GANTZ:S   作:かいな

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ハイライト

 ──戦闘開始より十秒経過。

 

「い、いきなり現れて何言ってるんだお前!?」

 

 目の前の異形の少女は唐突に現れ、自身の腕を切り落とし。

 よく分からない理屈で敵対し始めた目の前の男に、異形の少女は明らかに動揺し……恐れていた。

 

『……風鳴翼!』

 

「!? わ、私っ!?」

 

『この子、守ってろよ』

 

 ヒイロはそれだけ翼に伝えたかと思うと……その姿をかき消した。

 

「!? き、消え……」

 

 ──だが。

 これはスーツのステルスでは無い。

 

「ッ!? な、何だ!? アルカノイズが──!?」

 

 何かを破壊するような音が断続的に鳴り響く。

 それは異形の少女が認識できる速度を遙かに超えており──彼女が瞬きをする間にノイズの姿が消えていく。

 

「ど、どうなってやが──」

 

 ──二十秒経過。

 

『翼さん! 南の出口に防衛線を張っています!』

 

「!? 緒川さん!?」

 

『其方の少女を……!』

 

 そして、彼女達の混乱が治まるよりも速く……緒川の報告が届いた。

 翼は人質となった少女に駆け寄り、彼女の手を取りながら緒川の姿を探す。

 

 ──すると、見つけたのは……仮面の男がエルフナインに渡していた銃を持った緒川の姿があった。

 

 ギョーン、ギョーンという特徴的な銃声は鳴り続け、アルカノイズを砕き続ける。

 更には実弾による『影縫い』を交えた早技の連携により……彼より後ろにアルカノイズを一切近づけさせない。

 

 その姿を見ていた観客は、焦りと動揺はあれど、多少落ち着きを持って避難を行うことが出来ていた。

 

『後方の出口より避難を!』

 

「わ、分かりました!」

 

 ──翼は思い出す。

 仮面の男との同盟……その条件を。

 

 ──三十秒経過。

 

「!? ちょ、ちょっと待──」

 

 腕をどうにかくっつけた異形の少女は、自身に背を向けて人質を安全地帯へと運び始めた翼を止めようとする。

 

 しかし。

 

『待たせたな』

 

「ッ!?」

 

 背後から……死神の声が聞こえてくる。

 

 ──四十秒。

 

「……何なんだお前……」

 

『あ?』

 

「い、いきなり現れて……全部メチャクチャにしやがってッ! 計画がパーだッ!」

 

『……』

 

 彼女は怯えながらも、しかし気丈に戦う意思を見せる。

 

「本当に……何なんだお前はッ!?」

 

 少女は腕を異形の形へと変え、ヒイロへと迫る。

 

『……もう一度言ってやる。俺はこう見えて……』

 

 だが。

 

『学生時代から……風鳴翼の…………』

 

「なっ!? 片手でッ──」

 

 彼女の一撃は、軽く片手で受け止められ。

 その衝撃を流し、利用し、加えた回し蹴りを……。

 

『ファンなんだよッ!!』

 

 異形の少女の腹へと打ち込んだ。

 

「──ぶぐッ!?」

 

 その一撃は芯を捉え、空に漂う爆撃型アルカノイズへと吹き飛ばす。

 

 ──五十秒。

 

 ヒイロは素早く手元のコントローラーを弄り、ゼロスーツの形態を移行。

 そして……叫んだ。

 

 全弾斉射の最終奥義を。

 

『デッドエンドォッ!』

 

 その言葉に反応し、ゼロスーツから閃光がほとばしり……圧倒的な圧力がヒイロを襲う。

 

 だが、雲を裂く一撃は正に最終奥義。

 空を埋め尽くさんばかりのアルカノイズと共に、異形の少女が掻き消えた。

 

 ──そして。

 

『ジャスト一分だ』

 

 裂けた雲から溢れる月光を浴びながら……ヒイロは空を見上げて呟いた。

 

 

 戦闘を終えたヒイロは、()()()()()()()()()ジッと空を見つめたかと思うと……溜め息を息を吐いてゼロスーツの形態を元に戻す。

 

「……」

 

 ……と、そんな彼の耳に足音が聞こえてくる。

 

『……風鳴翼か』

 

「っ……」

 

 振り返ると、気まずそうにヒイロを見つめる翼が居た。

 

『あの子はどうなった?』

 

