GANTZ:S   作:かいな

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マネモブのその後

~マネモブが部屋に戻ってから~

 

 最後の戦いが終わり、朝焼けに包まれながらその男は帰路へと付いていた。

 漆黒に近い黒髪に、切れ長で冷酷な印象を与える目。その冷酷な印象を更に強める一文字に結ばれた口と、マネキンの様な仏頂面。

 そして見事なまでに練り上げられた肉体。

 

 恐ろしさすら覚える彼の名前は茂部真似人。通称『マネモブ』。モットーは見た目に反して人助け。

 彼はブラックボールの住人であり、神すら殺しうる力を持つ『神殺し』でもある。

 

 強大な力を持つモノは必然的に争いに巻き込まれると言うが、彼もその例に漏れず幾多もの争いに巻き込まれていった。

 そして今日、彼の人生でも屈指の戦いが終わりを遂げ、彼もまた自分の家に帰ろうとしていた。

 

 帰ろうとした……のだが。

 

「……」

 

『……』

 

「……」

 

 彼は今、ストーキングを受けていた。

 しかもストーカーは人間では無い。ロボットだ。

 

「……なぁGKドラゴン。ワシになんか予定があるのん?」

 

『──』

 

「ぴーぴー鳴くだけじゃ何も分からないんだよね」

 

『──』

 

「……本当、何なんだよお前」

 

 そう、ストーカーの名はGKドラゴン。

 マネモブにとっても正直受け止めきれていない、同じ部屋の住人? である。

 

 

~マネモブが部屋に戻ってから その2~

 

 何はともあれ事の経緯を説明せねばならないだろう。

 それは最後の戦いの数ヶ月前のこと。日本最後のミッションとなる『Apocalypse』が終わり、マネモブ達が部屋に帰った後のことである。

 

 ──それはマネモブが六回目の再生を行った時からだろう。その時から新人が訪れることは無くなり、他の住人達が部屋を出たり死んでしまったりした結果、兵庫部屋にはマネモブ達しか在籍していなかった。

 

 これがTOUGH(マネモブ達が勝手に名付けたブラックボールの名前)の意図した事なのかどうなのかは分からないが、ともかく兵庫部屋にマネモブ以外の住人は居なかったはずである。

 

 そのはず、だったのだが。

 

『……』

 

『──』

 

『えっ』

 

『なにっ!?』

 

『な……なんだぁっ!?』

 

『う、うああああ謎のロボが部屋を練り歩いてるッ!?』

 

 何故かそこには二体の謎のロボの存在。

 本来部屋に新人が追加されるタイミングであるミッション前という訳でもなく、ミッション後の新人の追加。それもロボという特例中の特例。

 

 あまりに唐突で、あまりに脈絡の無い作風が違うロボの登場にマネモブ達は完全に動揺した。

 

『え? 本当に何だよコイツら』

 

『ウワァロボだァッロボットじゃねーかッ』

 

『新手の星人か……?』

 

 あまりに驚いてマネモブ達の口調が崩れかかるなか、無慈悲なまでにTOUGH(マネモブ達が勝手に名付けたブラックボールの名前)による今回の採点が始まった。

 

 いてんをはじでぇ~』

 

『ちょッTOUGH!? コイツら無視かい──』

 

トダー

0てん

ここでまなんできなさい

total 0てん

 

『……』

 

『えっ』

 

GKドラゴン

0てん

おまけ

total 0てん

 

『──』

 

『な、なにっ!?』

 

マネモブ

247てん

よろしくね

total 300てん

 

『な……なんだぁっ!?』

 

『あ…新記録……』

 

 謎のロボ、まさかのTOUGH(マネモブ達が勝手に名付けたブラックボールの名前)による住人判定。

 マネモブは混乱に混乱を極めながらも、取りあえず自身を三回追加で再生した。

 

 そして今へと至る。

 

「……」

 

 謎の巨大ロボにストーカーされる事となった悲しき現在を持つマネモブは、現実逃避のような過去回想は止め、とうとう覚悟を決めたようにGKドラゴンと向かい合って語りかけた。

 しかし帰ってくる言葉はぴーぴーと言う謎の鳴き声だけ。

 

 ハッキリ言って何が言いたいのかマネモブにはさっぱりである。

 

『──! ──!』

 

「……トダーは謎に喋れたのに、お前は喋れないのか」

 

『────』

 

「……」

 

 言葉が通じないことに悲しみでも覚えたのか、GKドラゴンは悲しそうな鳴き声と共にその腕? の様なモノを落ち込むに下に向けている。

 そして、そんなGKドラゴンの姿を見てマネモブは少し思うところがあった。

 

「……分かった。何がしたいのかは分からんが、付いてこい」

 

『──! ──!! ──!!』

 

「……」

 

 不承不承ながらに付いてくることを了承したマネモブは、興奮したような様子のGKドラゴンに抱きつかれる。

 何時もはマネキンのように感情が見えないマネモブだったが、今回ばかりは困惑したような雰囲気を醸し出していた。

 

「……変なのに懐かれた……」

 

 軽く溜め息を吐きながらも、マネモブはGKドラゴンを自身の家へと案内した。

 

 

~マネモブが部屋に戻ってから その3~

 

