GANTZ:S   作:かいな

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禁断の技

 転送された俺は、即座に高所のビルから地上を見下ろし……Xショットガンを使い、街に散らばったアルカノイズ達を一気に破壊していく。

 

 そして、あらかた片付けた所で視線を辺りに向ける。

 

『それで、コイツをばら撒いてるクソ野郎は……』

 

 ガンツのレーダーは事前に登録した相手にしか反応しない。

 故に、レーダーに頼らず目視でノーブルレッドを探さなければならない。

 

『……! 爆発……!』

 

 ──と。

 そうしてアルカノイズをばら撒いた存在を探していたヒイロだったが……不意に後方で爆発音が聞こえてくる。

 

『そこか……ノーブルレッドッ!』

 

 ヒイロは即座にXショットガンを構えるが……しかし射程距離から微妙に外れている。

 

『……ガンツ、転送始めろ』

 

 故に、ヒイロはガンツに命じた。

 直後転送されてきたのは……何かの接続パーツのようなモノ。

 

 それを取ったヒイロは、Xガンのケツにそのパーツを付け……Xショットガンの銃口と連結させる。

 

 ──それは、八回クリアで手に入る……XガンとXショットガンの『連結パーツ』。

 そしてこの『連結パーツ』とXガン、Xショットガンを組み合わせることで……新たなる一つの武器が完成する。

 

 その力は単純にXガンとXショットガンの破壊力を足しただけではない。

 かけ算のように二つの力が掛け合って……威力と射程距離は数倍となる。

 

 この銃の名は……『XXガン』。

 またの名を『戦隊モノで番組後半に使う合体武器』とも。

 

 そうして『戦隊モノで番組後半に使う合体武器』を構えたヒイロは、爆発音の源で暴れる褐色の美女の姿を捉えると……そのまま嵐のように弾丸をばら撒いているヴァネッサへと照準を合わせる。

 

『……死ね』

 

 即座にロックオンを済ませたヒイロは、一瞬の迷いもなくトリガーを──。

 

「待つワケだッ、ヒイロ!」

 

『!? おい、外で名前で呼ぶなよっ!』

 

 ──引くよりも一瞬早く。

 後方から、プレラーティに声を掛けられた。

 

「ノーブルレッドを殺すな、ヒイロ!」

 

『俺の話聞いてる?』

 

「ヒイロが銃を捨てるまで呼び続けるワケだヒイロ!」

 

『……』

 

「ヒ──」

 

『分かった! 分かったから止めろッ!』

 

 完全に尻に敷かれてしまったヒイロは、大人しく『戦隊モノで番組後半に使う合体武器』を手放した。

 

「……ふぅ。間に合ったわけだ」

 

 そうしてノーブルレッド達の死が遠ざかった所で、プレラーティは安心したように息を吐いた。

 

 そんな姿に疑問を抱いたヒイロは、彼女に問いかける。

 

『……何だよ。アイツらに死なれちゃ困るとでも?』

 

「ああ。脱走者をみすみす見逃し続けただけでなく……協力者の手を焼かせたなんて、統制局長的には不味いらしいワケだ」

 

『……』

 

 しかし帰ってきたのは何処か芝居がかったような、嘘くさい台詞である。

 ヒイロは仮面の奥で顔をしかめた。

 

 当のプレラーティも自身の演技が棒であると言うことは理解してたのか……すぐに真実を語った。

 

「──なんて、今に至るまで相当手を焼かせ続けている以上、こんなのただの言い訳なワケだ」

 

『……言い訳ね』

 

 言い訳。

 そんな言い訳を用意してまで、現場に最高幹部を送る。

 ではそうまでしてしたいこととは。

 

『……まさか……ノーブルレッドを保護するための……建前か?』

 

 一瞬過ったその答えに、ヒイロは頭を振る。

 

 大体、だとしたら何故今の今まで放置をしてたんだ……? 

