GANTZ:S   作:かいな

81 / 103
総力戦

 風鳴本邸。

 そこでは死闘が行われていた。

 

「はァっ!」

 

 巨大な腕部が訃堂へと迫り──。

 

「かああっ!!」

 

「!?」

 

 しかしそれも二振りの『群蜘蛛』に弾かれる。

 

「くっ……二人掛かりでもかっ!」

 

 達人同士の連携が生み出す攻撃は嵐の如き連撃。

 だが……それですら訃堂は、徐々に対応し始める。

 

「! 避けろッ」

 

「!?」

 

 ──恐れていた事が起こり始める。

 

「──キレの良い奴……頼みますッ!」

 

 訃堂のその言葉に呼応するように……腕輪から光が迸る。

 その光は実体を伴い、無限軌道を描いて四方八方縦横無尽に飛び散った。

 

「おおおっ!?」

 

 彼等はどうにか身体を動かして、その円盤状の光を避けていく……が。

 

 視界一杯に広がる弾幕は厚く……弦十郎と岡を持ってしても全てを避けきること能わず。

 

「ぐうっ」

 

 弦十郎はハードスーツの両腕を。

 

「っ──」

 

 岡はハードスーツを捨て。煙幕を張ることで光の円盤からどうにか逃げ切る。

 

「……」

 

 武器を失ったこと。

 何より……訃堂の放った未確認の攻撃。

 

 一瞬にして形勢は……弦十郎達にとって不利な状況となる。

 

「馴染む……実に馴染むぞッ!」

 

 今、この場の主導権を握っているのは、正しく風鳴訃堂であった。

 ただの一撃で戦況を一変させた未確認の攻撃は……質、量、共に最高峰。

 

「……くっ……この技は……!」

 

 だが弦十郎にはこの技に覚えがある。

 既に朧気となった記憶だが、確かに覚えている。

 

 それは確か、まだ本家に居た頃に……。

 

「──そうだ。これは風鳴家先祖代々より受け継がれし護国技が一つ……『八裂旋風』」

 

「……!」

 

 そこまで言われて、ようやく弦十郎は思い出した。

 しかしその気付きは逆に更なる疑念を呼び起こす。

 

 そう。弦十郎の知っている『八裂旋風』と訃堂の放った一撃。

 それがまるで違っていた。

 

 確かに、先程の弾幕は『八裂旋風』の面影を感じさせる技ではあった。

 

 ……だが、本来であれば『八裂旋風』はただ丸鋸状の衝撃を飛ばすだけのモノでしか無い筈だ。

 あのような無限軌道の様な動きも、ましてや弾幕を張れるような技では無い筈──。

 

「……そうか、そう言う事か」

 

「! 何か分かったのか、岡ッ!」

 

 そんな弦十郎の疑問に答えるように、岡は即座に口を開く。

 

「『神の力』や。シンフォギアを纏って技を放つのと同じように……あの『八裂旋風』には『神の力』が宿ッている」

 

「……」

 

「だから丸鋸状の衝撃を飛ばすだけのモノでしか無い『八裂旋風』があれ程の量と破壊力を伴った技となッた……」

 

「……」

 

 岡のその推察は正しく、正にあの一撃は『神の力』の発露。

 弦十郎は一瞬何故部外者が『八裂旋風』の詳細を知ってるんだ? と思ったが……そんな些細な疑問は即座に捨て去って前を向く。

 

「……そうか……ではつまり……!」

 

「……ああ。恐れていた事態や」

 

 ──そう。

 『神の力』を手に入れた訃堂であったが……さしもの彼でさえ、あまりにも膨大で強大な『神の力』に振り回されていた。

 故にその行動は繊細さに欠け、何度も攻撃を食らってしまうという訃堂にあるまじき状態に陥っていた。

 

 けれどそれももう過去の話。

 訃堂は強大な力を、確かに掌握しつつあった。

 

 先程のあのデタラメな弾幕技もまたその発露。

 

 恐れていた事態。

 それは──。

 

「児戯は終わりだ……不肖の息子よ」

 

