力の賢者&風の覇者の昔語り   作:マガガマオウ

4 / 6
フーマ閃風史 序章後半

「……うっし、そろそろこの前の続きをはなすとすっか。」

「おっ?やっとか、あの後からずっと気になってたんだよ。」

「うん……だがいいのかフーマ、いろいろ思う所があるのではないのか?」

 

以前フーマの過去の話が語られてから数日の時が流れた、タイガとタイタスは前回の続きを聞きたいが催促するのも気が引け、フーマ自身から話してくれるのを待っていた。

首を長くして待っていた甲斐があり、この前の続きが聞ける事を素直に喜ぶタイガと、話してくれる事に一応は嬉しそうにしているが何処か気遣わし気なタイタス。

 

「いいんだ旦那、俺一人の内に止めておくより話して知っておいてくれた方が気持ちが軽くなる。」

「そうか、では心して聞こう君と南雲ハジメと言う少年の出会いのその後を。」

 

そんなタイタスの気遣いにフーマは、彼なりの思いもあっての判断だと言いタイタスはその心の有り様を察して聞きに入る姿勢を取った。

 

「それじゃあ、この前の続きから熊の魔物との戦いの後の出来事を話していくぜ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

師匠(ゲルグ)が俺を変えてくれた言葉をそのままハジメに伝えた直後、ハジメは戸惑っていたと思うぜ。

 

「フーマさん……僕は。」

 

一体化しているから分かる、変わりたいと思う願望と本当に変われるのかと言う不安そしてどうせ自分には無理だと言う倦怠に似た現実へ諦め、この力を得る前の俺も抱いた感情がハジメの中で鬩ぎ合い判断を鈍らせている。

 

「僕は……やっぱり。」

「久ぶりに同族の気配を感じて来てみたら、こんな地下で迷子か少年?」

 

自虐的な発言が出てきそうになった時、聞こえて来る筈のない他の人の声がハジメの耳に届いて遮られた。

 

「えっ?人の声?」

「お~い!こっちだこっち!」

 

まさか他にも人が居たとは思わず辺りを見回すハジメを呼びかける様に、件の声の人物がダンジョンの壁の中から現れた。

 

「はっ?今どこから?というか貴方は?」

「はっはっは!いい反応だな少年。」

 

成程、この壁は光学迷彩になっているのか、それで壁の中は通路になっていてそこを通ってきたと……そんな技術を持ってる事はコイツ、それにさっきも同族の気配を感じたって言ってたな。

 

『おいハジメ、コイツは若しかしたら?』

「おっと!自己紹介は私からをさせて貰おう少年に宿った若い戦士よ。」

 

俺がハジメにコイツの正体を伝えようと声を掛けるた時、目の前に男は俺が続きを話す前に自分から名乗る。

 

「私はジーク、Z95星通称ピカリの国出身のウルトラマン、ウルトラマンジークだ。」

「Z95星?ピカリの国?えっと、そのつまり貴方もフーマさんと同じ……?」

『そう言う事だな、ただ俺はOー50の生まれで出身は違うんだけどな。』

 

目の前の男、ウルトラマンジークと名乗ったコイツからは確かに同じ気を感じる、でも何故違う星の生まれのウルトラ戦士がココに?

 

「ウルトラ戦士が居る理由なんて一つだろう、君も同じではないかなフーマ君?」

『仕事……って事でいいんだよな?』

 

ウルトラ戦士は平和を守るの務めそうあの光る輪っかにテレパシーで伝えられずっとソレを守り続けて来た俺自身、コイツがココに居る理由なんてソレ位しかないのは理解していた。

 

「それで、そこの少年は何か悩んでいる様だが何を悩んでいたのかな?」

「え?僕?僕は……。」

 

俺との会話に区切りついて視線をハジメに移すと、少し戸惑った様子を見せた相棒(ハジメ)

 

「言いたくないのなら言わなくてもいいさ、私も無理に聞こうとは思わない……ただ、一人で悩むよりは声に出してみるだけでも変化はあるものだ。」

「……僕は、これまでずっと自分に自信が持てなかったんです……。」

 

ジークに諭され徐に自分の身の上を語り出すハジメ、そのたどたどしい口調の独白をジークも俺もただ黙って聞いく。

 

「僕は、この世界に来る前……正確には呼び出される前、地球で普通の男子高校生をやっていました。いや、普通じゃないな……だって、普通より下の位の人間だったんだから……。」

 