「……少女は、既に避難させた」

 

『そうか。なら良かった』

 

「……」

 

 未だに避難は続いているが、それでもその速度は速く……半分以上は避難を終了させている。

 ここに来て、()()の教訓が生きてくる。

 

「……何故」

 

『あん?』

 

 ……と。

 そんな風に避難をしている人を眺めていたヒイロに……翼が語りかけた。

 

「……」

 

 そうして語りかけた彼女は、しかし黙り込む。

 気まずそうに口を開いては閉じ、何を聞くべきか迷った風な表情で固まってしまう。

 

 ……それでも、どうにか絞り出した翼は、口を開いた。

 

「…………何故……要請も無いのに助けに来てくれた」

 

『……』

 

「──なにが目的なんだ!? 我々に何を求めて……!」

 

 どうにか絞り出した翼の問いかけ。それは今だ得体の知れない仮面の男(ヒイロ)への不信感から来るモノだった。

 

 そんな翼の問いかけに……当のヒイロははてなマークを浮かべた。

 

『いや、それくらい同盟相手だし当然だろ?』

 

「……」

 

 何言ってんだコイツばりの言い草に、翼は黙り込んでしまう。

 

 しかし。

 

『──だが……まぁ……求めるモノ……ね』

 

「……え?」

 

 その言葉に……ヒイロはポリポリと頬をかきながら翼に伝えた。

 

『個人的にもさ、アンタのライブに襲撃とか……色々思う所があったと言うか…………俺、アンタのファンだし……』

 

「……」

 

 そうしてヒイロはアルカノイズが暴れた跡を見る。

 

 思い出されるのは、もう四年も前になる……ツヴァイウィングのライブ会場の惨劇。

 当時、ヒイロもまた……その現場で人知れず戦っていた。

 

 だが結果は今と同じ。

 ……ヒイロの参戦があっても、散っていった命は多数存在する。

 

『……』

 

 ──そして。

 片翼を捥がれた彼女は、苦しげに……それでも人々のためにと……歌い続けた。

 それをヒイロは知っているし、そんな彼女に……勇気を貰っていた。

 

 だから、この願いを……また翼にするのは酷だという事は分かってた。

 でも。

 

『……色々……大変だろーけど…………また、ライブやってくれよ』

 

「え?」

 

風鳴翼(アイドル)に求めるのなんて……それ位だ』

 

「ッ……」

 

 ヒイロはファンの一人として、翼にそう願わずには居られなかった。

 

『む?』

 

 直後、首筋にぞわりと寒気が走る。

 丁度時間切れになったようだ。

 

『じゃ、俺はこれで』

 

「え?」

 

『予定が詰まっててな。今回の件についての連絡はまた後日』

 

「ちょ、ちょっと待──!?」

 

 翼の呼び止める声を無視して……ヒイロはまた一人、戦いへと赴いた。

 

「……」

 

 残された翼は……シンフォギアの変身を解き、ヒイロの言葉を噛み締める。

 

「……ああ」

 

 シンフォギアという鎧を脱ぎ、ドレス姿となった彼女は……その胸に手を当てる。

 そして。

 

「了承した……GANTZ殿」

 

 風鳴翼はアイドルとして、ファンからの願いを……受け取った。

 

 

 それは緊急脱出のためのテレポートジェムの輝き。

 以前の空母襲撃の傷を癒やすため待機していた犬耳の少女……エルザは、その輝きに驚愕の声を漏らす。

 

「ミラアルク!?」

 

 直後。

 全身を黒く焦がしながらも、羽を犠牲にギリギリの所で逃げることが出来た異形の少女……ミラアルクが転移してきた。

 

「ぐっ……!? 何なんだ……何なんだアイツはッ!?」

 

「だ、大丈夫でありますか!?」

 

「あ、ああ……いや、本当は凄く……く、苦しい……ぜ……」

 

「す、すぐに治療を……!」

 

「た、頼む……うっ」

 

 転移の直後、崩れ落ちるように地面に蹲ったミラアルクは……込み上げてきた吐き気に従い、大量の血を口から吹き出す。

 

「ミラアルクッ!?」

 

「腹……お腹が……」

 

「ちょ、す、すぐ服を脱ぐであります!」

 

 仰向けに寝かし、腹の部分の服を裂く。

 

 ──そこには。

 

「ッ……」

 

