元ネタは硬梨菜先生のTwitterから
「おいしくなぁーれ、もえもえきゅんっ!……こ、これでいいのよね?」
テーブル席へとオムライスを持って行ったウィンプが恒例の呪文を唱えている。
メイド服を着て戸惑いがちに指でハートを作る姿は到底ユニークモンスターとは思えない有り様だ。
周囲では着せ替え隊の面々が絶え間なくスクショを取りながら野太い歓声を上げていた。
「ありがとうウィンプちゃん!あっ、あのお小遣い上げるからふーふーとあーんも……」
「おっとそれ以上は協定違反だ、そのオムライスを無駄にしたくなければ大人しく自分で食うんだな」
更なるサービスを求めてマーニの入った袋をウィンプに握らせようとしたプレイヤーだが、周囲の面々に見咎められ泣く泣く自らの手でスプーンを握ったようだ。
カウンターに頬杖を突きながら見るとは無しにそんな馬鹿騒ぎを眺めていると、コトリと小さく音を立てて俺の目の前にもホカホカのオムライスの乗った皿が差し出された。
注文した覚えのないそれに首を傾げつつ視線を上げれば、これまた何故かメイド服を着ているサイナがスプーンを手渡してきた。
「
「そういうことか、そんじゃ有難く頂くよ」
「少々お待ちを、まだ最後の仕上げが残っています」
「仕上げ?もうケチャップもかかって…」
「おいしくなぁーれ、萌え萌えキュンっ……以上です、どうぞお召し上がりください、
「……………お、おう」
なんだろう何故か気恥ずかしい!
いや、別にメイドキャラなんてクソゲー神ゲー問わずありふれているし、なんなら自分自身がメイドになったこともあるのだが、
「サイナちゃんが自分から…!」
「流石はツチノコさんだ」
さっきまでウィンプのメイド姿に熱狂していたはずの着せ替え隊の面々までもがいつの間にかこちらに注目している。
その視線を努めて無視してオムライスを食べていると、店のドアが開き見知った顔が入ってきた。
「よおサンラク、鳥がオムライス食っていいのか?」
「サバイバアルか…俺達が今更
「はっ、違いねえ」
話しながらも匙を動かし「美味かった」という一言を添えて空になった皿をサイナに返す…と、その時。
サイナの着ているメイド服と隣に座るロリコンを見て、ちょっとした悪戯心が湧いてきた。
「サバイバアル、お前飯は?」
「あーそうだな、空腹度的にはなんか食っといたほうがいいか」
「よし、それじゃ今日は俺が奢ってやるよ」
「おいおい、どういう風の吹き回しだ?」
「なあに、ちょっとしたサービスだよ」
突然の俺の申し出に怪訝な顔を浮かべるサバイバアルだが、俺はそれに構わずマスターに声をかけ厨房内に入れてもらう。
客席から見られていないことを確認すると、聖杯を使って女体化し……
◇
「お待たせしましたぁー」
「おう、オメー一体何をたく…らん……で…?」
後ろから声をかけられたサバイバアルが振り返る。
何やら俺の腹の底を探ろうとしてきたものの、俺の姿を見るなりその言葉は尻すぼみに消えていく。
テーブルの上に焼き立てのマルゲリータを置くと、先程のウィンプのように手でハートを作り、甘ったるい声音でその言葉を唱えた。
「おいしくなぁーれ、萌え萌えキュンっ!」
・オマケ
「我ら一同代表しまして不肖サバイバアルがぁ!美味の
昼下がりの蛇の林檎に野太い叫びが響き渡る。
声の元を見れば、いつものスク水を脱ぎ捨てエリュシオン謹製と思しきメイド服に身を包んだサバイバアルが、今まさにオムライスを食べようとしているティーアス先生に向かって謎の宣誓をしているところだった。
肩幅ほどに足を開き、後ろ手を組み声を張り上げるその威容はメイドというよりも応援団とかツッパリ系のそれを彷彿とさせる。
奴の後ろでは着せ替え隊の面々が軍隊もかくやという整然とした列を作って…いや、肩の震えを抑えきれてない奴もちらほらいるな。何だあれ罰ゲーム?
事情はさっぱり分からないが、とりあえずあの愉快な絵面を記録に残すべく、録画用アイテムを起動しながら成り行きを見守る。
サバイバアルは一歩前へと踏み出すと、深く息を吸い込み腰を落としてテーブルの上のオムライスに手のひらを向け——
「美味しくなぁれッッッ!!!萌え゛萌え゛ぇぇぇぇぇぇぇ………………………………キ゛ュ゛ン゛゛゛ッッッッッッッ!!!!!」
「ぶっふぉぁ!!」
余りにも似合わないその台詞に堪えきれずに吹き出した。
後ろで見ていた着せ替え隊の面々はおろか、いつもクールなマスターさえもが肩を震わせる店内で、スプーンを握るティーアス先生だけがマイペースにそのオムライスを平らげていた。