・テセウスの蛇
・彼はゲーマーであるが故に
と同じ世界線です。
──出来損ないの鏡を見せつけられているようだ。
「い、いらっしゃいませ!おひとりさま、ですか……?」
「…………」
「な、なにかいいなさいよぉ……!」
赤髪と白髪。
魔術師と軽戦士。
一見すると彼女たちにこれといった共通点は見当たらない。
しかし無様なまでに他人の視線を意識する様が、継ぎ接ぎだらけの
目の前の存在そのものが、
「……サンラクくんは、いないのかなぁ?」
喉の奥からせりあがる吐き気を伴う自己嫌悪を飲み干して、努めていつも通りの笑顔のテクスチャを張り付けながら、ディープスローターは白々しく店内を見回しつつ彼の所在を尋ねた。
自分が
そしてサンラクが居ないのであれば彼女がこの場に居ることもまた全くの無意味。
にも拘わらず、その場で踵を返して店から立ち去らなかったのは果たして如何なる心情か。
「あっ、あいつなら……きょうはきてないわ!」
「そっかぁ、それは
「……あいつに、なにかようじなの?」
薄っぺらな笑みの下に隠された激情を察してか、いつもの三割増しで怯えながらウィンプが応える。
しかしながらヘタレな彼女にしては珍しく、奥に控えるマスターやサイナに助けを求めることなく真正面からディープスローターの瞳を見据えて問いを投げ返した。
0と1で創られた彼女の
「うん、だけど居ないなら仕方ないねぇ、また出直すよぉ」
「でんごんがあるならつたえるわよ」
「……ううん、それはいいかなぁ。自由人なサンラク君がここに来るかも分からないしぃ……もしかしたらまた新しい
「それならだいじょうぶ。あいつ、いつもよるには
「「…………」」
二人の間に静かに火花が散る様を、偶然その場に居合わせていた着せ替え隊の面々がスクショすることも忘れて固唾を呑んで見守っている。
言外に「お前など無聊の慰めの為の道具に過ぎない」と煽るディープスローターに対し、ウィンプは彼女らしからぬ芯の通った態度で毅然と言葉を返す。
突然の闖入者に戸惑いながらも目線を逸らすことなく背筋を伸ばして相対するその姿からは、サンラクは自分を見捨てないという並々ならぬ信頼が感じられた。
それが、ディープスローターにとっては堪らなく腹立たしい。
彼のことを
彼の隣に肩を並べて立ったつもりでいる、その不遜な態度が
彼は己を見捨てないのだと確信する、その自信に満ちた瞳が
どうして彼の唯一の理解者である私ではなく、お前などがそこにいるのか。そんな身を焼き焦がすほどの激しい嫉妬がディープスローターを苛む。
それと同時に、
自分自身でさえも見失いかけた
「じゃあねぇ、今度はサンラクくんが居るときにまた来るよぉ」
「……そう、すきにすれば?」
ひらひらと手を振りながら出口に向かうディープスローターを、胡乱な目つきのウィンプが見送る。
これで修羅場は終わりかと、|店内に充満していた不穏な空気が微かに和らいだのも束の間。
ディープスローターは店を出る直前、不意に足を止め首だけで振り返りながら最後にウィンプに声をかけた。
「……ああ、それと君にも言っておきたいことがあったんだぁ」
「きぐうね、わたしもたぶんおなじことをおもってたの」
──私は、君が嫌いだよぉ。
──わたし、あんたがきらいよ。