「それじゃあ、この前の続きを話そうか。」
イージスのオフィスでトライスクワットの三人が集まると始まる談話会、そこで前回途中で終わっていたタイタスの過去話の続きが語られよようとしていた。
「待ってました!前回が気になるところで終わってたかたらずっと聞きたかったんだよ!」
この前の話の途中が気になっていたタイガは、漸く続きが聞けることに感激して少しばかり反応がオーバーになっている。
「ちょっと落ち着けよタイガ、そんなにせかさなくても旦那なら話してくれるだろ。」
「何だよフーマ⁉フーマは気にならないのかこのあいだの続き!」
興奮して息巻くタイガを落ち着けようと努めて冷静に語り掛けるフーマ、そんなフーマに対してタイガは沸き上がる好奇心に押され焦れた声で反論する。
「いや、そんな事は……旦那、タイガの奴を落ち着けるためにも、早くその尚文って地球人との出会いの話の続きを頼むぜ。」
「何だよ⁉フーマも気になってたんじゃないか、と言う分けで早く続きを聞かせてくれタイタス!」
落ち着きのないタイガの幼い子供の様子に、やれやれと呆れた風を装ってその実フーマも興味津々と言った態度を示す。
「ははは、タイガもフーマも相当気になっていたみたいだな。それじゃあ、私と尚文がベムトラスの破壊熱線を受ける前からの続きを話そう。」
そう言うとタイタスは徐に語りだした、岩谷尚文の最初の出会いを……。
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私が目の前の地球人との融合を決め体を光粒子に変え始めた時、ベムトラスの破壊熱線が私達に向けて解き放たれ私達を覆いつくした。
「ここは……?」
「私と君の精神空間だ、如何やら私の体の粒子化がベムトラスの破壊熱線が君に届くより早かったらしい。」
謎の空間の中で疑問の声を出した地球人に私はそう答えた。
「なっ!貴方は、さっきほどのウルトラマン⁉と言う事は、俺は……もう……。」
自身の目の前に居る私の存在を知って何かを悟ったらしい地球人の若者が症状を暗くさせる、恐らくはあの熱線を受け自分は死んだのだと思い至ったのだろう。
「……君は生きている。」
「え?」
その認識が誤りであると伝えるために彼が生存している事を簡潔に伝えると、彼は呆けた表情でこちらを見た、
ベムトラスの光線が私と彼を焼き払う前に粒子化した私の体が防壁の代わりとなって光線の威力を殺いだのだ、だから彼の肉体は熱線に焼かれる事は防がれ五体満足で今も生存している事そして、この精神空間に居るのも、熱線が放たれた瞬間を目撃したせいで瞬間的に脳に多大な負荷が懸かり意識だけが体から離れただけ、時間が来れば現実に引きも出されるだろうと、彼に事実を伝えると納得したようだった。
「それより私は君に謝らねばならない、私の失態に君を巻き込んでしまい済まなかった。」
「失態?どういう事です、詳しく聞かせて下さい。」
彼がある程度落ち着いてきたのを見計らって、私はこの惨状に居てるまでの経緯を出来るだけ詳細に話した。
そもそも私はU40の戦士ではあってもウルトラマンと名乗れる程の活躍や功績はない事、その為今回が星の外での初任務であるにも拘わらず功を焦りかなり独断的な行動を取ってベムトラスを取り逃がし追った先の地球での惨状に至った顛末迄、包み隠さず総てを打ち明け彼に謝罪を続けた。
本来なら謝罪の言葉程度では到底償えない失態だが、今の私にはこれしか出来ない実情の歯痒さが私の拳に力を籠めさせた。
