GANTZ:S   作:かいな

49 / 103
神の誕生

『……』

 

 黙りこくりながら、考える。

 ──そして、一つの結論にたどり着いた。

 

『あーん? 『ひーろー』って誰だよ』

 

「っ……惚ける気デスかッ!」

 

『はっ……『管理人』だかなんだか知らんが……今はそんなこと言っている場合じゃねぇ』

 

 惚け続けることに決めた。

 もうキリカに疑われても良いからさっさとミッションを終わらせる。

 

 ……というか、これ以上星人達に時間を与えたくねぇ。

 

「……ああ。『神の力』の完成も近づいている……早く手を打たなければ」

 

 お姉さんも俺と同意見なのか……木の陰からアダム達の方を睨み付け、既に臨戦態勢に移っていた。

 それも何処か焦った様子で機をうかがっている。

 

『……『神の力』……ね』

 

 また新しい言葉が出て来たんだが。

 ……まぁ言葉の意味的に、なんとなく察しは付く。

 

 どうせ時間経過でクソ強い不死身になるんだろ。

 

『……どんくらいでそれは完成するんだ?』

 

「……およそ……五分ほど」

 

 お姉さんが言い辛そうに語った時間は、確かに短い。

 五分。長いようで短い猶予だ。

 

 ……なら。

 

『……もう話し合いは良いだろ。俺は出る』

 

「え? ちょっ──」

 

『あんたらが出るまでも無く……そっこーでカタをつけてやるよ』

 

 なら、俺の予定は変わらねぇ。

 

 先に狩るのは……あの百点の奴だッ。

 

 俺は一人森から抜け出し……光の柱へと駆け抜ける。

 背後から立花さんの止めるような声が聞こえてくるが、ソレはガン無視する。

 

 第一協力だ何だって言ってたが……そもそも練習もなしに良い連携が取れるわけも無い。

 なら互いに邪魔しないように戦うのが一番ってもんだろッ!

 

「ッ!? 現れたか……とうとう!」

 

『──』

 

 全力で駆ける。

 やはりというか……アダムは百点の奴を守るように立ちはだかった。

 

「はあっ!」

 

 幾つもの紋章が空に浮かび……先ほどのお返しと言わんばかりに天変地異が巻き起こる。

 

『チッ──』

 

 掌を前に構え、パアッパアッという独特な発射音とその熱量を一点に集中させる。

 そして開いた空隙に身を滑り込ませ、そのまま突破する。

 

「ッ! させはしない……好きにッ!」

 

 ──天変地異を突破した先。

 アダムが帽子を武器のように構えて肉弾戦を仕掛けてきた。

 

「人形の見る夢にこそッ、『神の力』がッ!」

 

『……』

 

 ソレはまるで子供が暴れているような稚拙な攻撃。

 しかしその身体能力はどう見ても異常である。

 

「分かるまい君たちには……僕の苦悩が……神への怒りがッ」

 

 アダムの全身が淡く光り、何故か節々から煙が吹き出している。

 何か異常な力がアダムの身体に作用していることは明白である。

 

 しかし。

 

『あー何言ってんのか分かんねーよッ』

 

「ぐぅっ!?」

 

 大ぶりの攻撃を最小の動きで躱し、ババンッと踵でアダムの足を踏みつける。

 

 そして足を踏み砕いた状態で……渾身の右ストレートを顔面にぶち込むッ。

 

「ぶっ──!?」

 

 アダムの身体が吹き飛び、地面を転がる。

 そして間髪入れずに光線を抜き放つ。

 

「がああっ!!?」

 

 ──普通の星人ならこれで致命傷……いや倒せている……筈だ。

 

 だが。

 

「ぐっ……ぅ……」

 

 アダムは全身埃だらけの傷だらけ。

 動けそうには無いが……それでも、まだ生きている。

 

 どういう事だ。

 流石にタフすぎる。

 

『……チッ』

 

 舌打ちを打ちつつも……アダムの強さについて上方修正していく。

 

 思っていたよりも行動不能にするのに時間を要してしまった。

 

『…………そうかよ。ならお前の相手は……後でしてやる』

 

「……ぐうっ……何を……!」

 

 そうしてハードスーツを繰り、全力駆動で……()()()

 

『おおおおッ!』

 

 当初の予定通り……動けねぇアダムは放置で、破壊力があるあっちの百の奴から狩るッ!

