設定とか、結構独自に変えてたりしますがご容赦ください。
西暦1999年。
世界各地に大型の隕石が飛来。
落下地点の周りは一瞬にして地獄と化す。
そしてその隕石の飛来から7年後の2006年、世界各地で新たな脅威が生まれようとしていた。
『ワーム』
それが彼らの名称である。
ワームは人間に擬態する能力を持ち、瞬く間に人間社会に入り込み、少しずつ、だが確実に人々の営みを蝕んでいった。
まもなく人類は、対ワームを見据えた国連直轄の組織『ZECT』を結成。
ZECTはワームへ対抗できる切り札として『マスクドライダーシステム』を開発し、実戦へと投入した。
辛くもマスクドライダーシステムを駆使しワームを殲滅する人類であったが、追い討ちをかけるかのように『ネイティブ』と呼ばれる種族の魔の手が襲い掛かった。
ネイティブはワームと近い種族でありながら戦いを好まず、ワームと対立関係にあった。
ネイティブが目をつけたのは地球に住む人類である。
人類の技術力に着目したネイティブは、自らの技術を人類に提供する代わりに、ワームから守ってもらうよう盟約を交わした。
そうして生まれたのがマスクドライダーシステムである。
ネイティブの技術を用いて完成したマスクドライダーシステムで、人類はワームを追い込む。
一方で、ネイティブは人類ネイティブ化計画を密かに画策。
地球に襲来したワームを殲滅した後、本計画を以って人類をネイティブへと変異させ、地球を乗っ取ろうというのが、彼らの真の計画であった。
人類はこれを阻止すべくマスクドライダーシステムを以てネイティブに対抗するも、世界各地のZECT支部が陥落し、日本ZECT本部直轄の部隊だけが、辛くも勝利を収めることとなった。
これにより、日本を除く各国がネイティブの占領下に置かれた。
西暦2009年。
残された人類は地球を守るべく、ネイティブとの決戦に挑むこととなる。
「α分隊より、目標を工場区Cブロックへ追い込んだ。数は4、至急ライダーをこちらへ。」
唯一ネイティブに掌握されていない日本であるが、彼らは既に国内に溶け込んでいる。
現在、日本のZECT本部では国内のネイティブを殲滅すべく、こうして彼らの基地を発見しては強襲をかけていた。
「作戦本部了解。ホッパータイプを1名送る。」
「ラジャ。」
すぐさま作戦本部から出撃命令が下されたのは、ZECT配属から日が浅い新人隊員、矢神 遥斗。
戦闘経験は少ないものの、人手不足の影響と潜在的な能力判定によりライダーとして戦闘部隊に配属されている。
「出撃だぁ、どうしよう...。」
遥斗は心底残念そうな顔をした。
とてもではないが、戦いに向かう者の面構えではない。
「一昨日死にかけたばっかりなのに。次は酷い目に遭わないといいけど。」
つんと返したのはオペレーターの鳴上 藍香。
基本的にライダーへの作戦指示を直接伝える役目を担う。
「もう少し、何か前向きになれる優しい言葉をくれよ。」
「嫌ですよ。」
バッサリと切り捨てる藍香。
「優しい言葉なんて戦場じゃ役に立たないでしょ。さぁさぁ、行ってきて下さい。」
「くそ、もう少し愛嬌ってものは無いのか!!」
「文句なら帰ってきてから聞きますから。文句を私に伝えるためにも、無事に帰ってきて下さい。」
作戦区域に突入し、α分隊がネイティブを追い詰めた区画へと進む遥斗。
護衛のゼクトルーパー2名を従え、α分隊と合流する。
「隊長さん、来ましたよ。」
「おお、来てくれたか。目標はこの通路の先の広間に追い詰めてある。ゼクトルーパーの兵装では満足に倒すこともできなくてな...。」
マスクドライダーシステムと違ってゼクトルーパーは、謂わば戦闘スーツのようなものだ。
新モデルも一部の部隊にしか配備されないため、旧式を用いる部隊も多く、型落ち感が否めない。
ネイティブ相手には、足止め程度にしかならない。
「わかりました、α分隊は撤退を。ここからは俺が片付けます。」
「心強いな。よし、α1より各員、すぐさま撤退せよ!」
広間へ突入した遥斗は、与えられた装備である『ホッパーゼクター』を呼び出す。
ピョンピョンと跳ね回って現れたホッパーゼクターを掴み、ベルトへと装着した。
「変身!」
マスクドライダーシステムを起動し、遥斗の身体がアーマーに覆われていく。
