「……フーマ、君は異星の地でハジメやジーク殿と出会ったと話していたな。」
ある日のイージスのオフィスでいつものトレーニングを終えたタイタスは、立ち回りの修練をしていたフーマに語り掛ける。
「ん?あぁ、そん時はお互いその星では余所者だったしハジメは光の国の戦士が活躍した地球の生まれだった筈だぜ。それがどうかしたのか?」
急ではあるが嘗ての相方の事を思い出しつつその時の状況を簡潔に伝える。
「そうか、実は私も尚文と同化していた時に似たような経験をしたことがあるんだ。」
「は?それって……。」
「本当かよタイタス!」
徐に口にしたタイタスの発言に、修練を止め詳しく聞こうとしたフーマの言葉を遮ったのは二人の様子を観察していたタイガだった。
「タイガお前、俺が先に聞こうとしてたんだぞ!」
「何だよフーマ、どっちから先に聞いたって同じだろ!」
いきなり話に割り込んだタイガに少し苛立ったフーマが食って掛かり、彼の怒る理由が察せないタイガは言い返し言い合いが始まった。
「まぁまぁ二人とも、これから詳しく話すから落ち着いてくれ。」
そんな二人を宥めべくタイタスは、自身も体験した異世界での経験を話し出した。
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あの出会いから私が尚文と一体となり一年の時が過ぎた。
私達はとある大きな戦いを終え久しぶりに纏まった休暇を与えられ尚文の実家に戻っていたんだ。
「久しぶりだな自分の部屋に戻るのも。」
部屋の壁には幾つもの草案図を貼りつけられ本棚にも床にも多種多様ジャンルも量も豊富な専門書が置かれその横にはダンベルが転がっている、防衛軍が彼に与えた研究室も兼ねた自室も同じ様な有様なので特に気にした様子も無いが。
元々、大学でヘンリーニシキ教授の助手をしていた尚文が恩師の勧めで宇宙船の新型推進システムの論文を発表した事がきっかけで大学からの出向する形で科学警備隊の新隊員になった尚文である、彼の恩師に似て変わり者と呼ばれていたジャンルの問わず様々な形式・様式を多角的かつ複数の視点から見て深部まで学び取る洞察力と考察力を持っていた、だからこそ彼は恩師と共にU-40と他にもう一つの星の技術者も交え新型宇宙戦艦ネオウルトリアを建造、再興したヘラー軍団残党を退けたのが先日までの事であった。
「ふぅ……ん?伝承の書籍が何故ここに、この関連の書籍類は別の書庫に纏めてあるのに……。」
久々に戻った自室の中を見回していた尚文の視界に見覚えのない一冊の本が写る、一見乱雑に思われる空間にも法則がある尚文はここ以外にも複数の書庫と書斎を持っていて、そこにジャンル別に置く各資料を別けていた当然ここには機械工学やエネルギー技術と回路図などの資料が纏められそれ以外は置かれていない。
「四聖武器書……こんな題名の本は持っていないはずだが?取り敢えず中を検めよう若しかしたら忘れてだけかもしれん。」
得体が知れない本だが多忙を極めた自分に弟か友人だかが差し入れてくれたのかもしれないと思い直し、折角の余暇なのだと本を開き記された内容に意識を向ける。
本の内容の重点を約すると、異世界少なくとも地球上ではない他惑星上での世界に終末の預言が示される所から物語は始まる。
終末とは一遍に纏まってくる災害ではなくある期間或いは周期的に波の様に訪れ対応を誤れば文明社会が滅亡してしまう、それを阻止する為に四人の勇者と呼ばれる異界の戦士を召喚し救済を求める。
四人の勇者には其々、剣・槍・弓・盾の武器が割り当てられ、各々が力を付ける為に修練なり修行の旅に出て、破滅の波に備える。
「ふむ、なかは至って一般的なファンタジー小説か……しかし、この物語のベースは何だ?」
ここまで中腰の姿勢で読み進めた尚文はやはり読んだ記憶の無い本の内容に小首を傾げた、一般的なファンタジー小説は各地の伝承を基に作られる、つまり物語のルーツとなる伝承が必ずあるのだ。
