GANTZ:S   作:かいな

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ピンポン

「……」

 

「……」

 

 き、気まずい……。

 そんな心境が表情にありありと表れた装者達と"彼"は、無言で見つめ合う。

 

「……エルフナイン。彼が……?」

 

『い、いえ……知らない人ですッ』

 

 当然エルフナインが"彼"の事を知っている筈もなく。

 ハッキリと知らない人と言い切った。

 

「……誰……?」

 

「誰なんですこの人」

 

「誰だよ」

 

「誰……」

 

「……」

 

 『知らない人』はあまりの気まずさに汗を垂らしながらそのやり取りを聞いていたが……そんな地獄のような時間は思いのほかすぐに終わりとなる。

 

『……あ! おい! 『リーボック』ッ!』

 

「え?」

 

「! 其方に居たのですか!」

 

 そのヒイロの怒声に対する反応の差は装者と『リーボック』で非常に顕著な差が現れた。

 

「……え? GANTZさんのお知り合いだったんですか……?」

 

『ああ……俺が雇ってた奴……なんだが』

 

 当然の疑問を装者達がヒイロへと投げかけるが、ヒイロは端的な答えだけを返して、『リーボック』へと詰め寄る。

 

『お前……何やってたんだ? 遅えって』

 

「いやぁ……ははは! 申し訳ない! 少し立て込んでまして……」

 

 申し訳なさそうな表情で語る『リーボック』の言葉に、ヒイロは首を傾げる。

 

『……立て込んでた? お前、今店休んでるって言ってなかったか?』

 

 そう、『リーボック』は現在休職中だと聞いている。

 ……と言うか、ブラックボールを完全に掌握していて、更にどの時間帯でも自由に動ける人材だから彼を雇っていたヒイロである。

 

 その問いかけに、彼は重苦しく口を開く。

 

「……私用です。少し厄介な話が立て込んでしまいまして……」

 

『……ふぅん……』

 

「ですが来たからには相応の仕事はさせて頂きますよ」

 

 そんな彼の言葉に若干の違和感を覚えたヒイロだったが、まあ良いかと息を吐く。

 

『……ま、こっちとしちゃ仕事して貰えれば何でも良い』

 

 すぐにヒイロはリーボックを連れて、重傷者達が寝ている場所へと足を向ける。

 

『こっちに来てくれ、重傷者が一杯居る。それと武器だ、武器を──』

 

 今回『リーボック』を呼んだのは戦力としてではなく……サポートとしてである。

 

 予てより武器や怪我などをサポート出来る存在が少なすぎると懸念していたヒイロだったが……悲しい事にその予想は見事に的中してしまった。

 現在この場には、武器も、士気も、治療できる存在も足りていない。

 

 重傷者達と言うのは訃堂戦の第一波として犠牲になった者達だ。あの地獄の中で奇跡的に何人か生き残っている者達が居た。

 そんな彼らの怪我を治すのはヒイロ一人では間に合わないし……何より、すぐに前線に戻らなければならない。

 

 そんな状況で、後方にてブラックボールを使える存在が居るのと居ないのでは安心感が違う。

 

 故にさっさと『リーボック』を重傷者達の元へと放り投げようとしたのだが……。

 

『え?』

 

 ヒイロの目の前に何処か見覚えがある紋章が現れた。

 それは──。

 

『……あ! そうです! この人! この人が来て貰った人です!』

 

 ()()()()()()()()に、男装の麗人が現れた。

 

 そして。

 

「久しぶりね。立花ひびっ…………」

 

「……」

 

 男装の麗人は『リーボック』の目の前に現れてしまった。

 

「……」

 

「……」

 

 知らない人と知らない人がお見合いすると言う現象が……またもや起こってしまった。

 

 

 ──さて。

 前線では……世界最強の漢達による最終決戦が行われていた。

 

「はあああっ!」

 

 一方はスーツにより強化された拳によって。

 

「ハアッ!」

 

 もう一方は二振りの剣を振るって。

 

「──ッ!」

 

 互いに強化された一撃は、どちらも卓越した戦闘技術により受け流す。

 

「ふんっ」

 

 音速を超えた拳は刀の柄で弾かれ。

 だが、その拳の衝撃は……余波だけで宙を飛んでいた訃堂を地面へと叩きつける。

 