「貴方が俺にした謝罪の意味は理解した……それで?」
「!それでとは……?」
私の話を黙して聞いていた地球人の彼が沈黙を破って語った最初の言葉は、私を責める叱責ではなかった。
それどころか問いかけに近いものであり、罵倒されるのも致し方ないと覚悟していた私はその意図を推し量れず間の抜けた声でその一言の意味を聞いてしまう。
「貴方がこの精神世界の中で俺の前に姿を見せたのは、本当に自分の仕出かした不始末に対して謝罪する為だけですか?……もしそうでは無いのなら、貴方は俺に何を求めて現れたの事にありますよね?謝るだけなら、姿を見せず言葉だけでも良かった筈、なのにこうして目の前に姿を晒したのは何かあるのでしょう?」
「っ!見抜かれていたか……いや、君を侮ったつもりはないのだがだが。」
彼から私の思惑の核心を突く言葉が投げかけられ、私の心にはわずかな動揺が走り一瞬口に詰まった。
しかし、彼の協力無くしてあのベムトラスを討伐するなど私の中では考えられない、ここで彼と一体化しなければ私は光と消えこの地球はベムトラスの猛威の前に恐怖と混沌の渦中の沈む事になる、ならば形や振りなど構っている場合ではない。
「……私と一つとなって、共にベムトラスと戦ってほしい。」
端的に何の誤魔化し言葉も入れずただ私の要望だけを彼に伝えた。
「分かりました……それであの怪獣から街を守れるなら、俺は貴方と共に戦います!」
目の前の彼からの短い返答の後の僅かな沈黙の間が空き、そして決意の視線で私を見据えそう答えてくれた。
「ありがとう……あぁ、まだ名を名乗って無かったな私の名はタイタスだ。」
「そう言えば、俺は岩谷尚文と言います。」
私はこれまで行動を気にして名を明かして無かった事に気が付き、これから共に戦う地球人の青年に遅ればせながら互いに簡単な自己紹介をする。
「では行こうか尚文!奴をベムトラスの魔の手から街を守るために!」
「はい!タイタスさん!」
私たちの決意の感情が重なり精神が昂ぶると、私たちの居る空間もそれに呼応しより強く輝きだす。
「ウルトラチェンジだ尚文!」
「ウルトラーチェーンジ!」
声高く叫んだ尚文の変身の掛け声と共に私と彼の肉体が一つとなり現実世界へ引きも出される。
目を開けると自分の身長を超える高さからの景色が広がっていた、半壊したビル群や罅割れた道路のアスファルトと焼け焦げたゴムの匂いの中でそれらを遥か高見から見下ろす視界が自分の物だと認識するのに、俺はそれ程時間は懸からなかった。
「これがウルトラマンから見た俺達の街か……こんなにも小さいだな。」
そのどれもがミニチュアの造形物に見える普段自分たちが見上げていた建造物が立ち並ぶ光景を眺め、視点の違い一つで堅牢に見えた物が酷く脆弱の見える世界の脆さに悲観しそうになる。
「ギャオオオオ!」
巨大な身体になり高くなる視界に戸惑っていた俺の強化された聴覚をけたたましい雄叫び刺激し相対すべき現実に向き合わせる。
「そうだ!今はこの怪獣を倒さなければ、その為に俺は!」
「「
意識が重なる感覚がして脇を強く締め腰を屈めて前のめりの体制で怪獣ベムトラスに対峙した。
ここまで戦って来た私では無い俺達双方の闘志が高まり合いこれまでに感じた事ない力の昂ぶりを全身で感じる。
これが、これこそが地球人とウルトラ人が一つとなった時の力なのか⁉ならば、倒せる俺達ならばこの惨劇をこの悪魔を止められる!