ハジメの自虐的な言葉が空気を重くする、他人と自分を比べ劣っている部分だけが際立って見えたそんな卑屈じみたマイナス思考がにじみ出てくる様にハジメの表情が暗くなる。

 

「ホントはこの世界に来た時ちょっと期待したんです、こんなダメな自分でも異世界なら変われるかなって……でもダメだった、特殊なスキルも特別な職業もなくあったの極ありふれたなんら変わり映えの無い平凡職と使い古されたスキルだった、僕は別の世界でも誰かの影に埋もれて生きるだけの存在だった。」

 

世界は違っても変わらない自分の立ち位置へ絶望と勝手に期待しそれを裏切られた失望、そこまでも平凡で無力な自分と言う現実に苦しんだ日々が伝わってくる。

 

「それでも、ちょっとでも変わろうと色々努力したんです。それで、皆から弄られながらそれでも自分にできる最大限の事をしよう、ほんの少しでも変わろうって!」

 

それでも足掻いた諦めずに変わろうとした、その様子は俺も見ていたから分かる、その姿を見ていたから俺は相棒(ハジメ)を選んだんだ。

 

「……でも、そんな努力をすればするほど現実を思い知らされて、それでさっき必死に皆の助けになろうとして動いて……助けようとした内の誰かに裏切られた。」

 

仲間の為になろうとしてその仲間に裏切られた、生まれたばかり不信感は僅かでも強く確りのその存在感を示していた。

 

「だから僕もはもう……。」

「優しさを失わにでくれ、弱い者を労わり、互いに助け合い、どこの国の人とも友達になろうととする気持ちを失わないでくれ。例えその気持ちが何百回裏切られようと。それが私の最後まで変わらぬ願いだ。」

 

誰も信じられないと言おうするハジメの言葉を遮ったジークは、俺でも知ってるかの英雄の名言を口にした。

 

「その言葉は……!」

「ハジメ、確かに君のこれまで生い立ちを聞けばその不信感には納得できる、自分の事も信じられなくなっても仕方ない、だが私は君が弱いとは思わない。」

 

ハジメも聞いたことがあるそのセリフに驚きの顔をすると、ジークは正面に立って顔を合わせそう告げた。

 

「本当に弱い人間は窮地の仲間を助ける為に動いたりしない、人より自分を優先して危険から遠ざかろうとするものだ。」

「えっ?」

 

己を顧みない行動、そいつをハジメはやっていた誰にも見向きもされずとも優れた評価をされずとも、相棒(ハジメ)はあの場で誰よりも冷静に誰よりも勇ましく危機に向き合っていた!

そんな奴が臆病で弱い奴だと誰が言えるのか、俺はハジメのその勇気に魅かれ相棒に選んだんだ!

 

『ハジメ、もう一度だけ今度は受け売りじゃない、俺の率直な言葉で言うぞ……お前は弱くない、悪い部分だけを見るなよ、もし悪い所にしか目が行かないって言うなら、俺がお前に信じさせてやるお前自身の強さを!』

「フーマさん!」

 

驚きと喜びの感情が伝わってくる、そうだ誰にも見られてなかった訳じゃない、お前の努力も勇気ある行動も俺はずっと見て来た、だから相棒はお前じゃないとダメなんだ!

 

「その言葉、私にも贈らせてくれ。ハジメ、今のままの自分に自信が持てなくても諦めず努力すればきっと、君の理想の自分になれる筈だ!その片鱗はもう示した、後はこれ迄とは違う形の努力をすればいい。」

『おう!そうだ、俺が師匠(ゲルグ)と出会って変われたように、お前も絶対に変われる!』

「変われる?……僕が、こんな自分が?」

 

まだ信じ切れないだが、信じていいなら変わりたいそう心が訴えて来る。

 

「君が変わりたいと今でも思っているならば、私が……否、私達が変われるための手伝いをしよう!なぁ、フーマ?」

 

最後の一押しにそう続けるジークは、俺にも念押ししてくる。

 

『おうよ!技に自信が無いなら俺が一から教えてやる。』

「力に自信が無いなら、私が体を鍛えよう。」

 

知恵と勇気は備わってる、後はそれ活かす土台だけ……なら、やる事は一つハジメに見付けさせればいい、その心を活かす方法を。

 

「僕は……僕は変わりたい!誰かを疑って怯えるより、全部を信じる事に迷いたくない!変われますか?ジークさん、フーマさん?僕は、こんなどうしようもない自分でも強くなれますか⁉」

