Nadir Song -天底ノ歌-   作:可惜夜ヒビキ

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お久しぶりです。バイトとか初めていろいろ忙しくなりなかなか執筆が進んでませんでしたすいません。これからも変わらず駄文の不定期投稿を続けていきます。多分。

因みにちょっとネタバレすると次が最終回です。最後までお付き合いください。


それでは本編どうぞ!


5-2 The worst gear

<side カレン>

 

無意識に、アランさんが口にした言葉を繰り返す。

 

「戦争…」

「そうだ」

 

未だ困惑の収まらない俺に、アランさんは背を向けたまま答えた。何故か背中につけているマントが、風を受けて揺れた。

 

「けど、俺達ならきっと勝てます。これまで何度も戦いを繰り返して、その分強くなってきた」

 

俺の言葉に、アランさんはフン、と鼻を鳴らしただけだった。

 

「自惚れるな、カレン。一騎当千と言われる強者でも、永遠に戦い続けられるわけではない。対して、あちらが投入してきているのは機械兵――供給されるエネルギーさえあれば、破壊しない限り永遠に動き続ける代物だ。俺達が勝てない、とは言わないが――」

 

少しの間の後、アランさんが少し声のトーンを落として言った。

 

「死ぬなよ。少なくとも、お前は生き残るんだ。たとえ負けても、お前と、お前の妹の二人で、この世界の新たなる希望となれ」

「希望…けど、俺は――」

 

言い終わる前に、アランさんは再び崖の上にいた。

 

「待って、アランさんッ!!」

 

俺の言葉に聞く耳を持たず、アランさんは森の中へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side アラン>

 

「……」

 

俺は無言のまま、これから自分がやらんとしていることを、頭の中で予行演習を繰り返した。カレンの最後の言葉が、何度も頭の中で響いた。待って、と。だが、待つことなどできない。俺は止まることができない。

 

 

そう、俺が今から行おうとしていることを知っているのは、藤堂集ただ一人だ。彼以外には、誰にも知られてはいけない。たとえエルフナインも、カレンでも。きっと、彼らは止めてしまうから。

 

 

そんなことを考えていたためか、誰かとぶつかりそうになる寸前まで、俺は全く気が付かなかった。

 

「あっ、すいませ――」

 

言いかけたところで、俺は口をつぐんだ。目の前にいた人物は、俺がS.O.N.G.にいた頃に大変世話になり、そして今では自分にとって、倒すべき敵となってしまった人物――緒川美紅だった。

 

「あんたは……」

「えぇ、緒川です。逃げてきたのよ、"あそこ"から」

 

彼女の口から発せられた発言に、俺は眉をひそめた。

 

「何だと…?そう言って、こちらの内部崩壊を狙おうって魂胆じゃないのか?」

「まさか…!――いえ、こうして話してもらえるだけでは信じてもらえないわね。私が今ここにいる理由、あなたに話しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side 美紅>

 

――その日、いつものようにS.O.N.G.内でオペレーターの仕事をやっていた私は、司令の独り言を偶然聞いてしまった。

 

「…ついに"奴"が――あのときの唯一の生き残りが――憎悪と憤怒で再び立ち上がる!!その時その瞬間から、私の敵はもういない!!この世界を私が掌握する日はさほど遠くないぞッ!!」

 

瞬間、私は全てを悟った――彼の目的は人工知能と狂気的科学者を制圧し人類に恒久の平和をもたらすことではなく、世界を救った英雄として彼がこの星の指導者となり私欲を尽くすことだと。そして、世界を汚染する黒幕の正体は、自分の目の前にいる人物だ、と。

私は今回の戦いのときに逃げ出すことを決意した。そして今日、混乱の隙を見て何とか抜け出すことができた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side アラン>

 

「――これで、私の話は最後よ。刺すなら刺してもらって構わないわ」

「そうか…分かった、あんたを信じるよ」

 

ため息をつくと、俺は顔を改めて彼女に向き直った。

 

「だったら、あいつに――カレンに、伝言頼んでくれないか」

「伝言…?」

 

