徒然なるインベントリア:シャンフロの小話   作:イナロー

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メイドの日に書いた突発ss。
楽郎と永遠と瑠美ちゃんのお話。


これが私の御主人様

「お帰りなさいませご主人様!」

「【速報】カリスマモデル天音永遠の意外な素顔!エプロンドレスの着こなしや如何に?…っと」

「ちょいちょいちょーい!?ちょっと待とうかラク君!まずはその端末のカメラを下ろそうか!」

 

 学校から帰った俺を謎のメイドが出迎える。

 状況を理解するよりも先に反射的に撮影の構えに入った俺に対し、何故か全身をクラシカルなメイド服で着飾った永遠が慌てて吠え立てた。

 ……よし、画像データはロック付の隠しフォルダに保存完了だ。

 

「ねえ今撮影音がしたよね?君ほんとに撮っ…」

「ちょっとお兄ちゃん何考えてるの!?そんなもので永遠様を撮るなんて!」

「おっ、いいぞ瑠美ちゃんもっと言ってやって!」

「そんなしょぼくれたレンズじゃ永遠様の美しさが捉えきれないでしょ!こっちのちゃんとしたカメラを使って!」

「瑠美ちゃん!??」

 

 そう言って何故かこちらもメイド服姿の瑠美が武骨な一眼レフを俺に差し出してくる。これ母さんが昆虫撮影に使ってるガチのやつじゃねーか!勝手に持ち出したら後が怖いぞ……

 

「ったく、怒られても知らないからな……ハイ、チーズ」

 

 全ての責任は首謀者たる妹にあるのだと声高に主張しつつ、永遠の着ている物とは異なり些かスカート丈が短く装飾過多なメイド服に身を包んだ瑠美をフレームに収める。

 ふむ。

 

「ちょっと露出が足りないか、よしもう一枚」

「残念でした、お兄ちゃんも共犯ですー!ちゃんと可愛く撮ってよね」

「おーい、お姉さんも話に入れてー…っていうか何?ラク君はカメラも使えるの?」

 

 俺と瑠美のやり取りに取り残された永遠が寂しげな声を上げる。

 いかん、すっかり存在を忘れていた。

 

「まあ最低限の扱いくらいならな」

「最低限って言ってもそれ、撮影現場でカメラマンさんが使ってるのと遜色無さそうなんだけど……カメラを使うクソゲーでもやったの?」

「別に俺クソゲー以外から学習しない種族って訳じゃないからな?家庭の事情で色々あるんだよ」

 

 主に母さんのフィールドワークに連れ出されてカメラの使い方を仕込まれたり、瑠美のプライベートなファッションショーのカメラマンを務めたり。

 ちなみにカメラを使うクソゲーも噂には聞いているのだが、残念なことに未だプレイすることは叶っていない。

 なんでも荒廃した世界を写真に収めながら旅し、世界の滅んだ謎を解き明かしていくというコンセプトのRPGだったらしい。

 伝え聞く限りではストーリーは良好、目立ったバグも無くゲームバランスも悪くないと事前の評判も上々であったのだが……その「荒廃した世界」を表現するために実在の心霊スポットの映像をそのまま流用したのが不味かった。

 ベータテストの時点で設定した覚えの無い半透明だったり部位欠損していたりするNPCの出現報告が多数、全年齢向けのゲームとしてはゴア表現がエグすぎるという悲鳴混じりの苦情も続出したという。

 最終的にどうにかリリースには漕ぎ着けたものの、発売日には既に諸々の開発エピソードがネットの海に流れており、一部のオカルトマニアとクソゲーマー以外に手を出すものもなく制作会社は倒産。今では微かな数の中古品が稀に市場に流れるのみという……

 

「はいストッープ!何で突然ホラー!?」

「何でって、お前がカメラを使うクソゲーの話を振ったからだろ」

「クソゲーの話題からまさかそんな笑えないエピソードが出てくるとは思わないじゃん!??」

「お兄ちゃん!絶対その呪いのゲーム我が家に持ち込まないでよ!!」

 

 散々な言われようであるがこの件に関しては実は俺も同意見である。

 あの武田氏をして「サンラク氏、誠に残念なことながら世の中には触れるべきでは無いゲームというものも存在するのでござるよ」と言わしめた曰く付きのゲームだからな……

 

「まあゲームの話題は置いておくとして、お前らなんでメイド服?」

「んふふ、ようやくそこに触れる気になったね。どう?永遠おねーさんのこの格好を見てのご感想は?」 

「シャンフロでエリュシオン氏が着てたメイド服に似てるな」

「死んじゃえバーカ!!!」

「ミゾオぶっ!?」

「…………最っ低」

 

 率直な俺の感想への返事はノータイムでの膝蹴りでした。

 み、鳩尾に入った……

 瑠美よ、死にかけの兄に慈悲は無いのか…?

 

「デリカシーの無い男に人権は無いわ」

 

 無慈悲!

 

「で、永遠様のお姿を拝謁したご感想は?」

「トテモオキレイナオメシモノデスネ……」

「は?」

「……ええい!綺麗で可愛くてドキドキしたよ!これで満足かコンチクショウ!!」

 

 当たり障りの無い答えなど許さぬと、凡そ女子高生の物とは思えない眼力で俺を睨めつける瑠美の圧に屈してぽろりと本音が零れ落ちた。

 

「……へー、そっかそっか、ラク君はメイド服に興奮しちゃう変態さんなんだ?」

「ぐっ…絶対調子に乗るから言いたくなかったのに」

 

 先ほどまでの怒りの形相は何処へやら、実に腹立たしいにやけ面を無駄に様になる顔面に張り付けて永遠が笑う。

 

「ちなみにこの服は私のバイト先の新制服、店長に無理言って借りてきちゃった」

「お前今度はメイド喫茶でバイト始めるの…?」

「時給もいいし、何より制服が可愛いのはポイント高いよね」

「うんうん、お陰様で可愛い服を着れた上にラク君の隠された性癖も暴けたし、おねーさんはこんな可愛い義妹(いもうと)を持てて鼻が高いよ」

「そんな…!私こそ永遠様のお美しい着こなしを間近で見られて幸せです!」

「んふふー、やだなぁそんな他人行儀な。もっと気軽にお姉ちゃんって呼んでくれていいんだよ?」

「永遠お姉様…!!」

 

 遊び終わった玩具に興味は無いとばかりに俺を捨て置き教祖(モデル)信者(ファン)の交流会が催されている。

 俺、もう部屋に帰ってもいいかな?

 

「あ、ご主人様喉渇いたから紅茶淹れてくれる?」

「永遠様から頂いたケーキもあるからそっちも準備よろしくね、ご主人様」

「お前らメイドって職業の中身を辞典で調べてこい!」

 

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