「19997……19998……19999……20000!よし、終わった。」
「終わったのかタイタス!じゃあさっきの続きを早く!」
「おう、早く聞きたいぜ!」
未消化のトレーニングを終えたタイタスに、タイガとフーマが詰め寄り彼に前回の続きを催促した。
「はは!分かった分かった、そうだなあの世界に召喚されてからの直ぐの事だ。」
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此方の世界に呼ばれてから少し時間が過ぎ、他三人も落ち着て来たころ召喚部屋から出てある場所に案内されていた。
最初こそ尚文以外の三人は状況に流され若干横柄な態度で上手を取ろうとした、だがこの場合においてそれは下策だと彼は三人を制して詳しい内情を引き出そうと動いた結果、別室で説明をすると回答を受け移動している最中である。
「「「……。」」」
前を歩く三人はさっきから度々振り返っては尚文の方を見る、見ては前を向き何か声を掛けようとと言うそぶりを見せては押し黙る、尚文の容姿は目立つ一般の成人男性のそれを優に超える背丈と全身に必要以上に着いた筋肉はただ立つだけ歩くだけで重厚な存在感を溢れさせる、突然の頂上的な状況で湧きだした興奮を沈めたのはその存在感に他ならなかった。
「ふぅ……さっきは済まなかったな、話を途切れさせて。」
「っ!いっいや、いいんだ俺も冷静じゃなかったし……その、止めてくれて助かった。」
「ぼっ僕も、大分浮かれてました。いえ、急に勇者なんて呼ばれて戸惑い半分嬉しさ半分で……。」
「冷静に考えたら、俺たち拉致されてる様なもんだもんな……相手を挑発したら拙いよな。」
見るに見かね尚文から三人に会話を切り出すと、三人は一瞬驚き慌てた様に其々で返答を返す。
「そうだな、まだ詳しい状況が分かってない内は大人しくして、状況が鮮明になり次第行動の方向性を行けばいい。」
「はは、なんかこの中で一番場慣れしているなえっと……?」
強情な態度は却って此方のペースを崩し相手のペースに乗せられる可能性がある、一番無難な対応法は最初は律儀に振る舞い間をおいて臨機応変に動く、他星人との接触も多い現在の立場上で学び身に付けたスキルだ、威勢のいい相手ほど手玉に取り易く反対に常時冷静で隙のない相手は勘ぐり深く且集中力を削られるだから此方も常に冷静な態度を見せるのだ、熱くなってはいけない相手のペースの乗ってはいけない。
他の三人は年齢的に若さが目立つ、所謂血気盛んなお年頃だし英雄譚に憧れもあったのだろう、だからこそ高揚感に乗せられて動いてしまった、尚文は日々の日常の中でそれが満たされ若干過多になっており色々の意味で場に慣れているとも言える。
そんな雰囲気を感じ取ってか槍を持つ青年は、彼に話題を振ろうとして名前を知らない事に気が付いた。
「勇者様方、謁見の間に着きました。詳しくは、国王陛下より説明いただけます。」
「承知しました、ここまでの案内を感謝します。」
召喚された四人全員が全員其々の名も知らずに出会いからこの時まで打ち解けていたのだ、今更ではあるが簡易的に自己紹介でもと空気が流れそうな時に、案内役の男性から目的地に着いたと告げられ会話を打ち切る。
既に四人の中での立ち位置は尚文を中心に固められつつあり、結果として自然と尚文が代表して了承と感謝の言葉が続いた。
「っ!いえ、これが職務ですから……四大勇者様ご到着致しました!」
「入りなさい。」
相手の目を真っ直ぐに捉え実直な表情で礼を口にした尚文の顔を見た案内役の神官は何か負い目が有るかのように視線を逸らし扉に向かって問い掛け、扉の向こう部屋の中から落ち着いた声音の男性の声が聞こえた。
「皆、これから会うのは恐らくこの国の最高責任者だ、上手を取られまい押柄な態度を取ろうとはせずきちんと相手を立てるんだ、礼節は遜る事とは違い立派な自己防衛になる不遜な態度は逆に足元を晒す事になるぞ。」
「お、おう……分かった。」
「理解した、やはり貴方は冷静だ……。」
「頼りになりますね。」
入室する前、尚文は三人に向き合い三人の顔をしっかり見て諭すように語り掛け、彼らはその忠言を聞き入れつつ尚文の平静振りに関心しきっている。
「失礼します。」
