけなかった。

 

 アダム・ヴァイスハウプト。

 未だ彼の描く絵図が見えてこない。

 本当に……本当に支配の軛から人類を解放するだけなのか?

 何か……何か他の目的が──。

 

「出来る……んじゃ無いかな。ただ……僕にはそうする気が無いのさ……最初からね」

 

 そして。

 案の定、彼はサンジェルマンが数千年望み続けた理想を……あっさりと否定した。

 

「ッ!? 謀ったのか……? 革命の礎となった……全ての命をッ!」

 

「……用済みだな、君も」

 

 アダムは面倒くさそうにそう言って、背後に浮かぶ機械仕掛けの少女に合図を投げかける。

 

 『神の力』を解放せよ、と。

 

 直後、圧倒的な力がサンジェルマン達へと放たれる。

 

「っ……」

 

 瞬間、暁切歌は大量のLiNKERを用い、絶唱を行おうとするも──。

 

「──え?」

 

 その直前。

 紫電が舞い……何かが目の前に立ちはだかるのが見えて、思わず手を止めた。

 

 

 何これ。どういう状況?

 アダムが浮いてる……のは良いとして……。

 立花……さんのコスプレもまぁ……良いとしてさ。

 

 何でキリカがあの変な格好してんの?

 え? S.O.N.G.ってそう言う組織なの?

 

 それに誰だよあのコスプレお姉さん。

 

 どういう状況だよ。

 

 あの光の柱の女の子は何だよ。

 

「……」

 

 幾多もの疑問が脳裏を過ったが……しかしあーだこーだ言ってられる状況でもなさそうだ。

 あの女の子の見た目した星人の攻撃。どう考えてもヤバい感じがビンビンする。

 

 ああ、全く。

 ()()()()()()()()()()()()()()()ってもんだ。

 

 ここには、転送の際に可能な限りの武装を置いてある。

 それは勿論、ハードスーツからロボットまで。

 

 即座にハードスーツを着込み、ステルスで隠しておいたロボットを駆使し──ギリギリでキリカ達の前に割り込めた。

 ──直後。

 

「!? なんだこの火力!」

 

 ロボットの状態が一気に危険領域にまで追い込まれ、爆音が辺りから鳴り響く。

 このっ火力……!

 

 アイツ……百点か!?

 

「くっ……!」

 

 即座にロボットを脱出し、飛行ユニットで宙を駆る。

 

「ッ!? 何だ!? あのデカ物は……!」

 

 ステルスすら維持できなくなったガンツロボが急に現れて動揺したのか、無駄に良い声でアダムは周囲を探っている。

 

「……」

 

 まさか一発でロボがやられるとは思わなかったが……まあ良い。

 Zガンを構え、アダムを狙撃する。

 

「避けてぇ! アダムゥ!!」

 

 ──しかし。

 

「!?」

 

「チッ」

 

 百点の奴がステルスを普通に貫通して来やがった。

 舌打ちを打ちつつ即座に引き金を引き、Zガンを連発する。

 

「ぬぅぅっ!?」

 

「……」

 

 だが……あまり効果は無い。

 何やら紋章のようなモノがアダムの頭上に浮かび上がり……Zガンによる攻撃を全て弾いた。

 

 クソ。やっぱ上位の星人ってのは大概クソ防御力ばっか──。

 

「ティキ!」

 

「!?」

 

 しかも、即座に俺を視認できる百点の奴に指示を出したかと思うと──俺に向かって砲撃を抜き放った。

 コイツ……防御力だけじゃ無く頭も良い……!

 

「ぐうっ──」

 

 ギリギリで回避するも……その光線の余波が擦るだけで飛行ユニットが溶け始めた。

 

 即座に飛行ユニットから飛び降り──地上へと着地する。

 

 ──幸か不幸か……三人のコスプレイヤーのすぐ傍へと。

 

「っ」

 

「デデデ!?」

 

「な、何……!?」

 

「……」

 

 砂塵を舞い上げながらも地面に着地し……すぐに構える。

 何故なら。

 

「……何者だ……君は」

 

「……」

 

 ──既に、臨戦態勢のアダムが目の前に降り立っていたから。

 クソ……まさか余波だけでステルス剥がされるとはな。

 

「……てめぇがアダム……アダム……ヴァイ……」

 

「……馬鹿にしているのかい? 僕を……アダム・ヴァイスハウプトをッ!」

 

 ふむ……言葉が通じるって事はやっぱ知能も相当高いな。

 

 それにあの百点の奴……俺が戦ってきた相手の中でも1番の火力持ちだ。

 

