ファンからのプレゼントを開封する鉛筆のお話。
「さぁて、今年も一丁開けてきますか!」
自らが所属している事務所の一室にて。
机の上にうずたかく積み上げられたプレゼントと手紙の山を前にして、天音永遠は自らを鼓舞するように一人ごちた。
(にしても今年はまた一段と多いなぁ……それだけ私の魅力に皆が夢中ってことなんだろうけどさ)
永遠は基本的に届いたファンレターや応援のメールの類には自分自身で目を通している。
プレゼントに関しては過去の
ましてや今日の様に永遠の誕生日ともなれば、全国の天音永遠ファンからの贈り物が殺到し、中身を検めるだけでも一苦労である。
「手紙はあとでゆっくり読むとして……まずはこっちかな。」
大量の葉書や便箋の束を持ち帰り用の紙袋に仕舞い、永遠はプレゼントの山へと手を伸ばした。
それらは事務所のスタッフ達の手により『服飾』『アクセサリー』『香水』『小物』などにおおよその分類は済ませてある。
ちなみに既製品か否かに問わず飲食物のプレゼントは事前に断る旨を公に発表済みだ。手作りのお菓子に怯えなくて済むことの何と素晴らしいことか。
「このスカートは色が好みじゃない、このピアスはデザインがいまいち……おっ、これは前に私が雑誌で褒めた香水だ、熱心なフォロワーさんかな?っと次は……」
永遠自身の好みや今の流行に照らし合わせながら、プレゼントを幾つかの種類に分類していく。身も蓋も無い言い方をすれば「合格」か「不合格」かということだ。
人様からの贈り物に対して中々シビアな扱いであるが、永遠にも今をときめくカリスマモデルとしての矜持がある。
たとえ好意からくる無償のプレゼントであったとしても、それがことお洒落に関するものである以上、一切の容赦も妥協もありえない。
永遠のお眼鏡に叶った幾つかの品は後日永遠自身が身に着けた写真をSNSにお礼の言葉と共にアップして邪教徒……もとい熱心なファンを歓喜の渦に叩き込むのだが、それはまた別の話だ。
「ふぅ…今年は中々みんないいセンスしてるじゃない、関心関心」
そうして送られてきたプレゼントの数々をチェックすること一時間強。
お洒落に関する物の粗方のチェックを済ませた永遠は、僅かに残ったその他のプレゼントへと視線を向ける。
「さて、あとは何が……って、ナニコレ?」
それは一見するとただの手紙では無いかと思うほどシンプルな封筒。
中には簡素な便箋に書かれた手紙が一通と──最近駅前に出来たという焼肉屋の食事券。
「ええ……仮にも
呆れと困惑が入り混じった声をあげつつ送り主を確かめようと封筒を見る永遠だが、そこにはあるべきはずの差出人の名前が無い。
「書き忘れ?にしては何か引っかかるような……」
頭に疑問符を浮かべつつ、同封されていた手紙を読む。
初めは怪訝な表情を浮かべていた永遠であったが、手紙を読み進めるにつれてその内容と、見覚えのある筆跡に自然と頬が緩んでいった。
「まったく、回りくどいことをするんだから」
手紙を読み終えた永遠は浮かれた声でそう呟くと、端末を開いて連絡先の一番上にある名前をタップした。
数秒のコール音の後、通話が繋がる。
『……もしもし?』
「はぁい、ラク君。今日は18時に駅前で待ち合わせね、遅刻厳禁だから」
『いきなりだなおい!?俺にも予定ってもんがあるんだが……』
「愛しの恋人の誕生日よりも優先する予定なんて無いデショ?」
『いやほら、ちょっと新作クソゲーを買いに」
「んふふー、そうやってとぼけるんだ?」
『ナンノコトカナ?』
「今日、うちの事務所に誕生日プレゼントが届いてたんだけどね」
『おー、天下のカリスマモデル様ともなればプレゼントも凄そうだな』
「おかげで仕分けだけでこんな時間になっちゃったよ」
『お疲れさん。なんかいいもの貰ったのか?』
「そうだねぇ、悪くないセンスのも幾つかあったよ」
『ふーん、良かったな』
「まあね……でも一つおかしなものも混ざっててさ。送り主の名前が無いのも変なんだけど、それがなんと
『へー、不思議な偶然もあるもんだな』
「偶然ねぇ……?ところで、日夜体形維持に細心の注意を払ってるモデルにこんなものを贈りつけるなんて、一体送り主は何を考えてるんだろうね?」
『……いつも全力で頑張ってるんだし、たまには自分を甘やかしてやれってことじゃねーの』
「なぁるほど……それじゃあ今日は私を目一杯甘やかしてね、ラク君?」
『──仰せのままに。誕生日おめでとう、永遠』