室内は如何にもな王が家臣と謁見する為の部屋といった内装、一番奥の長椅子に腰掛ける男性が国王でその横に控えるのが宰相か他に案内役の男性より高位の神官らしき男性に数人の護衛騎士が部屋の脇に控えるのを、首を動かさず視線を動かすだけでさっと確認すると王の御前に進み出るとゆったりとした所作で最敬礼を見せ尚文に倣うように他の三人も腰を倒す。
「っ!……顔を上げよ、良くぞ来てくれた勇者たちよ、先ずはそなた達の名を聞こうか。」
尚文の威容に驚いたかそれとも一応の礼儀を踏まえた行動に呆気に取られてか、王は一瞬の間呆気に取られていたが調子を戻し威厳を込めた声で四人に呼びかける。
「はい、では私から地球防衛軍アジア支部特殊事件・事故対策チーム科学防衛隊に所属しております岩谷尚文と申します。」
「はっ?あっ!俺は天木錬、高校生だ。」
「俺は北村元康、SRCのパイロット養成所の候補生だ。」
「えっ⁉……はっ!僕は川澄樹、高校生です。」
尚文の紹介に気を取られた剣を持つ青年天木錬は一回思考が止まり慌てて自分の紹介を済ませた、それ続いたのは正規隊員では無いにせよ防衛組織の関係者と思われる槍の青年北村元康、その後は少し瞠目して間が空き弓の青年川澄樹は我に返って自分の紹介を終えた。
「……れ、レンにモトヤスにイツキか……よ、よろしっ。」
「恐れながら、尚文を忘れておいでですよ。」
四人が名乗り終わるのと少し戸惑う様子を見せながら口を開いた王は、三人の名だけを呼び切り上げようとし、その様子を眉だけ僅かに動かした尚文はそれでも静観しよとし空かさず元康が忠言を挟む。
「そ、そうであったか?いや済まぬ……気が付かなかっ。」
「いや、それは無いだろ?こんなに圧倒的な存在感を醸し出した奴を気付かないってなぁ?」
「ははは……ええ、正直見なかった事にしたい気持ちは分かりますけど……。」
「キャラもキャリアも濃すぎる……体躯だけでも目立つのにそのうえ防衛隊の正規隊員だなんて。」
顔を引き攣らせつつ苦しい言い訳で乗り切ろうとする王を前に、元康が矛盾を指摘し他の二人の同意を求め、二人は元康に同意はしても王の心中に同情的な視線を向ける。
「オホン!元康はそれぐらいで、陛下現状の詳細と我々へ要請したい依頼の内容開示を、我々を勇者と呼称したのですから頼みたい事があるのでしょう?」
「う、ウム!すまぬなナオフミ殿、実はだな……今この国いやこの世界全体が滅亡の危機に瀕しておるのだ。」
王より話では、現状においてまず終末の預言と呼ばれる伝承があり、その伝承ではいずれ世界を終末へと向かわせる波が幾重も重なり訪れると伝えられてきた、波により引き起こされる災害に対処しなければ世界は終わると、何度も聞いた事のある内容の話ではあるが何度も聞いたからこそ言いたい事も分かる。
そして預言の年となる今年、預言が現実であると古の時代より伝えられてきた遺物、龍刻の砂時計なる物が砂を落とし時を刻み始めたと言う、この遺物は波の余波を予測してきっかり一か月前から掲示されるのだとか、波が過ぎればまた一か月の間砂を落とし次に備える猶予となる。
しかしながら遥かの昔に伝えられた伝承とは総じて軽んじられ気味なモノだ、実際私の世界にも同じ様に伝説を子供騙しと笑い大事になった事例は幾つも存在し、私もその場面に立ち会った経験は何度もある訳でヤハリと言うべきか、当時の王をはじめとした重鎮たちも本気にせず波を迎えたのだとか……。
砂時計の砂が落ち切った当時、この国メルロマルクの空に亀裂が奔り瞬く間に裂け目となって魔獣の群れが溢れ出た、幸いと最初の波だからか国家の騎士と国に在籍する冒険者からなる即席の軍を布いて多数の犠牲を払いながらも退けられたが、次に控える波には耐えられないと現実から危機感を持った首脳陣は伝承の通り勇者召喚の儀式を執行し現在に至ると……。
「ふむ……内情については理解できました、それで我々に波の対処を依頼したい旨も。」
「そうかでは!」
「承知したのはこれまでの話についてです、依頼の主に波と呼ばれる事象の規模や起こると思われる場所に時間などより詳細な情報を開示して頂きたく思います。具体的にその地方に暮らすこの国の臣民の安全な避難経路の策定と防衛拠点の設置でいくらか被害は小さく出来ます。さらに言えば被害想定がある程度出来れば具体的な現地の復興支援策も……。」