『Change Kick Hopper』
マスクドライダー キックホッパー。
それが遥斗が変身したマスクドライダーのコードネームであった。
メタリックグリーンを基調としつつ、赤い複眼を特徴とする。
また、左脚部にはバッタの脚を模した専用兵装、アンカージャッキが装備されており、これを主軸に戦闘を行う。
ホッパータイプは他のマスクドライダーシステムとは異なり、人類がネイティブに対抗するための懐刀として極秘に開発していたモデルである。
西暦2006年の段階では2基のホッパータイプが先行配備されていたが、他のマスクドライダーシステムがネイティブに回収された現在ではこのホッパータイプを量産し、日本におけるZECTの主戦力として運用している。
「4対1か、嫌だぁ。」
遥斗は前方に展開するネイティブを見据える。
サナギ体が4体、報告通りである。
「泣き言言わない。ちゃっちゃと倒して下さい。」
オペレーターの藍香から冷たい催促を受け、泣く泣く覚悟を固めるのであった。
「わかった、わかったよ。痛いの嫌なの、に!」
言い終わる前にキックホッパーの瞬発力を遺憾なく発揮し、ネイティブとの距離を詰める。
まずは一番手前の個体をロックオンし、その腹部に蹴りを見舞う。
しかしながら、決定打にはなり得なかった。
サナギ体は動きが遅い分、耐久性が高い。
対して、こちらはライダーフォームと呼ばれる、機動性を重視した形態であり、ライダーキック等の特殊攻撃システムが使用できるものの一撃一撃は軽い。
距離を取っていた他の個体が左右から詰めてくるのを目視すると、遥斗はホッパーゼクターの脚部のレバーを上げた。
「今日は痛い目に遭いたくないからね、一気にやらせてもらう...!」
『Rider Jump』
システム音と共に高く飛び上がる。
そして、上げたレバーを再び元の位置に戻すことで、対ワーム・ネイティブ用特殊攻撃システムを発動した。
「ライダーキック!」
『Rider Kick』
左脚にタキオン粒子を収束させ、蹴りと共に対象へと叩き込む。
一番近くの個体に直撃したが、遥斗はまだ止まらなかった。
蹴りの反動で再び宙を舞い、次の個体へ再度ライダーキックを見舞う。
一連の動きで、3体のネイティブを撃破した。
「お見事です。少しはまともに戦えるんですね。」
「俺だってこれくらいはね。」
残るは一体というところで、サナギ体の様子が変化した。
まるで溜め込んだ力を抑えられないような、そんな動きである。
「遥斗さん、サナギ体のエネルギー反応が増大してます。羽化するようです...!」
羽化。
ワームやネイティブに見られる行動の一種でサナギ体から成体へと変化することを示す。
成体はクロックアップと呼ばれる、通常の人間では目視すら困難な程の超高速行動能力を使用することができる。
通常の兵器でワームやネイティブに対抗できない理由がこのクロックアップの存在であった。
サナギ体が羽化し、何やら大きな羽と蟷螂の鎌のようなものを持つ、よりスタイリッシュな形態へと変化した。
「やばい、成体なんて相手にしたことないぞ...。」
「クロックアップを使われる前にこちらから仕掛けて下さい。」
「んなこと言ったって...!」
クロックアップを用いたことのない遥斗にとって、この状況は危機的なものであった。
戦闘慣れしているライダーであれば、迷うことなくクロックアップを発動し、先手を打つ場面。
だが遥斗は実戦経験の少なさから、それができなかった。
蟷螂型の成体ネイティブはそんな遥斗を待つこともなく体勢を低くした。
クロックアップの発動体勢である。
そしてすぐさま遥斗の身体にあらゆる方向からの攻撃が見舞われる。
ネイティブの姿は捉えられないほどに素早く、まともに受け身を取ることすら叶わなかった。
「うっ!!」
「遥斗さん!」
藍香の叫びが遠く聞こえる。
意識が朦朧とする中で大ダメージを負ったキックホッパーはその変身状態が解除され、ホッパーゼクターは戦線から離脱した。
残されたのは非変身状態の遥斗のみ。
マスクドライダーシステムを見に纏っていたとは言え、生身にもかなりの傷を負っていた。
「や、べぇ...。」
歩み寄るネイティブ。
その凶悪な鎌が遥斗を殺さんと迫りくる。
逃げなきゃ、でもどうやって...?
