見た目平穏な街の静かな夜、見た目普通な家の見た目の、ありきたりな部屋にて。
「ようやくここまで来た....」
部屋の中には大量の書物と手帳、そして理科の実験で使われる器具の数々。手帳は乱雑に置かれているが器具は綺麗に掃除され大事にされており、特に封がされたフラスコは棚に丁寧に置かれ、その中にはおぞましいものが蠢いている。
その中に一人の人間がいた。
「硫黄の属性と水銀の属性の配分から始まり、それを包むように三属性を混ぜ、更に四元素で覆い最終的に均等な五行にて封を施すと同時にエネルギーの抽出を補助する.....この理論を私の世代で完成させることが出来て良かった....!」
黒でありながらも絹のような光沢を持つ長い髪を持った人間は己の過去を振り返るように上を見上げ、そして傍から見れば狂っているかのような笑みを浮かべる。まるで数十年、数百年と続いた野望が今果たされんとばかりに。
「この
人間は何かが入ったフラスコを持ち上げ、軽くスキップが混じった足取りでどこかへ向かおうとする。
「ハハ、アハハ、フハハハハァーーーっと!?」
しかしその瞬間足がもつれ、
「あ」
何かが入ったフラスコが宙を舞い、
「あぁ...」
床に落ち、
「ああああぁぁぁ」
割れ、
「やっちゃっt(」
近所迷惑になるほどの閃光と爆音を鳴らして爆発した。
「あと少し!!今回はあと少しのところまでいったんだ!!」
「はいはいそうですカ」
「お前信じてないな!?見てろ帰ってきたらもっかいやって今度こそは確実に成功させてやるからな!!」
「まあ実験の風景は見てましたシ、またヘマやらかさなきゃ次は成功するでしょうネ」
爆発が起きた翌日、昨日の人間が体中のところどころに怪我を負いながら食卓についている。その体躯は小柄で細い。黒の長髪と相成ってさながら美少女の様である。
その人間と食卓を挟み共に朝食を食べているのは青色の波がかった髪を肩まで伸ばした少女。
しなやかで洗練された体つきは男の劣情を誘うというよりも神々しさを与えるようなものであり、更にこの少女の儚げで美しい顔つきがその魅力を最大限に引き出している。
「...まあ仕方ない、とりあえず昨晩の実験状況と工程にかかった時間を書いてあとは学校で纏めるか。クルス、器具の掃除と属性の調整、あと精霊たちに餌やっといてくれ」
「了解しましタ。それと
「ならガソリンは帰りに買ってくるから六甲の水はクルスがネット注文しておいてくれ」
「了解しましタ」
会話をしながら進と呼ばれた人間が虚空に手を伸ばす。するとそこに次元の裂け目が生まれ、何かを吐き出した後に閉じる。どうやら学生鞄のようである。
そして玄関に向かいながらクルスと呼ばれた少女から制服を受け取る。制服を見るとどうやら進は男子のようだ。
「いつも思いますが、見た目に違和感がかなりありますネ」
「言うな、結構気にしてるから」
そう言いながら彼は玄関を開け、外に出る。
「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃいませ、
駒王学園第二学年、
現役高校生でありながら東乃家の技術を受け継ぐ錬金術師である。
大いなる作業~錬金術における賢者の石の生産工程をそう呼びます。
賢者の石~錬金術における一つの目標。実は石と言いながら液体だったり粉だったりします。
また紅いイメージがありますがそれは完全な賢者の石の場合。不完全な賢者の石は黒かったり白かったりします。
アクアンズ~四代元素のひとつ『水』のエネルギーが具現化した存在であり、『冷』『湿』の性質を持ちます。精霊というよりかはエネルギー体が意思を持った姿....としてこの作品では扱っています。
サラマンダー~かつてパラケルススが言及した精霊であり、『火』のエネルギーを司っています。トカゲのような実体を持ち、火を纏い火を喰らって生きている...とこの作品では扱っています。