【試作版】戦姫絶唱シンフォギアXD -孤独な影と運命に捧ぐ鎮魂歌- 作:ヒモトラマン・ロープダーク
性懲りもなくやるスタイル。
………赤い炎が揺らめいて
悲鳴も断末魔も、積み上げてきた文明の叡知が蹂躙されて
ただ、『闇』だけが人型を形にして僕達を見下ろす。
シンフォギア装者とウルトラマンたちとの共闘から月日が経ち、お互いの世界は幾つもの戦いを経てきた。またどちらも並行世界の存在との接触もがあった… シンフォギア側はガールズバンドからグリッドマン、並行世界の自分たちといった存在まで、ウルトラマン側はティガスーツを纏う異界のウルトラマンなどなど。実に多くの戦いをあった……その両者が再び交わろうとは
並行世界M78ワールド 地球成層圏付近
遥か無限の彼方まで続く宇宙の暗黒の海から、眼前に青い惑星が視界の多くを占めていく。地球……かつて、ウルトラマンが数多の侵略者から護り抜き今も尚、その名を受け継ぐ者たちが悪事を働く異星人たちと戦いを繰り広げている舞台。星団評議会やその他諸々の者たちの思惑が絡み合うこの場所なら取材すれば多くの小説のネタにありつけるだろうと宇宙船の窓越しに眺めながら男は思う。まあ、残念ながら今回の来訪はそんな愉快なものではないのだが…
「先生、もうじき大気圏突入です! 結構、揺れますから席についてて下さい!あとシートベルトも忘れずに!」
「ああ…」
前方の運転席から着席を促す声。自分を『先生』と呼ぶ彼とも一時ながらそれなりの付き合いだ… 数日間にも及ぶ真っ暗な空間が続く小型貨物宇宙船の旅の中、彼等の他愛ない話のおかげで暇は十分に潰せた。そこはこの『危険な任務』にもかって出てくれたことも含めて感謝しなくてはならないだろう。
「はーあ、そろそろフクイデ先生との旅も終わりか。名残惜しいような、ほっとするような。あ、そうだ…例の約束、忘れないでくださいよ!」
「ああ、勿論だとも。サイン入りの新刊、まずは目的地に着いてからだ。」
何はともあれ、地球に着かなくては安心して腰をおろすこともままならない。運転手はヘルメットを被りなおし、明らかに地球の技術とは違うの奇怪な操作パネルやハンドルに触れて目的地へ目掛け宇宙船の舵をきる。目指すは地球に存在する星団評議会管理の極秘の宇宙施設…運転手は大事なVIPと荷物を受け渡すことが仕事…まあ、もうすぐ終わるのだが。
小型宇宙船はやがて地球側からの電波をキャッチして、船内操作をオートコントロールに切り替えて角度を変えつつ大気圏突入の準備にかかる。やがて、重力に引かれて揺れだす船内にすでに座席についていたもうひとりの『VIP』の顔が強ばりだす…… それに気がついた運転手が声をかける。
「そういえば、お嬢ちゃんは『ペガッサ星人』だっけ? もしかして、重力のある惑星ははじめてかい?」
「…」
「ああ。今回がはじめてでね。かなり緊張しているようだが気にせず君の仕事を続けてくれ。」
ペガッサ星人の少女…… 白いパーカーはともかく、黒髪といい随分と『地球人』に近いような外見な気もするが、運転手は元々のペガッサ星人を知らないことや、何よりも『先生』もペガッサ星人らしいので特に疑うことはない。
とりあえず、あとは機械に任せつつセンサーや各種設備に問題が無いようにチェックしていれば良い。この最後の一山さえ超えれば仕事なんて終わったような……
【警告、突入軌道上に正体不明の物体を確認。オートコントロールの解除を推奨します。】
「は?」
…空気を読まないな。なんだ、隕石か地球人側の人工衛星か? まさか、星団評議会の指定通りのスケジュールで進めてきたんだ、あり得ない。
ならば、なんだ? …嫌な予感が過ると、遠方にカメラは『人影』をとらえる……青い星を背に、鋭く刺々しいその姿は何処となく『ウルトラマン』に似ているメカニカルな銀のパワードスーツ。知っていた、奴の名は…
「べ、ベムラー!? な、なんで!?」
はじまりの敵<ベムラー>
正体不明・真意不明、神出鬼没のウルトラマンらしき者。時に地球のウルトラマンたちと戦ったと思いきや、ニューヨークの異星人テロでは共に手をとり事態の終息へ尽力したという謎の存在。敵か味方か、悪魔か救世主かは場合によりけりだが……このタイミングははっきり言って凶兆そのものだろう。同乗し、様子を伺っていた『先生』も予定外の乱入者に顔を曇らせる。
すると、通信が入る。
