もし桜が呼び出したのが盾持ちの英霊だったら   作:猿野ただすみ

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久しぶりの更新です。


防御特化と範囲防御。

「テメェ、一体…!?」

 

ランサーが一歩身を引き口にした言葉に、少女は笑顔で答える。

 

「私は…、()()()()()()()()()()()()()()サーヴァントだよ!」

「なっ!? どうして前の聖杯戦争のサーヴァントが生き残ってやがる!?」

 

それは当然の疑問である。もちろん、同じ疑問が浮かんだ者達もこの場にはいる。

 

「そんなの、あなたの今のマスターに聞いてみたら?」

 

メイプルにしてはやや突き放した言い回し。しかし士郎はふと、桜から説明を受けたときのメイプル(ライダー)の態度を思い出した。

 

(慎二や桜のお爺さんを嫌ってた、あの時と雰囲気が似てる?)

 

あの時に感じた違和感を、もう一人のメイプルにも感じたのだ。

 

「テメェ、マスターを知ってやがんのか!? ……チッ、まあいい。それに」

 

ひゅん、と槍を振り下ろし、盾を下へ打ち下ろす。慌ててメイプルが元の位置に戻した瞬間、今度は下から打ち上げられる。そう、先程のライダー・メイプルと同じ様に、万歳の格好をさせられたのだ。

だが、こちらのメイプルは先程の彼女とは違い、油断はしていない。

 

「その心臓、貰い受ける!」

 

ランサー、二度目の宝具解放。しかし、メイプルも負けていない。

 

「ピアースガード!」

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)ッ!」

 

僅かに速く発動した、メイプルのスキル。その些細な違いが、先程とは大きく結果を変える。

 

「なん、だと!?」

 

驚愕の表情を浮かべるランサー。

かの槍の穂先は因果逆転の恩恵を受けているにも関わらず、メイプルの胸に触れたまま貫く事が出来ずにいた。それでも未だ貫かんとしているものの、やがてその効果も切れてしまう。

 

「ヴェノムカプセル!」

 

メイプルが叫んだ瞬間、人の体を覆うほどの毒々しい色をした球体が展開された。……が、しかし。既にそこにはランサーの姿はない。宝具の効果が切れたと見るや、即座にメイプルから距離をとっていたのだ。

 

「ったく。どんな手品かわからねえが、我が槍をも防ぐとはな。本当はトコトンやり合いたいが、さすがにマスターから帰って来いと命令されちまった」

 

そう言ったランサーはキャスターに視線を移す。

 

「キャスター、テメエは俺が結界内に入り込んだのに気づきながら、知らねえフリをしてたな?」

「私達を狙っていた訳ではないのでしょう?」

 

口角を上げながら返すキャスター。ランサーはつまらなそうな表情になり。

 

「ちっ、食えねぇ奴だ」

 

そう漏らす。

 

「まあ、そういう事なら、このまま帰してもらっても構わねえよな?」

「ええ。お陰で私も、ある程度の成果が上げられたしね。……そうそう、門前にまだアーチャーがいる様だから、気をつけて帰りなさいな」

「おう」

 

それだけの会話を済ませると、ランサーは霊体化して立ち去っていった。

 

「さて…」

 

今度はキャスターがメイプルに視線を移し、何かを尋ねようとした、その時。

 

「貴女は、本当にあの時の彼女なのですか?」

 

キャスターに拘束されたセイバーが先に口を開く。

 

「うん、そうだよ。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「!?」

 

メイプルの発言に驚きの表情に変わるセイバー。

 

「だけどね? あの聖杯は、あったらいけない物なんだ。切嗣さんが自分の望みを捨ててでも、破壊しなきゃいけないくらい危険な物だったんだよ」

「何を…」

 

セイバーは反論しかけて、口をつぐむ。メイプルの表情があまりにも真剣だったからだ。

 

「だから私は切嗣さんの、そして()()()()()望みを叶えるために生き延びてきたんだ。聖杯の機能を停止させるため。そして、()()()()()()()()()()()!」

 

メイプルの意思表明に驚くセイバー、そして士郎達。

 

「雁夜、おじさん…?」

 

雁夜の名を聞き、呟く桜。そしてある事を思い出し、首から提げたお守りを取り出す。

それは10年前。もう顔も覚えていないが、ひとりの女性から渡されたもの。

 

── これ、お守りとして持ってて

 