「おおおっ!」

 

 弦十郎は訃堂へと、空気を蹴った加速にて迫る。

 

「──果敢無き哉」

 

「!」

 

 しかし。

 その隙を穿った二対の『群蜘蛛』による一閃が煌めき──二つ纏めて白刃取りされる。

 

「おおおっ!」

 

「かあああっ!」

 

 何の異音かぎゃりぎゃりと言う金属がこすれ合う音が鳴り響き、彼らの戦況は硬直する。

 そう、一見してその戦いは互角にして均衡が保たれている様に見える。

 

 だが。

 

「ぐっ……この力……ッ! 本当に……人を止めたかッ! 訃堂ッ!」

 

「儂をまだその名で呼ぶかッ、弦十郎ォォォッ!」

 

「!?」

 

 最強の人類と、最強の人類から神へと至った者の間には決定的な差が存在していた。

 圧倒的な地力の差というものが。

 

「ぬうぅぅぉアアッ!」

 

「ぐうっ……!」

 

 弦十郎の腕力を超える力で『群蜘蛛』を押し込まれる。

 

「儂は最早人に非ずッ! 護国の化身……護国の神よォッ!」

 

 だが。

 

「っ、はあああっ!」

 

「ぬぅっ!?」

 

 ──風鳴弦十郎とは、力だけの男ではない!

 

 『群蜘蛛』を掴んだ両手の手首による超越回転に!

 更に身体の捻れを利用する事による爆裂回転を加えることで生み出される小宇宙!

 そしてスーツにより強化された弦十郎が何時もの三倍のパワーで回転することにより生まれる宇宙誕生エネルギー!

 

 ──それは、一介の神の膂力が押さえ込めるモノではないッ!

 

「はあアアアアッ!」

 

「何ィッ!?」

 

 巨大な捻れと言う形で生まれたビックバンエネルギーは、護国の化身と化した二振りの『群蜘蛛』を弾き飛ばすッ!

 

「──貰ったッ!」

 

 地面に着地した弦十郎は即座に地面を蹴り──音速を超えた速度による移動を実現。

 更にその音速移動のパワーに音速の拳が加わる事で……最高到達速度は第一宇宙速度を超える!

 

「──」

 

 弦十郎は加速のために手刀としていた拳を握りしめ、遂に必殺の拳は訃堂の腹へと──。

 

「来いッ、我が命ッ!」

 

「ッ!」

 

 直後、その第一宇宙速度の拳と……()()()()()()()()の『群蜘蛛』が正面衝突する。

 時空が歪むような異音が両者から鳴り響き──互いの身体が吹き飛ばされる。

 

「何故『群蜘蛛』がッ──」

 

「分からぬかッ!」

 

「!?」

 

 その有り得ぬ超常現象に弦十郎が驚愕していると──訃堂の声が鳴り響く。

 

「『群蜘蛛』こそ護国の化身……そして、儂もまた護国の神。故に我等は一心同体。離れる事能わずッ」

 

「……そう言う事かッ!」

 

「そう言う事よ……!」

 

 どう言う事なのかは分からないが、つまり訃堂と『群蜘蛛』は例えどれだけ離れていようとすぐに手元に呼び寄せることが可能なのだ。

 恐らくはそれもまた『護国の力』の権能の一つ。

 

「……我が命……我が力。弦十郎よ……美しいとは思わんか」

 

「……」

 

 若々しい姿へと若返った訃堂は……その自らの権能を恍惚とした表情で語ったかと思うと、群蜘蛛を見せつけながら弦十郎へと語りかける。

 

「……弦十郎よ。何故あらがう。何故戦うッ! 儂こそが護国の化身であるというのに……!」

 

「……あんたには幾つも令状が出ているッ! 大人しくお縄に掛かって貰う!」

 

「……お縄だと?」

 

 訃堂は弦十郎のその至極真剣な言葉に……大口を開けて笑った。

 

「くっ……はははは! 神と至った儂を……人の法で裁くというかッ!」

 

「応ともよッ! あんたはあくまでも……ただの国を乱すテロリストとして逮捕してやるともッ!」

 

「──能わず。その様な世迷い言……二度と言えぬようにしてやるわッ!」

 

「はっ、なら二度と言わなくて済むよう……これっきりであんたを捕まえてやるさッ!」

 

 遂に、彼らの一挙一動は音速を超え。

 

 故に……誰もが気付けないで居た。

 

 ()()()()()()を。

 

(……くっ!)

