GANTZ:S   作:かいな

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フィナーレは目前

「……こ、ここが月……」

 

 転送が終わり、皆興味深そうに月遺跡を眺めていた。

 

「ほへー……地球があんなに遠くに……」

 

「地球って本当に青かったんだな……」

 

 立花さん達は遺跡の窓に映っている外の景色を感動したように眺め。

 

「空気はある。むしろ美味しい」

 

「説明されていたとはいえ、正直ちょっと息を止めてたデス」

 

 マリア達この遺跡の空気を堪能していた。

 と言うかキリカお前……。

 

「俺の信用低くね?」

 

 アレだけ空気はあるから大丈夫だって言ったのにそんなことしてたのかよ。

 ちょっと悲しい思いを抱きながら語りかけると、キリカはツーンと唇を尖らせながら辛辣に言葉を返してきた。

 

「私をずっと騙してきた事を思い出して欲しいのデスけど?」

 

「……」

 

「しかも……増えてるし……!」

 

 そう言ってキリカは目を怒らせて、俺の手元のテレポートジェムを睨み付けた。

 

「いや……テレポートジェムは増えてないが」

 

「テレポートジェムのことを言ってるんじゃ無いんデスッ!」

 

「は、はぁ……」

 

 そう思いながら手元に視線を落とすと……そこには二つのテレポートジェムがあった。

 

「……」

 

 ──思い出されるのはつい先程の……転送が始まる前のことだ。

 

 

「──なぁ」

 

「ん?」

 

 俺が彼女達の申し出を受け入れた後……雪音さんが何やら神妙な顔で此方に話しかけた来た。

 何か言いたいことでもあるのか……? と思っていると、彼女は恐る恐ると言った感じに此方を指差してきた。

 

「……それ。わ、私達も着なきゃならないのか?」

 

「……え? スーツの事か?」

 

 俺がそう答えると……何故か、皆びくりと動きを止めた。

 まるで俺の答えが気になって気になって仕方が無いとでも言うように。

 

「……別に……無くても良いけど」

 

「……! そ、そうか。なら良かった」

 

「……?」

 

 特に黙ってる事でもないので普通に答えると、装者達は皆ソレはもう安心したと言わんばかりに息を吐く。

 流石にそこまで拒否されると少し悲しくなる。

 

 こう見えて『企業』が手を入れた武器達と違って、純正のブラックボール兵器の評価は中々良い。

 なにせ故障しないし安定性で言ったら抜群だからな。

 

「なぁ……そんなに嫌か? このスーツ」

 

 だからこその問いかけだったが、雪音さんはそれはもう本当に嫌そうな表情で語り出す。

 

「そりゃ嫌だわッ! ピチピチだし真っ黒だし……コスプレみたいじゃねーか!」

 

「え?」

 

 あんたらが今そこを気にすんの?

 彼女達が戦う時の格好を思い出して思わず突っ込みを入れようとしてしまったが……すんでの所で言い淀む。

 

「いや、シンフォギアで戦う時も十分コスプレみたいじゃねーかよ」

 

 言い淀め無かった。

 けどコレは突っ込むなって方が無理だろ!

 

 コスプレだよアレは。

 しかもシンフォギアも十分ぴっちりじゃねーか。

 

「はぁっ!? シンフォギアがコスプレだって!?」

 

「言っちゃ何だがコスプレだろアレは! それに! 布面積で言ったらスーツの方が圧倒的だ!」

 

「ぐっ……」

 

 当然のように言い返してきた雪音さんだったが、シンフォギアの装甲の中でも最も目に余る布面積の話をすると、一瞬で言い淀んで撃沈した。

 いや……あんたも気にしてたのかよ。

 

「……まぁ。シンフォギアの姿がどうのこうのは置いておくとして」

 

 話が進まないと判断したのか、マリアは一度仕切り直したようにそう言ったかと思うと……俺の方を見て言葉を続けた。

 

「実際、戦闘を行うに当たって……私達はそれを着た方が良いのかしら。聞いた話では……()()()()()()()()()()()()()ようだけど」

 