 家……と言う名の巨大な倉庫に着いたマネモブは、早速GKドラゴンとコミュニケーションを取るため倉庫に置いておいたホワイトボードに五十音を書き連ねていく。

 

「よし……GKドラゴン。これで言いたいことを文字を指さしして教えてくれ」

 

『──』

 

 それは言うなればこっくりさんの様な対話方式。

 マネモブに促されるのような形で、GKドラゴンが五十音を指差ししていく。

 

『たのみごと おまえ』

 

「……頼み事?」

 

 そして、いの一番にGKドラゴンが語ったのは……マネモブへの頼み事だった。

 

『いきかえらせて』

 

「……生き返らせて、とは……トダーの事か?」

 

 トダー。

 TOUGH(マネモブ達が勝手に名付けたブラックボールの名前)にそう呼ばれていた人型のロボット。

 彼? は色々と謎に包まれたまま、今回のミッションで殺され? てしまった。

 

『──!』

 

「ま、トダーだよな……」

 

 GKドラゴンがわざわざ生き返らせたいだなんて言う相手などトダーくらいしか思い浮かばなかったマネモブだったが、どうやらその予想は当たっていた様である。

 だが、それが分かったからと言って話が好転するという事では無い。

 

 なにせTOUGH(マネモブ達が勝手に名付けたブラックボールの名前)を使っての再生はタダでは無い。

 命がけのミッションで星人を殺して生き延びて、点数を稼がなくてはならない。

 しかも聞いた話によると、今後受けられるミッションは大抵が海外の高難易度の物のみだという。

 

「……」

 

 それらを踏まえて、正直マネモブがこの話を受ける理由など何一つ無かった。

 ()()()人間なら謎のロボの話など一笑に付して無視することだろう。

 

 だが、マネモブは普通の人間では無い。

 

 機械のような人間。マネキンみたいな男。感情欠落者。

 様々な蔑称で蔑まれてきた茂部真似人は、何かを確認するようにGKドラゴンへと語りかける。

 

「GKドラゴン。お前は何故、トダーを生き返らせて欲しいんだ?」

 

 その問いかけはマネモブにとっても重要な事なのか、何時になく真剣な表情を浮かべている。

 

『すき』

 

「……すき?」

 

『またあいたい』

 

「……」

 

『すき』

 

 そして帰ってきた予想外の返答に……マネモブは言葉を詰まらせた。

 

 それはまるで、少女のような一糸まとわぬ愛の言葉。

 ゴツイ見た目からは考えられないほどの赤裸々な愛の言葉に、マネモブは何処か誤魔化すように顔を背けた。

 

「……ロボにも恋愛感情と言うのは存在するんだな」

 

『──!』

 

 何処か不躾な質問に対し、怒ったように腕を振るGKドラゴン。

 その感情的な姿に、茂部真似人は欠落した表情を小さく緩ませていた。

 

「……すまん。ここに呼ばれたと言う事は……生きてる……と言う事だもんな。少なくともブラックボールは……そう判断した」

 

『──?』

 

「生きてるんだな。お前達も、人並みに。生きていれば誰かを好きになる事くらい………当然のことか」

 

 彼はようやく、目の前の謎の存在を自身の中で定義することが出来た。

 

「──分かった。ワシがトダーの奴生き返らせたる」

 

『──! ありがとう』

 

「まっ! ワシのモットーって()()()やし? トダーも助けられてハッピーハッピーやんケ」

 

 彼はふざけた口調に戻りながらGKドラゴンへサムズアップを掲げ、何処までも無表情にそう言った。

 

 ──茂部真似人。

 彼は、人でなし(マネキン)だ。

 他人(ひと)から人形と蔑まれ、ヒトであり続ける為に死ぬまで人を助け続けた男。

 

 その男の目から見て、目の前のロボは自分よりもよっぽど人間的で……眩しい程に感情的で。

 だから彼はGKドラゴンと名付けられたロボを、人形では無く『ヒト』と定義した。

 

 

~マネモブが部屋に戻ってから その4~

 

 さて、こうして無事マネモブはミッションを受けてトダーを生き返らせることになったのだが……ここで一つ問題が生じる。

 

「でも正直ワシ一人じゃ高難易度ミッ・ションなんてクリアするの不可能に近いんだよね」

 

『──?』

 

 そう、それは全盛期から程遠いマネモブの戦闘力の話。

 

「……退化したと罵ってくれや」

 

『──』

 

 良い感じのことを言い切った割りに情けないことを言い出したマネモブに、思わずGKドラゴンもは? みたいな反応でマネモブにセンサーを向けている。

 だが実際の所マネモブの強みは一糸乱れぬ連携にある。一人になってしまったマネモブが以前までと同じパフォーマンスを発揮できるとは言い辛い。

 

「……」

 

 そこでマネモブはむむっと宛に出来る戦力について思案する。

 ひーろーやお嬢様は元々好き好んで戦う様な住人じゃ無い以上巻き込むのも忍びないし、リーボックは予定が詰まってると言っていた。好戦的な住人で知ってるやつはすでに大体死んでるしで中々誘えそうな奴がいない。

 ……と、マネモブは一人の住人を思い出した。

 

「『拙者ざむらい』なら……誘えるか?」

 

 彼の名は、大阪部屋で『チノちゃん』に次いで2番目の実力を持つ剣士である。

 




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