首をかしげる彼女に向かって、俺は体を覆っていたマントを脱ぎ、その内側を広げてみせた。それを見、彼女は目を見開いた。

 

「…!あなた、まさか――」

 

その続きを言おうとする彼女を手で制すると、俺はマントを再び羽織ると、彼女に親指を立てた。

 

「そういうことだ。ことが終わるまで、あいつには内緒にしといてほしい」

「――えぇ、いいでしょう。それで、伝言というのは……」

 

俺の言葉を、彼女は一言一句噛み締めるかのように聞いていた。

 

「これで最後だ。ちゃんとあいつらに伝えてくれよな。……裏切るんじゃないぞ」

 

今度は、彼女が親指を立てる番だった。

 

「えぇ、何度も言われなくても分かってるわよ。ちゃんと彼らには伝えておくから。――それじゃ、いってらっしゃい」

 

それだけ言うと、彼女は踵を返して俺の目的地とは反対の方向へと走っていった。俺はふぅ、と息を吐いて、再び走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side カレン>

 

「アランさん…」

 

アランさんが去っていった方向を見、俺は無意識に呟いていた。彼が去る直前の言動――いつもと違う、冷たいもの――あれは、何かを悟られないようにする時にとる行動だ。この戦いで、何をしでかすつもりなのか。

 

「アランさん、あんたは……」

 

感慨に耽っていたためか、俺は新たな敵の気配を察知できなかった。

 

「お兄ちゃん、来るよッ!!」

 

マナの言葉で半ば反射的に飛び上がった俺は、飛んできた銃弾の嵐――恐らく、ミニガンによるものだろう――を躱しきれなかった。何発かは俺の体に当たり、体内のケーブルに接触してスパークを散らした。

 

「くっ――このッ!!」

 

 

俺は傷を押さえながら立ち上がると、ミニガンの主に向かってギアにより巨大化された右腕を振り上げる。

 

「ひ、ひぃっ!!この、化け物――」

「らぁぁぁッ!!」

 

言い終わらないうちに、俺の拳はミニガンと、そしてその持ち主を一撃で粉砕した。辺りに漂う血と硝煙の匂いには、もう慣れてきている。

 

「よし、俺も切り替えないと。いつまでもアランさんのことを引っ張るわけにも――」

 

 

――System Error. Change to Violence Form. System Eror…

 

突然、俺の脳内で声が響いた。アランさんでもマナでも父さんでもない、機械的な合成音声。次いで、激しい頭痛に襲われる。

 

「お兄ちゃん…?」

「大丈夫だ、マナ。さぁ、次の敵を――うッ!?」

 

身体からスパークが迸り、頭痛はさらに酷くなる。頭が熱い。

 

「あぐッ、あぁぁぁァァァッッ!!?!?!」

「お兄ちゃんッ!?」

 

どうして、突然こんなことに。まさか、俺の体が先の攻撃で――。

 

 

マナの声がかすかに響き、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side マナ>

 

「お兄ちゃんッ!?」

 

私の声に反応するそぶりも見せず、兄はその場で倒れ込んだ。

 

「そんな…」

 

私は倒れ込む兄に駆け寄ろうとした。その油断が戦場では命取りになると、散々わかっていたはずなのに。

 

「あぐっ!?」

 

突然背後から何か棒のようなもので突かれ、私は地面にうつ伏せになる形で倒れ込んだ。背中側から、勝ち誇ったかのような男性の声が聞こえる。

 

「へっ、あいつはもうくたばっちまったようだな――お前もすぐに、あいつのもとに連れて行ってやるよ」

「ぐッ…」

 

抵抗する私を押さえつけながら、彼は腰に佩えていた小刀を手に取った。

 

「死ねぃ、小娘ッ!!」

 

駄目だ、まだ私はこんなところでは死ねない――だって、あの時確かに約束したではないか。

 

 

 

――お前が見せたその感情を、せめて大切にしてくれ――

 

 

「お兄ちゃん――ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

私の背中で小刀が閃き、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私に届くことはなかった。代わりに、私を押さえつけていた兵が拘束を解いた――正しくは、力尽きてその場に倒れた。

 

「……?」

 