そう言われて手渡されたのだ。桜はまさかと思い中を確かめると、ワンポイントで亀の装飾が施された指輪が納まっていた。

それには見覚えがあった。そう。それはライダーのメイプルが指に嵌めているものと、同じものだったのだから。

 

「……それ、持っててくれたんだね。そうか。だから今回も(メイプル)が召喚されたんだ」

「それじゃあ、あなたがあの時の…」

 

すなわち。幼い桜がメイプルから渡された指輪が触媒となり、ライダーのメイプルが召喚されたというわけだ。この指輪は、ライダーとしての象徴でもあったのだから。

 

「……とんだお伽話ね」

 

どこかの並行世界の所長の様な事を呟き、ため息を吐くキャスター。

 

「まあ、いいわ。本当は色々と聞きたかったのだけど、聖杯を処分する気なら、貴女は敵にしかなり得ないもの」

 

言ってキャスターは、複数の攻撃用魔法陣を展開する。

 

「貴女の異常な防御力は、ライダーの貴女で確認済み。けれど、この場にいる全員を守ることは出来るかしら?」

 

ライダーは顕界したままであるものの、シロップのスキルを使う気力もない。それを踏まえての挑発である。

しかし、キャスターは見誤っていた。こちらのメイプルがどのクラスで召喚されていたかを、考えてもいなかったのだ。

不意に。メイプルの前に、SF作品に出てくる様な半透明のパネルが現れる。メイプルがそのパネルをタッチすると、その姿がいつものボブヘアになるものの、白い鎧と白い盾という、ライダーとは正反対の色調の装備に変わっていた。

キャスターは一瞬訝しむものの、魔法陣から魔力のビームを斉射する。

 

「身捧ぐ慈愛!」

 

一瞬遅れてメイプルが発動した()()。その瞬間、メイプルの髪の毛が金髪に、瞳の色が青に変わり、背中には白い大きな翼、頭上には天使の輪(エンジェルハイロゥ)が現れた。

直後、ビームが命中し、白い閃光が僅かな間視界を遮り。

 

「なっ…」

 

再び視界が開けたとき、そこには無傷の全員の姿があった。

 

「これは、どういうことよ」

 

凛の疑問に、メイプルはニッコリと微笑み。

 

「私の宝具、[身捧ぐ慈愛]だよ。範囲内にいる味方全員が、私と同じだけの防御力になるんだ。……ええっと」

「遠坂凛、よ」

「そうか。あなたが…」

 

そこまで言って、口を噤む。この先は、ここで言うべき事でないのが分かっていたから。

 

「……とにかく今は、あのキャスターをなんとかして、騎士…セイバーを助けないと!」

 

そう言うとメイプルは、キャスターを睨みつける。

 

「ああら、怖いわね。可愛い顔が台無しよ? だけど残念、時間切れよ」

 

少し煽るように言うと、キャスターと葛木、そしてセイバーの周りを光の粒子が覆い、その姿を消していた。

 

「え、どうなったの!?」

「やられたわ。転移魔術よ。キャスター達は撤退したようね」

 

悔しそうに、それでも努めて冷静に説明する凛。

 

「それじゃあセイバーは!?」

 

思わず強い口調で訊ねる士郎に、やはり冷静に凛は答えた。

 

「敵の手に落ちたと見るべきね。アサシンを従えていたことを踏まえると、葛木…いえ、キャスターがサーヴァントとして再契約する気なんでしょう」

「そんな…」

 

士郎は膝をつき、地面に拳を叩きつける。しかし。

 

「ライダー!!」

 

聞こえた桜の声に、ハッとなりそちらを見れば、ライダーの前に跪き涙を流す、彼女の姿があった。

そんな二人に近づいていくメイプル。

 

「さ…くら…、ごめん…。私じゃ…守れない…」

「そんな…、そんなことないよ」

 

桜の言葉に、ライダーはしかし首を小さく横に振った。そしてもうひとりの自分へと視線を向ける。

本来の彼女なら、痛みのあまりにまともな会話など出来なかったはずだ。しかしこの時のライダー(メイプル)には、どうしても言わなければならない事があったのだ。

 

「……四次(まえ)の私…って、バーサーカーじゃ…なかったん…だね」

「うん。バーサーカーを召喚したかったみたいだけど、何か不備があったみたい。私はエクストラクラスのシールダーだよ」

 

まさに防御特化の、メイプルの為のクラスといえる。

 

「……お願い…があるの…」

 