「……ふん。もう一度問う……何者だ……君は……」

 

「……」

 

「無いか……答える気は」

 

 黙りこくって此奴らの攻略法を考えていた俺の前に、アダムが躍り出る。

 

「──ならば!」

 

 恐ろしい速度だ。

 一体どういう運動神経してるんだと、人類のプロトタイプさんにツッコミを入れたくなる。

 

 ──しかし。

 

「排除させて貰おう……不確定要素はッ!」

 

 確かに頭も良いし防御力もすさまじい……だが残念ながら攻撃は杜撰も良い所。

 その動きはまるで素人同然。

 

 故に……見切れる。 

 軽いスウェーでアダムの杜撰な突きを避けつつ──俺は何時になく戦いを楽しんでいることを理解した。

 

 そうだ。

 楽しい。

 

 死んだように戦うのでは無く……生きるために戦うことが。

 

 響と共に……東京の夜を駆け巡った記憶が! あの時の……人生で最も楽しかった日々が、蘇ってくる。

 

 だからこそ……使わせて貰おう。

 

「はああああ……!」

 

 ハードスーツの持つ、最大の強みを利用した……()()()()()()()

 

 つまり、極端にデカい両腕を利用した──。

 

「……しゃあっ! ハードスーツ・キック!」

 

 訳でもない普通の蹴りッ!

 

「ガッ!?」

 

 その蹴りは間違いなく油断していたアダムの横隔膜に突き刺さり……蹴り飛ばした。

 

 だが……。

 

「き、貴様ァ!」

 

 普通にピンピンしてやがる。血反吐すら吐いていない。

 ふん……響に『いや、腕使わないんかい!』とツッコミを入れられた技だが……これでなかなか破壊力はある筈だ。

 

 何せ完全なる不意打ちで重要器官が詰まっているであろう胴体をぶっ飛ばすのだから。

 星人とて生き物。ならば弱点も生き物と似通ってくる……筈なのだ。

 

「……」

 

 なのに……コイツ本当に生き物か……?

 外皮がある……って訳でもなさそうだし……骨らしきものは避けて蹴った筈だ。

 その割に蹴った感触も何か妙だったし……何か変──。

 

「いや、腕使わないんかい!」

 

「え?」

 

「あ、つい突っ込みが……って、違います! あの、貴方は──」

 

 と。

 思いもしない言葉が背後から投げかけられる。

 

 それは……黄色の鎧を纏った……立花さんだった。

 

 瞬間、隙が生まれた。

 

「っおおおおお」

 

 そして当然のように、その隙を狙ってアダムが突貫してきた。

 

「チッ」

 

 即座にハードスーツの腕部分から光線を放ち、突っ込んできたアダムを迎え撃つ。

 パアッ、パアッ、という独特な発射音と破壊音は断続的に鳴り響き──しかし、土煙が払われる。

 

 ──それは、先ほども放たれた致死の光線。

 

「っ、避けろ──!」

 

 即座にその場を回避するも……爆風に煽られ吹き飛ばされる。

 

 何度かバウンドしつつも姿を隠すように森の中に逃げ込み、座り込む。

 

「チィッ! めんどくせぇ……!」

 

 あのアダム……普通に堅い上に素の能力が高い。とは言え特別無敵というわけでも無い。

 普通に削っていけば順当に倒せる相手……そんな印象だ。

 

 問題なのはあの後ろの推定"百の奴"の火力だ。

 ロボすら跡形も無く吹き飛ばすのは流石に見たことが無い。

 連発できるモノではなさそうだが、アイツが後ろを押えている限り安心は出来ない。

 

 故に……倒すべき順序は見えた。

 

 だから、今問題なのは──。

 

「貴様……何者だ」

 

「ちょ、サンジェルマンさん!?」

 

「……」

 

 三人のコスプレイヤーに……俺の姿が見られている、と言うことだ。

 しかも、そのうちの……1番よく分からないお姉さんに銃を突きつけられている。

 

 誰なんだよこの人は。

 サンジェルマンって誰だよ。

 

 つか頭の爆弾はどうなってる。

 

 数多の疑問は湧きつつも、ハードスーツ(頭)に備えられた機能を起動する。

 

『……なぁ。俺の姿……見えてるのか?』

 

「……何を言っている?」

 

『……マジで見えてるし聞こえてンのか……』

 

 溜め息を吐きつつ、コントローラーを取り出す。

 

 その内容に若干安堵する。

 彼女達が標的というわけでもなさそうだ。

 

 ……ただ、そうなると分からない。

 頭の爆弾はどうした? 何故作動しない。

 