「わっ分かった分かった!もういい、お主の言い分は理解した!分かり次第、伝える故しばし待ってくれ!」
尚文は一瞬だけ王の言い分を理解し承服した風を装いその様子から押し切れると感じた王は畳み掛けるが、次に尚文が口を開いたが最初怒涛の勢いで要望と質問のラッシュにタジタジになる。
「そうですか、要望を聞いていただきありがとうございます。それでは次の提言ですが……。」
「まだ何かあるのか⁉」
「えぇ、我々のこの世界での活動における支援の具体案を、第一に衣食住の保証第二に活動範囲が国外に及んだ場合における身元の保証と各国の太守へ通達、第三に国内外での活動時に起きた現地で被害が発生した場合の対処、勿論できる限りこちらでも最大の注意は払いますが其れでも不可抗力と言う物はありますからそこを考慮していただきたく……。」
「あぁもう!そこも心得ておる故心配するな!……もうないかナオフミ殿?」
王の言葉を聞き一旦話題を区切った尚文は別の要望をまた怒涛の勢いで話し出し、またしても口を挟む余地すらなく流されて大声を出して回答を返し言葉を堰き止めようとする。
「では最後に、我々の活動形態について四人おります私共が一つのチームとして活動するのか、別々のチームを組んで活動するのか、どちらになるかをお聞きしたく。」
「それについては私から。」
王が濃い疲労感を滲ませる表情で他に質問が無いか問い質すと、先程と変わるぬ様子で最後の疑問を投げ草臥れた王に変わり傍に控えた大臣らしき男性が答えた。
「伝承の中では勇者様は各々で仲間を募り別々に行動していただく事になっておりました、なんでも伝説の武器と称される皆様の武器には互いに反発し合う性質がありそれが皆さま個人での成長の妨げになるとか。」
「成る程、それは今確認出来ますか?」
「それなら、ステータスから見れるんじゃないか?」
疲労困憊の王を脇に置き大臣はツラツラと語った説明を聞き終えた尚文、彼は説明された内容の真偽を確認する為に預言を記したであろう遺物の拝見を求めようとして、ずっと聞き手に回っていたレンか初めて意見を述べた。
「ステータス?それはすぐ見れるのか?」
「ああ……えっと、視界の端にアイコンが見えるだろ?そこに意識を見ければ見れるはずだ。」
レンの主張を信じ自身の視界を端に寄せると確かにそこには不自然に宙に浮くマークが写り、それに意識を集中させれば機械的な音声と共に視界全体に半透明なpcモニターの様な板が表示された。
岩谷 尚文
職業 盾の勇者Lv.1 防衛隊員Lv.50 科学者Lv.60 技能者Lv.60 ウルトラマン融合者Lv.測定不能
装備 スモールシールド(伝説武器)
異世界の服
ビームフラッシュ―
スキル 科学知識 化学知識 工学知識 各格闘技術 各武器操術 サバイバル術 ウルトラチェンジ
魔法 なし
さらに詳細な項目もあるが大まかに見ればこの様なものだろか、しかし実際に目にしても珍妙なものだただの文面なのだが客観的に自分の能力値を見れると言うのは、視覚からもここが異世界である確証を得られるとはな。
「Lv.1?まるでゲームだな……しかし、これで戦えるのか?」
「そこは戦い方次第でどうにかなるだろう、それにレベルと言う位だ数字も上がっていくだろう。それより……ふむ、どうやら本当のようだ。」
元康が現実離れした現象に戸惑い項目に些か不安を覚えて小言を溢す、確かに現在の数字で見るなら小さいが結局は指標でしかない数字だ実践に勝る経験はない、それよりも彼らの言う事の真偽を確かめる事を優先して真実であると確認した。
「他の武器を使えば行けるか?」
「確かに、今ある物を使う必要はないですね。」
「ここを出たら試してみるか?」
「それは無理そうだ。」
俺が他にも目を向けるべき項目はないか調べている時、元康たちが武器を取り換えるか相談し合ってる会話が聞こえた、水を差すつもりはない他の武器の併用は不可能との記載を見つけてしまったので伝えておく。
「そうか……じゃあ仲間を集めて、少しづつレベルを上げるしかないか。」
「でも集めるにしたって何処で如何すれば?」