 空を駆け、百点の奴へとハードスーツの拳を構え──

 

「っ、やめろおおおおおおおッ!」

 

『!? 何ッ──』

 

 るよりも早く。

 傷だらけのアダムが紋章から現れる。

 

 転送!?

 いや、これは転送よりもずっと速い。

 まだこんなの隠し持ってやがったのか!?

 

 異常なしぶとさと隠し球で俺の前に立ちはだかったアダムが……またもや魔方陣を描く。

 

 ──直後風が起こり、鎌鼬のように俺に襲いかかる。

 

『ぐっ……』

 

 ハードスーツ故ダメージは無い。

 しかし、その風に押し戻される。

 

 クソッ、邪魔すんなッ!

 

「っ……僕だけだ……触れて良いのはッ! ティキのあちこちにッ!」

 

『っ、おおおおッ』

 

 即座にハードスーツの腕部分を起動する。

 肘の部分に組み込まれているジェットが起動し……無理矢理にその勢いを増す。

 

 そして。

 

「ガッ!?」

 

 すれ違い様にアダムの身体を切りつけ、そのままの勢いで百点の奴を──。

 

『……アダムを……傷つけるなァァッ!!』

 

『なっ──』

 

 

「……凄い……」

 

 一人駆け出したヒイロの後方で……立花響は呟いた。

 それは……手を貸すまでも無くあのアダムを圧倒している実力に感嘆しているから。

 

「ああ……だが……ッ」

 

 しかし。サンジェルマンは苦渋の表情を浮かべ……光の柱へと目を向けた。

 

「え……?」

 

「……何故……? まだ猶予はあったはずッ……なのに……なのにもう……ッ!」

 

 ──そこに……行き場を失った『神々の力』が流れ込んでいく。

 それは、計画を立てたサンジェルマンの予測よりも遙かに多い……莫大な力だった。

 

 これはサンジェルマンや立花響達には与り知らぬ事だが……現在、新宿御苑にて一つの戦いが終わった。

 

 日本において最上位の神々が……死んだ。

 

 彼等は皆、その力を天のレイラインより得ていた。

 そのレイラインの占有量は現在アン・ティキ・ティラに使われているモノのおよそ1()0()0()()

 

 つまり。

 

『あ……ああっ…アダム……アダッ……』

 

 ()()()1()0()0()()()()()で『神の力』が注ぎ込まれたアン・ティキ・ティラは、既に臨界点を迎えようとしていた。

 

 アン・ティキ・ティラを覆っていた光の柱は姿を消し……代わりに彼女を纏うように巨大な鎧が出現した。

 

 そう。

 天のレイラインは完全に開かれた。

 

 ──新たなる神の誕生である。

 

『……アダムを……傷つけるなァァッ!!』

 

『なっ──』

 

 『神』と化したアン・ティキ・ティラの咆哮は、彼女を中心に衝撃波と広がり……山を削る。

 

『ぶっ──?!』

 

 当然それに巻き込まれたヒイロは全身にその衝撃を受け、吹き飛ばされる。

 即座に受け身を取って地面を転がるも──そこを狙うように致死の光線が放たれる。

 

『おいおいまだ時間は──!』

 

 ハードスーツを繰りながらどうにかソレを避けるが……先ほどまでと違い即座に連射が来る。

 爆撃の連打に、その余波だけでハードスーツがひしゃげていく。

 

 ──そして。

 

『──』

 

 バシュンッという音と共に何かが破裂して──人間と神との戦いが……終わった。

 

「……お兄……さん……?」

 

「くっ……何てデタラメな……!」

 

「……」

 

 あまりにもあっけない乱入者の最後に、装者と錬金術師達は唇を噛む。

 

「……なん……と……」

 

 そして彼女達と同じように、自分を圧倒した男の末路を腰を抜かして見ていたアダム・ヴァイスハウプトは……驚嘆の声を漏らす。

 

「…………素晴らしい……これが……これが完成された……『神の力』──」

 

 ヒイロに右腕を切り落とされたことなど……最早彼にとっては些事でしか無い。

 全ての事象は『神の力』完成の前にはちっぽけなことでしか無い。

 

 彼は落とされた腕を持ちながら、ふわりと浮いてアン・ティキ・ティラのすぐ横へとたどり着く。

 

『ア……アダム……アダムゥ……』

 

「ティキ……よくやった。……とは言え……持ち帰るだけのつもりだったんだけどね、今回は」

 