「オォォォォ!」
「ギャォォォォ!」
低い体勢のまま勢いをつけて突進すると、ベムトラスは迎え撃つように熱線を吐き出す。
「フン!」
腕を前に×字に組んで熱線を受け止めながらそれでも突進の勢いは落とさず突き進み、ベムトラスを押し倒し馬乗りになって腹部に拳を打ち込む。
「ギャオオオオオ!」
俺達の想いが拳に宿り、放たれ続ける一撃の重みがより強くなってベムトラスの巨体を激しく打ち付け苦悶の叫びをあげる様に鳴きだした。
「ハッ!」
ベムトラスの体力が少なくなり抵抗する力が弱まってきたのを感じ、奴の体の上から離れると両腕の間にエネルギーを溜め光球を作りだす。
「「プラニウム……バスター!」」
宙に浮いて静止する光球を拳を突き出しベムトラスに向けて打ち出す、弱り切り回避する体力もないベムトラスは光球を体に受け一瞬眩く輝き爆散する。
ベムトラスを倒した事を確認した俺達はベムトラスとの戦いで壊された街を改めて見下ろした。
「タイタスよ……。」
「っ!大賢者!」
声もなく自分がしてしまった失態の大きさを改めて痛感していると、脳内に威厳に満ちた老人の声が響いて私の星U40の最高指導者大賢者の声であるとすぐに気が付く。
「見ておったぞタイタス、お前の行動の一部始終を……。」
「はっ!大賢者、ここまで失態に対する咎ならば如何なる罰も受ける所存です。」
この惨状を作り出した原因を辿れば私の行動に責任がある、私の軽率な行いでベムトラスをこの地球に連れてきてしまったのだ、U40に戻れば厳しい沙汰が下されるだろう。
「そうか……ならばタイタスよ、お前には私が許可するまでU40への帰還を禁じ、その地球での修行を命ずる。」
「っ!……大賢者何を⁉」
大賢者から下された沙汰の内容の意図を推し量れず困惑する私に、あの方はこう続けられる。
「タイタス、お前は自らの生い立ちからこれまで他者に負い目を持って接して来た、だがヘラーが討たれた今お前は自らを変えるべき時だと思わぬか?その地球人の若者と共に戦い地球を守り抜いた時、お前は変われるだろう。頼もしきU40の戦士としてな……それまではそのスターシンボルは預けておくぞタイタス。」
そう伝えたあと大賢者からのテレパシーは途切れた、未だ伝えられた言葉の要領は得ないがそれでも果すべき贖罪は理解出来た、そしてその場を飛び立ち瓦礫の少ない街の端で変身を解いて改めて精神体の状態で尚文と相対した。
「済まない尚文、私の面倒に付き合わせる事になってしまった。」
「気にしないでください。俺でよければ付き合いますよタイタスさん。」
彼と対して初めに私から出て来た言葉は謝罪だったが、彼は特に気にした様子を見せず巻き込まれた事に文句を言う事は無かった。
「それより、暫くの間よろしくお願いいたします。」
「あぁ、こちらこそ!」
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「そこから私と彼の地球での修行が始まったんだが、その後に尚文が再編された科学警備隊のヒカリキャップにスカウトされたり、尚文が変身前の私と同じ位の体型なったり、後はその時に地球で色々と知識を得たりしたな。」
そう言ったタイタスは懐かしそうに当時の事を思い浮かべていた、そんな彼の事を見ていた二人はタイタスの言った言葉の中の一部に反応した。
「な、なあタイタス……。」
「ん?なんだタイガ、質問か?」
一人回想に更けていたタイタスにタイガは話しかけると、タイタスは回想を止めてそちらを向いた。
「尚文だっけ、人間体の時かウルトラマンの時どっちと同じ体型に成ってたんだ?」
「ふむその事か、どちらかと言えばウルトラマンの時の体型と似通ってたな。」
「「……。」」
タイガの問いに対する答えにフーマとタイガは沈黙する。
「あと語れる事と言えば、変身後にやるポーズも尚文との修業時代にボディビルを見に行った時に見たものを参考にしているな。」
「そ、そうだったのか旦那……。」
嬉しそうに語るタイタスと横に置き、二人は静かに語り合う。
「なぁフーマ……その尚文って地球人ってさ。」
「おぅ、間違いなく旦那と同類だぜ……。」
嘗て力の賢者呼ばれる前、ウルトラマンと名乗る前のタイタスが出会った岩谷尚文と言う地球人に今のタイタスのイメージが重なり苦笑いを浮かべ合う二人なのであった。