GANTZ:S   作:かいな

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リミテッドモデル

『ア、アダムぅ!?』

 

「……!? ティキ!?」

 

 俺が()()()()()()()()に全身を破裂させながら、頭の部分までを"上"に送られたところで、漸く百点の奴が焦った様子でアダムに向かって叫ぶ。

 ハッと我に返ったアダムが振り返り……さらにその混乱を加速させた。

 

 そして。

 

「なっ……何──がッ!?」

 

 当然のようにその隙を狙ってソードを振るい……あれほど頑丈だったアダムの体を、()()()()()()で真っ二つにたたっ切る。

 

『……ふん……』

 

 やっぱ……斬撃だったか……。

 

 思い出されるのは……先ほどのハードスーツによる攻撃。

 あの打ち合いの中、唯一コイツの体に傷をつけられたのが肘関節から伸びるソードによるモノ。

 

 そう言った俺の予想はピッタリと当たっていたようで……アダムの下半身と上半身は泣き別れとなった。

 

 だが。

 上半身だけとなったアダムは、しかしそれでも百の奴へと手を伸ばす。

 

 脅威的なしぶとさだ。

 

「ティ、ティキガボッオ!??」

 

 そんなことを考えながら、伸ばした手とアダムの首にソードを突き刺し、地面へと拘束する。

 その状態のまま……まるで魚を捌くように、アダムの身体をXガンでバラバラに解体していく。

 

『ッ、ア、アダムッ!?』

 

「ティッ、ティキ!? ブフぅっ、こっちぶばっ……こっちに!?」

 

『っ、アダムー!』

 

 ──そして。

 アダムの声に応えるように……百の奴はいじらしくも、身体の胸部の部分を切り離して……人形が詰まったコアのようなモノをこちらに射出した。 

 直後、今までYガンで拘束していた身体が光の粒子となって消え失せる。

 

 ソレを見て……あの百点の奴の本体があのコアであると言うことに気付く。

 

 故に。

 

『ま、またッ!? なにこれ!?』

 

 即座にコアへとYガンを放って百の奴を拘束し──。

 

『あっ、あうっ!?』

 

 ゴロゴロと転がるソレを……"上"へと送る。

 

『あっ!? あっ……あああっ!? アダム!? お願い! 助けてっ、助けて!』

 

「ぐふっ、ティぶぶっ、キィッ!」

 

『アダ──』

 

 先ほどまでと違い小柄なソレは……幾ばくの時間も与えず空へと消えていき。

 

「が──」

 

 次いで、Xガンの乱射を受けたアダムも……その身体を完全に破壊された。

 

 ◇

 

「……」

 

「……」

 

 破壊の限りが尽くされた現場には……重い沈黙が降りていた。

 

 立花響は……そのあまりにもあんまりな戦いの結末に絶句し。

 サンジェルマンは……自身の所属する秘密結社のトップをこうも手玉に取る目の前の男に畏怖を覚え。

 

 そして、彼女は──。

 

「あああっ!」

 

『……』

 

 抑えに抑えていた怒りを……爆発させていた。

 

「お前……お前ッ! やっぱり……お前はッ!」

 

『……』

 

「返せ……ひーろーを返せッ!」

 

 直後、彼女は想い人を守る際には使えなかった技を……彼へと放つ。

 

「ああああッ!!」

 

 『切・呪りeッTぉ』。

 それは彼女の持つイガリマの刃が分裂し、ブーメランのように放たれる技。

 弾丸の速度で『敵』へと迫るその刃を、しかし彼は難なく避けてみせる。

 

「っ、ああっ!」

 

『……』

 

 駄々をこねる子供のような大ぶりの連発。

 それを最小限のステップでいなしつつ……彼は考えていた。

 

 どうしよう、と。

 

「このっ……」

 

『……ふん』

 

 一歩、前に進み……彼は切歌の手を抑える。

 

「っ、このっ……! 離せッ!」

 

『離したら……どうするつもりだ?』

 

「……お前を動けないようにして……()()()()()()ひーろーの場所を吐かせるデス」

 

『……ふっ……怖いねぇ……』

 

 彼は嘘偽り無く自身の胸中を吐露した。

 

『おいアンタ。この子の仲間……なんだろ?』

 

「えっ!? あ……あ、はい……」

 

『ならどーにかしてくれよ。堪ったもんじゃ無い』

 

 そうして立花響と会話して気付く。

 彼女から向けられる視線に……どこか距離を感じた。

 

『……』

 

 彼は軽くショックを受けた。

 あの心優しい立花響からそんな態度を取られるとは思いもしなかったから。

 

「切歌ちゃん? 少し……落ち着いて……」

 

「これがッ! 落ち着いていられるデスかっ! 絶対に吐かせる……吐かせるデス!」

 

 場は混沌とし、秩序を失っていく。

 

『……あーもう無茶苦茶だ……』

 

 軽く息を吐いたヒイロは、虚空に向かって語りかけた。

 

『おい!! ガンツ速く転送を……』

 

 しかし、ガンツにいくら語りかけようと反応が無い。

 

『……』

 

「……」

 