 訃堂が完全なる神へと至ろうとしていると言う事。

 

「──来るぞッ」

 

「おうッ!」

 

 風鳴訃堂。

 彼は一分一秒、今この瞬間も進化し続けている。

 

 きっと何時か、岡と弦十郎でさえ抑えきれない瞬間が確実に訪れるだろう。

 

 だからこそ。

 

(……皆……頼んだぞッ)

 

 弦十郎はその命を捨てる覚悟を持って、戦いに臨む。

 

 ──そして、()()()()は訪れる。

 

「っ──!」

 

 そこは正に光の世界。

 

 どれだけ避けようとも、無限に放たれる技の数々が二人を追い詰めていく。

 

 光の剣が柱と建ち並び。

 超高温の炎が煌々と燃え。

 幾多もの光の輪が無限軌道を描き。

 

「──」

 

 最早訃堂は何も語らずに月夜の天に立つ。

 

 『護国の神』へと洗練されつつある訃堂は、次第に無感情に、無表情に外敵を退ける為の技を放つ。

 

 連綿と受け継がれてきた護国の技が、今真なる神技へと至り。

 

「っ、おおおおおっ!」

 

「あああああッ!」

 

 その神技を潜り抜け、来た二人を──。

 

「──果敢無き哉」

 

 二振りの『群蜘蛛』にて、彼等を地面へと叩きつける。

 

「ぐアッ!?」

 

 右腕を叩っ切られた弦十郎は地面へと叩きつけられ……全身の骨が砕かれる。

 

「ようやく動きを止めたか……弦十郎よ」

 

「ぐっ……」

 

 訃堂は自身の『群蜘蛛』に目を移し……その手に響く感覚から、右腕を犠牲に必殺の一撃を逸らしたことを悟る。

 

 そして。

 

「……」

 

()()も随分としつこい」

 

「チッ」

 

 ステルスを用いた岡の一撃を、『護国の力』で受け止める。

 直後、『護国の力』を乱雑に放ち……岡の周囲を囲む。

 

 『神殺し』が放つ攻撃は全て訃堂にとって不都合を呼び起こす。

 

 故に……『護国の力』は岡の身体を吹き飛ばす。

 

「ッ──!?」

 

 電光が迸り、岡は両手両足を吹き飛ばされながら地面へと転がる。

 

「弦十郎。浅黒の男。貴様達だけは……護国のために確実に殺す」

 

 そんな光景を無感動に見ていた訃堂は……両手に携える二振りの『群蜘蛛』に極光を纏わせていく。

 

 それは先程の牽制程度の『護国の力』とは比べるまでも無く。

 

 これから放たれるであろう一撃は『マネモブ』を纏めて葬った一撃……いや、『企業』を吹き飛ばした一撃と同程度の輝きが束ねられていた。

 

 『護国の力』……護国災害派遣法を元に築き上げられたその力の『脅威』判定は護災法と同じく非常に曖昧だ。

 故に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 光の剣は……既に無力化しているに等しい二人であれ、確実に焼き払うだろう。

 

「……ふっ」

 

 それを理解している岡は、随分と久しぶりに……()()()

 

 彼の求めていた強者とのギリギリの戦い。

 そう、この戦いは正にギリギリの戦いだッた。

 

 だが……彼の望みはギリギリの戦いと……『勝利』だ。

 彼は死ぬことを求めていたわけでは無い。

 

 ……で、あるのなら。

 

「──散華せよォッ!」

 

 何時ぞやの超能力者に放ったように……光の剣が極光となって倒れた二人へと突き立てられる。

 

 ──しかしコレは……負けでは無い。

 

「……行け。シンフォギア」

 

 彼の言葉に呼応するように……黄金が戦場へと舞い降りる。

 

 

『作戦はこうです』

 

 エルフナインの言葉が装者達の間で鳴り響く。

 

『まず……()()()()絶対に攻撃をしてはいけません』

 

 それは本作戦の肝心要の要素。

 立花響の誰かと手を繋ぐための『アームドギア』。それを攻撃と判断させないための前提条件。

 

