二期EDのヒロインちゃんが可愛かったので。
煌びやかなシャンデリアが室内を照らし、音楽家達によるジャズの生演奏が参加者の耳を楽しませる、豪華な──されどありふれた──とあるパーティ会場にて。
時に商談を、時には一夜の恋の誘いを。豪奢なドレスやスーツに身を包んだ大人たちが思い思いにパーティを楽しむ中、斎賀玲は所在なさげに壁の花となっていた。
幼い頃から斎賀家の一員として厳しく育てられた身であるからしてマナーや立ち居振る舞いに悩むことはないものの、常であればこういった社交の場には祖父や両親、或いは長姉である仙が代表して参加していた為、末妹である彼女が招かれるというのは些か珍しい。
大胆に肩を出した真紅のドレスで着飾った玲は、持ち前の美貌も相俟って先程から会場中の年若い男たちから下心交じりの注目を集めているのだが、当の本人はその自覚は無い。
……否、より正確に表現すれば、それらの視線を気にするだけの余裕が無いというべきか。
彼女は手に持った
それは端から見れば慣れないパーティに心細さを抱くいたいけな少女そのものであり、玲に声をかけるきっかけを探していた男達にとって、彼女とお近づきになる絶好のチャンスであるかのように見えた。
そんな中から二十代の半ば程の、髪型や服飾品の細部に至るまでの全てを野卑にならない程度に整えた、如何にもエリート然とした風体の男が玲の元へと歩み寄ってくる。
「やあ、そこの麗しいお嬢さん。パーティは楽しんでいますか?」
「は、はい。ええと……」
「おっと失礼。私は○○社で代表を務めております──と申します。以後お見知りおきを」
「これはどうもご丁寧に。私、斎賀玲と申します」
「斎賀……というと、もしや我能氏の?」
「はい、我能は私の祖父にあたります」
先ほどまでの何処か熱に浮かされたような雰囲気から一転、余所行きモードに切り替えた玲は涼やかな態度で無難に挨拶をこなす。
一方で玲の名前を聞いた男はといえば、興味本位で声をかけた少女の口から思わぬ大物の名前が飛び出した事に顔には出さず密かに驚いていた。
年若くして起業した経歴相応の野心を持った男は、降って湧いた好機を逃すまいと、更に玲にアプローチをかけようとする。
「それはそれは、ご立派なお爺様をお持ちだ」
「いえ、そんなことは」
「ご謙遜を、右も左も分からぬままに会社を興した私のような若輩者からすれば偉大な先達ですよ」
「ありがとう、ございます。そう言っていただけると祖父も光栄だと思います」
「どうでしょう、ここでお会いしたのも何かの縁。宜しければこれから一曲いかがですか?」
「い、いえ、私は……その……」
言外に自分自身が会社を立ち上げたのだという経歴を匂わせながらぐいぐいとアピールしてくる男に対し、玲は一体どうあしらったものかと頭を悩ませる。
と、その時。
「ごめん玲さん、遅くなった」
「──楽郎くん……!」
背後から聞こえた待ち望んだ声に、玲は一瞬で表情を華やがせながら振り返る。
そこには慣れないスーツに着られてやや動きのぎこちない楽郎が、申し訳なさげにしながら立っていた。
「色々手間取っちゃって、待たせてごめんね」
「いいえ、気にしないでください。スーツのサイズは大丈夫ですか?」
「うん、びっくりするくらい俺にぴったりだよ」
「ふふっ、昔からお世話になってるテーラーさんにお願いしたので腕は確かですよ」
「……値段を聞くのが恐ろしいんだけど、これ本当に貰っちゃっていいの?」
「はい、勿論です。元々楽郎くんのために仕立てたものですし……」
「……歓談中申し訳ない、こちらの方は?」
男からの問いかけに、二人の世界に入りかけた玲の意識が引き戻される。
彼女は新鮮な楽郎のスーツ姿を堪能するのに夢中で先程までの会話相手のことを完全に失念してしまっていた。
「こ、こちらこそすみません。彼は……」
「初めまして、玲さんとは
「……どうやら、私はお邪魔虫のようですね。」
「いっ、いえ……そんな、ことは……?」
「馬に蹴られたくは無いですし、私はこれで。我能氏にもよろしくお伝えください」
「は、はい」
野心はあれども愚かではない男は、楽郎と玲の仲を察すると大人しく引き下がった。それでも最後に我能へのアピールを欠かさない辺りは流石の実業家といったところか。
「玲さん、何か話していたみたいだったけどいいの?」
「ええ、私に……というよりは、斎賀の家との繋がりが欲しかっただけみたいでしたから」
「……それはどうかなぁ」
「楽郎くん?」
場慣れしていることもあり、やや冷めた見解を口にする玲に対し、楽郎は何かもの言いたげだ。
そんな楽郎の態度に心当たりのない玲は、こてんと小首を傾げて疑問を顔に浮かべている。
「今日の玲さんはこんなに綺麗なんだから、そういう下心もあったんじゃない?」
「っ!?……きれっ!???」
「うん、まあ玲さんはいつも可愛いけど、今日のそのドレスも凄く似合ってる」
「──────っ、すぅー…………あ、ありがとうございます」
楽郎の口から飛び出したあまりに率直過ぎる褒め言葉に、玲は一瞬意識が飛びかけるもののどうにか気合で持ちこたえる。
楽郎と恋仲になってからの日々は、少しづつ彼女の精神を強靭な物に鍛えていた。
それから軽食やドリンクを摘まみつつ歓談することしばし、会場に流れる音楽が切り替わるタイミングに合わせ、楽郎はやや芝居がかった仕草で恭しく玲に手を差し伸べながら告げる。
「玲さん、俺と一曲踊ってくれますか?」
「──はい、喜んで」