ライダー(メイプル)の言葉に、シールダー(メイプル)は顔をしかめる。自分のこと故に、何を言おうとしているのか理解したためだ。

 

「私の…霊…核を、受け取って…。私の代わりに…桜を…守っ…て!」

「ライダー!?」

 

あまりにもの事に、桜の言葉も荒くなる。

 

「何言ってるの? あなたはまだ…」

 

シールダーが言葉を続けようとするも、ライダーは顔を横に振り言った。

 

「私じゃ…桜を、守れない…から」

 

そう言われると、桜を守るために今まで存在していたシールダーとしては、返す言葉が見つからなかった。ただ。

 

(桜ちゃんが望んでるのは、そうじゃないんだよ?)

 

シールダーはメイプル自身であるものの、同時に別の存在として顕現している。故に第三者視点で二人を見ることも出来たのだ。

シールダーはしばしの逡巡ののち。

 

「……わかったよ。桜ちゃん、ごめんね」

 

ライダーの意見を飲んだ。若干の認識の違いはあっても、利害は一致している。断る理由など無いのだ。

 

「霊核の譲渡…って、どうするんだ?」

 

士郎の素朴な疑問。もちろん、凛やイリヤとて、やり方を知っているわけではない。だが、サーヴァントの在り方からの予測くらいは立てられる。

 

「対象の体内から霊核…、おそらく心臓という形に収まっていると思うけど、それを抜き出して自身の体内に取り込むんでしょうね」

「そんな! これ以上ライダーを苦しめるなんて、そんな事…!」

 

凛の説明を聞いていきり立つ桜。しかしそれを諌めたのはシールダーだった。

 

「大丈夫だよ。普通はそうなんだけど、ライダーの意思で譲り受けることと、[()()()]の私の特性でもっと簡単に済むはずだから」

「「「NWO?」」」

 

凛、士郎、イリヤが疑問の声を上げるが、シールダーからの返答はない。しかし桜は、少し落ち着きを取り戻していた。

 

「それじゃ、いくよ?」

 

シールダーの呼びかけに、ライダーは苦渋の表情のまま頷く。

シールダーはライダーの腕をとると、顔を近づけ、その腕に軽く噛みついた。するとライダーの身体がポリゴンのエフェクトと共に崩れ、やがて消滅する。

 

「何…今の?」

「バーサーカー消失の時と違うじゃない」

 

凛とイリヤの疑問に、シールダーは答える。

 

「今のは[NWO]の死亡エフェクトだね。多分私達が[NWO]の存在で、[NWO]に関わる事柄で私に吸収されたから、光の粒子にならなかったんじゃないかな。[NWO]と同じ仕様だったらホントに食べなきゃいけなかったから、私としては助かったけど」

 

再び登場する、NWOという謎の単語。さらりとトンデモない発言も混ざっているが、みんなNWOという単語の方に気をとられていた。

 

「……さっきから出てる、NWOってのは何だ?」

「それに、第四次聖杯戦争から生き残っている事について、説明して欲しいんだけど」

「聖杯が危険なものっていうのも聞き捨てならないわ」

 

士郎、凛、イリヤが順番に訊ねる。これにはシールダーも苦笑いを浮かべ。

 

「えーと、それは…」

 

どさり

 

何かを答えようとしたその時、シールダーの横にいた桜が崩れ落ちた。

 

「さ…」

()()!?」

 

士郎が上げようとした声に被せ、凛が叫ぶ。苗字ではなく名を呼ぶ凛に違和感を感じるものの、士郎もこの状況で指摘など出来ないでいる。

 

「……大丈夫。多分、緊張の糸が切れて気を失っただけだと思うから」

「……そう」

 

優しい眼差しで桜を見つめるシールダーの様子に、凛も取りあえずの安堵をする。

 

「桜ちゃんもこんなだし、こんな場所で話す事じゃないから、取りあえず士郎君の家に戻ろう? それに、サリーもあのままにしておけないし」

「「「サリー?」」」

 

シールダーが提案をするが、新たな謎の単語に三人は、再び声を揃えて問い返してしまうのだった。




普通に考えれば宝具の攻撃を普通のスキルで無効化できるとは思えませんが、ピアースガードの特性「一日に一度だけ防御貫通を無効化する」という絶対性を持った設定を、そのまま英霊のスキルに昇華されたための例外です。
まあ、あくまでも一日一回だけ使える手品(インチキ)ですね。
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