「彼の戦い方はとてもトリッキーで、どちらかというと『僧侶』の駒のようなスタイルだった。
...でも今回の教訓はそんなことじゃない。グレモリー家として、そして貴族として。...考えさせられる出来事だったわ」
兵藤一誠はこう語る。
「俺、舞い上がってたんだ。悪魔になって、ハーレムという昔からの夢も叶うんじゃないかって。普段から紳士的に振る舞おうとしてることも忘れてさ。
...悪魔の世界を甘く見てた。暗い部分っていうのかな、そんなのを一気に見せつけられたよ」
「はぐれ悪魔討伐の依頼が大公から届いたわ!!」
ある深夜。いきなり町はずれの廃屋に来てと言われたので、色々と準備して来てみたらグレモリー部長がそんなことを言ってきた。あとすさまじくお肌が潤ってた。
はぐれ悪魔...下僕の身である悪魔が主の下から去り、その中でもやりたい放題している輩のことをそう言うらしい。
私は思うんだが、例えば主がかなりの悪人でそれに嫌気がさしてはぐれ悪魔になった存在もいるのではないだろうか?...というかいる、たまにそんな客が店に来る。結構そういう人(悪魔?)は多く、なるべく注目されないようにしながら細々と生活しているらしい。
話を戻す、どうやらそのはぐれ悪魔を討伐して町の安全を確保するのが今回の依頼内容らしい。
「ホントはイッセーに悪魔の戦い方をみせてあげようと思ってたんだけど...東乃君、アナタの戦いを見せてもらってもいいかしら?」
「え、私の?」
「そうよ、人間の身でどこまで戦えるか見せて頂戴」
なるほど、事前に私に戦闘の用意してこいと連絡していたはそのためか。
...いいだろう、錬金術師の戦い方を見せてあげようじゃないか。
「だが一つだけ言っておく。私はすぐには倒さないぞ?」
廃屋に入ると、まず獣のような匂いがする。しかし害はないな。次に確認するのは地形...どうやらそこまで地面は荒くないようだ、カードが切れた時の錬成陣も容易に書けるな。
「まずそうな臭いがするぞ?でもうまそうな臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」
次に相手の確認。身の丈5メートル程...上半身が麗しい女性の体...いや、少々痩せこけている気がするな、下半身が獣か。ケンタウロスの近縁種だろうか?しかしよく見ると女と獣の境に違和感がある...融合獣(キメラ)かもしれない。弱点属性は...予測だが火だろうか。あとは毒の属性因子を持つものも有効だろう、獣や人の大抵は毒がよく効く。
所持品の確認。各属性の精霊(サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム)召喚用のカード、合成の錬成陣カード、毒の属性因子、具現化エネルギー(フレイミーズ、アクアンズ、エアロス、アーシーズ)を入れた管、無属性エネルギーをこめた
まあ負けることは無いな、しかし気を付けて損はないだろう。曹操君も慢心は敵と言ってたし。
「こんばんわ、はぐれ悪魔のバイサーで合ってるかな?」
「おぉ!私の名を知ってるとは、賢い味がしそうだ!」
しかしまずは会話、いきなり宣戦布告で戦うのも良いが話が通じそうな相手の可能性も高い。
「私は東乃進という者だ。少し話を聞いてくれるとありがたい」
「...ほう、戦うのではなく会話をすると?」
「いざとなったら戦闘もするが、それでは少々礼儀正しくないだろう?」
「...そこに座れ」
そう言ってバイサーも雰囲気を変え、腰を下ろす。よし、多少は話せるヤツのようだ。なら、気になることを注意しながら聞いてみるか。
「まずは聞きたいことがある、キミは今まで何を食べて飢えをしのいだ?」
「決まっている、ヒト、獣、様々な肉を喰らってやったよ...ククク」
ウソだな、あの痩せかたは栄養価の低いものを食べてきたものだ。多分だが普段は草でも噛んでいるのだろう。
「そうか、では何故はぐれに?」
「...アイツのせいで、私の一生は変わってしまった...これ以上は話したくない」