 それは俺がS.O.N.G.に渡した情報よりも……ずっと検証が進んでいる話だった。と言う事はエルフナインから聞いた話なのだろう。

 

「……ああ。それに関しては──」

 

 そう言って口を開くも、今からする話は全て聞いた話でしか無い。

 別に俺はシンフォギアにも完全なんちゃらにも明るいわけではない。

 

 だから上手く説明できるか不安だったのだが──。

 

「──面白いことしてるワケだ。なぁ……ヒイロと不法侵入者共」

 

「!?」

 

「あ、プレラーティ」

 

 丁度良いところに……俺にそれ系の話をしてくれた先生(プレラーティ)が現れた。

 彼女は片手にビニールの袋を携えており、何かの買い物に行って居た事が見て取れる。

 

「……」

 

 俺は、彼女のそんな庶民間溢れる姿に一つ疑問を抱いた。

 ……そういや、俺が岡の足止め行ってた間コイツ何してたんだ?

 

 ここに居るって事は結社に帰ってた訳じゃないし……。

 

「まあいいや。丁度良いところに来てくれた。一つ頼み事していいか?」

 

「あん? ……丁度良いところ?」

 

「ああ。彼女達に……スーツとシンフォギアの同時利用について教えてやって欲しい」

 

「……」

 

 そう頼むと、プレラーティは露骨に嫌そうな顔を浮かべた。

 苦虫を噛み潰したように表情を顰めて此方を睨み付けてくる。

 

「はぁーん? 何で私がそんなこと……と言うか、何でその歌女共がここに居るワケ?」

 

「ああそれは……」

 

 彼女のその疑問にペラペラとここまでの経緯を語り出す。

 

 一先ず日本国内の内乱が治まったこと。

 それに伴って俺が月遺跡に乗り込むことを決めたこと。

 

 ……それで、なんやかんやあって……今彼女達に協力を要請していること。

 その為の説明をしようとしていた時にプレラーティが帰ってきたこと。

 

 それらを全て伝えきると、プレラーティは顰めっ面をあきれ顔に変えていく。

 

「……お前……本気で一人で行く気だったワケか」

 

「……まぁな」

 

「……で。コイツらに絆されて一緒に月に行くことになったと」

 

「……ああ」

 

「……」

 

 確認するかのように俺に聞き返してきたプレラーティは、一度そこで言葉を句切って俺の目をジッと睨み付けてくる。

 

「……?」

 

 だが。

 何なのかよく分からないで居る俺が首を傾げると……彼女はまた息を吐いて頭を掻いた。

 

「……チッ。まぁ良いだろう。説明してやるワケだ」

 

 心底嫌そうな表情のままだったが、彼女は特に言葉を濁すこと無く話しはじめた。

 

「お前等が纏うシンフォギアとスーツの相性問題。その理由は非常に簡単なワケだ」

 

 そして語り出すのは、彼女達が俺にした説明と何一つ違わないモノ。

 

「それはつまり……シンフォギアと完全聖遺物の関係に当たるワケだ」

 

「……完全聖遺物?」

 

「ああ。コイツの纏っているスーツやその他武器は……一種の完全聖遺物と言える」

 

「……!」

 

 彼女の説明に装者達は一斉に目を丸くさせる。

 正直俺にはそこがよく分からなかったが、やっぱり凄いモノなのだろうか。

 

 完全聖遺物ってようは、昔の伝説の武具とかの事だろ?

 過去の……言っちゃ何だが性能の低い、シンプルな武器がそんなに凄い力を持つモンなのか?

