「何言ってるのイッセー!?あのシスターを助けるなんて認めないわよ!!」
「でも部長!あのままじゃ、アーシアが...!」
「いい?このまま行っても確実に殺される、あなたのその自分勝手な行動が周囲に多大な迷惑をかけるのよ!!」
「なら俺を眷属から外してください!!......たとえ一人でも、俺はアーシアを、友達を助けます!!」
また二、三日が経ち、オカルト研究部に顔を出してみるとイッセーと部長が怒鳴り合っていた。......やはり熱い性格のイッセーだ、あのアーシアという少女を見捨てられないのだろう。それがイッセーの本来の性格であり、美点でもある。
私もあのままでは目覚めが悪いので救出に向かおうと考えている、その為にあの日から『準備』をしてきた。
「よしイッセー、じゃあ助けに行こう」
「東乃君!?アナタまで何言ってるの!!」
「何、別に迷惑にならなければいいのだろう?......こういう時こそ東乃のコネを使うべきだ」
まさか人間の私から助けに行こうと言うとは部長も思ってなかったらしく、怒りと驚きが混じった表情を見せてくる。彼女の懸念は『この戦闘で悪魔と堕天使の二勢力を刺激しないか』ということだろう...すでに解決済みである。
この数日、アザゼルさんに事情を説明してこの事件の解決は私に任せてもらった。そして魔王サーゼクスにも連絡しておいたのでこの騒動が拡大して堕天使対悪魔の戦争になることはないだろう。
ホントこういうお願いが通って良かった、日ごろ技術提供をして作り上げたコネのおかげだな。
「師匠!俺、何がなんでもアーシアを助けたいです!!あの子は悪魔にも手を差し伸べる程に優しいのに....魔女と呼ばれて、でも自分を曲げないで...っ
とにかく、あんな優しい女の子を放っておけるわけがありません!!!」
「......覚悟は十分のようだな」
「うっす!!!」
普段はエロいことにしか向けられないイッセーの目、今はアーシアというシスターを助ける覚悟と意思で満ちている。
...素晴らしい、今のイッセーには『可能性』を感じる。
「というわけだ部長、私も今回は本気で行く。何、迷惑はかけんさ」
「~~~!...もう好きにしなさいっ!!!」
「おっす!!男イッセー、ちょっと友達を助けてきます!!」
「行くぞイッセー」
怒りが頂点に達して何も言えなくなったのか、部長は好きにしろと言った。...では好きにさせてもらおう、教会に殴り込みだ。
そう考えながら男二人、部室の扉を開け出陣する。
「イッセー、お前に渡すものがある。...今のお前なら、きっと助けになるだろう」
「師匠......これって、漆黒の石?」
「持っておけ、お守りだ。流石に二人だけだと心配なんでな」
「......なら、僕と塔城さんを入れて四人だ」
「木場!小猫ちゃん!?お前らも来るのか!?」
廊下で待っていたのは木場君と後ろにいる小猫君、どうやら同行してくれるご様子。そして木場君は壁に背を付けながら待つ姿もイケメンである。たまに変なところが無ければ良い人なので、ホントにそこが惜しい。
「何、僕も堕天使や神父には因縁があるからね。流石に戦わないと気が済まない。
...僕としては、何故小猫ちゃんがついてきてるのかが分からないんだけどね」
「......東乃先輩は大丈夫そうですけど、イッセー先輩が心配なので」
「小猫ちゃん...協力してくれるのは嬉しいけど、その言い方は....!!」
「でもイッセー君、僕もそう思ってるんだ」
「なんだよ二人とも、そんなに俺をいじめて楽しいか!?」
「.......ちょっと楽しいです」
「チクショーーー!!」
そう言いながらも三人は楽しそうに談笑している...良い仲間に巡り合えたな、イッセー。
さて、堕天使レ...レ......なんとか、覚悟してもらおう。本気の証『エネルギーシリンダー』に触れながら、空を見上げ呟く。
「...私の周りに危害を加えた場合、容赦はしないぞ」
そして教会、普段なら聖なる雰囲気に包まれた暖かい場所なんだろうが。今日のここは非常に気味が悪い、嫌悪感を示す場所になっていた。
まるで聖と悪が混じった場所...悪の光に包まれているとでも形容しようか。普段の教会ならイッセーたちは乗りこめないが、今の教会の異常な状態なら入れるだろう。それぐらいには悪意に満ちている。
「師匠、この漆黒の石を何故俺に?」
「知ってるかイッセー、賢者の石の中でも漆黒の石は腐敗、黒化を司っている。
...そしてそれらは新たな賢者の石になる、『可能性』を秘めているんだよ。あとはその内分かるさ」
「可能性、ですか...」
「僕も質問だ東乃君、その腕に着けている筒のようなものは一体なんだい?」
木場君がエネルギーシリンダーについて聞いてくる、そしてこういう時でも妙に近い距離感...何故だ。
「私流の錬金術はエネルギーと属性因子を操ることで物質を操作する、エネルギーシリンダーは属性因子とエネルギーを打ち出すシロモノなのさ」
「......小さな大砲、ですか?」
「まあそんなものだよ小猫君。試しに一発、開始の合図に撃ってみよう」
そう言いながら私は筒の中に宝石爆弾を入れ、側部にある三つのスロットの内の一つに真珠のような形の水の属性因子を入れる。
「さて、奪還作戦の始まりだ!」
そう言って筒の先を協会に向け、スイッチを押す。
......すると、巨大な水球が文字通り大砲の如き勢いで射出され、教会の扉の部分を吹き飛ばした。
「どうだい、これなら私も戦力になるだろう?」
