【試作版】戦姫絶唱シンフォギアXD -孤独な影と運命に捧ぐ鎮魂歌- 作:ヒモトラマン・ロープダーク
シンフォギア並行世界 セレナの世界…
…… ーー水が… 水が魚を喰ってる!?!?
「「…((((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル))」」
さて、並行世界の異常なんて露とも知らない少女たちは呑気にホラーっぽい映画の鑑賞の真っ最中である。マリアとクリスはソファーで抱き合い、顔を真っ青に…元々得意じゃないジャンルなのだから無理しなきゃ良いものをという話だがこの手の映画は観始めるとこれがまた目が離せないのである。一方、セレナは嬉々しながらポップコーン片手に頬張り鑑賞中。あと同行していた翼は『雪音やマリアのリアクションを見ているほうが面白い』と距離を置いている…余裕ぶっているが、直視出来ないチキン以外何者でもない。
「セレナ、入りますよ…… またこの手の映画ですか。」
「あ、マム。レポート読み終わったの?」
そんな時、ドアをノックして入ってくるナスターシャ教授。彼女の手には分厚いレポートの束…シンフォギア基本世界のS.O.N.G.から持ち込まれたものである。並行世界間の繋がりがある組織同士で行われている定期的な情報共有だ。まあ、殆どがS.O.N.G.が当たった事件の対処を各世界に伝えるというのが主だが、世界蛇といった並行世界を跨ぐ脅威があるのも事実。ならば、情報共有くらいは対策しておかねばならないだろう。
まあ、情報を確認している間は装者たちは暇なのでこのようにちょっとした娯楽施設で時間を潰したりしている。大きな事件が無ければ、本当に平和そのものだ。 …そう、何もなければ
「さて、残念ながら映画鑑賞は中断ですよ。貴方達に早急に確認してもらわないといけないことがあります。今回の資料、気になる点がありまして…」
ナスターシャ教授はテレビの映像を止めると、リモコンを操作してF.I.S.の機密情報のデータへとアクセスする。マリアは眉をひそめる…今回のデータはウルトラマンたちに関するものだったはず…他の並行世界関連の資料に関してはわざわざこんな急いて確認はしなかった彼女。一体、何が琴線に引っ掛かったのだろう?
「マム?」
「マリア、これから見せる映像をあなたには感想を聞かせてもらいたいわ。少なくとも、映画のように楽しいものではないけれど…」
やがて、フォルダが開かれ映像が展開される。雑音混じりのドライブレコーダーのようなそれが録画していたのは戦闘の記録。ジャングルと戦車…青空を裂く戦闘機やヘリコプターが確認出来る。恐らくは米軍だろうか…だが、相手は?銃声、爆発音、怒号とどれも激しいが肝心の敵対勢力が見当たらない。
ーー畜生、何処に行きやがった!?
ーー何なんだよ、ありゃあ!? 戦車の砲弾すら通らねえって何なんだよ!
ーー作戦本部、応答せよ…さくせ…ぎゃ
不意に紫の光線がジャングルを両断し戦車部隊が融解して四散、そのまま空のヘリコプターがなぎはらわれてドォン!ドォ!!と続けて花火があがる。
ーー撤退だ! 撤退‥ああこっちに来…!?
