それでは本編どうぞ!
<side カレン>
あの後、彼女が落ち着くのに20分ほどを要した。
「マナ、落ち着いてくれたか?」
「うン…もう、大丈夫」
彼女の口調に少し機械的なざらつきがあるのを感じ、俺はマナも同じようにAIなんだろう、と気が付いた。つまり、俺たちは二人とも親などいなかったのだ。自分がAIだと分かってから、俺の妹であるマナも同じなのかとずっと考えていたが、どうやら今回は俺の勘が当たったらしい。
「ねェ、お兄ちゃン…?」
「どうした?」
「私タち、どうやって帰ルんだろウ…?」
マナの言葉に、俺も冷や汗を覚える。そういえば、俺達は集に――俺達を作り出した"父親"によってこの世界に飛ばされたのだった。当然、俺達がいるのは全く見覚えのない場所である。だが、そうして飛ばされた以上、何らかの手段で戻ることだって出来るはず――思考を必死に巡らせる俺の隣で、マナがあることに気が付いたようだ。
「私のギア――ガングニールは、"奇跡を起こす拳"っテお父さんガ言ってた。もしかシたら、"絶唱"を使えバ帰れるかも」
「絶唱――!?」
絶唱――それは、シンフォギア装者がギアの出力を最大まで引き延ばすための隠し玉である。代償として装者の体は危険にさらされてしまう。過去に絶唱を使ったとある装者は、全身が塵と化して崩壊してしまった、とここまでの道すがらアランさんとエルフナインさんから説明を受けていた。当然自分の妹をそんな危険な目に遭わせるわけにはいくまいと、俺は猛烈に反対した。
「駄目だマナ!絶唱を使うことがどういうことなのかわかっているのか?下手をすれば帰れなくなるんだぞ――俺も、お前も」
「分かってルよお兄ちゃん――でも、私ハ
「マナ…」
少ない会話の中でも彼女の覚悟を肌で感じ、俺は食い下がった。
「分かったよマナ。お前と、お前の
「お兄ちゃん…ありがとう。すぐに終わらせルから、待っててネ」
俺に向かって小さく笑顔を作ると、マナは俺の目の前で両手を胸の前にかざした。
「お願い、ガングニール」
その言葉だけで、彼女は光に包まれた。そして次の瞬間には、マナは彼女のギア――ガングニールを纏っていた。彼女は一歩踏み出しかけたが、何かを言い忘れたかのようにとどまると、背中を向けたまま俺に話しかけた。
「ねぇ、お兄ちゃん…」
「何だ、マナ?」
「今日ニ限った話ジゃないんだケど…私ガもしギアの力ヲ制御できなクなったら、その時は――お兄ちゃんが止メてね」
「マナ…せめて、そうならないように祈っておくよ」
俺の言葉に無言の笑みで答えたマナは、今度こそ前に進み出た。再び胸の前で腕を前に突き出し、彼女はゆっくりと息を吸った。
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl…
彼女が歌い終えたのと同時に、どこからともなく地鳴りのような音がした。しばらくしてそれは、俺の目の前から――マナの体から発せられている音だと分かった。彼女は体から溢れ出る力の奔流を、必死に耐えているようだった。胸の前で自分の腕を組んだまま、彼女はその場に膝をついてしまった。
「ぐぅ…ッ!!」
「駄目だマナ、無茶するな!!」
「でモ…ッ!!――あ、あァァァッ!?」
俺が見ている前で、マナは体勢を崩さぬまま痙攣し出した。たまらず割って入ろうとした俺は、ある事に気が付いた。歌っているのはマナだけではなかった――近くの茂みから、崖の下から、そして空の上からでさえも、声は違えどいくつもの音色が、マナに続いて流れていた。
「これは――!?」
気が付けば、森全体がうっすらと輝いていた。少しずつ上ってくる太陽の光だけではあるまい。この光は――
「――フォニックゲイン、なのか?」
溢れんばかりの金色の光は、途切れることなくマナの胸の中へと入っていった。
「絶対に、帰る…お兄チゃんと私ノ二人で、アの暖かイ場所ニ、もう一度――ッ!!」
