徒然なるインベントリア:シャンフロの小話   作:イナロー

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ペンシルゴンこと天音永遠の誕生日記念ss
一応楽永√の世界線のお話です。


楽永
#天音永遠様生誕祭2021


「ただいまー。あ、お兄ちゃん丁度いい所に。これ冷蔵庫に仕舞っておいて」

「おー、おかえり。何だこれ?」

 

 飲み物を取りに台所に向かっていると、丁度バイトを終え家に帰ってきた瑠美と遭遇した。今日も今日とてお洒落に余念がない我が妹だがネイルをしていないところをみると今日はどこか飲食店での仕事だったのだろうか。

 帰宅の挨拶もそこそこにして手渡されたのは何やら横に大きな紙袋。中を覗けば保冷剤と共に何らかのロゴのシールが張られた箱が入っている。

 

「何って見れば分かるでしょ、ケーキよケーキ。丁寧に扱ってよね、傾けたらコロスから」

「今冷蔵庫の中スルメイカでいっぱいなんだよな…」

 

 昨日親父様が大量のイカを釣って来たのでしばらく我が家の食卓はイカ尽くしだろう。刺身や塩辛もいいが親父が釣ったその場で作ってきた沖漬けを白米に載せて掻っ込むと日本人に生まれてよかったとしみじみ思う。

 

 

「しかしお前がこんな大きなケーキ買ってくるなんて珍しいな。何かあったのか?」

「はあ?ちょっとお兄ちゃん、まさか今日が何の日か知らないの?」

 

 日頃スタイルの維持のために節制を心掛けている瑠美がホールケーキと言う名のカロリーの塊を自ら買ってくるのは珍しい。そう思って尋ねると瑠美は何やら信じられないものをみるような目で俺を見てきた。

 

「今日!6月13日は永遠様のご生誕祭なの。神がこの世にあの方を与えてくれたことに感謝の祈りを捧げるのは人として当然でしょ」

「お、おう…」

 

 その熱の入った宣言に思わずちょっとあとずさる。確かに邪神の落とし子のような奴ではあるが。

 

「つまり天音永遠への誕生日プレゼントってことか。まあ喜んでくれるんじゃないか」

「は?」

 

 ごく当たり前のフォローをしたつもりなのに何故か俺は瑠美に侮蔑の籠った視線で睨みつけられる。

 

「これはあくまで私が個人的に永遠様の生誕をお祝いするの。そりゃお兄ちゃん経由で連絡先は交換させていただいてるし、恐れ多くもお祝いのメッセージは送らせていただいたけど、直接物を送るような真似をするわけないでしょ」

「そうなのか?」

「そりゃそうでしょ。大体ファンからの贈り物と言えば聞こえはいいけど、結局のところ見ず知らずの他人から送られてきた荷物よ?それを仕分けする永遠様の労を想えば自己満足の為に勝手なプレゼントを送るような真似は出来ないわ」

「…お前、偉いな」

 

 最初はその邪教徒っぷりに引いてしまっただ想像以上にしっかりとしたその考えに俺は今素直に感心している。

 そしてそれは俺達兄弟の会話を階段の上で立ち聞きしていたそいつも同様なようで…

 

「ありがとうね瑠美ちゃん、そんなに想ってくれるファンを持って私は幸せだよ」

「!!??!?」

 

 突然の天音永遠ご本人の登場に瑠美は声にならない叫びを上げてその場ですとんとしりもちをついた。永遠の奴は何食わぬ顔で瑠美に近づきそっと手を差し出し立ち上がるのを助ける。

 瑠美はと言えば余りの衝撃に今も現実を理解できないようで、永遠の顔と永遠に捕まれた手の平を交互に何度も見返している。

 

「え、えええっ!?ちょ、お兄ちゃん何で永遠様がここに!?」

「お前がケーキを買ってきた理由と同じだよ」

「ふふっ、君のお兄さんが私の誕生日を祝ってくれるって言うからね。あ、瑠美ちゃんもお祝いのメールありがとう」

「いいいいえそんなとんでもない!あの、お誕生日おめでとうございます!」

 

 その後、未だ混乱と興奮の冷めやらぬ瑠美も交え、盛大に永遠の誕生日を祝ったのだった。


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