Nadir Song -天底ノ歌-   作:可惜夜ヒビキ

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2021年もこれ書いたら書き納めですかねぇ…ってできるかと思ったけど気が付いたら元旦になってました。あけましておめでとうございます!

それでは、僕の書き初め()を見納め下さい。


最終章 アラン大爆発
5-1 Begin


<side アラン>

 

訓練も佳境を迎え、ヘリを乗りこなせるようになった俺は、Kriegの操縦訓練を始めていた。指定されたルートを一通り走り終えて操縦席から降りると、エルフナインが走ってきた。

 

「すごいです、アランさん!まだ始めて3日と経ってないのに、このルートを1分以内で走り切れるなんて、ボクには到底できない所業です!」

「意外と筋があるようだな、アラン君。将来はここで働いてはどうだい?」

 

冗談交じりにフッと笑う藤堂氏に対し、俺もいたずらな笑みを返した。

 

「申し訳ないけど、やめておきますよ。将来は装者として、風鳴機関の――」

 

俺が言いかけた途端、施設内をアラームが走った。

 

「藤堂教授、風鳴アランさん、エルフナインさんは至急、地下1階の第4集中研究室までお越しください。繰り返します、藤堂教授――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この建物の内部構造は既にあらかた把握していておいてよかった、とこの時ほど思ったことはない。第4集中研究室というのは、俺達が藤堂氏やマナと初めてあった場所――つまり、カレンとマナが消え去った場所だ。あそこで異変が生じるとすれば、原因は一つしか思い当たらない。少なくとも、俺は自分の予想が当たっていると信じている――帰ってくるのだ、あの二人が。

俺は全身の筋肉に悲鳴を上げさせながら、俺の出せる最高時速で走った。多分、あの状態で50M走を行ったらきっと7秒は軽く凌駕するだろう。だが、そんな俺に負けず劣らず、藤堂氏とエルフナインも――エルフナインは一体その小さな体のどこにそんな力が眠っていたのかは知らないが――必死に走っていた。そのまま俺達はウマの如く走り、研究室からは最も遠い場所にいたはずの俺達は、1分とかからず目的地に辿り着いた。そのまま勢いを殺しきれず、俺は息を切らしながら膝をついた。

 

そんな俺の耳元に、しっかりとした足音が聞こえてくる。それから、小走りな足音も。それは少しずつ大きくなっていき、俺の目の前で一筋の閃光と共にその姿を見せた。

 

 

カレンとマナが、俺の目の前で小さく頭を振り、目を瞬かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side カレン>

 

「カレンさん!」

 

俺が頭を振って目を開けた途端、飛びついてきたのはエルフナインだった。

 

「良かったです、カレンさん……本当に、心配したんですからね?」

「あぁ、ありがとうエルフナインさん。そんなに心配してくれてたのか、俺のこと」

「あぁ、そうだな。もっともここにいる全員が、同じ気持ちだったが」

 

声がした方を見ると、アランさんが膝をついてぜいぜい言っている。

 

「あ、アランさん!?大丈夫なんですかそんなに息を切らして!?」

「大丈夫、ちょっと無理をしてここまで走ってきただけさ。お前がこの世界に戻ってきて初めて顔を見る奴は、俺達が一番いいからな。…おかえり、カレン、マナ」

「アランさん…」

 

胸が詰まる思いで立ち尽くしていると、後ろでマナが元気な声を出した。

 

「タだいま、デす!ほら、お兄ちゃンも」

「あぁ、そうだな」

 

俺は全員の顔を一通り見回すと、

 

「みんな、本当にありがとう――ただいま」

 

しばしの沈黙を破ったのは、俺の父親、というべき人物――藤堂集だった。

 

「カレン、マナ、少し疲れただろう。ゆっくり休んで…と言いたいところだが、君たちには伝えないといけない――特に、カレンにはな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が連れてこられたのは、映画館のような場所だった。

 

「普段は娯楽用にいろいろ写しているが…今回は、少し違うな」

 