なるほど、何らかの形でかつての主に恨みを持っている。そして何か酷いことをされて逃げ出した、ということも分かる。
「最後の質問だ。.........お前、人型と魔獣の合成獣だろ」
私がそう言った瞬間、バイサーはこちらに襲いかかってきた....逆鱗に触れたか。
「アーシーズ、壁となれ」
そう言いながら管の一本を投げると、バイサーと私の間に大きな壁が出来た。そして壁の向こうで何かがぶつかる音、これで突進は阻止した。
「あ゙あ゙あ゙あああぁぁぁ!!!」
そして暴れだすバイサー、これ以上の会話は無理か。そして相手の乳頭から光線が放たれる。アーシーズの壁に当たるとだんだんと溶かしていく。どうやら溶解液のようだ。
「下がれアーシーズ。フレイミーズは相手を囲んで時間稼ぎを、アクアンズは精霊召喚の準備を」
そう言って管を二つ投げる。壁は消え、管の一つは火となりバイサーを拘束するように囲んだ。もう一つは水となり廃屋のいたる所に水を散らしていく。
「貴様に私の何がわかるうううぅぅぅ!!!」
そう言いながら暴れるバイサー。彼女がはぐれになった理由も分かった、追い込むか。
私は紫の真珠のようなもの...毒の属性因子と宝石爆弾を取り出し、合成の錬成陣のカードに乗せる。
【毒の属性因子×無属性の宝石爆弾=毒の宝石爆弾】
二つの物質はカードの上で光り、発光が止まった時には紫の宝石のようなものができていた。
「フレイミーズ、戻れ!」
そう叫ぶと火は消え、いつの間にか手元に管が戻ってきていた。
「
そう言いながら召喚用のカードを水浸しの床に落とす。
...すると床から錬成陣が浮かび上がり、水色の女性の形をした精霊...ウンディーネが召喚された。
『りょーかい...凍っちゃえー、おりゃ!!』
可愛らしい掛け声と共に、バイサーの獣の下半身が氷の塊で埋もれる。
「クソ、クソガアアアァァァ!!!」
「これで終わりだ...ッ!!!」
そう言いながら先ほどの紫の宝石をバイサーの凍り付いた足元に投げる。
...バンッ!!!
宝石は音を立て、紫の衝撃波を放ちながら破裂。
その衝撃でバイサーの獣の部分は砕け、彼女は崩れ落ちた。
「お前は主によって魔獣と合成させられ、必死に逃げた。そして冥界からこちらにやってきて、自生してる果物や植物を食べながら今まで生きながらえた...といったところか」
「......奴は、私が言うことさえ聞けば家族には手を出さないと言ってたのに...合成獣になった私が見たのは、変わり果てた....ッ」
腰から上だけになったバイサーは、独白しながら涙を流していた。毒属性で倒したので、獣の部分が再生することはないだろう。
後ろで見ていたグレモリー眷属らは、顔を歪ませ何とも言えずにいる。
はぐれ悪魔は問答無用で討伐してきたようだが、相手の事情も知らずに倒して来たのだろうか?ならよかったな、一つ学べたぞ。
「はぐれ悪魔を何も考えず倒すのもいいが、たまにはこうやって話してみろ。...話さないと、彼女みたいな奴らは何も言えずに死ぬだけだぞ」
そう言うと、私はバイサーを抱き上げる...所謂お姫様だっこというやつだ。
「お前...何故私を...?」
「この人は私が預かる、詳細については私から魔王サーゼクスに伝えておこう。では先に帰らせてもらうよ」
そう言って、私は廃屋を後にした。
...部長の肌が、最後までめっちゃ潤ってたのはここだけの話。
合成獣~二種の肉体の長所のみを取り入れようと無理やりに合体させて誕生した生物。
属性因子~物質の属性を属性たらしめているもの。火には火属性の因子が含まれているし、毒物には毒属性の属性因子が含まれている。
宝石爆弾~エネルギーを圧縮し、宝石のような形に封じ込めたもの。手榴弾のように扱う。
毒属性~生物相手と相性が良く、この属性でダメージを受けた箇所はしばらく再生不可となる。
精霊召喚~精霊の召喚は、その精霊の属性にあった環境でなければできない。サラマンダーは燃え盛る火の中でしか召喚出来ないし、シルフは風が吹き荒れる中でしか召喚できない。