 

「ああ、よく分かったな」

 

『え? マジなの……?』

 

「ああ。と言っても……現在パヴァリア光明結社は組織の体裁を保つだけで大忙し。今の今までS.O.N.G.に任せっきりだったってワケ」

 

『……』

 

 がっつり手、焼かせてるじゃん。

 

 意外と面の皮が厚いんだな……サンジェルマンって。

 

 そんなヒイロの考えは彼女も分かるのか、呆れたように息を溢した。

 

「……正直私にはあんなのどうでも良いワケだが……ま、今の統制局長は優しいワケだ」

 

『……』

 

 そこで言葉を句切ったプレラーティは、ヒイロに目を向ける。

 

「だから、お前にも手伝って貰いたいワケだ。ノーブルレッド捕獲作戦をね」

 

 プレラーティがそう言い切った所で……沈黙が生まれる。

 

 だが。

 ヒイロはその沈黙を破って、嫌そうに語り出した。

 

『何で俺が手伝わなきゃ行けないんだよ』

 

「……手伝ってくれないと?」

 

『ああ。つか、そう言う話なら……俺がノーブルレッド殺さないで何もしないってだけ手伝ってるようなモンじゃねぇか。俺は未だに怒ってるぞ』

 

「……」

 

『なら俺がもうここに居る意味は無い。次の依頼もあるし……もうアルカノイズは仕留めたしな』

 

 ──プレラーティは、思わず呆れてしまった。

 

 お前そんなにプリキュアの邪魔されたのに怒ってたのかよ、と。

 

 そうして絶句していたプレラーティだったが……次いでとんできた言葉にその表情を凍り付かせた。

 

『と言うわけで、俺は帰って劇場版プリキュアでも見てるわ』

 

「は?」

 

 劇場版プリキュア。

 

「劇場版……プリキュア?」

 

『ああ。レンタルしてある』

 

「……」

 

 は? ……え? 何ソレ? 

 ……今私のお願いよりもそっちを取ったの? 

 

 は? 

 

『じゃ』

 

 目を白黒とさせたプレラーティだったが、ヒイロはそんな彼女を一切無視して帰ろうとする。

 そこでようやくプレラーティはヒイロが本気でそんな馬鹿な事を言っているのだと気がついた。

 

 ──そして。

 

「……」

 

 プレラーティは本気で帰ろうとするヒイロを見て……キレた。

 表情にピキピキと怒りの筋を浮かべながら……しかしそんな自分に全く気付くこともないヒイロに……彼女はキレた。

 

 そして何より。

 プリキュアと自分のお願いを比べた結果。ヒイロは普通にプリキュアを取ったと言う事実に。

 

 彼女は盛大にキレた。

 

「……」

 

 さっきもプリキュア。今度もプリキュア。行動理由がプリキュア。

 プリキュアプリキュアプリキュア。

 コイツ頭おかしいんじゃねーか? 

 

「……」

 

 ──そうして考えが進んでいく内……彼女の心境に変化が現れ始める。

 

 いや待てよ? 前まではこんな奴じゃなかった。

 普通に私の手伝いとかしてくれたし……。

 

「……」

 

 アレ? 

 こいつ本気でもう、何かそういう……心の病気なんじゃないか? 

 

 果てしない怒りが湧き上がってきたが……しかしそれは一周回ってヒイロを慮るモノになっていった。

 

「……」

 

 怒りと心配の感情がない交ぜになり、彼女の浮かべる表情はドンドン混沌になっていく。

 そうして口の端をヒクヒクとさせていたプレラーティだったが……聡明な彼女の頭脳は、一つの妙案を思いつく。

 

 彼女が思いついてからは早かった。

 その表情を一転させ、あからさまに疲れた表情を浮かべる。

 

「あー……なんだか疲れがぁ……身体が動かしづらいワケだー…………これはヒイロのせいだなー」

 

『え?』

 

「私が忙しい中時間を作って、幾つもの言語で依頼書を作ってやった時の疲れがぁ……今になってやってきたワケだぁー」

 

『……』

 

「ううっ。こんな時手伝ってくれる奴が居ればなぁ~?」

 

 チラリと、ヒイロに視線を向ける。

 

「そう言えば一人ぃ……依頼書のお返しにぃー、何か手伝うって言った奴が居たのを思い出したワケだがぁ?」

 

 チラチラとあからさまにヒイロに視線を向け、およよと分かりやすい演技でヒイロの関心を誘う。

 

「居たワケだが? が? ヒイロ? ん?」

 

『……』

 

 ──その効果は抜群だった。ヒイロは分かりやすく固まり、所在なさげに立っていた。

 

 ……そして。

 

『…………手伝います』

 

「ッし」

 

 プレラーティはヒイロからその一言を奪い取り、小さくガッツポーズを浮かべた。

 ソレには当然仕事が楽になったという意味合いも込められていたが……それ以外にも彼女には思惑があった。

 