 

ついに決心がついたみたいだな、迷いを振り切った顔で聞いてくるハジメに懸けてやる言葉なんて一つだけだ。

 

「『勿論!』」

「っ!やります!僕に教えてください!力も技も全部、その為の労力なら何一つ惜しみません!」

 

最初のハジメとは違う、憑き物が落ちた表情で頼もしい宣言を口にした。

 

『おっし!そんじゃあ、教えてやる!言ったからからには、手加減なしだ一蓮托生最後までミッチリ叩き込んでやる!』

「私も手抜かりなどせず、キッチリ仕上げよう!文字通り全身全霊の特訓だ!」

「はい!よろしくお願いいたします!フーマ師匠、ジーク師匠!」

 

ハジメの瞳に情熱の火が灯る時、その身体は一回り大きく見えこれからの未来を暗示させていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「って事があってだな……その後ジーク先生と二人がかりで鍛えて行ったら心身ともに凄いパワーアップを遂げた訳だ!」

「ふむ、偶然とはいえ違う惑星出身の戦士が居たとは……。」

「……ウッ!」

 

残りをかなり端折気味に語り話を終わらせたフーマ、その事を余り気にした様子も無いタイタスは少しばかり話の中に出て来たウルトラ戦士に触れた時、ずっと静かだったタイガは大きくは反応する。

 

「ん?どうしたんだタイガ、そんなに震えて?」

 

謎の反応をしたタイガの方を見ると、何故だが縮こまり体を震わせている。

 

「いっいや、何でもないゾ!Z95星最凶の鬼教官ジークの事なんて何も!」

「鬼教官?そのジークと言う戦士を知っているのかタイガ?」

「あぁ~、お前もジーク先生に扱かれた質の分類か……。」

 

タイガの様子から全てを察したフーマは若干同情的で、二人から通ずるジークと言う戦士の概要に大体の検討がついたタイタス。

 

「あぁ、父さんのかなり古い付き合いの友人がZ95星で教官を務めているから会ってみろって……それで修行をつけて貰おうとしたら、光線のみで小型隕石一万個打ち落とせとか言われたり、100m級の岩山をギブス付きで登らされたり、組手をしたらしたで今度はいつ隕石が降ってくるか分からない惑星の上で組手をさせられて……。」

「そいつは、何とも……。」

 

その当時の修行風景を思い出し頭を抱えるタイガに、今回ばかりは何と反応するべきか迷うフーマ。

 

「うむ、中々面白い御仁の様だな!一度会って私もご教授願いたいものだ!」

「本気かタイタス⁉やめておけよ、あの人の教練はZ95星の戦士達以外の間でも厳しいって有名で……!」

 

二人で如何にジークの教鞭が如何に過酷であるかを話題にしていた時、その脇でタイタスがそんな爆弾発言をするとので静止しようとするタイガ。

 

「そうなのか!やはり一度顔を合わせておきたい、力が回復したら連れて行ってくれタイガ!」

「タ、タイタス……。」

「諦めろタイガ、旦那がこう言ったら止まらない質なのは知ってるだろ?」

 

タイタスの上機嫌さとは裏腹にドンドン気が落ちていくタイガとフーマ、余談だがZ95星の戦士達の間では怪獣と戦っている時とジークの指導を受けている時どっちが恐ろしいかと聞くと全員がジークの指導と答えると言うある種の常識的な評語となっているらしい。

 




ウルトラマンジーク
出身:Z95星
年齢:1万3千歳
身長:60m
体重:5万8千t
飛行速度:マッハ18
走行速度:マッハ6
水中速度:170ノット
地中速度:マッハ6.5
ジャンプ力:1000m

Z95星に置いては最強と謳われる戦士、その実力は折り紙付きであり噂ではウルトラマンキングの下で修業をつんでいたとも言われている。
また母星では、鬼教官と呼ばれる程厳しい訓練を訓練生にかし、最初にきつく徐々に個々の程度を下げていく方針を取っているとの事、最初から最後までメニューを変えず乗り切った者は数人しか居ないが実はゼアスはその数人の中に含まれている。
タロウとは彼が見習い時代に光の国に修行に来ていた時に知り合っており、その時にはトレギアも光の国に居た為、面識があり二人とは仲良くしたもよう。
因みに、この時ウルトラ兄弟と面会していて彼の教育方針はこの時の各兄弟達との邂逅に因るものが大きいと言う。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。