 

 やっぱり……『神』が何か関係しているのだろうか。

 

「お前等もご存じの通り、シンフォギアが完全聖遺物に長時間触れていると『暴走』状態を引き起こす可能性が有るワケだ」

 

「……暴走」

 

「お前等が色々と手を加えたシンフォギアなら、そんな厄介なリスクを負わずとも強化出来るパーツは幾つか有るワケで……得られるリターンに対してリスクが高いというどうしようも無い問題が有るワケだ」

 

 俺のどうでも良い考察が脳裏で行われている中、プレラーティは説明を終えていた。

 

「まぁ、そう言う事だ。だから此方から無理に着ろとも着るなとも言わないが……欲しいなら用意しよう」

 

「……いや、結構だ。此方は此方で戦うとしよう」

 

 一応彼女達皆に問いかけて見るも、当然というか何というか……スーツは要らないと両断された。

 ま、俺としても彼女達にスーツは要らんと思ってた。

 

 そう思いながらも……ガンツを使って現在時刻と、月と地球の位置を確認する。

 

 地球の……日本の真上から少しズレた所に月が差し掛かろうとしている。

 

 ……もうそろそろだな。

 

「そうか。じゃあ次は作戦の話を──」

 

 細々とした説明を話していたら思っていたよりも時間を食った。

 故に、すぐにでも作戦を装者達に伝えようとした……その時だった。

 

「──おい、ヒイロ」

 

 プレラーティが、何時になく真剣な表情で俺を見つめていた。

 

「……プレラーティ?」

 

「行くんだな……ヒイロ」

 

「……ああ」

 

 俺がそう答えると、彼女は暫く無言で何かを待つようにして居たが……フッと力を抜くように小さく笑った。

 

「なら、私も連れて行くワケだ」

 

「え?」

 

 ──そして唐突にとんでもない事を言い出した。

 

「……フッ……っふふ。冗談、冗談なワケだ」

 

 プレラーティは俺の気の抜けた言葉が余程面白かったのか、クスクスと笑いながら腰を曲げて煽るように此方を下方から睨め付けてくる。

 

「……おい」

 

「そーんなに怒らなくても良いワケだ。お前の言うとおりにコイツらに教えてやったろ?」

 

「……」

 

 しかしそれを言われると弱いのは此方で有る。

 大人しく彼女のからかいを受け入れることにする。

 

 ……だが。

 

「……ま、私も私で……結構忙しいし。カリオストロは100時間連勤中だし。お前に頼まれたところで一緒には行けぬワケだが」

 

「……プレラーティ?」

 

 彼女は何処か寂しそうにそう言ったかと思うと、懐から何かを取り出した。

 

「……だから。コレはちょっとした餞別なワケだ」

 

「……コレは……」

 

「テレポートジェム。転送座標を設定できる普通のモノと、()()()()()()()()()だ。まぁ、お守り代わりに持っておくワケだ」

 

 そう言って俺に二つのテレポートジェムを渡したプレラーティは、サッと俺から離れて……そのまま手を伸ばす。

 

「帰ってこいよ」

 

 ……そうだ。

 何だかんだで……コイツには世話になりっぱなしだった。

 

 

 

「ああ。また会おうぜ……親友」

 

 俺もまた彼女へと手を差しのばして……小さい手を軽く握る。

 

「……じゃあな」

 

 そして。

 彼女は小さく笑みを浮かべて……静かに結社へと戻っていった。

 

 

「……」

 

 プレラーティ。

 俺はお前のこと……親友だと思ってる。

 

 だから貸し借りは無しだ。

 

「ヒイロさんッ! 次のドローンが来ましたッ!」

 

 絶対に帰って……お前の仕事、手伝ってやるよ。

 

「──ああッ! このブロックを抜ければすぐに『くろのす』の居城だッ! 気を引き締めろッ!」

 

「言われなくてもッ!」

 

 初めての事だった。

 親友、と呼べる奴が出来たのも……心の底から愛した人が出来たのも。

 

 ──それを失ったのも、また。

 

 脳裏に過るのは──母さんと、父さんと、響と。

 

 そして……死んだと聞かされた、和井の顔だった。

 

「……」

 

 GANTZ。

 お前が俺に……与えてくれたモノだ。

 

 もっと話したかったと言う想いも、共に生きていたいと言う想いも。

 もう二度と……それを喪いたくないと言う想いも。

 

「──行くぞッ!」

 

 だから……終わらせよう。

 これっきりで……全てを。

 

 フィナーレは目前だ。

 

 迫り来るドローンを全て蹴散らし──『くろのす』が居る部屋へと突き進む。

 

 そして。

 

「──響」

 

 其処には……俺の愛する人が居た。

 

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