『そしてその決戦機能……仮に『アマルガム』、と呼称しますが──』

 

 次いで語られたのは、錬金術とシンフォギアの融合症例。

 合金という意味を持つ『アマルガム』の名を与えられた決戦機能には、二通りの状態が存在する。

 

 ギアを構成するエネルギーを防御シールドへと全振りする『コクーン』形態。

 『コクーン』形態と相反する様に攻撃へと全振りする『イマージュ』形態。

 

『響さん以外の皆さんは『護国の力』を分散させるため……『イマージュ』形態で牽制を行ってください』

 

 そう言った最低限の説明と共に、作戦は開始され。

 

「──今度は何だッ!」

 

 今、黄金と光が衝突し……『護国の力』はまるで困惑するように散らばっていく。

 

「ぐうっ!? 何だこの衝撃ッ!」

 

「でもっ! 確かに光の剣は散っていくッ!」

 

「つまりは読み通りッ! 行くぞ、皆ッ!」

 

 『護国の力』。

 守るための力であり……迫る脅威に対しては絶対なる力を持ち、確実に国を守護する。

 

 ──であるのなら。

 元より防御全振りの『コクーン』と『護国の力』の相性は最低最悪!

 

「──小娘共がッ! 何度やろうとも……結果は変わらぬわッ!」

 

 だが訃堂の力はそれだけでは無い。

 目覚めた神としての力を解放し、護国技を開帳──。

 

「!?」

 

 する事は敵わない。

 何故なら。

 

『撃て撃て撃てッ!』

 

「しゃあっ! タフ・ガンッ!」

 

「おらーっ!」

 

 神殺し達を筆頭に、()()()()()()()()()()もまた一丸となって皆武器を構えて訃堂へと乱射していく。

 

「あああっ!」

 

「終われぇえええ!」

 

 ギョーン、ギョーンという奇妙な音と共に訃堂の身体へと破壊が迫る。

 しかし。

 

「貴様等ァッ……まだ邪魔立てするかァッ!」

 

 黒スーツ達の攻撃。それは本来で有れば幾らでも受けれるモノでしかない。

 けれど彼等の攻撃は『神殺し』達の攻撃との見分けが非常に難しい。

 

「チィッ!」

 

 故に訃堂は『護国の力』を即時開帳し、自身の身体を全力で守らなければならなくなる。

 直後。

 

「! 銃がッ、ァッ」

 

 黒スーツ達の武器が次々に破壊され……一部の者は身体すら脅威と取られたのか、腕や身体が破裂していく。

 

 だが。

 

「それでもっ、撃ち続けろッ!」

 

「ああっ!」

 

 それでも彼等は攻撃するのを止めない。

 

「チィッ! 小癪なッ!」

 

「撃てッ! 撃ち続けろッ!」

 

 ──彼等の脳裏にあるのは……先程の作戦会議。

 

 彼等は、装者達から協力の要請を受けていた。

 

 それは、訃堂の注意を引くための陽動である。

 当然危険も付き纏う。

 

『──お願いします。この作戦が有効打となるのは一度切りなんです』

 

『……君達は……』

 

『……いきなりこんな危険なことを頼み込んで御免なさい。でも……どうかお願いします』

 

『……』

 

 彼等は……揺れていた。

 何を信じれば良いのか、何故戦わなければいけないのか。

 

 戦う理由も何もかもが宙ぶらりんになって、彼等は困惑していた。

 

「ッ……!」

 

 ──でも。

 

 彼等はそれでも銃を持って、戦場へと赴く。

 何故なら。

 

「あんな……俺等より年下の子も頑張るってンだッ!」

 

「俺達が戦わねぇ訳にはいかねぇだろッ!」

 

「それに俺ッ! 風鳴翼のファンだしッ!」

 

「俺マリアのファンッ!」

 

 ──戦う理由なんて、それだけで十分だから。

 

「行くぞ皆! 勝機を勝ち取るためにッ!」

 

 そして。

 真打ちのシンフォギア達はその形態を攻撃形態へと変形させる。

 

「応よッ!」

 