「よっしゃ、師匠がいたなら百人力だ!!みんな行くぞ!!」
「ところで東乃君、君の髪...いい香りがするね」
ええいこんなときまでイケメンスマイルで変なことを言わないでくれ、イッセーも小猫君も若干引いてるぞ。
《Boost!》
「クソッ、流石に敵の量が多くねえか!?」
「でもそこまで強くないみたいだね...ふっ!!!」
「量より質...ですね...っ!」
「まさにゴキブリが如き量だな、射出!!」
イッセーが殴り、木場君が斬り、小猫君が吹っ飛ばし、私が水砲を射出する。入った瞬間大量の神父が立ちはだかっていた、しかし個の強さはそこまでではないようで。数分後には確実に量は減ってきていた。
だがその量のおかげで時間ばかりが過ぎていく、そして私以外は悪魔という編成上相手の攻撃にはなるべく当たりたくない。それ故に慎重になってしまい、更に時間がかかってしまう。
...もう一気に吹き飛ばすか。
「あ、これはやばい」
「え、何かあったんすか師匠!?」
「面倒くさくなってきた」
「え、ちょっと東乃君!?」
「済まないが下がってくれ、一気にここら辺を片づける」
イッセーと木場君が驚いているが、流石に私も早く先に進みたいんだ。一つ大技で吹き飛ばすとしよう...丁度シリンダー内部の蓄積された圧力も高くなってきた。
周りの攻撃を避けながらシリンダーの中に宝石爆弾を三つ一気に入れて、スロットから水の属性因子を外し代わりに火の属性因子と風の属性因子を入れる。
本来は火の属性因子のみを使ってエネルギーと内部の圧力で爆風を放つ技だが、風の属性因子の効果でその爆風を砲弾のように飛ばすことが可能になる。
「行くぞ、『ヒートカノン』!!」
そして射出した瞬間...前方にいた神父達が轟音と共に吹き飛んだ。
《何だ今の技は...現役時代の俺でも、流石にアレは防げないぞ...》
「師匠......やっぱすげーっす」
「あぁ...思わず惚れ惚れするほどに」
「あれでも死者が出ない程度には加減しているんだよ、なるべく命は奪いたくないからね」
そうは言ってみたが、床にクレーターを線にしたような跡ができていてその周囲に神父達が転がっている。それを見て流石に唖然している三人。小猫君に至っては放心状態である。そして木場君、今の動作に何故頬を染める?
ヒートカノンはエネルギーを意図的に暴走させ、それを射出する技だ。おそらく相手が防御していたとしても、また堅い鱗で覆われていたとしても、それすら無関係に吹き飛ばすだろう。
......だが、この男の奇声にも聞こえる笑い声は吹き飛ばせなかったようだ。
「ヒャヒャヒャ、初見滅殺なボクちんとしては非常に珍しい二度目のご対面でぇ~す!!!」
「...フリードっ!!」
「いやぁ~焦ったねえ、とっさに教会の隅で隠れてなかったらボクちゃんもやられてたぜぇ!!
さぁこのライトセイバーみたいにきらめくボクちんの剣で細切れになってみなぁ~い?」
「そりゃ残念だフリード君、キミも一緒に吹き飛んでくれればこちらとしてはラッキーだったのだが」
マズイ、フリードはあの大量の神父とは別格だ。あのライトセイバーのようなものはおそらく堕天使の加護を受けている。イッセーに相手させるのは危険だ。小猫君と木場君は場数を多少は踏んでいるだろうが、イッセーはまだ悪魔になって日も浅いし戦闘自体にも慣れていない...となるとだ。
「イッセー、お前だけ先に行け」
「えっ、師匠!?」
「お前の目的はアーシアとかいうシスターの救出だ、ここで足踏みしている必要はない。いいかイッセー、これだけは守れ。
諦めるな、熱くなりすぎるな、そして...可能性を信じろ」
「......うっす!!」
「悪いが木場君、小猫君。私達でフリードを無力化するぞ」
「東乃君がそう言うなら僕は従うよ」
「...了解、です」
イッセーが奥に進むが、それをフリードは阻もうとする。
しかし二人の間に木場君が立ちはだかり、フリードの光る剣を同じく剣で受け止める。そしてその間に更に小猫君がイッセーを守るように立ちふさがる、私は側面からシリンダーをフリードに向ける。
完全にフリードを包囲し、決してイッセーを追わせはしないと気合いを入れる。
「三対一かぁ、いいねいいね燃えるネェ!!!
だがお三方、あのへなちょこ悪魔くんが、レイナーレ様に敵うと思ってますので!?」
「...大丈夫さ、今のイッセーには『可能性』がついてる。
だから私達の仕事はフリード、キミを止めることだ!!!」
さあイッセー、
あとはキミの頑張りでそれを目覚めさせるんだ。
進流の錬金術~進君はエネルギーと属性因子を錬成陣やシリンダーを通して使うことで物質とエネルギーの構成や状態を操る錬金術を自分で作り出しています。
エネルギーシリンダー~進君の錬金術での戦闘に使う武器の一つです、筒の形状のトンファーのような形をしています。筒部分に宝石爆弾(エネルギージェム)を入れることでエネルギーに還元し、筒の側部にあるスロットに属性因子を入れることで筒内部のエネルギーに関連付ける属性を決定します。あとは持ち手についているスイッチを押すことでエネルギーを射出します。
ヒートカノン~シリンダーで射出するたびに少しづつ蓄積させる圧力を攻撃に転じた技です。エネルギーを圧力によって暴走に近い形にして、それを火属性に関連させることで爆風を射出します。さらに風の属性因子によってより広範囲に届くように改良した、基本的に防御不可の大技です。
元ネタはオンラインRPG「マビノギ」のスキルの一つ「ヒートバスター」です。