ガーリー・エアフォースサーガ プロイェクト・ジュラーヴリク   作:フリッカー

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・第一部のあらすじ
ヤリックことヤロスラフ・ギンツブルクは、ザイに対抗する秘密兵器「アニマ」の開発に関わるロシア空軍技術中尉。
苦心の末初めて実戦投入が可能なアニマとして生まれたジュラーヴリクは、治安の悪いロシア軍の中ですっかり口が悪い少女となったが、刷り込みによってヤリックの前では甘えん坊。その一方で、完全な適合機が見つからない事に焦りを抱いていた。
そんな彼女を秘密兵器として完成させる使命を持つヤリックは、いずれ彼女を戦場に送り出す事に複雑な思いを抱くようになり、自分が父親としての愛情を彼女に抱いている自覚を持ち始める。
そんな中、本拠地コムソモリスク・ナ・アムーレを襲来したザイを迎撃するべく、ジュラーヴリクは不完全な機体チューニングのまま出撃を命令される。
ヤリックは未熟なジュラーヴリクに実戦を見せようと自ら操縦を買って出るが、EPCMの干渉によりコントロールを失い窮地に陥ってしまう。
しかし、ヤリックの危機を目の当たりにしたジュラーヴリクが覚醒。今までとは別次元の機動を見せザイを退ける事に成功。
その後、遂に完全なる適合機が見つかり──


ALT.11 退屈な試験飛行

「あーあ、退屈だあ……ザイ来たりしねえかなあ……」

「物騒な事を言うんじゃない、ジュラ。少佐、データは取れていますか?」

 冬空を飛ぶ、灰色のSu-30M2-ANMのコックピット。

 前席で操縦を担当するジュラーヴリクは明らかに退屈そうだが、後席のヤリックむしろは忙しい。

『──。このEPCMポッド──』

「すみません、もう一度お願いします」

『────』

 隣をSu-35Sが1機飛んでいるのだが、無線が途切れて応答できなくなった。

 見える距離だというのに無線が途切れるという異常事態。

 普通ならザイの襲来を疑う所だが、そうではないとヤリックはわかっている。

「すごいな、このEPCMポッドの力は」

 原因は、30M2が腹に抱えている巨大なポッドだった。

 ザイが持つ恐るべき力・EPCMを意図的に発生させられる装置が、この中に入っている。

 この装置の試験が、今回の任務だ。

 残骸から手に入れたこの装置を解明すれば、アニマの戦力強化はもちろん、ザイの謎を解き明かす鍵にもなり得る。

「適切な出力を見極めないと実戦投入できないな──」

 とはいえ、無線が繋がらなくなるレベルでは、試験そのものに支障が出てしまう。

 ヤリックは、ポッドの出力を弱める。

 すると、無線が戻ってきた。

『──試験小隊、バーバチカ試験小隊、こちらカナレイカ。応答せよ。繰り返す──』

 すると、予想していた声とは異なる声が聞こえてきた。

 管制機だ。

 ヤリックはすぐに応答する。

「こちらアリョール2。試験の影響で無線の乱れが起きていました。何かありました?」

『そちらに迫るEPCM反応多数。ザイだ。試験中止』

 ザイ。

 その名を聞いて、全身の毛が逆立つ。

 こんな時に敵襲とは。

 だが、前席のジュラーヴリクは、ははっ、と笑った。

「ほんとに来た! 退屈しのぎにちょうどいいぜ!」

「敵と退屈しのぎなんて問題発言だよ、ジュラ」

「いいだろ? あたしはただ運転手するより戦う方が性に合ってる」

「はあ、君って子は……」

 うきうきしているジュラーヴリクの物言いに呆れていると。

『おしゃべりしている場合か! ポッドを切れ!』

 隣の35Sから注意された。

 直後、警報が鳴り響く。

 ミサイル!