(こういうのは初期の段階で依存するモノから引き離してやるのが良いワケだし……それにちょっと動けば、コイツでも流石に寝ようと思うワケだ)

 

 彼女は、未だに所在なさげにしているヒイロを見ながら……依頼云々よりも、そんなことを考えて居た。

 

 ◇

 

 そして、彼女達の作戦会議が始まった。

 と言っても、大した作戦でもない。

 

 二手に分かれたノーブルレッド同様二手に分かれ……各自彼女達を確保するというモノ。

 自身とヒイロの戦闘力を考慮して、これが一番早い選択であると判断した。

 

 そんな作戦会議も早々に、彼女は手元にスペルキャスターを構えた。

 

 だが、ふと不安になった彼女は……最後にもう一度確認をする。

 

「ではお願いするワケだが……良いか? 決してアイツらを殺すなよ?」

 

『ったく……分かったよ』

 

「お前なら武器なんか無くてもアイツら程度制圧できるワケだ。武器は使うなよ」

 

『はいはい』

 

 再三の確認。流石にこれ以上はヒイロの機嫌が損なわれると感じ取ったプレラーティは、スペルキャスターを起動させようと──。

 

『あ、一つ良いか?』

 

 した所を、ヒイロに遮られる。

 

「……あん? まだ何か?」

 

『いやさ。武器が駄目でも……武術なら良いだろ?』

 

「……武術?」

 

 何を言ってるんだ? と思ったプレラーティは……『ああ良いよ』と適当に返そうとする。

 だが。彼女はすんでの所でハッとする。

 

 思い出したのだ。

 彼女の長い人生の中……意外と武闘派の人間がどれだけ厄介で、強力なのか。

 その力の一端を知ってはいたプレラーティは……一応ヒイロに尋ねてみる。

 

「……聞くが、どんな技を使うつもりだったんだ?」

 

『禁断の絶版技が一つ……炸裂燃掌爆(クラスターナパームボム)

 

「……ふむ。炸裂燃掌爆(クラスターナパームボム)

 

『ああ。炸裂燃掌爆(クラスターナパームボム)

 

「ふむ……」

 

 瞬間、沈黙が場に降りる。

 だが……その間、プレラーティは作り手として、錬金術師として……感嘆していた。

 

 この技を作った人間の命名は分かりやすくて良い。

 その技を使うと何が起こるか、容易に想像できるワケだ。

 

 彼女の脳裏では、掌底を食らったミラアルクが粉々に吹き飛ばされてる映像が流れていた。

 

「──うん。絶対に使うなよ」

 

 ビシッと、プレラーティはヒイロに指を突きつけた。

 

『えぁ……まあ……分かったよ』

 

 一瞬断られるのでは? と危惧したプレラーティだったが、思いのほかヒイロの物わかりは良かった。

 

 プリキュアが絡まないだけでこんなに普通の奴になるんだから、本気で病気の可能性を危惧し始めたプレラーティである。

 

『しょうがねぇ……なら、"禁断の魔胎掌二度打ち"でアイツの身動きを取れないようにしてやる』

 

「え? 禁断の? 何?」

 

『行くぞ……プレラーティ!』

 

 言うが早いか、ヒイロはミラアルクの待つビルへと駆ける。

 そんな彼の背後に……遅いとは分かっていても止めざるを得なかった。

 

「……いや! 待つワケだ! 何でっ!」

 

 そして……彼女は叫んだ。

 

「何でッ、禁断の技ばかりッ使うワケだっ!?」

 

 ちゃんと生きた状態で捕獲しろよ!? 

 

 彼女の叫びには……そんな心配が多分に含まれていた。

 

 ◇

 

 そして、時は今に至る。

 

「お、おまっ……おおおっ、お前っ……!?」

 

『ふん。答える気は無い……か』

 

 一応、アルカノイズが別件である……という小さな可能性を鑑みて尋ねてみたモノの……ミラアルクは何も答えることはなかった。

 しかし、それでもヒイロは……目の前の異形の少女が、先日あった時と何処か雰囲気が違うことに気がつく。

 

『……お前、何か様子が違うな……』

 

「! そ、そうだぜ! 私はもう……完全なる吸血鬼へと至ったんだぜッ! そうだ、お前なんか怖くないんだぜッ!」

 

