「天音永遠」という人物について、人々はどのようなイメージを持っているだろうか?
容姿端麗、眉目秀麗、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花、視線向ければ薔薇が舞い、瞬き一つで百花繚乱乱れ咲き。
……まあ、紙面や映像を通しての永遠、或いは公的な場での彼女の振る舞いのみを知る人間ならばそう思わされてしまうのも無理はない。
一方、アーサー・ペンシルゴンや鉛筆戦士としての顔を知る人間であれば、外道、悪党、悪逆非道に冷酷無比、魔王より邪悪、常世全ての悪を敷く者、良心を忘れて生まれてきた女、etc.……と、幾許かの表現の違いはあれど、大凡このような評価に落ち着くだろう。
前者も後者もそれぞれが紛れもなく天音永遠という人間の持ち合わせた一面であり、決して間違った人物評では無い。特に奴の邪悪さに関しては俺も大いに頷けるところである。
しかし……
「ええっと、永遠さんや?」
「……ちょっと黙ってて、今充電中」
カリスマモデルでも無ければゲームのプレイヤーでもない、ただ一人の人間としての彼女は、横暴な所はあれど存外甘えたがりで可愛いところのあるやつだと、俺は密かに思っている。
「はいはい、これでいいか?」
「…………接触不良」
「注文の多い奴め……ほら、今度はどうだ」
「ん……ねえラク君。もうしばらく、このままで」
部屋に入るなり「ただいま」の一言もなく突撃してきた永遠は、ソファに座って寛いでいた俺に真正面から抱き着くと、こちらの都合などお構いなしに様々な要望を突き付けてくる。
口調だけは相も変わらず傲岸不遜であるものの、服に皺が寄るのも構わず力任せに引っ付いて首筋に顔を埋めるその姿はまるで親に甘える幼子のようで、不覚にも俺は庇護欲を擽られてしまう。
言われるがままに姿勢を調整して抱き返してやれば、スミレのような香水の香りに混じって微かなアルコールの匂いが鼻に届く。今日は確かファッション誌の出版社絡みの飲み会があると言っていたか。
常と違う永遠の様子は気にかかるものの、残念なことに素直に心情を吐露してくれるほどこいつは素直な性格をしていない。
不毛な応酬を避けるべく、無言のまま彼女の要求に従いこちらから永遠を抱きしめ返せば、ホッとしたように脱力して更に俺に体重を預けてくる。
「……聞かないの?」
「お前、本当に聞いて欲しい時は勝手にべらべら話すだろ」
ちなみにそのパターンだと大概がビールと肉がセットになるため、後日運動に付き合わされるまでが一連の流れだ。
「よくご存じで……ラク君、そんなに私に詳しかったっけ?」
「そりゃお前とも結構長い付き合いだからな」
傍若無人なところも、意外と打たれ弱いところも、そのくせ強がりな所だって、俺はちゃんと知ってるよ。
「~~!ラク君のくせに生意気な…!」
耳元でそう囁いてやれば、永遠は何かを堪えるかのように俺にしがみつく力を強めた。心なしか先程よりも彼女の身体が熱い。
それから暫し存分に俺を椅子兼抱き枕として活用していた永遠だったが、やがて満足したのか俺の膝から降りると隣に腰をかけ直し、こてんと頭を俺の肩に乗せる。
「もういいのか?」
「うん、元気出た」
言葉少ななやり取りの後、再び部屋に静寂が訪れた。
といっても俺たちの間に横たわる沈黙は決して嫌なものでは無い。
普段なんてことの無いような顔をして、ありとあらゆる視線やレンズを意識している永遠がありのままの姿を見せてくれるこの時間が、実は結構好きだった。
本人には絶対伝えてやらないけれど。
「おつかれ、永遠」
「ありがと、ラク君」
その代わり、今日はせいぜいこの邪悪で可愛い恋人をせいぜい甘やかしてやるとしよう。
──後日、とあるファッション誌のインタビューにて。
Q24.いついかなる時も美しい永遠様ですが、日頃の生活で特に気を付けていることはありますか?
A.うーん、肌や髪のお手入れはさっき答えた通りとして……ストレスを貯めないようにすることとか?やっぱりストレスは美容の大敵だからね!
Q25.では、普段どんなことをしてストレス発散していますか?
A.ありきたりだけど美味しい物を食べたり、最近はお気に入りの
Q26.永遠様お気に入りのクッションとは、やはり有名なブランド品ですか?
A.珍しいけどブランド品ではないかな。ちょっと硬いし場所は取るしで