 直後、ヤリックの体を押し潰さんほどの力がかかった。

 30M2が急旋回をしたのだ。

 突然の事で反応が遅れたせいで、頭の血が抜け、危うく意識を持っていかれそうになった。

「ジュ、ジュラ……回避するなら、回避するって言ってくれないと……」

「あ、悪ぃ!」

 上がった息で注意すると、ジュラはすぐに謝った。

 とにかく、戦闘態勢だ。

 ヤリックは指示通りにポッドの電源を落とし、外の状況を確かめる。

 蜃気楼のように不確かな姿が、遠くに見える。ザイだ。数は、少なくとも6機はいる。

 35Sが、早くも先に突入して空中戦を展開し始めているようだ。

「ジュラ、敵が見えるかい?」

「ああ。8機──いや、もっといる。ま、何機来ようと関係ねえけどな」

「関係あるぞ。今武装は必要最低限しかないんだ。まともに相手したら先にこっちが息切れする」

「わかってるって」

 今、30M2には本格的にザイと戦うような重武装はしていない。

 具体的には、ミサイル4発。せいぜい自衛用の域を出ないものだ。

 今は戦闘ではなく試験飛行中なのだから、当然である。

「武装使わなくても落とせればいいんだろ?」

「は?」

「じゃ、行くぜ!」

 ジュラーヴリクが何を言ったのか聞き返す余裕もないまま、30M2は加速した。

 座席にめり込むと思うほどの凄まじい加速。

 ジュラーヴリクのオレンジの髪が、ぼんやりと発光。

 それに共鳴するように、機体の幾何学模様がオレンジに光る。

 直後、加速度がさらに増していく。

 力むヤリックの力さえ、追い付かないほどに。

「蹂躙してやるよっ!」

 ジュラーヴリクが叫ぶと、早くも2発のミサイルが発射された。

 正面に捕らえたザイ2機に吸い込まれていく軌跡。

 それが、やがて炎の花となって炸裂した。

 2発とも命中だ。

「まず2機!」

 ジュラーヴリクの勝利宣言。

 だが、ここで武装の半分を使ってしまった。

 そうこうしている内に、別のザイが背後に回り込んできた。しかも2機。

 たちまちジェットコースターめいた追いかけっこが始める。

 射撃位置を狙うザイ、それから逃げる30M2。

 しかし、機動性は向こうが上。不完全な試験機の性能では、逃げきれない。このままでは狙われる。

 右に左に激しい機動の繰り返しで、ヤリックの意識がくらみ始める。

 それでも、知らせる。

「ジュラ……! 逃げ切れない、ぞ……!」

「へへっ、わざとだよヤリック!」

 だが、ジュラーヴリクは楽しそうに笑っている。

「見てな……!」

 すると、正面に別のザイが見えた。

 その背中を見据えて急降下。

 こんな時に別の機体を狙う余裕なんてあるのか?

 激しい機動に耐えるのが精いっぱいで声を出せない。

 ザイの背中が、どんどん近づいてくる。

 衝突しそうなほどの勢いで。

 そして、キャノピーいっぱいに広がるほど迫ってきた時。

「おらっ!」

 何が起きたのか、ヤリックには理解できなかった。

 機首が急激に上がったのだ。

 ザイの背中を蹴ってジャンプするように、機首を180度近く上げて逆噴射、反転。

 追っていたザイもその機動を追おうとしたが、あまりに予想外だったのか、片方が間に合わず空中衝突。もう片方はかろうじて回避したものの、破片をもろに浴びて姿勢を崩し、落ちていく。

「見たかぁ! 3機同時撃墜だぁ!」

 ジュラーヴリクは、弾を1発も使う事なく3機も撃墜して見せた。いわゆるマニューバーキルという手法である。

「なんて、」

 もはや理解が追い付かない。

 通常の戦闘機には不可能なHiMAT機動など。

「でたらめだ──」

 全てを把握できないまま、ヤリックの意識は闇に落ちていた──

 

(続く)

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