 腹部全体に青い痣が出来ていた。

 

「ゴボッ…ガッ……」

 

「ち、血が……!?」

 

 ゴボゴボと口から血を吐き出し続けるミラアルク。

 仰向けに寝かしているからか、彼女の口一杯に血が溜ってしまった。

 

 即座にミラアルクの身体を横に倒し、血で窒息しないようにするも、ミラアルクはゲロゲロと血を吐き続けた。

 その血の中には肉片も混じっており、彼女の体内でどのようなことが起こっているのか容易に想起できた。

 

 ──これはヒイロの放った蹴りの作用である。

 その一撃は内臓に的確に浸透し……破壊する。

 

 そして、この破壊が衝撃を与えてから五分経ってから始まるという性質から……この技は通称『五分殺し』と呼ばれている。

 

「……ど、どうすれば……」

 

 顔を青くしたエルザは、あたふたとどのような対応が最適か考える。

 だが、どう考えてもこのアジトにこのレベルの重傷を治療できる機能は無い。

 

 つまり……このままでは確実にミラアルクは死んでしまうと言うことになる。

 

 その事実に、エルザは涙を目に浮かべ……脳が的確な判断を下せなくなっていく。

 

 ──しかし。

 

「落ち着いてエルザちゃん」

 

「ッ、ヴァネッサ!?」

 

「ミラアルクちゃんは吸血鬼。血を与えてその力を強くさせれば……治療可能なレベルまでは治せるはずよ」

 

「! そ、そうであります!」

 

 エルザに優しく声をかけた女性……ヴァネッサの一声で、エルザは落ち着きを取り戻していく。

 

「で、でも……ヴァネッサがどうしてここに?」

 

 テキパキとミラアルクへの稀血の輸血を始めながら……冷静になった頭で浮かんだ疑問を問いかける。

 

「……少し不安になって、ミラアルクちゃんのライブ襲撃を監視してたの」

 

「……」

 

「そしてらまさかの不安的中。急遽アジトまで戻ってきたって訳。全く、嫌になっちゃうわ? あの黒スーツ達」

 

 ヴァネッサはそう説明しつつ……本気で忌々しそうにそう呟いた。

 

「……だ、大丈夫でありますでしょうか……ヴァネッサが侵入しないといけないのは──」

 

 ヴァネッサの言葉を聞いて、急に不安になったエルザは……これから最難関のミッションが控えている彼女に、心配そうに問いかける。

 

「……」

 

 正直に言えば……彼女も不安で不安で仕方が無かった。

 だが、それでも彼女は行かねばならない。

 

 ソレこそが彼女達の生きる道で、その道を行くことが希望に繋がるのだから。

 

 だから彼女は……エルザを安心させるように、小さく笑った。

 

「だいじょーぶ! お姉さんにまっかせなさい!」

 

「……」

 

「私はきっと帰ってくるから。だから……エルザちゃんはミラアルクちゃんをよろしくね?」

 

 ──彼女がこれから侵入し、奪取しなければならないのは……アメリカが手にした神の力。

 ソレが有るのは、ブラックボールの武器で警備を固めたアメリカの研究所である。

 

 ロスアラモス研究所。

 ニューメキシコ州、ロスアラモスに存在しているアメリカ国立の研究所であり……異端技術の研究拠点でもある。

 現在この場所の警戒態勢は最大であり、警備のためだけにブラックボールを三つ稼働してある。

 

「……」 

 

 一度奪取しようとして半殺しの目に遭ったエルザは……当然その怖さを理解している。

 だからこそ、ヴァネッサの覚悟が分かる。

 

「……分かったであります。絶対に……帰ってきてください」

 

「……任せて、エルザちゃん」

 

 彼女達には後が無い。

 ただ前に進み続けることが唯一の道であり、最善の手なのだ。

 

 彼女達の支援者、風鳴訃堂も頑張って岡山県最強の男と戦っている。

 

 故に、彼女達もまた……止まることは許されない。

 

「私達は誇り高き深紅の絆で……家族よりも深い絆で繋がっている」

 

 そう。

 彼女達の紅の絆は破れない。

 

「私達は……卑しき錆色(ノーブルレッド)だもの」

 

 彼女達ノーブルレッドは、なんぴとに否定されようと……己が目的に止まること無く突き進んでいく。

 

 これは、怪物の怪物による怪物のための……戦いである。

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