夏蓮と二人暮らしをすることになった。
高校の友人達からは「ようやくか」「というか今さら?」「式には呼べよ」などと口々に揶揄われたけれど、別に僕らの仲に何らかの変化があったわけじゃない。
春から通う大学が夏蓮と同じで、その大学は家から通うには少し遠くて、大学近くの良さげな二人用のアパートに丁度一部屋空きがあった。
ただ、それだけだ。
物件に目星をつけてからの動きはスムーズで、あれよあれよと諸々の手続きは進んでいった。
賃貸契約を済ませ、必要な家具を買い、部屋の鍵を受けとる。
おじさんとおばさんから「うちの夏蓮をよろしくね」「葉くんと一緒なら安心だ」なんてことを言われて、夏蓮が「……私はそんなに子供じゃない」とむくれる、そんなお約束のやり取りを済ませつつ、僕と夏蓮の大学生活はスタートした。
◆
「ん、葉」
「ああ、そういえば牛乳切らしてたっけ」
夏蓮が視線を向けた先、1L178円の特売の牛乳を3本カゴに入れる。
僕らが大学生になって早数ヵ月、毎週水曜日にスーパーに寄って帰るのもすっかり恒例になっていた。
親元を離れての生活に始めは些か戸惑ったけれど、ようやく少しは慣れてきた。
未だ成長を諦めていない夏蓮に毎日牛乳とシリアルの朝食を強いられることには少しばかり面食らったものの、いつしか僕もこれを食べないと調子が狂うまでに慣らされた。
夏蓮に成長期についての話は禁句であることは、たとえ長年の付き合いが無かったとしても明白だったことだろう。
試しに顔を出したサークル勧誘の新歓で、酔っ払った先輩に身長をからかわれ激昂していた姿は記憶に新しい。
「葉、今日はこないだ話していたフォーメーションを試そう」
「あ、それならちょっと思い付いた戦法があつてさ」
生活物資の補給を終え、ネフホロの戦術についての議論を交わしながら帰路に着く。
このやり取りも実家暮らしだった頃から変わらない。
月日は人を変える。どれほど慣れ親しんだ間柄であっても、大学生になり、生活を共にするようになれば何か変化が訪れてしまうのではないか。そんな危惧が無かったと言えば嘘になる。
だけど僕と夏蓮の日常は、拍子抜けしてしまうくらいにいつも通りで。
「……?何かいいことでもあった?」
「なんでもないよ、夏蓮」
そんな、いつも通りの日々を噛みしめながら、僕はこの小さな家族に歩幅を合わせて足を緩めた。
「あっ、ネフホロの前に今日の講義の課題を済ませようね」
「…………葉に任せる」
「ダメだよ!?」