 

 戦いの最中、常に感じるチリチリとした焦燥感。

 それは有効打を悉く弾かれることと……何より『護国の力』を使わせてはならないと言う縛りに起因する。

 

 ……そう。弦十郎は目撃していた。

 『護国の力』が光の剣と化し、一つのビルをまるごと吹き飛ばしたと言うことを。

 

(アレは最早反応兵器の域にあるッ! しかも……あのビルの一撃も、先程彼等(マネモブ)に使ったアレも……まだ底を感じさせないッ)

 

 それに戦いが長引けば長引くほど……訃堂は躊躇いなくあの火力を解放すると言うことが弦十郎には手に取るように分かってしまう。

 故にこその焦り、故にこその歯がゆさ。

 

「っ……!」

 

 手が足りない……と。

 彼の戦闘勘は告げていた。このままではジリ貧になると言うことを。

 

 直後。

 弦十郎は不可視の速度の拳を訃堂へと叩きつけ、宙に浮かせる。

 

「るあああああ!」

 

 ボボッという拳音が遅れて聞こえてくるほどの攻撃。

 一撃一撃が必殺の威力を持っているが、二振りの『群蜘蛛』による受け流しは鉄壁。

 

 何より……その二振りは見せ札として大きすぎる。

 

 故に。

 

「っ!?」

 

 鋼鉄の如き強度の蹴りが弦十郎の脇腹に突き刺さる。

 

 しかし。

 スーツによる防御力と本人の超硬合金並みの強度の身体が即座の仕切り直しを可能とする。

 

「はっ!」

 

 お返しに放った蹴りは、確かに訃堂の顔を掠め……訃堂の顔面に横一文字に切り傷を刻む。

 

 だが。

 

「──果敢無き哉。神を殺す一撃でなければ……儂には通じぬわッ!」

 

「……神の力……!」

 

「神の力に非ずッ! この力は護国を為すための……護国の力と心得よッ!」

 

 即座に『神の力』を開帳し、その傷を並行世界の別の風鳴訃堂へと押しつける。

 

「……」

 

 このままではジリ貧だ。

 

 だから……『神殺し』までとは言わない。

 せめて自身と同じほどの実力者でもいれば──。

 

 だが、弦十郎クラスの実力者がそうそう湧いて出るワケがない。そんなこと有り得ない話だ。

 

 そして、弦十郎が考えて居ること等……訃堂もまた考えて居た。

 

 自身の『護国の力』を警戒していること、増援が欲しいこと。

 それを分かっているからこそ……訃堂はほくそ笑む。

 

 何故なら。

 

「くくく……!」

 

 自身に有効打を与えられる『神殺し』でありつつ。

 更にはこの超速の戦闘に付いてこられるほどの技量もあり。

 尚且つ訃堂と戦うほどの理由がある存在など……有り得ない。

 

 天文学的確率でしかそんな都合の良い存在は現れない。

 そんな都合の良い奴が現れたら鼻でスパゲッティを食べても良いと言えるほど……有り得ない。

 

 訃堂はほくそ笑む。

 このまま攻めていけば確実に勝利できる、と。

 

 故に。

 

「果敢無──!?」

 

 ドゴォンッ、という無慈悲な超質量の一撃。

 

 その意識の外からの攻撃を──避けることは敵わなかった。

 

「!? 何だアレは……!」

 

 その弦十郎にすら悟らせなかった一撃は、ステルスとは相反する様な巨体から生まれ……訃堂を確かに地面に叩きつけている。

 

 だが。

 直後には眩いばかりの光の剣が立ち上り、護国の邪魔となる存在を正に一刀のもと消し飛ばす。

 

「──! あの光ッ……不味いッ! 脱出しろッ!」

 

 弦十郎はあの武装に覚えがあったアレはブラックボールの兵装……『ロボ』である。

 その操作は中に入り込んでのモノとなるため、当然アレにも人が乗っている。

 

 だが。

 

「! 脱出した……! ヒイロくんか!?」

 