【聞こえるか、そこの宇宙船。私はベムラー…… すぐに積み荷と同乗者を引き渡せ。それは、危険な代物だ。】
「ベムラーからの通信!? しかも、こっちのことがバレてる!?」
ベムラー……奴からの要求は『先生』と同行者の『少女』。そして、積み荷。 どちらも星団評議会に無傷で届けるようにと言われている。もし、ここでむざむざと引き渡せばと考えたら…運転手は顔を青くする。
一方の『先生』も一考、まだ手札をきるには早いと思ったが仕方ないかもしれない。
【あと5秒以内に行動しろ。さもなくば、実力行使に移らせてもらう。】
やがて、業を煮やしたのか腕を十字に構えるベムラー。解る、あれはスペシウム光線の構え…奴がウルトラマンの系譜であることの証明であり、数多の強大な異星人を屠ってきた光の力がこちらへ向けられたということだ。この事実に運転手は狂ったように叫ぶ。
「一体、なんだっていうんだよ!? 今回の仕事がお前になんの関わりがあるっていうんだよ畜生!」
最早、悲鳴に似たそれにベムラーは淡々と答える。
【お前たちの運ぶそれは、宇宙を揺るがす危険な存在だからだ。】
ベムラーの右手に収束するスペシウムの光… その時だった。
―バシュッ!!
「!?」
突然、死角から飛び込んできたスペシウムの奔流<ビーム>。咄嗟に構えを解いて、回避したベムラーは邪魔をした不届き者がいる方向を見据えた。こちらへ向かってくる小型宇宙船…その甲板には大方の独特なT字型の砲身を持つ兵器を抱えた赤いパワードスーツの存在を確認する。耳についた銀色の双角は見覚えがあった……
「ベムラーさん、何しているんですか!?」
「……タロウか。」
タロウ… ウルトラマンスーツを纏う地球のセブン、ジャック、エースに続く炎の戦士。ニューヨークや東京でも共闘したことがある。現在、彼は試作兵装ストリウムブラスターをチューブで船体に接続し、薬莢を排出するとスペシウムエネルギーをリチャージしながら尚もベムラーを狙う。しかし、狙いが定まらないのは足許の船体が揺れるからかそれとも彼の迷いからだろうか。
「あなたは味方ではないんですか!?」
「…少なくとも、星団評議会に与するつもりはないが今は問題が違う。邪魔をするな。」
続けて放たれるストリウムブラスターも当たらない。だが、ベムラーは回避のために貨物宇宙船から離れる…この隙を逃すまいと操作をマニュアルに入れた運転手。僅かな隙に悪魔の懐を掻い潜り、一気に大気圏突入を目指す。
無論、ベムラーも気がつくもタロウからのストリウムブラスターによる射撃でうまく近づけない。
「行かせるか!」
焦るベムラー。あの宇宙船に乗る男も荷物も地球どころか星団評議会にすら利益を与えるどころか、厄災をもたらすものである。
最早、時間は無いとストリウムブラスターの流星群を強引に突っ切り船体へ取りつこうと急く…
……これを察した『先生』は後ろの座席の『ペガッサ星人の少女』に強く命令した。
「ハッチを開けろ。『アイツ』を出せ。」
「で、でも!」
「スーツがある限り、『アイツ』は大気圏突入だって耐えうるさ。さっさとやれ!」
ペガッサ星人の少女は渋りながらも、ホログラムのキーワードを操作……船体の操縦システムにアクセスしハッチを開放。積み荷を放り出させる。コンテナから雑貨から何から、船体へあと一歩にきていたベムラーに一気に迫るが、右手に形成した光輪で両断し文字通り道を切り開……
「…!」
否! 切り裂きそびれた巨大な黒いキューブがその質量をもって牙を剥いた! コンテナにしては機械的かつ異質な物体はベムラーを巻き込み、一気に宇宙船から距離を離す。
一方、ベムラーも衝撃とグルグルされるシェイクに耐えながらも意地と言わんばかりにキューブを力任せに放り投げる。…すると、どうだろう。キューブは念力でも使われたようにひとりでに体勢を安定させると、鍵をあけるようにオレンジ色の紋様が駆動。
―ーそして、『ソレ』を勢いよく解き放った。
「黒い……ウルトラマン…?」
一足離れた位置で、タロウも地球の重力に引っ張られながら彼の姿を確認する。自分たちの科特隊のウルトラマンに似ていつつも圧倒的に禍々しいそのスーツを……
黒いウルトラマン… 一体、何者なんだ(すっとぼけ)
黒幕は一体、何イデ先生なんだ…
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