『……』

 

 いや、今は……そんなことよりも……。

 

『おい、その銃どかしてくれ』

 

「……説明する気は無いのか?」

 

 チャキッと、わざとらしく音を鳴らしながらお姉さんがこちらに銃を突きつけてくる。

 どうしろってんだよ。

 

 溜め息を吐きつつ、手元のコントローラーに目を落とす。

 

『無い。つか……ここは危ないから、さっさとどっかに隠れててくれ』

 

「……」

 

 しかし、お姉さんは全く銃を退かそうともせず……依然警戒した様子でこちらを睨め付けてくる。

 

 チラリと、ハードスーツの奥で視線を動かしてキリカと立花さんを見る。

 

『……』

 

 いっそのこと……顔を見せて色々とバラすか……?

 

 ……いや、ソレは出来る限りしたくない。

 キリカに……戦っている俺を見せたくない。

 

 ……どうすれば。

 

「……あ、あの!」

 

 と。

 この気まずい空気の中……立花……さんがこちらに話しかけてきた。

 

「……一つだけ、教えてください」

 

『……』

 

「お兄さんは……私達の、敵……ですか?」

 

『……敵、ね』

 

 そう言われるとどうにも判別に困る。

 何せ大手を振って味方ですと言える様な関係では無いのだから。

 

 だから、確かに言えるのはこれだけだ。

 

『……今の俺の敵は……あのアダム・ヴァイス……ヴァイス……』

 

「……アダム・ヴァイスハウプトだ」

 

『……まぁ俺の敵は今のところ……ソイツだけだ』

 

 お姉さんに訂正を受けながらもそう返すと、立花さんは少し嬉しそうに笑った。

 

「なら、私達協力できます!」

 

『え?』

 

 そして、何故か急に理論が飛躍する。

 何でそうなるの? 早く逃げてくれない?

 

「……立花響! それは……」

 

 お姉さんは至極嫌そうに立花さんに言葉を投げかけるが、しかし立花さんは気にした様子も無く、こちらに手を伸ばした。

 

「狙う相手が同じなら……きっと協力できます」

 

『……いや……逃げてくれない?』

 

「私、これでも結構戦えますから! 一緒に戦いませんか?」

 

『……』

 

 俺の言葉を真っ向から切り伏せて、立花さんはこちらに伸ばした手を引っ込めることは無かった。

 

『……はぁ』

 

 ……もう、逃げて欲しいんだけど……とは、言え無かった。

 何せ()()がこうなったら頑固だって事を……俺も良く知っているから。

 

『分かった。良いだろう』

 

「……! ありがとうござ──」

 

『だが勘違いするなよ。アダムはあくまでも俺の標的なんだからな』

 

「あ、はい……」

 

 ともかく、なんやかんやで話は纏まった。

 さっさとアダムを倒してミッションを終わらそう。

 

 さっと立ち上がり……コントローラーを仕舞──。

 

「おい、そこのお前! ちょっと待つデス!」

 

『……』

 

「む、無視するなデス!」

 

 おうとした時。

 

 横から……変な格好をした妹がこちらに話しかけてきた。

 

『……』

 

 ああ……遂に来てしまった。

 小さく天を仰ぎ……何故この瞬間に一般人から隠すためのステルスが解けたのかを呪う。

 

 クソ……可能な限りこの状況で関わりたくなかったから意図的に無視してたのに……。

 

 ……なのに。何故かキリカのその目には……大分疑心が宿っていて……何処か殺意すら感じる。

 

「お前……お前、さっきの連中のお仲間デスか?」

 

『……』

 

「答えるデス!」

 

 やはりというか何というか……キリカは俺の格好を見て、俺を『管理者』の仲間だと思っているようだ。

 

『さぁ……誰の仲間だって?』

 

「ッ! だからッ、『管理人』とか言う奴等の仲間かって聞いてるんデス!」

 

「ちょ、切歌ちゃん!?」

 

「答えろォッ!」

 

 はぐらかすように言ってみれば、面白いくらいキレられた。

 

『……』

 

 それに酷く哀しい気分になる。

 何せ客観的に見たら凄い状態だ。

 

 本気でキレた妹はコスプレ。

 キレられてる俺もまたコスプレ。

 

 俺は何故コスプレをした妹に全身ハードスーツ状態でキレられてるんだ……?

 

 ……と言うかキリカがこんなにキレてる所を初めて見た。

 

「『ひーろー』を……お兄ちゃんを返すデスッ!」

 

『……』

 

 これどーすれば良いんだよ。

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