ワームと協力することになり、訳もわからぬまま身体がワームに乗っ取られる遥斗。
身体を乗っ取ったワームはマスクドライダーシステムを起動し、ネイティブへ反撃を始める。
『Change Punch Hopper』
先程、遥斗が変身したキックホッパーとは違い、同化したワームが選択したのはパンチホッパーと呼ばれる形態であった。
キックホッパーと比べ体色は茶色であり、複眼は白となっている。その他、主兵装のアンカージャッキは右腕に装備されている。
ホッパータイプはゼクターバックルにホッパーゼクターを装着する向きによって、蹴りを主体とするキックホッパー、拳を主体とするパンチホッパーの2形態を使い分けることができる。
「なんかさっきのと色は違うが...まぁ使ってやる。」
『パンチを主体に戦う形態だ、さっき俺が変身したのとでは勝手が違うぞ。』
遥斗はワームに忠告する。
「ちょうど良い、こっちの方が性に合ってる。」
再び蟷螂型ネイティブは体勢を低くし、クロックアップを発動しようとしていた。
だが、パンチホッパーは見逃さない。
「サナギ体の俺も使ってみたかったんだよなぁ、クロックアップってやつをよぉ!」
その瞬間、周囲の時が止まったかのような錯覚に陥る。
音も何も聞こえない、静寂の世界でパンチホッパーとネイティブがぶつかり合った。
ネイティブが仕掛けた大振りな攻撃をギリギリのタイミングで避け、引きつけた距離で渾身の右ストレートを叩き込む。
「甘いな、ネイティブ野郎...!」
転がったネイティブを逃すわけもなく、左手で掴み上げ、再び強烈な打撃を見舞った。
奇声を発しながら悶えるネイティブ。
視線は出口の方向に向けているようであった。
急にこちらの動きが変わり、不利を悟ったらしい。
撤退するか否かを判断しているのだろうか。
「さて、終わらせてやるか。」
ホッパーゼクターの脚部レバーを上げ、瞬く間に高く飛び上がる。
そしてレバーを下げると右手にタキオン粒子が収束していった。
「くたばりやがれぇ!」
『Rider Punch』
システム音声と共に繰り出されたライダーパンチは蟷螂型ネイティブの頭に命中。
頭部が吹き飛び、あたり一面が血飛沫に染まった。
『Clock Over』
『初戦でシステムを使いこなすなんて...。』
遥斗はただ驚くしかなかった。
「ふぅ。なかなか良い得物じゃねぇか、気に入ったぜ。」
『何者なんだよまったく....。ていうか、さっさと俺の身体を返せ!』
「おっと、悪りぃ悪りぃ。」
すると、ワームの人格は下がり、代わりに遥斗の人格が前面に現れた。
どうやら、自分の身体は完全に乗っ取られたわけではないらしい。
ひとまずは安心と言ったところである。
「さて、詳しく説明してもらおうじゃないか。ワーム、一体俺の身体に何をした?」
『さっきも伝えたが、俺たちワーム族が新たに獲得した同化能力だ。』
同化。
詳しく聞けば、どうやら生命力の低下したワーム同士がネイティブとの戦いを継続できるよう、2体分合わせて1体分の生命力を確保するという謂わば生存本能の過程で獲得した能力らしい。
『つまり、お前と俺は正真証明、一心同体ってわけだ。ついでに言えば分離する方法は今のところ、無い。』
「はぁ!!!???」
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「遥斗さん、よくご無事で。」
ZECT本部へと帰還した遥斗はオペレーターの藍香の元へと向かった。
先の戦闘報告を行うためである。
「ありがとう...。」
「怪我も思ったほど酷くなくて良かった。」
言われて気づいたが、蟷螂型ネイティブに貰った傷はほとんど治癒している。
ワームの言う同化能力のお陰ということか。
「あ、ああ。そうだな。」
「さて、ホッパーゼクターを下さい。戦闘データを解析班に回しますので。」
腰からゼクトバックルを外し、ホッパーゼクターをと共に藍香に差し出した。
藍香はデータを取り出すために、専用コンピュータへゼクターを接続し、内部のデータに目を通した。
「珍しくパンチホッパーで戦ったのですね。普段はキックホッパーなのに...。」
「え、あぁ、気分だよ気分。」
遥斗にとって痛い指摘を受けた瞬間であった。
自分がワームと同化しているなんて、とてもでは無いが周りに言えたことでは無い。
今もなお精神の奥底にワームの存在を感じているのだ、大人しく前面に出てこようとしないだけありがたい。
「それにしても、パンチホッパーの方が性に合ってるんじゃないですか?まるで動きが違う。」
「そ、そうかな!?いやぁ、やっぱり殴る方が合ってるのかも、ははは。」
『おい人間、隠すの下手くそか。』
身体の中で、ワームの人格が思わず溜め息をついているのがわかった。
我ながら隠し事が下手なのを痛感する。
さらにまずいことに、藍香がジト目でこちらを見ている。
まずい、バレたか...?
「まあいいです。データの取り出しも終わったので、後は休憩してきて下さい。」
ひとまずは切り抜けられたようである。
ホッとする遥斗であるが、問題は山積みであった。
この身体、いかにして元に戻すか。
常に頭の中にはそのことしか浮かんでこなかった。
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「おいワーム。これからどうするつもりだ。」
人気のない倉庫室に入り込んだ遥斗は、自分の中のワームと対話を試みた。
身体を完全に乗っ取られてしまおうものなら、周囲に報告する必要があるが、そうでないならこのワームは貴重な戦力となりうる。
『お前の身体を完全に乗っとることはできねぇからな。しばらくは大人しくしといてやるよ。』
「俺と共にネイティブと戦ってくれる気はないか。」
単刀直入に、遥斗は本題を切り出した。
少なくとも自分よりこいつの方が、マスクドライダーシステムを使いこなせる。
身体を共有したことで、こいつが俺の代わりに戦ってくれるのなら...。
『甘いなぁ人間。少しはプライドはねぇのかよ?』
「...。」
『まぁ気持ちはわからんでもねぇが。ただ、俺を口説くならもう少し頭を使うことだな。』
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「アクスマン司令、間も無く日本の領土です。」
太平洋を進む揚陸指揮艦。
その船体にはZECTと記されている。
「全く、遠路遥々やってきたが船旅は疲れるな。これも全て、ロシア支部が日本侵攻にもたついている影響だが。」
「ロシア支部の戦力では、日本の自衛隊とやらの機甲師団に苦戦するのも無理はないかと。あちらの支部には成体がほとんどおりませんので。」
彼らはZECTを名乗りつつも、人間ではない。
現状、日本以外は全てネイティブに掌握されている。
そして、元々ZECTはネイティブと人間が協力して立ち上げた組織であり、人間を裏切ったネイティブが今や日本以外のZECTを再興させ、多くの人質を抱えながら組織を動かしている。
「野蛮なワームと違い、我々は戦い向きの種族ではないからな。だから、こうしたものが必要なのだよ。」
アクスマンと呼ばれた金髪の男の手には、かつてワームと戦ったマスクドライダーの1つ、ザビーのゼクターが握られていた。
ネイティブの技術と人間の技術を合わせて開発されたマスクドライダーシステム。
今やネイティブの戦力として運用されていた。
「失敗したMr.根岸の後始末だが、俺は容赦なくこの国を潰すぞ。各員に通達、これより日本領土へ進攻する!」