映像の最後…人影のようなものが飛びかかってくるところで砂嵐になり終わり。悲鳴の主がどうなったか映っていないのは不幸か幸いか。この一部始終にはセレナや翼さえ顔を引つらせる中、ナスターシャ教授は続けて操作…映像を若干巻き戻して最後の襲いかかる『何か』が牙を剥く瞬間で一時停止。逆光になっているようだが、顔の部分とおぼしき場所に赤い光が窺える…
「…これは?」
「今から5日前、コスタリカの村々が何者かに襲撃される事件が起きました。死傷者及び物的損失も多数…コスタリカ政府は手に負えないと米軍をはじめとした各国政府に救援を求めたのですが… 急拵えの連合部隊は米軍だけでも、投入した戦力の実質8割を失う有様。各国部隊も被害は甚大…それも、『たったひとりの敵』に。」
並列して映されるコスタリカの惨状。木々も人々も、何もかもが焼きはらわれて炭になったり熔けたりと直視に耐えない。これが、『たったひとりの敵』に行われたのだという… クリスは察す。
「暴走した聖遺物か?」
「それはまだわかりません…ですが… これに関しては見覚えがあるはず。」
敵の正体は不明…しかし、ナスターシャ教授は何か確信しているものがある様子で続けてリモコンを操作する。すると、『襲撃者』の影になっている部分がピックアップされて画像が鮮明に解像されていく。モザイクみたいだったそれは徐々に不定形な人型から、その輪郭を削り出されていくうちにマリアは引っかかりを覚え…やがて、7割方程が明らかになってきた時に自分の目を疑はじめる。
「……これ… 諸星のSEVEN!?」
似ている…異世界で出逢ったウルトラマンに。しかも、その内の諸星弾が纏っていた『ver.7.2』にあまりに酷似しているのだ。赤いバイザーや各所なんとか掴める程度のシルエットから形は違いはある…それでも、これがウルトラマンスーツやそれに関係あるのではという印象を持たせるには充分過ぎた。
驚くマリアに反応し、翼が話かける。
「マリア、どうかしたのか?」
「…これ似ているの。私が並行世界で出逢ったウルトラマンと。」
「ウルトラマン? 今回、報告書にあげていたアレか?」
「ええ。でも、彼らに並行世界を渡る技術は無かったはず…それに、こんな酷いことをする理由は科特隊には無い。これが本当に彼等のスーツなら…何故…。」
パラレルM78ワールドで彼等が所属する科特隊とは当初…というか向こうの活動の大半は諍いが耐えなかった…。意見が相容れなかった故の対立だったが最終的には和解し事件の黒幕を討ち倒して、利用されていた無垢な命を共に救ったのだ。
そんな彼等がわざわざこちらに、別の並行世界に手を出す理由が不明なのである。それに、マリアだって光の戦士たちがこんなことをするとは信じたくは無い。
一気に緊張と複雑が高まる中、話を進めるナスターシャ教授。
「対象は未だに健在、目立ったダメージは無いようですが現在、活動を停止しています。そして、昨日…極秘で我々F.I.S.へアメリカ政府からこの敵対勢力の排除の依頼が届きました。」
「まさか! セレナだけで対処しろと!?」
「落ち着きなさい、マリア。私も今回はセレナだけでは身に余るのは充分に承知…だからこそ、貴方達に協力を仰ごうとしていたところだった。その矢先にこの報告書が来て…確認せざらえなかったのよ。」
敵対勢力が何にしろ、もう現代兵器ではどうにもならない相手だろう…ナンでもトンデモありのシンフォギア案件だ。もしこの敵が並行世界からの侵略者だったら、放ってはおけない。動いたのはクリスと翼だった。
「とりあえず、一旦はオッサンと話は通さねえと駄目だろ。状況を鑑みて、必要なら響〈バカ〉と仲良しコンビの力も借りねえとな。」
「なら、私が一旦帰って司令へ報告しよう。雪音とマリアは留まっていてくれ…万一、動きがあったら対処を頼む。」
「決まりだな。」
事態は余談を許さない…それでも、様々な事件を乗り越えてきた彼女たちの行動は迅速である。連絡係を翼が担い一旦離脱。後方火力支援可能なクリスとウルトラマンに対して知識が多少なりともあるマリアが残るのも理にかなっている。
だが、マリアは複雑な顔をしており、セレナもそんな割り切れない姉のことを察しながらも今はかける言葉が見つからなかった…。
★ ★ ★ ★
コスタリカ共和国 焼け野原になったジャングル…
立ち尽くす『悪魔』はまだ炎が立ち昇る真っ黒な災禍の中心で何かを待つように動かない。不動、呼吸の息遣いさえ無い…まるで生身の中身が入っていないように。そ
シンフォギアとも聖遺物とも違う異世界の技術の産物…ウルトラマンスーツ。守護者であるはずの鎧は硝煙と多くの焼けた血で濡れていた…。