【試作版】戦姫絶唱シンフォギアXD -孤独な影と運命に捧ぐ鎮魂歌- 作:ヒモトラマン・ロープダーク
それから、2日後の早朝… コスタリカ共和国の漁村跡にベースキャンプにマリアたちの姿はある。焼き払われた漁村の荒屋や木々を押し退けて、緑のテントや多くの軍事車両や武装した人々が行き交い、キャタピラの轟音や激痛による叫び声など鳴り止むことはない。
そして、その中で医療用キャンプの光景は凄惨なもので怪我をした何十人もの軍人たちが簡易ベッドを埋め尽くしうめき声が響き、炙れた重軽傷者は未だに血で濡れる包帯を握り蹲っていたりする…。更に隣では棺桶が整列して並べられていた。
「…っ」
「…」
通りかかったセレナとクリスは顔を暗くし、自分たちが待機所とするテントへ歩く。残念ながら、歌でもシンフォギアでも彼等は癒せない。今は見守るしかないのだ…惨劇の空気も悔しさも一時は呑み込んで。
「大丈夫か?」
「平気です。…私たちが必要なのはこれからなんですから。」
クリスの気遣いに平静を装うとするセレナ…。
でも、平気というのは嘘だ。こんな光景、目を背けたい…助けられない自分があまりに無力だ。無論、クリスとしても承知でまた同じ…だから、お互いに声を掛け合い平静を保とうとしている。
戦闘機の残骸を運ぶ大型トラックとすれ違い、やがて待機所のテントへ。出入口から入ると、ナスターシャ教授と椅子に座りうなだれるマリアの姿が…。出迎えの声をかけたのはナスターシャ教授。
「おかえりなさい、そちらは?」
「駄目だな。何もたついてるんだが、報せの一つもありゃしねえ。合流は厳しいだろうな。」
クリスは翼が基本世界から戻っていないことを伝える。丸1日経つが音沙汰ひとつ無く、ギリギリまで待っていたものの時間の猶予が無くなりマリアとクリスは追いついてくることを信じてF.I.S.と共にコスタリカ共和国に向かった。勿論、彼女を拾ってくる人員も残してきたのだが…
まあ、いない人間は仕方ない…一方で深刻なのはマリア。この場で唯一のウルトラマンと接点を持つ彼女が故に、共に戦った彼等が敵にまわるかもしれない…この目を覆い耳を塞ぎたくなる惨状を作りだしたのか?
(進次郎… 諸星… 北斗… 本当に貴方達がやったの?)
アクやクセが強い面々だったし、その信条のそれぞれが独特過ぎて当初は相容れなかった彼等。衝突することもあった…でも、お互いにその在り方と正義を理解してシンフォギアはウルトラマンスーツギアを発現させたはず。
だからこそ、彼等がこんなことをするとは思えない…ウルトラマンは決して『侵略者』ではないからだ。それに、向こう側の世界に並行世界を渡る技術は無いはずだし、こんな侵略行為にはしる理由も検討もつかない。
「姉さん…やっぱり、気になる?」
「大丈夫よ、セレナ。例え知り合いでも、敵になるなら容赦はしないわ。」
「無理はすんなよ。感情の乱れは文字通り戦いのコンディションに影響するからな。」
心配するセレナとクリス…シンフォギアは精神状態に強く依存する。感情の昂りからくるフォニックゲインが神にすら届く力になったり、逆に気分の落ち込みは全身にまとわりつく鉛のように枷にもなりうる。そこら辺は、科学の産物(といっても、地球外の技術もあるが)であるウルトラマンスーツと未知かる過去の遺産であるシンフォギアの違いだろう。
されど、どちらも能力的には互いに退けをとらない。進次郎のウルトラマンスーツがリミッターを解除した状態ならシンフォギアのエクスドライブとだって殴りあえるだろう。そして、そんな存在が敵になりうる以上は生半可な気持ちで戦場に出るわけにはいかないのだ。
…簡単に割り切れる問題じゃない だからこそ、気配りができるのが仲間でもある。
「なあに、事情があるにしろ何にしろ…殴りとばしてからでも時間はあるだろ? あのバカじゃねえが、話がどんな形でも出来ることに越したことはないからな。信じてるんだろ…そのウルトラマンって連中をさ。」
クリスから彼女なりの不器用な励まし。理論が完全に取りあえず殴ってから対話路線が某・立花の影響を完全に受けている。否定しながらも真顔で話す彼女に思わず笑顔が枯れた地面から滲む水のように笑顔が溢れる。
「…ありがとう、クリス。そうね、クヨクヨはしてられないわ。それに、装者はこっちは3人…ウルトラマンひとり締め上げるのにも話しあいにしても充分過ぎる。相手が誰であろうとやってやるわ。」