 弦十郎の言葉によるモノか、それとも操縦者本人の嗅覚によるモノか。

 即座に脱出を果たし……飛行ユニットで宙を飛んでいる。

 

 全身をハードスーツに包まれた彼は……手元の巨大な銃を光の剣の元へと向ける。

 

 ──そこには、額から血を流した訃堂の姿があった。

 そして。

 

「ぐううっ! 小癪──ぬぅあッあ!?」

 

 間髪入れずのZガン連射。

 ドドン、ドンッ! というZガン特有の叩きつける音が鳴り響き──訃堂を更に地面へと埋めていく。

 

 しかし。

 

「──我が双肩に重くのしかかる先達の護国への期待」

 

「……」

 

「それに比べれば……軽いモノよッ!」

 

 訃堂は……Zガンによる叩き付けを即座に克服した。

 直後。

 

「──貴様かぁっ!」

 

 訃堂は『護国の力』を剣戟として宙を舞う男へと叩きつける。

 

「──!」

 

 光の剣を避けきれないと悟った男は即座に飛行ユニットを捨て、身体を地面に投げ出す。

 完璧な受け身を取って即座に立ち上がった男は、その巨大な腕を構え……訃堂へと向ける。

 

 それはつまり、訃堂への宣戦布告に他ならない。

 

「……君は…………いや、ヒイロくんでは無いな」

 

「……」

 

 男は弦十郎の言葉には応えない。

 けれど男は、自身の巨大な腕へと軽く顎をしゃくってから尋ねる。

 

「──武器、要るか?」

 

「……」

 

 たった一言だけの短いやり取り。

 だが……それだけで弦十郎は分かった。

 

 弦十郎は……ヒイロから聞いていた事を思い出す。

 それは彼が着ている『ハードスーツ』の特徴。

 

 四つの部品に分かれており、それぞれを個別に使うことが可能であると言うことを。

 そして……ブラックボールの転送は、小さければ小さいほどすぐに終わると言うことも。

 

「……」

 

 多くを語らず、けれど彼は理解した。

 目の前の男の正体を。

 

 求めて止まなかった……援軍であると言うことを。

 

「……」

 

 だが……武器。

 

 弦十郎に武器が必要だろうか?

 

 否。

 銃も、剣も、弦十郎には不要の産物。

 

 ──であるならば。

 

「……ああ!! 腕だけで良い……転送してくれッ!」

 

 彼の長所を伸ばす事こそが……今最も有効である選択に他ならない。

 

 ジジジ、と言う音共に転送が始まり……およそ十秒ほどで腕の転送は終わるだろう。

 

「──ぞろぞろぞろぞろと……また護国の邪魔をする者が……!」

 

 しかしそれを待ってくれるほど訃堂は甘くない。

 

 故に。

 

「……風鳴訃堂」

 

「貴様もまた……むざむざ殺されに来たかッ!」

 

「……あまり俺を舐めとくと痛い目見るで」

 

「……ほう?」

 

 ドンッ、という力強き足音が……鳴り響き、男。

 

 ……いや。

 

 ()()()が動く。

 

「今の俺に何処か隙があったらなーどっからでも掛かって~~」

 

 ハードスーツが駆動し……チュィィィィっと言う独特の起動音が鳴り響き。

 

「こんかいっ!」

 

 ──彼の戦闘準備は完了する。

 

「──果敢無き哉」

 

 訃堂はあくまでもその及び腰のような構えをあざ笑い……駆ける。

 

「俺はこう見えても学生時代…………」

 

 だが、岡八郎は引かず。

 

「遅いわッ!」

 

 そして。

 

「──ピンポンやッとッたんやッ」

 

「!?」

 

 その鈍重な見た目からは考えられない──弦十郎の如き一撃(アッパー)を訃堂の顔面に喰らわす。

 

 訃堂の身体が宙に浮き、間髪入れずに岡はハードスーツの両手を青白く灯らせる。

 

「言うとくけど空手やッとるんや………」

 

「ぐうっ、この痛み、貴様──」

 

 命の危機に、しかし訃堂は動かない。

 ……いや、()()()()

 

「通信教育やけどなァッ」

 

 直後、ハードスーツから放たれた光が……訃堂の身体を撃ち抜いた。

 

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