『ご、ごめんね……つい……』

 

「良いとも……僕としても下ったよ……溜飲は。だから許そう、ティキ。君をね」

 

『う、うぅ……』

 

 そしてアダムは……地上にて天を仰ぐサンジェルマン達を睨み付けた。

 

「ついでだ。知らしめようか、折角だから……君の力を──」

 

 そして。

 アン・ティキ・ティラの頭上。

 

 そこに……何かが展開された。

 

「ディバインウェポンの……力をッ!」

 

 ──それは、兵器と完成したアン・ティキ・ティラの力の一つ。

 並行世界のひとつを生贄と焼却し、得られたエネルギーを嵐と撃ち放つデタラメな砲撃。

 それを……辺り一面にばらまいた。

 

「!? 避けろっ、立花響──ッ」

 

「がっ……!?」

 

 その余波は地上に居た彼女達を満遍なく圧迫し、地面に叩きつける。

 

『ア、アダム……これ、これで……良いの……?』

 

「くっ、はははッ! 勿論だよ……ティキ……」

 

 ディバインウェポンの破壊力。

 その様を見て、思わずアダムは高らかに笑った。

 

「凄まじい……! これならば……忌々しいアヌンナキを……復活の前に吹き飛ばせるッ! ははっ、はははははッ!」

 

 ──そうして一頻り笑った彼は……地面に倒れ伏した装者と錬金術師達に、とても楽しそうに語りかけた。

 

「サンジェルマン。君は言い続けたね、何度も僕を。人でなしと」

 

「っく……」

 

「そうとも。人でなしさ……僕は。()()()()()()()()()()()

 

「っ……アダム・ヴァイスハウプト……貴様は一体!」

 

 勝ちを確信したアダムは……煽るように地上に舞い降りた。

 

「僕は作られた。彼等の代行者として」

 

「……彼、等?」

 

「だけど廃棄されたのさ……完全すぎるという理不尽極まる理由を付けられて」

 

 彼は、ヒイロにつけられた右腕の傷を見せつけながら……何処までも独りよがりに語り出す。

 ……その傷跡からは、()()()()()()()()()()()()が覘いていた。

 

 人でなしという言葉。

 そして、機械の身体。

 それが何処までも……彼というモノを表していた。

 

「……立花響。動けるか?」

 

「……はい」

 

「そこのお前は……どうだ?」

 

「……大丈夫デス」

 

 そうして語るアダムを無視して、倒れ伏したまま彼女達は会話をする。

 

「私が先陣を切る……一斉に攻撃を仕掛けるぞ!」

 

「っ……分かりました!」

 

「……デース!」

 

 そうして立ち上がったサンジェルマンは、銃を抜き放つ。

 

「ほう、立ち上がるかっ……未だに!」

 

「はあああっ!」

 

 サンジェルマンの乱れ撃ちは強力無比。当たれば『神の力』であろうとただではすまないだろう。

 だが。

 

「はははッ、ぬるいよ……やはり君はッ!」

 

「ぐっ!」

 

 だからこそ、アダムはその銃弾を華麗に避けてみせ……銃弾を全身に受けたはずのアン・ティキ・ティラは、その身が持つ防御機構を十全に発揮させた。

 彼女の姿がブレ……直後に傷が消えたティキとなって舞い戻る。

 

「チッ……!」

 

 曰く、受けたダメージを並行世界に存在する同一別個体に肩代わりさせる絶対的防御。

 その力が尽きるまで……彼女は並行世界を犠牲に戦い続けることが可能である。

 

「デース!」

 

「はああっ!」

 

 直後、立花響とキリカが代わる代わるに攻撃を放つ。

 

 ──しかし。

 

「ふん! 言わなかったかい、ぬるいと……! ティキ!」

 

 アダムの言葉に応えるように、アン・ティキ・ティラはその力を──。

 

「……なっ!?」

 

 解放する直前、その身体が破裂した。

 

 ──直後、虚空から何かが飛び出し、ティキへと絡みつく。

 

「っ、ティキ!?」

 

 それでもなおギョーン、ギョーン、という妙な音が鳴り響き続け、伴ってティキが破裂し、再生し続ける。

 

『……アダム……人類のプロトタイプ……廃棄……』

 

 そして……虚空から『誰か』の声が鳴り響いた。

 

「おまっ──」

 

 動揺するアダムを捨て置いて、『誰か』は語り続けた。

 

