仮面ライダーアギト×ソードアート・オンライン ~目覚めろ、その魂!~ 作:バーラ18
SAOはよくエクゼイドとくっついていますが、アギトは恐らくこれが初めてとなるので緊張します。
アインクラッド第35層 迷いの森 夜
雪の上に一人の少年が仰向けになって身を投げ出している。
少年はすでに死にかけ、いや、もう死が確定しているといって良いだろう。
凍えて死ぬのではない、確かに寒さは伝わってくるものの、このポリゴンで構成された世界では気温の低さが少年の命と直結することはない。
少年の状況にはまた別の要因があった。
視界の左端にあるHPゲージとその数値、これがこの世界において少年の命を示しているものである。
今そのHPゲージは危険域であるレッドゾーンに突入し、その横にある数値は最大値5500から残り500となっていた。
普通ならば今すぐにでもHPを回復させるポーションを使用するべきであるが、今の彼にそれは不可能だ。
その原因は彼のHPゲージの周囲に点滅している緑色の枠が関係している
これは状態異常の1つ≪麻痺(パラライズ)≫の効果が少年に適用されているのだ。
この≪麻痺(パラライズ)≫が発動すると効果時間が切れるまではどんなに踏ん張っても指一つ動かすことすら叶わない。
かろうじてか細い声を出すのが関の山だ。
そして、さらに恐ろしいことがもう一つ
彼のHPバーの横に出現しているデバフアイコン、それはもう一つの状態異常である≪毒≫と呼ばれるものだった。
この毒は1分ごとに少年のHPを100ポイントずつ削っていくため、5分以内に解毒をしなければならないが、≪麻痺≫がそれを許さない。
この世界の≪麻痺≫は最低でも解除に600秒を必要とするため、誰かに麻痺を解除してもらわねば≪毒≫が先に少年の命を刈り取るだろう。
だが、他の誰かに助けを求めようにも、ここ迷いの森のマップは同じような道が続く上にランダムでルートが変わる仕様となっている。
さらに今日はクリスマス、いくらレベリングに熱心なプレイヤーといえど、わざわざこの日に限ってフィールドに出ることはない。
そう、この時点で少年の「死」はほぼ決定したようなものであり、あとは自分の命がなくなっていく感覚をじっくりと味わうだけだった。
しかし、少年は泣きわめいて助けを乞うことはなく、ただ夜空を仰いでいた。
一見落ち着いているように見えるが、瞳にはもはや光はなく、諦観と絶望が入り混じった表情となっている。
「まあ・・・・自分にしては頑張った方か・・・な」
少年は長い沈黙の果てに、少し自嘲ぎみに呟く。
(思えば現実では包丁しか刃物を握ったことのなかった自分がよく非日常溢れる剣の世界を舞台に今日この日まで生き残れたものだな・・・・・・・・。)
少年は夫婦二人で営む洋食屋の一家の長男として生まれた。
20年以上生き残ってきた店の実力は確かであり、彼もまた、跡を継ぐため毎日必死に店の手伝いをしていた。
客からも顔なじみになり、しだいにシェフである父からも料理も教わり始め、いつかは必ず良い跡継ぎになると周囲に期待されていた。
そんな充実した生活の中で、突然悲劇に巻き込まれるなど当時の少年にとっては露ほどにも思わなかった。
いかがでしたでしょうか?
明日か明後日には続きを投稿したいと思います。