『……ほう』

 

 完全な吸血鬼。

 その言葉に……ヒイロは何処か懐かしい感傷に駆られた。

 

『吸血鬼か……なら……狩るのは何年ぶりになるかな?』

 

「え?」

 

 数年前。

 ヒイロが一人で活動していた際、一般人のような見た目の星人に襲われた事がある。

 その時のヒイロは母の件もあったため、速攻でその襲ってきた奴らを始末した。

 

 だが、その結果ヒイロとその星人……東京を根城としていた『吸血鬼』達は全面戦争となってしまう。

 

 一時ガンツが置かれた部屋にまで乗り込まれたこともあったが……それでもヒイロは、一ヶ月ほど掛けて吸血鬼共を殲滅し尽くした。

 

『そうか。完全に吸血鬼になったか。そうか、そうか……』

 

「……な、何だよ……」

 

『なら気兼ねなく……行動不能に出来るな』

 

 直後。

 ヒイロはステルスを発動し……彼女の視界から一瞬にして姿を消す。

 

「え? ちょ、おまっ──」

 

 ミラアルクは即座に辺りを見渡してヒイロを探そうとするも──見つからない。

 いや、そもそもヒイロは回り込んだり何てことして居ない。

 彼は音を殺しながら、ミラアルクの眼前へと迫る。

 

「ど、何処に……!?」

 

『──』

 

 さて。

 ヒイロの言う禁断の絶版技というのはその名の通り……あまりのえげつなさ故『灘神影流通信教育』の第二版からその存在を消された技達である。

 

 そして『魔胎掌』もまた、()()の技である。

 

 この技は一度その身に受けただけでは何の変哲も無い掌底でしかない。

 この技が禁断たる所以は……同じ箇所に()()()()()()()を受けた瞬間から始まる。

 

 ──魔胎掌。

 その一撃には魔が胎んでおり……掌底を受けた箇所には『魔』が宿る。

 本来であれば何も悪さなどしないソレは……もう一度『魔胎掌』を食らうことで産声を上げる。

 

 産声を上げた『魔』は、正に極悪。

 その掌底を受けた箇所はまるで妊婦のように膨れ上がり……その瘤からは大きな苦痛が常に生じる。

 

 故に……魔を胎ます掌底と書いて……魔胎掌。

 

 最悪にして悪趣味。

 外道を超えた外道の技。

 

 故にこの技は……一部で燃えた。

 

 技が成立した瞬間のビジュアルが最悪すぎるという苦情が沢山送られ……廃刊の話すら上がったほど。

 

 当時は第二版から差し替えでどうにか対応したが、マネモブとしては早く忘れたい悪夢を作った……元凶の技。

 

 故に、"禁断の魔胎掌二度打ち"。

 

『……』

 

 ヒイロは、ミラアルクの眼前にて立ち止まる。

 すぐ目の前に居るというのに……彼女はヒイロの姿に全く気付くことはない。

 

 ヒイロは、それが当然であるとばかりに……両の手を構える。

 

 ──さて。

 魔胎掌とは本来片手でも使える技である。

 

 であれば……ヒイロの構えは何なのか。

 

 答えは一つである。

 

 先程の絶版技。『魔胎掌』以外にも、様々な理由で絶版へと追いやった技が存在するが……。

 

 ここで一人、定期購読故にそう言った禁断の技達を全て知っている男がいる。

 そう、ヒイロである。

 

 故に当然魔胎掌の事も知っているし……襲いかかってきた吸血鬼を良く技の実験台にしていた。

 

 そうして魔胎掌を使っていたヒイロは、ある時ふと思った。

 何故掌底を態々二回に分ける必要がある? と。

 

 二撃を与えることで必殺となる技ならば……一回の攻撃に二撃を纏めれば良いんじゃないか? と。

 

 そうした発想の元、実験台にされた幾多もの吸血鬼を犠牲に作り上げたのが……この技である。

 

『……』

 

 両の手を重ね、右手と左手でほんの少し時間をずらして『魔胎掌』を放つ一撃。

 二撃を一撃と纏め……"禁断の魔胎掌二度打ち"を技と昇華させる。

 

 その、技の名は。

 

『──魔胎複印掌!』

 

「──ぷぐっ!?」

 

 ヒイロの一撃は……正しくミラアルクの腹を撃ち抜いた。

 

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