古今東西地球上の在りとあらゆる伝承や伝説を集め、必要ならば地球外の神話や言伝えにも手を出した彼にもこの本のモデルになった筈のストーリーには聞き覚えが無い。
無論、彼も自分が何でもかんでも知っているとは思っていないし、何なら知らない事の方が多いとする思っている、だがそれでも記憶の枝の端にすら掠るものが無いのは初めてだった。
他にも細々とした設定や節操のない王女と各勇者の活躍なども書かれていたが、肝心の元代に繋がる情報は出てこない、唯一活躍の様子が見えない盾の勇者も居るがそちらも期待は出来ないだろう。
「……続きを読めば少しは類似点が見つかるかも知れん、もう少し読んでみよう。」
そう思い続きのページを捲ったが、次のページは何も書かれていない白紙のページだけだった。
「……白紙か……ふぁ~。」
どれだけ捲ろうと一文字も記されてない本に落胆していると、ここ数日の疲れがドッと押し寄せて来る。
「少し前までは疲れを感じる余裕もなかったからな、それだけ世の中が平和になったと言うことか。」
残党とは言えヘラー軍団との戦いは激戦を極めた、前回の大戦よりも規模はずっと小さかったがその分密度が濃かった、地球ではないかと言ってU-40が舞台でもなかった資源が豊富なとある星の人々を救う為に我が地球からも支援艦隊を送った戦い、結果は無事勝利を収めたが決して少なくない被害も出た、その星の復興と再建に手を貸しようやく訪れた束の間の平穏である。
「少しは心身を休めておいた方が良いかもしれん、先ずはコイツのルーツを探すかふぁ~。」
手にした本の表紙を見つめ余暇の間の暇つぶしを楽しもうと姿勢を正した尚文はまた欠伸を溢し、その前に一休みするかとドアに向かいドアノブに手を掛けようとした時、自分の意識がぷっつり切れるのを感じた。
次に目を覚ましたのは自宅の部屋ではなく、発光源が謎な幾何学サークルの石床の上で軽く周囲を見回すとフード付きのローブを来た人物が数人と同じ様に陣の中に座り込む三人の若者の姿が確認できた。
「ここは……少なくとも日本では無いな。」
自分の腕にいつの間にやら現れた盾を見つめ、何か馴れ親しんだ物の気配を感じつつ事の行く末を守っていた尚文と他三人の前にローブに集団の中から一人が進み出る。
「おお、勇者様方!どうかこの世界をお救いください!」
「「「はい?」」」
「……そう言う事か。」
状況を飲み込めない三人と多くの修羅場を潜っり勘が鋭いが故に察してしまう尚文、暫く休息は望めそうにないと諦めとやる事が出来たと満足気な喜びが入り混じった表情で声を掛けた男を見つめていた。
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「っと言う事が起きてだな……。」
昔を懐かしみしみじみと語るタイタスは少し感傷に浸った様に空を見る。
「はぁ~タイタスと尚文は直接、その違う世界に行った事があったのか~。」
「まさか旦那にも地球人の言う異世界転移の経験が有ったなんてな……でそれからは?」
そんなタイタスの話を聞き入る二人も、より興味を強くして彼に続きを促す。
「あぁ、ん?済まないまだやってなかったトレーニングメニューがあた。」
促されて続きの話をしよとしたがトレーニングメニューを途中で終えてしまった事を思い出し、未消化メニューを始めるタイタス。
「えっ?ここで、これからどうなるのか気になるのに?」
「そうだぜ、いつものトレーニングは話を終えてからでもいいだろ?な?」
「いや、ここからが長くてな悪いがまた今度に語らせてくれ。」
早く続きを聞きたい二人は食い下がるが、申し訳なさそうに断りトレーニングを始めてしまう。
「「ちょっ!続きはどうなるんだよタイタス(旦那)!」」
望みが叶わず中途半端の所で投げ出された二人の叫びが部屋中に響いた。