部屋の隅にある操作盤と自らの右腕に埋め込まれた端末とを一通り操作し終えると、彼は俺達の方へと向き直った。

 

「カレン、これから君に見せるのは、きっと君の中にあるものを壊しかねないものだ。…それでも、君には知る権利がある。現実と向き合うか否か、自分で選ぶといい」

 

だが、俺の中には一抹の迷いもなかった。なぜなら、あの時――戦いを終え、再び目覚めたマナの目に宿った光は、人間よりも人間らしいものだったからだ。

 

「問われるまでもない!今こそ真実を、俺に見せてくれッ!!」

 

俺の大声に少し驚いた様子の集だったが、すぐに静かな笑みを見せた。

 

「いい返事だ、カレン。それでは、決意あるものに真実の全容を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで見せられたものは、俺の中にあったモノ――"S.O.N.G.への信頼感"を、粉々に吹き飛ばした。S.O.N.G.は昔とは変り果て、この世界を侵略している。そして、数少ない抵抗勢力の生き残りがドイツで決起したのがSoldat開発チーム、通称"W.Sanger"だったのだ。途中、集が校長先生顔負けの長さで組織の人員などの自慢話をしたときは、意識がお花畑だったけれど。

 

「この世界を侵略する偽りの歌い手に反旗を翻す我々こそが真の歌い手――そんな意味を、この名前に込めたのだ」

「真の、歌い手…んぅ…」

 

俺はあくびを何とか噛み殺しながら、その言葉を繰り返した。

 

「真の歌い手ってのは、」

「真の歌い手とは、望んでなれるものではない。己を信じる心と、誰かを愛することの出来る強さ――その二つを併せ持つ者が、真の歌い手となれる」

「心と、強さ…でも、俺は――」

 

 

 

 

俺は、強くない。なぜならあの時、俺は連れ去られるマナを、ただ見つめることしかできなかったではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が言いかけた時、突然の地震が俺達を襲った。

 

「うッ!?これは――」

「みんな、伏せるんだ!!」

 

集の一声で、皆がとっさにその場で屈む。揺れが収まるまで、辺りは機械的な地鳴りに包まれていた。

 

「収まったか…みんな、大丈夫か?しかしさっきの揺れ…自然のものではないな」

 

顎を撫でながら唸る彼のもとに、研究員の一人が顔面蒼白で走ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてください皆さん!なんでも外のバリケードで謎の爆発が起きたみたいなんです!!」

 

重たい沈黙。しばらくして、アランさんが口を開いた。

 

「集さん、俺、行ってきます。何か、ヤバい気がするんで」

 

そう言い残すと、アランさんは一陣の風の如く部屋から出ていった。

 

「なぁ、俺達も――」

 

言いかけたところを、集が止めた。

 

「いいや、君とマナはここで待機していてくれ。君たちの実力を疑ってるわけではないが、見るからにボロボロじゃないか。先程、君たちのギアの出力をモニターしたのだが、どうも調子が上がっていない。そんな状態で出撃しては、君たちの身体だって危ない状態なのだ。今は、外の様子をここから確認するだけに留めて欲しい」

「…あぁ、分かった」

 

同時に、集の端末が鳴った。

 

「どうした?」

「襲撃者です!先の爆発も奴らの仕業かと思われます――外モニターの映像を送ります!」

 

同時に集の端末に映像データが転送されたようだ。俺も画面をのぞき込む。と、そこには――何と、戦艦のようなものが、幾つも武装を展開し戦っているではないか――それも、陸上で。

 

「おい、何なんだよあれはッ!?」

「まさか――"奴ら"が来たのかッ!!」

 

焦りを隠しきれない集に向かって、俺は激しく問いかけた。

 

「なんだよ、その"奴ら"って!?」

「この場所に攻撃を仕掛けてくる組織と言えば一つだけだ。君たちもよく知っている――」

「――!!まさか…」

 

それより先は、言わなくても分かった――S.O.N.G.の仕業だ。雪音司令が、遂に動き出したのだ。反乱分子の撲滅と、この世界の完全なる掌握のために。

 