「デデデース!」

 

「『護国の力』に隙を与えるなッ! 攻め続けろッ」

 

 『イマージュ』形態。

 その攻撃の破壊力は凄まじく、それらの攻撃もまた『護国の力』の働きを阻害させるに足る威力。

 

「ハアッ!」

 

 それは翼の蒼い炎を纏った『天羽々斬』。

 その痛烈なまでの振り下ろし。

 

「喰らいやがれッ!」

 

 それはクリスの巨大な弓の形をした『イチイバル』。

 その鉄をも砕く弩の一撃。

 

「私達の!」

 

「連携でッ!」

 

 それは調と切歌の、『イガリマ』と『シュルシャガナ』の合体技。

 巨大な虎挟みと化したギアは躊躇いなく『護国の力』へと噛みついて。

 

「切り開くッ!」

 

 それはマリアのドラゴンのような形へと変形した『アガートラーム』。

 その咆哮は莫大な熱量を以て『護国の力』を突き穿つ。

 

 その怒濤の火力による連続攻撃は確かに、『護国の力』を五つに引き寄せる。

 

『皆さんッ! コクーン状態へッ!』

 

「──了解ッ!」

 

 そして。

 即座にコクーン状態へと移行することにより……その衝撃を可能な限り低くさせる。

 

「ぐうっ……!」

 

 かなりの衝撃と負荷がギアへと重くのしかかる。

 だが、それでも『護国の力』を受けきることに成功。

 

「よし! もう何度か嫌がらせしてやるデース!」

 

 そう。ここまでは計画通り。

 けれどこれは──。

 

「貴様等……ッ! いい加減にしろォッ!」

 

 計算外の訃堂の怒りである。

 その怒りは力と変わり、『護国の力』の出力が最大となる。

 

 そして。

 

「!? 調ッ──」

 

「えっ……」

 

 それに切歌が気付けたのは奇跡か、運命の悪戯か。

 ドンっ、と調を突き放し……その身で『護国の力』を受けきる。

 

 しかし追加攻撃の対象は何も彼女達だけでは無い。

 

『ぐうっ!?』

 

『何だっ!? いきなり光がッ!』

 

『ギアが軋む……ッ!』

 

 装者達が、黒スーツ達が、今この戦場で戦っている者達が。

 神の怒りを買った者、皆に等しく力は降り注ぐ。

 

 その中でも、一際ダメージを負ったのは──。

 

「があっは……!」

 

 二人分のダメージを受けきった切歌であった。

 

『──切歌さんッ!?』

 

「切ちゃんッ!」

 

 埒外の攻撃にコクーンが弾け飛び、瞬間切歌は無防備となる。

 

「一人崩れたか……シンフォギアッ!」

 

 そう言って無造作に群蜘蛛を振るい、『護国の力』を無防備な切歌へと放つ。

 

「っ──!?」

 

 その力は光の剣となり、少女の身体を──。

 

『──切歌ッ!』

 

「……え?」

 

 貫くよりも早く、ヒイロが切歌の前へと躍り出る。

 

『ゼロスーツッ!』

 

 光の剣と相対した防御フィールドは即座に軋みを上げ、呆気なく敗れる。

 

「クソ産廃武器めッ!」

 

 けれど数瞬は時間を稼いだ。

 悪態を吐きながらもヒイロは切歌を抱きしめ、即座にその場から離脱する。

 

 そして。

 

「──おいッ! 大丈夫かッ!」

 

「……え? あ、え……っと……」

 

 ヒイロは切歌を地面に下ろして、身体に傷が無いかを確認する。

 ジロジロと上から下まで確認したヒイロは……傷が無いことにホッと小さく息を吐く。

 

「……大丈夫そうだな……」

 

「……」

 

 だから彼は気付かなかった。

 あっさりと死んだ変声機能の事や、切歌の……その視線にも。

 

「……だが、一応お前は後ろに下がって──」

 

 故に。

 

「……ひーろー?」

 

「……」

 

 ヒイロは切歌からの不意打ちの言葉に……動きを止めてしまった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。