 直後。

 その『力』のスペシャリストであるサンジェルマンと、非常に嫌な予感を感じ取ったヒイロは、同期するように固まった。

 

「ガンツ? 何デスかそれは──」

 

 ──そして。

 

『チィ──!』

 

「避けろ──ッ!」

 

「……え?」

 

 切歌と立花響の呆ける声と同時に──()()が錬成された。

 

 ◇

 

「──げほっ、げほっ……! な、何が……!?」

 

 激しい爆発。

 目を覚ますと……自身を守るように誰かが覆い被さっていたのが分かる。

 

「! お、お前……! ……え?」

 

 そして、その彼の身体の惨状に気がついた。

 

 所々が欠けた……罅の入った仮面。

 そして何より──彼の右半身が……焼き爛れていた。

 

「ぐっ……おい……また右腕かよ……」

 

「お、おい! だ、大丈夫デスか!?」

 

「『ゼロスーツ』……お前マジで……コイツ……普通に突破されてんじゃねーかクソ……」

 

「……」

 

 優しい切歌は一瞬本気で心配したものの……意外と大丈夫そうな態度の男に顔を嫌悪に歪ませる。

 

「……おい! 大丈夫ならさっさと退くデス!」

 

「ああっ……言われなくても……」

 

 切歌の言葉に軽く応じた男は、怪我も何のそのと立ち上がり……現状を確認する。

 

「……」

 

「……」

 

 そこには……何も、無かった。

 あれほど激しかった戦いの跡も、何もかもが吹き飛んでいた。

 

「ぐっ……!?」

 

「うっ……」

 

「!? おい! あんたら!」

 

「あ、おい!」

 

 そして、ヒイロは後方で立花響を庇うように倒れているサンジェルマンを発見した。

 

「……あれ……?」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「え、あ……はい……って……え? 何……これ……」

 

 駆け寄ったヒイロは、立花響が比較的無傷なのに対して……サンジェルマンが全身に大火傷を負っていることを確認した。

 

「!? サ、サンジェルマンさん!?」

 

「ぐっ……う……」

 

 そして。

 立花響の呼びかけに対して呻くようにしか答えられなかったことから、意識が朦朧としていると言う事もまた……確認した。

 

「……不味いな……コイツは早く病院送ってやらねーと不味いぞ」

 

「……! お兄さんも大怪我してるじゃ無いですか!?」

 

「俺は良い。気にすんな」

 

 そう言いながらも、何かデジャブを覚えるような怪我の仕方にモヤッとした思いが募る。

 

「……」

 

 しかも、『ゼロスーツ』の機能が故障していることも見つけ、よりイラッとする。

 

 だが、一度軽く息を吐いて気持ちを落ち着かせたヒイロは……先ほどから感じる異様な圧力を探し……天を仰ぐようにソレを確認した。

 

 ──そこには。

 

「……え?」

 

「……う、嘘……」

 

「……」

 

 そこには……頭に角を敷いた黒山羊を思わせる醜悪な化け物が居た。

 

『嫌だった……こんな姿になるのも』

 

「……そん、な……」

 

『屈辱だった……この身に『神の力』を宿すのも』

 

 悪魔のようにも思えるその姿と、至る所に散りばめられた神々しい黄金の融合。

 

『許せなかった……ヒトとして……神を超えたいと夢想した果てがッ……! この結末だとッ!』

 

 ──相反する二つの属性は、新生した『神』の異形さを際立たせる。

 

「っ、どうやって……!?」

 

『触媒とした……砕けた僕の身体を。移したのさ……神の力を』

 

「……アダム……ヴァイスハウプト」

 

「ッ、サンジェルマンさん!?」

 

 その神へと辿り着いた異形を前に。

 全身を爛れさせながらも目を覚ましたサンジェルマンは……立花響に肩を貸されながら、錬金術師として、その目で何が起こったのかを分析する。

 

「……『神の力』……それを……散らばった身体に宿して……『力』の宿った身体を触媒としッ、『黄金錬成』を経て……肉体と纏めたッ!」

 

『……全く君は──』

 

 その推理は……正しく的中していた。

 アダムは忌々しそうに唸り、サンジェルマンを天より睥睨した。

 

 ──そう。

 これは正しく……人形の見た夢の果て。

 

 彼が幾星霜と計画に費やし、夢想してきた計画の……醜い結末。

 

 散っていった彼の夢と、莫大な時間……そして、何より自尊心。

 そのアダム・ヴァイスハウプトの燃えさかる怒りが、最後の足掻きとして見せた結果にして、結晶。

 

 つまり、『Limited Model_AdamKadmon Gold.』。

 

 彼は至った。

 

 彼にとって最低の不完全にして……彼にとって最悪に完璧なる……『アダムカドモン』へと。

 

『──そうとも。当然だろう』

 

 そして。

 神人へと至ったアダムは……異形の手を天に突き出すと、その莫大な力を黄金錬成と放出させる。

 

 そう。

 なぜなら彼は、パヴァリア光明結社統制局長……アダム・ヴァイスハウプト。

 

 現行最強にして至強の──。

 

『錬金術師だからね……僕はッ!』

 

 そして、夜の街に──太陽が生まれた。

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