辺りを見回しても、誰もいない。そうしているうちに一人、また一人と、私の周りの兵士は姿を消していく。

 

「一体何が――」

 

その時、私よりも一回り大きい影が、私の前に立ちはだかった。紫色の装甲を纏い、右腕が装甲により巨大化している。その姿を、私は見間違えるはずがなかった。

 

「お兄ちゃん……」

 

だが、何やら様子がおかしい。先程とはうって変わり、彼からは感情の欠片すらも感じられない。その原因はすぐに解った――

 

突然、右腕に装着されている端末から通信を受信したことを知らせる着信音が鳴った。通信の主は、私たちの"父親"――藤堂集だった。

 

「お父さん!!お兄ちゃんが――」

「分かっているッ!!」

 

彼の声は、いつになく緊迫したものだった。

 

「いいかマナ、よく聞くんだ!カレンの機能を今すぐ停止し、2人で帰投するんだ!!」

「お兄ちゃんの、機能を…でも、どうやって!?」

「方法はお前に任せる。とにかくあいつを止めてくれ――いいか、手遅れになる前に必ず戻ってくるんだッ!!」

「待って、お父さん!!」

 

私が言い終わる前に、通信は途切れた。けれど、自分のやるべきことは理解できた。兄を救う――そのために、兄を倒す。

 

「でも…」

 

自分には、出来ない。あの時自分の兄を手にかけた時から、私は人を手にかけることができなくなってしまった。ましてや実の兄をもう一度この手で仕留めるなど、とてもできることではない。自分がやらなければ、彼は死んでしまうかもしれない――そう、分かっていても。

 

「――っ」

 

大きく深呼吸をし、アームドギアを展開する。それは、誰かと繋ぎ、誰かを救うための拳。

 

「大丈夫、だよね――」

 

――だって、お兄ちゃんは私を助けてくれたんだもの。

 

「今度は……私が、助けるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side アラン>

 

美紅さんと別れた後、俺は慎重に進んでいき、20分もしないうちに奴らの本拠地が見える場所まで辿り着いた。彼らの会話が聞こえるぎりぎりのところまで近づいてから、なおも慎重に耳をそばだてる。

 

「――それより、"アレ"はどうだ?」

 

思わず息をのむ。間違いない、雪音司令の声だ。それもいつもとは違う、少し凄みのある声。

 

「えぇ、オールグリーンです。いつでも動かせますよ」

 

それに応えたのは、声の高い男性だった。彼の言葉に、再び司令が声を上げる。

 

「ふむ…そうか、ではすぐに"零"を出す!総員配置につけ!」

 

そして、ギリギリ聞こえるほどの大きさで、一言。

 

「――怨念の宿ったあれを止めることなど、いくら装者とて何人集まろうと敵でないわッ!!」

 

 

――背筋が、ぞくりとする。それは、普段の雪音司令からは想像もつかない独り言だった。いや、これこそが彼の普段の姿なのかもしれない。

その場から慎重に遠ざかると、俺はいつでも飛び出せるように、マントの中身を入念にチェックする。本当は先ほど使う予定だったが、司令1人を手にかけてもだめだ、奴らの言う"零"ごと彼の野望を打ち砕かねば、きっと彼らは止まらない――そんなことを考えていた俺の足元が、突然揺れた。

 

(――!?地震か…ッ!!)

 

しかし、あまりに突然すぎる。地震とは本来2つの波が時間差でやって来るものなのだが、今回のそれは、その差が微塵もなかった。

 

「…一体、何だっていうんだ」

 

俺の疑問に答えたのは、突如として浮かび上がった巨大な影だった。

 

 

 

地面を突き破るようにして現れたのは、何と地上を進む巨大な戦艦だった。




最後まで読んでいただきありがとうございます!
冒頭で「次が最終回」って言いましたが「次が最終回かもしれない」に訂正させてください。次で終われるかどうか分かんない…

それでは次回予告!

「――世話になった、せめてものお返しさ」

瀕死のカレンを前に、圧倒的に不利な状況へと陥った一同。少女は迷い、


少年は、動き出す。

次回[It finally begin…]


何度も言いますが次で(多分)最終回となります!お楽しみに!
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