情けない。
なんて自分は弱いのだろう。
また藍香に馬鹿にされるだろうか。
そんなことを考えながら、己の人生の呆気ない結末に絶望しかけていたそのとき、一筋の光明が刺さる。
突如として何者かが、ネイティブに体当たりを喰らわせたのだ。
予想外の攻撃にネイティブは吹っ飛ばされ、体勢を崩した。
「なんだ...いや、ワーム...!?」
成体ネイティブに攻撃を仕掛けたのはサナギ体のワームであった。
国内のワームはほとんどが消えたとされていたが、一定数の残党がいるとは聞かされていた。
このワームも、残党の一部であろう。
そしてワームは、誰をコピーしたのかはわからないが人間へと姿を擬態し、遥斗に近寄ってきた。
見ると、ワームも随分と手負いの様子である。
「よう人間。俺は見ての通りワームだ。ちょいと訳あってこのザマなんだが...。」
腕を開いて己が手負いである状態を、遥斗に示した。
「くそ、なんのつもりだ...」
「まぁまぁ、そう怯えなさんな人間。別にお前を殺して擬態するつもりもねぇ。だが、お前は既に死にかけてる。」
「...。」
「んでもって、お前も俺も目の前のネイティブ野郎をなんとかしなきゃいけない状況。1つ妙案があるんだが、俺と協力しないか?」
ワームと共闘。
随分と奇妙な状況になりそうであった。
しかしながら、ネイティブは既に体勢を立て直しこちらに狙いを定めている。
考えている暇はない。
「わかっ、た。どうすればいい...?」
「話が早くて助かるよ。お前は何もしなくても良い。ただ...」
その瞬間、遥斗は自分の中に、何か別者が入り込む不愉快な感覚に襲われた。
人格や精神が、無理やり身体に入ってくるような形状し難い感覚。
「な、んだこれ...!?おい、どうなってる!?」
『大丈夫だって。ちょいと俺がお前の身体に入り込んだだけだよ。ワーム族が新たに身に付けた『同化』って能力だ。』
自分の脳内で、もう1人の自分と会話するような奇妙な構図になっていた。
よく、多重人格者が他の人格と自分の中で対話するようなイメージだ。
「どうなってんだよ...。よくわかんないけど大丈夫なのか、俺...。」
『詳しいことはこの後話してやるよ。さぁまずは...』
その瞬間、遥斗の目付きが変わった。
ワームの人格が前面に現れたのだ。
そしてホッパーゼクターを呼び出した。
「こいつの使い方は影で見てたからな、問題ない。」
ピョンピョンと跳ねて現れたホッパーゼクターだが、変身者が普段と違う様子なのに気付いたのかなかなか近くに寄ってこない。
「そう怖がんなよ、上手く使ってやるから。」
無理やりホッパーゼクターを掴むと、ベルトに装着した。
「戦い方を教えてやる。さぁ反撃開始だ!」