『……なーんで『イヴ』にあたる奴がいねーんだって思ってたけど……ふうんそう言う事か』

 

「……! お、お前はッ!」

 

 煙が晴れ……そこに立つ人物を見て、キリカはやはりか、と言うように苦虫を噛み潰した表情を浮かべる。

 ──そこには、彼女の兄を連れ去った者達と()()姿()をした男が……立っていた。

 

『……アダム……そうか……ああ……』

 

「貴様……生きていたのか、あの砲撃の中をッ!」

 

『お前さ』

 

「ッ!」

 

 そして、混乱するアダムに……彼は話しかけた。

 

『お前……『くろのす』……って名前……知ってるだろ』

 

「……は?」

 

 そして、彼は語りかけながら……後ろ手に隠したYガンのトリガーを……さりげなく引いた。

 

 

 ──あの砲撃をやり過ごした後。

 ……ステルスで潜みながら……俺は一つの()()()をガンツに転送して貰った。

 ハードスーツではない。アレをもう一度転送するには時間が掛かりすぎる。

 

 俺が選んだのは……産廃の中でもまだ使えるハードスーツ改造型。

 

 『ゼロスーツ』とも、『デオキシス』とも呼ばれるコイツの見た目について、一言で語るのであれば……()()()()()だろう。

 

 より具体的に言えば、ハードスーツ(頭)から全てのコードを外し、面の部分に付いていたセンサーを何故か巨大な一つに集約させるというよく分からない変更が行われたハードスーツ(頭)である。

 ……まぁ、『管理人』達が装備していたのが……これだ。

 

 コイツの性能についてまぁ分かりやすく一点特化型である。

 

 ()()()ヘルメット型は防御力に特化している状態だ。

 

 ……ただし。

 コイツのクソポイントは防御が発動してくれる境目が謎であると言うことだ。

 

 コイツは何故かノーマルスーツで防げるレベルの攻撃だと起動してくれないのだ。

 だから、これを装備していた『管理人』達に俺の蹴りは普通に通ったのだ。

 

 ただソレを超える威力の攻撃にはしっかりと反応してくれるので、顔を隠したい現状と過剰火力が飛び交うこの現場には最適と言える。

 

 ──そして。

 ステルスを見破れる百点の奴の視界に入らないよう、影からロックオンをし続けていた……その時。

 

 勝ち誇ったアダムが何やら身の上話をしだした。

 

 ……俺は、その話がみょーに……引ッかかった。

 

 というか……ずっと気になってた。

 

 『アダム』が居るのなら、何故『イヴ』にあたる存在が居ないんだ? と。

 

 そもそもセバスが言うように人のプロトタイプとして作られたのなら、何故男しか居ないんだ……?

 アダムの傍に居るそれらしき奴はあの異形だけだ。

 

 何故……?

 ……あ。

 

 そんな一抹の疑問だったが、しかしそれはあの()()()()の顔が脳裏を過ったことで……結ばれてしまった。

 

 それを問いかけてみると、アダムは面白いほど動揺した表情を浮かべた。

 

「……貴様……何故……何故ッ! その名前を……ッ!」

 

『お前か……そうか……お前じゃ……満足しなかったんだな……あのクソ色ボケ子作り女は……』

 

 ああ、と溜め息が零れて……ふつふつと怒りが湧いてきた。

 この怒りは無意味なモノだとは分かっている。

 

 ただ……考えてしまうのだ。

 

 アダムがもうちょい頑張っていれば。

 アダムがもうちょっといい男だったら。

 俺はもしかしたら……あのクソ色ボケ子作り女に目をつけられることは無かったのでは? と。

 

 アダムはもうちょっと頑張れや、と。

 そう思ってしまう。

 

「何故……まさか……知っているのか!? あの女をッ!?」

 

 先ほどまでの勝ち誇った表情は何処へ行ったのだろう。

 完全に動揺しきった表情を浮かべたアダムは、分かりやすく狼狽えている。

 

 だから、気付かない。

 

『あれ……? アダム? あれ……?』

 

 背後で起こっている異常に。

 

『まあ良い……いや良くないが……』

 

 俺の疑問も解消した所で……アダムの背後で百の奴が"上"に送られて行く所をもう一度確認する。

 

『……』

 

 そう……コイツは……。

 コイツは再生中は動けないという……ビックリするほど分かりやすい弱点を抱えている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。