「それも此方に伝手がある、それより今日は日も暮れかけておるようだ。部屋を用意させるゆえ今日は休まれるが良い。」
仲間の宛てがない私達には何処へ行ってどの様な手段でどんな手続きをすれば仲間を募る事が出来るのか分からない、どうしたものか頭を抱えていると少し持ち直した王がそう提案され受け入れる事になった。
「すみません。休む前に体を仕上げておきたいのですが、どこか広く使える場所をお貸し願えませんか?」
「ん?俺も一緒に行ってもいいか?」
「尚文さんのトレーニングか、何かの参考に出来るか?俺も参加させてくれ。」
「じゃあ僕も。」
「勇者殿……あぁ分かった、城の外の訓練場へ案内させよう……はぁぁぁぁ。」
休息前に必ず既定のトレーニングをこなして来た尚文、この世界でもそれルーティンは変わらず続けるつもりで要望すると、元康たちも参加したいと続き諦めの境地に立った王は要望を呑んで訓練場に連れて行かせた。
外はもう大分日が落ち暁の色を見せ始めていたが幸い訓練場には松明が焚かれある程度の明るさがあった。
「よしまずは、スクワット腕立て上体起こしを各30回これを目安に、慣れてきたら回数を増やすなりランニングも加えていくなりして各自で自分に合った方法を見付けていきなさい。」
「それだけか?何か普通だな……。」
広さも明るさも丁度いいと判断してトレーニングを始める前に一緒についてきた三人に簡単にだがメニューを伝える、その内容の余りに普通さ少々拍子抜けした様子の元康は筈かに落胆した表情をしている。
「普段なら専用の器具のあるトレーニングルームを利用するのだがな、さっき呼ばれて代用品もない状況ではなそれに錬や樹の体力がどの位かも分からに内はあまり無理はさせられん。」
「あ!あぁそうか、すまん配慮が足らなかった。」
「気にするな、元康は訓練生なのだからな同程度の自主トレ仲間がいて、そのレベルで馴れてしまっていても可笑しくはないさ。」
「あの……尚文は普段どんなトレーニング量をこなしてるんでか?」
「その体格になるまでだ、相当なんだろうが……。」
本当ならダンベルが欲しいそれでなくとも水の入った容器があれば負荷運動には事欠く事は無いだろう、他にも欲しいものはあるが無い物ねだりは出来ない今ある状況最善を尽くす。
さらに言えば普段の私のメニューは五年以上続けた結果辿り着いたもの、訓練生だった元康ならばともかく学生二人に同じ事をして明日に響いたら困る、興味津々で聞いてくる二人の体格は同年代からすれば確かに逞しい方だがこれから戦っていくとなると心許ない、取り敢えず標準値を見てから判断したい。
「そんなに大した事はしてないさ防衛組織に居たら当たり前にする事だよ、なぁ元康?」
「あぁ、怪獣や宇宙からの脅威に対応する為なら、不足はあっても過剰は無い。」
「科学防衛隊とSRCでしたか?それって、XIGみたいな組織ですか?」
「XIG?XIOじゃなくてか?」
所属は違えど同じ防衛組織に籍を置く者同士だ多少認識にズレは有れど大筋は似通ってくる、お互いまだ分からない事も多いが平和維持の考えは同じだと感じていた。
そう無言の共感とも言うべきものを元康にも抱き始めた時、樹から聞き覚えの無い組織名が出てきてそれに続いた錬からもこれも存じない組織が語られる。
「XIGにXIOそれにSRCもそうだが私は聞いた事がない……マリチバースか。」
「多元宇宙論?って事は、俺たちは別々の宇宙から召喚されたって事か?」
仮に私の暮らす地球のある宇宙をAとするなら他の宇宙にはそれぞれ別の地球や技術形態が存在する事になる、他の三人も含め科学の発達が近代社会の形成の基になった世界であるならここは魔術が発達した世界と考えられなくもない、実際ステータス魔法と言う自分たちの常識から外れた常識が此方にはあった。
「それって普通、特殊な装置や機械が無ければ人間には出来ないんじゃ?」
「それは飽く迄、私達の技術レベルでの話だよ。技術の進歩の度合いは其々だし何に重点を置くかでも進展する分野は変わる、例えば推進系が重要とされれば亜光速レベルの加速が出来るエンジンが作られたり方や医療方面に重きが置かれれば命の固形化なんてトンデモ技術が発明されたりする。」