「お兄ちャん、私ガ行く!お兄ちゃんハここで待っててッ!!」

「あッ!?マナ、待ってくれ!」

「待つんだマナ!君の身体では、すぐに限界が――」

 

俺と集の言葉も聞かず、マナはすぐに外に出てしまった。銃撃と戦闘の待つ、荒野の死地へと。

 

「なんだよ、あいつ…なぁ、俺も行かせてくれ」

「しかしカレン、君はまだ本調子では――」

「そんなの関係ないッ!!」

 

俺の気迫に、彼は思わず口を閉じた。

 

「これは、俺のせいだ――俺があの時、S.O.N.G.の奴らと手を結んだから、こんなことになったんだ。それに俺は、もうマナを一人になんかさせたくない……。だから、俺も行かせてくれ――父さん」

「カレン…」

 

俺の創り主――いや、父親は、ため息を一つつくと静かに笑った。

 

「…分かった、カレン。お前の落とし前、あそこでつけてこい」

「あぁ、ありがとう父さん。行ってくるよ――俺の責任は、俺がとる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一歩足を踏み入れた瞬間、硝煙の匂いが俺を包んだ。久しく、そして忌むべき戦闘の気配が、全身を通して感じられた。歩いてすぐに、俺はマナと、彼女を囲む兵士たちを見つけた。

 

「――!!Necro shen shou jing nova zizzl…」

 

俺の体を光が包んだ次の瞬間には、俺は神獣鏡を纏っていた。そのまま、振り上げていた拳を兵士の一人に打ち付ける。吹き飛ばされた兵士がその周りにいた兵士も巻き込み「やなかんじ~」などと捨て台詞を吐きそうに消えていくのを視線の端で確認しながら、俺は次の標的へと移った。

 

「うらぁぁぁッ!!」

 

そのまま俺は、ひたすら兵士たちをなぎ倒していった。1人、また1人と吹き飛ばしていき、残すところ20人ほどとなったところで、遂に彼らが動いた。こちらに向かって、散弾銃を放ったのだ。

銃による攻撃自体は、シンフォギア装者に対してそれほど意味はない。だが、真の狙いはそこではないことに、俺は気が付けなかった――反射的に出した俺の手を、陰に潜んでいた別の兵士が掴んだ。

 

「――!?しまっ…」

「はぁぁぁぁッ!!」

 

危ういところで、今度はマナがその兵士を吹き飛ばした。

 

「マったく、ちゃんと全方向ニ気を這ってなきゃダめだよお兄ちャん」

「あぁ、ありがとうマナ。…それより、何でさっきは急に飛び出したんだ?」

「それは…」

 

マナは少しうつむいて、そのまま何も言わなくなってしまった。

 

「お、おいマナ?」

「な、何デもない!それヨり、残りの敵ヲ早く蹴散らさなイと」

「……?まぁいいか、いくぞッ!!」

 

俺達は背中を合わせると、呼吸を合わせて同時に飛び出した。

 

それからどれほど時間が経っただろうか、俺とマナは数えるだけで鬱になりそうなほど多くの兵士を屠った。辺りを、血の匂いが包んでいく。しかし、俺達の頭のおかしいバーサクぶりに怯むことなく、奴らは俺達に向かって攻撃を続けていた。

 

「畜生、なんだって数が多いんだ!?いつもの戦闘よりも全然――」

「これは"戦闘(battle)"じゃない」

 

声がした方向を振り返ると、そこには蒼いギア――天羽々斬を纏うアランさんが、こちらを見下ろすように立っていた。

 

「アランさん!?」

 

俺が思わず声を上げると、アランさんは俺の隣までやって来た。

 

「これは、人と人との間で勃発した、世界を巻き込むほどの戦い――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"戦争(war)"だ」




それでは次回予告!

「…!あんたは…」

S.O.N.G.とカレン達による戦いが始まった。ひとり偵察を続けるアランは、思わぬ人物と再会する。そんな中、マナ達と共に戦い続けるカレンが、突如として沈黙し――。

次回[The Worst Gear]

次回もお楽しみに!皆様良いお年を!
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