次の瞬間、さらに信じがたい現象が起こった。今度はマナから金色の光が溢れ出し、俺とマナの目の前で集まり始めたのだ。
「すごい…」
俺は思わず息をのんだ。そんな間にも金色の光は凝縮し、何かを形作ろうとしていた。だが、それを実体化することはできず、そのまま空へと消えてしまう。
「まだ足りないか…それならッ!!」
俺は神獣鏡を纏うと、マナの隣に立った。
「お兄ちゃン…?」
「安心しろ、俺も歌ってやる。だから、もう少しの辛抱だ」
俺の言葉に、マナは一筋の涙を流すと、小さく笑みをこぼした。
「うん…ありガとう、お兄ちゃんっ」
刹那、俺達は同時に向き直り、大きく息を吸った。俺たちの歌声に、
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl…
瞬間、俺達の体から、虹色の光が溢れ始めた。それは先ほどマナの体から出ていた金色の光よりも輝きを増し、俺達の目の前で再び何かを形作ろうとしていた。
「ぐ…ッ!!」
同時に、俺の体を力の奔流による痛みが襲う。思わず、俺は膝をついた。
「お兄ちゃんッ!?」
「大丈夫だ、マナ…お前の受けた苦しみに比べれば、これぐらいへいき、へっちゃらだ――さぁマナ、手を」
俺の伸ばした手を、マナはしっかりと握った。
「あったかイ…」
「あぁ、俺もお前の温度を感じている――人の温かさだ。たとえ俺達が作られた存在でも、この暖かさは本物だ」
「お兄ちゃン、でも私ハ――」
「祈るんだ、マナ。自分がAIだから何だ?機械だから、他人と違うだって?そんなことはない、お前は今こうして俺の手を握ってくれた、俺の大事な妹だ。それだけで十分さ」
「祈ル…」
俺の言葉をゆっくりと噛み締めると、マナは俺の手を握ったまま、胸の前で両手を握った。
「私、帰りたイ…お兄ちゃンと一緒に、あノ世界に帰りタい!だって、私のお兄チゃんは――
世界デたった一人の、私の自慢ノお兄ちゃんなんだカらッ!!」
瞬間、俺達を包んでいた虹色の光が巨大な竜巻となって、俺達の目の前でその強大なパワーを爆発させた。光が迸り、思わず俺もマナも目を覆う。これこそがガングニールの"奇跡を起こす力"なのだ。マナだけでなく、俺と、周りの生き物たちの歌を束ね、奇跡を現実へと変える力――そして気が付くと、俺達の目の前には、空間を引き裂いてできたような穴が生まれていた。
「これは…!!」
「やっタね、お兄ちゃん!あリがとう、助けてクれて」
「あぁ、でも一番頑張ってくれたのはお前だ。礼を言わせてくれ」
マナは俺に向かってこれでもかというほど顔を綻ばせると、辺りを見渡した。
「それカらあなたたちモ――ありガとう、この世界ノ小さな住人サん」
周りを見回すと、先ほどマナと一緒に歌っていた小さな生き物たちが、こちらに向かってうれしそうに手を振っていた。その中の一匹が俺のもとまで走ってきて、俺にすり寄った。顎を撫でてやると、実に気持ちよさそうな声を出してこちらを見つめてきた。
何を言っているのかは分からない。けれど、こいつは――彼らは、俺達の新たな出発を祝ってくれているのだと、そう思えた。
「お前たち――ありがとう」
名の知らぬ歌い手たちに感謝の言葉を告げ、俺は扉の向こうへと一歩踏み出した。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
さて、今回さらっと出てきた小さな生き物たちはポケモンのことですね!何とか章タイトルが回収できたのでこちらも一安心です。あ、何で作者が安心しているのかはあらすじ見ればわかります。みんなもTwitterから「#もしもあなたのツイートから物語を作ったら」で検索してみてね!
それでは次回予告!
「おい、何なんだよあれはッ!?」
自分たちの世界に戻ってきたカレンとマナ。彼らがゆっくりと休憩を取ろうとしたその刹那、世界の歯車は音を立てて崩れ始める。
次回[Begin]
お楽しみに!