当然発展した技術体系が根本から違えば我々の想像だにしない技術が生まれてる可能性だってある、この世に絶対は無い現状不可能はいずれ可能になると言う前振りなのだから。
「……この世界に来た時、俺は普段からよく遊んでるゲームに似てるって思ったが。」
「そうなのか?」
ゲームか元康もゲームの様だと言っていたが正しくだったようだ、私は普段が多忙のためそういったものに触れる機会は無かったが。
「僕も思いました、レイアウトも似てるからてっきりゲームの世界に来たと思ったんですけど。」
「錬に樹もか……俺はずっとパイロットになる為の勉強と体造りに打ち込んできたからな。」
「私も、あの体験をするまでなら遊んだことがあったかもしれんが……。」
元康も同様の様でやや困惑しているらしい、五年ほど前のタイタスと出会う前の私ならばまだゲームにも触れていたがその頃にはRPGには遠ざかっていたしな。
「あの体験?」
「何ですかあの体験って?」
「……実はウルトラマンに命を助けられた事があるんだ。」
「「「ウルトラマンに⁉」」」
その名を出して通じるかどうか分らなかったが一応話してみると、三人は大きな反応が返って来て彼らの存在を知っているのだと理解できた。
「あれは、当時住んでいた街に怪獣が現れた日だった……。」
知っているならば問題ない、私は彼らに語ったタイタスとの出会いの日の事を。
平和な日々が崩れるのは一瞬だった、ただ一度人に合わせて作られた街に埒外な存在が現れただけ腕を振っただけ息を吐き出しただけたったそれだけで、人の街は瓦礫の山へと姿を変えた。
人々は圧倒的な力の前には逃げる事しか出来なかった、タイタスが現れるまでの恐怖と絶望から来る悲壮感は忘れる事は無いだろう、あの経験が私に危機感を覚えさせてあらゆる事に懸命に取り掛かる要因になった。
トレーニングに励んだのも勉学に励み研究に打ち込んだのもありとあらゆる武術を身に着けたのも武器の扱い方を習ったのも、全ては自分が後悔しない様に最善を尽くすためだ。
「……それが覚悟を決める切っ掛けか。」
「尚文さん……凄い人だなアンタ。」
「ただの天才ではないと思っていましたけど……そんな日々の研鑽を重ねていたんですね。」
「よしてくれ……九死に一生を得る事が出来た私が勝手に自分を追い込んだ結果だ褒められるようなものじゃない。」
全ての努力は自分の為にやった事、生き残ることが出来た事実と助からなかった命があると言う現実が怠惰に過ごして来た自分を自分で戒めさせた、罪悪感から逃げる為の言い訳であり突き詰めれば現実逃避の自己満足なのだ。
嘗ての地球に降りたタイタスも同じ心境だったのかもしれない、焦りと後悔を抱え取り戻したいと足掻いて我武者羅に突き進んで出た結果が今のだ。
「さぁ、話はこれ位にしてトレーニングを始めよう。」
「おう。」
「あぁ!」
「はい!」
長く話し込んでいたせいか空はすっかり闇の帳を下ろし、自分たちの周りを照らす松明の範囲だけが明るさを保っていた。
これ以上の会話は無用、今日も最良の明日を迎える為の悪足掻きを始めよう。
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「…………俺、なんだか尚文がヒロユキが悩んでた時の姿とダブって見えったんだけど。」
「……なんか、ヒロユキもそうだったけど責任感のある地球人ってのはどうして自らを追い込むのかねぇ?」
当時の尚文の心境が如何に自虐的だったかを知りただ茫然とするタイガとフーマ、その様子を二人はトレギアの策略で闇に囚われかけたヒロユキの姿に重ねてしまう。
「その時は私も尚文の後悔を感じてはいたが、その当時の私は自力ではコミュニケーションを取る力を持ってはいなかったからな……。」
タイタスも当時の追い込まれた尚文を思い出し沈痛な面持ちで語る。
「済まない二人とも今日はこの位で勘弁してくれ……この先は必ず話すから。」
「……分かったよタイタス、今は気を休めてくれ。」
「俺達も、少し考えたいことも出来たしな。」
若い頃の後悔はどれだけ時がたっても忘れる事は無い、ヒロユキが闇に呑まれかけた原因の一旦はタイガにもあった、そして焦燥感はフーマとタイタスも感じていた事なき得て強い絆が結ばれたからこそ思う人と交わる強さと脆さを。