1-1 己の非力を呪う
カレンとマナは、荒い息をしながらとある工場内を駆けまわっていた。
ここは、人里離れた工業地帯。といっても、人が動かしているわけではない。二年前、ドイツで突如スーパーコンピューターのAIシステム「Soldat」が暴走し人類への宣戦布告を宣言、そのままヨーロッパ全土及び西方アジアを手中にした。Soldatは自らのデータを使い戦闘用機械兵士、通称「Krieg」を製造、その兵力を使い、今度は東アジア制服を始めていた。そして、カレンとマナはSoldat日本支部に被検体として捕らえられていたところを脱走している最中だった。
「はぁ...はぁ...っ、マナ、大丈夫か?」
「うん、お兄ちゃん...はぁ...」
カレンとマナは兄妹だ。そして彼らの父は、Soldatの開発に携わっていた数少ない一人だった。それ故二人は狙われ、捕らえられていたのだ。
「大丈夫だ、マナ。もうすぐ出口だからー」
その時、二人の目の前の道が崩れた。思わず後ずさりする二人。警報が鳴り響く中、二人の前にはひときわ大きいKriegが現れた。
「う...ッ、マナ!お前だけでもここを突破するんだ!」
「嫌!お兄ちゃんが死んじゃったら、私...」
「俺のことなんか気にすんじゃねぇ!大丈夫、きっとどこかで会える!」
マナは少しためらったが、踵を返して、
Kriegに吹き飛ばされた。
「そんな...マナァッ!」
衝撃で動けないマナに、Kriegは歩み寄っていく。
「畜生...!やめろ!連れていくなら俺を連れていけ!」
カレンはKriegのすねに当たる部分を何度も蹴った。だが、Kriegは全く動じず、カレンを出口の方へと吹き飛ばすと、マナの方へと向かっていった。
「お兄...ちゃん...」
マナがか細い声で言った。カレンにはしっかりと聞き取れなかったが、マナが助けを求めていることは分かった。
「マナ!今行くから!」
しかし、カレンは立ち上がることができなかった。さっき吹き飛ばされた衝撃で、足の骨が折れていたのだ。カレンは、サイレンが鳴り響く中さらわれていく妹を、ただ泣きながら見ていることしかできなかった。カレンは泣き崩れながら、後からやって来た他のKriegに体を持ち上げられた。もう、抵抗する力もない。カレンはゆっくりと目を閉じた。その時ー
「Imyuteus amenohabakiri tron...」
どこからともなく飛んできた巨大な剣に、カレンを運んでいたKriegが真っ二つになった。カレンが後ろを見ると、剣を構えた、青基調の服装に身を包んだ男性が立っていた。
「君、大丈夫かい?」
「あの...妹が...!」
「中に妹さんがいるんだね?分かった、私が見て来よう。」
そう言い残し、その男性は施設の奥へと入っていった。
数分後、その男性は不服そうな顔をして戻ってきた。
「あの...妹は?」
「君の妹さんは、どうやらドイツに連れ去られたようだ。転送マシーンの痕跡がしっかりと残っていたからね。」
「何だって!?そん...な...」
カレンは、再び泣き崩れる。その男性は、カレンの背中を叩きながら慰め続けた。
数分後、カレンはようやく落ち着いた。
「少しは落ち着いたかい?」
「はい...ありがとうございます...」
そして、カレンはずっと気になっていたことを聞いてみた。
「あの...あなたは...?」
「私かい?そうだな、ここで話すのもなんだし、場所を変えようか。歩けるかい?」
「いえ...足が折れてるみたいで...」
「分かった、じゃあ私がおぶっていこう。」
その後、彼らはとある施設の跡に辿り着いた。
「ここは...?」
「私立リディアン音楽院の旧校舎だ。私たちが目指すのは、その地下だよ。」
どうやら、この施設跡はどこかの企業の管理下に置かれているようだ。地下へのエレベーターも、かなり前のもののようだがちゃんと動く。
そうして、二人は旧校舎の地下へとたどり着いた。電気は通っているようだが、天井の蛍光灯が不規則に点滅する程度だ。
施設の中には、大きなモニターやそれを操作する物らしきスイッチやレバーなどが見えた。ゆがんだ扉の向こう側には、もともと医務室だったのだろう、埃を被ったベッドが乱立していた。
「ここはもともと特定災害対策本部2課の仮設本部として使われていてね。まぁ、今は廃棄されていて、私が勝手にここを活動拠点にしているんだけど。それから、私のことを知りたかったんだったね。」
彼は少し間を置いた後、こう言った。
「私の名は、風鳴アランー世界初の、シンフォギア男性適合者だ。」
今回の作品では、文字数はばらつきがあるものの、今まで書いたものよりは短くなると思います。
さて次回は...
突如現れた、風鳴アランという男性に助けられたカレン。
妹を取り戻すため、Soldatの支配を止めるため、カイのドイツへの旅が始まるー!
次回 いざドイツへ