「ね、姉さん…」
立ち直ったようだが… 思考がゴリラのそれであると思ったが黙っていることにしたセレナ。いつか勢い余ってゴリスさんとか言いそうで心配である。
さて、落ち着いたところで作戦会議だ。敵は単騎だが借りにも軍隊をねじ伏せている以上は聖遺物に相当する力を持っているだろう…無策では挑めない。
「では、作戦会議をはじめましょう。こちらも戦力は限られていますから。」
ナスターシャ教授に促され、キャンプ中心の机に集合する装者たち。机上の媒体は地図を含めて紙やプラスチックの駒でF.I.S.やS.O.N.G.の施設と打って代わってアナログな媒体だがここにハイテク機器を持ち込むのは厳しい故仕方ない。席につくと、彼女の舵取りの元作戦が練られる。
「まず情報から敵は単独のようです。他に伏兵や増援といった観測は無いですが、観測機器に時折奇妙な異常が確認されるそうなのですが…詳細は不明。取りあえず、目標を『仮称・ウルトラマン』としておきましょうか。」
(観測機器の異常? スペシウムの影響かしら…でも、解析の結果は特にそういったものは無かったはず。)
マリアは違和感を覚える。一応、ギアに何かしら新しい形態変化等があった場合はエルフナインが本部でその度に解析してデータをおさめている。無論、ウルトラマンギアやその力であるスペシウムも然り… だが、通信等に異常をきたす等のデータは出なかったはず。
それは一旦、置いておき対象『仮称・ウルトラマン』の攻略である。これにおいて、かなり渋い顔色をしたクリス。
「高機動・高火力・飛行能力…格闘戦もござれ。武器は何かしら刃物のようなものにスペシウム由来らしき光線技。一発でもまともに喰らったらアウトのオンパレード…攻めあぐねるなこれは。」
「そして、今までの法則で当て嵌めると有効打になりうるのは姉さんのウルトラマンギアだけ。なら、私とクリスさんで決定打を与える隙を作る必要がある。」
難攻不落、対してこちらの切り札は今までの対応する並行世界由来の力でなくては対処出来ない法則からするに仮称・ウルトラマンに通じるのはマリアのウルトラマンギアだけだろう…折しも、セブンギアとエースギアを扱えるきりしらコンビが居ないのは痛手だ。
加え、大火力で圧し切れないかつ速く動き回る相手はイチイバルは滅法相性が悪い。一応、取り回し重視の形態は出来るが今度は火力がかなり落ちてしまう。
「まあ、遠慮なくバラまくわけにはいかないよな。なら、狙撃かぁ…あんまり趣味じゃねえんだよなぁ。(…並行世界のアタシは得意みたいだったけど)」
「クリスにはこちらが間合いを詰めるまでの援護…それから、時と状況を見てフォロー。セレナは私と同行して可能な限り敵の動きを牽制。そして、私が目標を制圧する…概ね、こんな流れかしら?」
まあ、そうなるな。頷く面々… 実際、3人でならここまでが限界だ。むしろ、後方支援等、しっかりと役割分担出来るだけマシか…全員、近接で単騎相手とかデカブツでもなきゃ下手をすれば足の引っ張りあいになりかねないのだから。
「作戦開始は正午…まだ時間はあります。入念に作戦を建てておきましょう。」
ナスターシャ教授の言葉に頷く一同。
本日の正午… それが、運命の幕開けになる。
「あー…だりぃ。」
その頃、当の『仮称・ウルトラマン』は戦車の残骸に腰掛けてそらを見上げていた。スーツの赤いバイザーは青空を映さないが、色々と情報を教えてくれる。気温、現地時間、周りの生体反応から獲物の作戦会議の内容まで。まさか、一字一句まで筒抜けだとは思うまい…恨むなら、後進技術の地球文明を呪っておけ。
「…それにしてもなぁ。」
なんで、よりにもよって『ウルトラマン』なんだ。
……自分をかつて、ぶち殺した存在と同質のモノを今は己自ら纏っている。最期に見た自分の愛着していたスーツごと肉を焼いたあのスペシウムの光はまだ忘れられないというのに。
「ま、準備運動には良い相手か。
……この『ダークロプスゼロ』にはな。」
はじまりを告げる(ダークロプス)ZERO…
ダークロプスゼロ/イメージCV.広田広明
ダークロプスゼロスーツのキット化楽しみですねぇ。
因みにビ・ウルトラは陛下もゼロもアグルも来ませんでした(白眼)