さて、ようやく第三話です。自分の中では物語が完結しましたが、それを文字にするのにあとどれほど時間がかかることやら…果てが見えない状況です(TωT`)
そろそろまともな名前が欲しいところです。いい名前が思いついたら、感想等で送ってくださるとうれしいです。
「間もなくペルシャ湾に着岸します!」
S.O.N.G.オペレーター、緒川美紅の澄んだ声が響き渡る。モニター画面は、この潜水艇があと50㎞で着岸することを表示していた。
「よし、定刻通りだ。三人とも、準備はいいかな?」
「俺はいつでも行けます!」
「ボクも大丈夫です!」
「俺はちょっと待ってください、司令!さっき飲もうとして溶かしていたチョコが見当たらないんですよー!」
「アランさん!いい加減任務のことに頭を戻してください!」
決してボケているわけではない。何を隠そうアランは大がつくほどの甘党で、さっきも言ったように彼にとってチョコは飲み物なのだ。
数分後、ようやく部屋からアランが出てきた。口にはチョコの跡がべっとりついている。
「ごめん、二人とも。待ったかな?」
「ほらアランさん、もう出発しますよ!口を拭いて…」
「えっと、エルフナインさんはアランさんの母親か何かなの?」
そんなこんなで、三人の準備が整ったのは(正確にはアラン一人だけだが)、潜水艇の着岸予定時刻から30分も後だった。司令はいつものことだから、と言っていたが、エルフナインはご立腹だった(指令がそんなんだからアランさんの生活もだらけてしまうんですよ!)。
遅れながらも三人はペルシャ湾に上陸した。彼らに与えられた任務は二つ――「偵察」と「調査」だ。
ドイツへのSoldatの動向を偵察し、ペルシャ湾からドイツまでの道中を調査する。この三人だけで行くのは、司令の「大人数で行くと目立ちすぎる」という警戒からだった。三人以外のS.O.N.G.メンバーは、三人が帰ってくるまで潜水艇の防衛をするそうだ。
「私たちはずっと待っているからね!焦らず、気長に行ってくるといいよ!」
「分かりました、司令!必ず戻ってきますから!」
「ベルギーに立ち寄ったら本場のチョコをお土産にしてあげますよ!」
「アランさん!これは任務遂行で会って旅行ではないのですよ!」
「あはは…じゃあ、司令も十分お気をつけ――」
瞬間、三人の目の前の地面が爆ぜた。立ち上る土煙の中から、Kriegの巨大な影が浮かび上がった。
「お前達…いったい何しに来た?」
「それより、何で彼らはここが分かったんでしょう?」
「それを考えるのはあとにしよう。君たちは下がって、ここは僕が行く!」
2人を押しのけて、アランが飛び出した。天の羽々斬のペンダントをしっかりと握っている。
「Imyuteus amenohabakiri tron…」
瞬間、彼の体が光に包まれ、彼の体には青いギアが装着されていた。
「君たちは潜水艇に戻っておくんだ!あそこならよっぽど中まで攻撃されたりはしないはず!」
「分かりました!アランさんもお気をつけて!」
カレンとエルフナインは潜水艇に戻っていこうとした。が――
「待て、お前達。」
低いしわがれ声と共に、二人の道をKriegが遮った。顔部分にはモニターらしき画面が写っており、そこから白衣を着た男性がこちらを見ていた。それを見たアランは驚愕した。
「あなたは――藤堂集ッ!?」
「そうとも、ギアを纏いし少年よ...いかにも私は藤堂集だ。そして、私が話をしたいのは君ではない――カレンだ。」
カレンは困惑した。行方不明だったはずの父が、暴走した人工知能を通して俺と話がしたいと言っている――だが、彼は本当に俺の父親なのか?カレンは父親の顔を見たことがない。物心ついた時にはすでに父親は行方不明になっていた。その為、モニター越しにこちらを見ている人物が本当に藤堂集なのか、カレンには判断できなかった。が、話を聞いておいて損はなさそうだ。カレンは一歩進み出た。
「あんたは...本当に藤堂集ー俺とマナの父親なのか?」
「さっき言ったとおりだ、カレン――私は君とマナの父親だ。その証拠に、君の誕生日を当ててやろう――確か、10月5日だったかな?」
「――!!」
アランは驚いた。彼は自分の誕生日をぴたりと当てて見せた。彼は生まれてすぐSoldatの収容所に入れられたため、自分の誕生日を知っているのは両親以外ありえない――とするとこの男、本当に自分の父親なのだろう。
「分かった、信じよう…それで、話ってなんだ?」
集は真面目な顔になって語り出した。
「アラン、私は今ドイツにいる。君の妹であるマナとも一緒だ。私と妹に会いたければドイツまでくるといい――だが、その時君は苦しい決断をすることになるやもしれない。」
「マナと一緒…!?妹は無事なのか!?」
「あぁ、マナの命は私が保証しよう。もっとも、君がやってくるのにあまりにも時間がかかっていたらその時は考えるがね――」
「何だと!?貴様ッ!!」
カレンは、自分が装者ではないことも忘れてKriegに殴りかかった。案の定、彼の拳は虚しく受け止められ、そのままカレンは地面に叩き落された。エルフナインが慌てて駆け寄った。
「カレンさん!!」
「そうそう、君が今すべきことは、潜水艇に戻って彼の足を引っ張らないようにすることじゃないかい?」
ハッとして二人が振り返ると、アランがふらつきながらKriegに立ち向かっていくのが見えた。2人がなかなか潜水艇に戻らないせいで、二人の周辺にいるKriegに手が出せなかったのだ。
「くっ…何とかしてアランさんを助けないと!!」
「駄目ですカレンさん、そんなことをしたら余計に彼の邪魔をするだけです!!」
「だけど、あのままじゃ――」
2人が言いあっている間に、後ろで何かが倒れる音がした。それはアランがついに力尽き、膝をついた音だった。彼の周りにはKriegが集まり、今にもとどめを刺さんとしていた。
「そんな――アランさん!!」
カレンはエルフナインの制止を振り払い、彼の元へ走っていった。
(神様…どうか、どうか彼を助けて下さい…!アランさんが死んだら、俺はドイツまでたどり着けるか分からない――妹を永遠に取り戻せなくなるかもしれないッ!!)
「待てお前らぁぁ――ッ!!!」
カレンの大声に、数体のKriegが振り返った。今度はカレンに照準を合わせている。
「俺はどうなってもいい!アランさんだけ生き残ってくれれば――ッ!!」
遂にKriegの砲弾が火を噴いた。カレンがいた辺りを中心に、大きな爆発が起こる。幸い、エルフナインやアランからはかなり離れていたため巻き込むことはなかった。
「カレンさん!カレンさん!!」
遠くでエルフナインが叫んでいる。その傍で、モニター越しに藤堂集がその光景を黙って見ていた。
カレンは不思議な空間にいた。急に、誰もがいなくなっていたのだ。まるで景色が溶けたかのように。
「あれ、アランさん?エルフナインさん?」
辺りを見回すも、そこに広がっているのは暗闇ばかりで何も見えない。カレンは自分の行いを悔やんだ。
「くそっ…あの時、何で早く潜水艇に戻らなかったんだ――何で無謀にもKriegに突っ込んでいったんだッ!!」
と、ふいに一筋の光が差し込んだ。カレンが見上げると、その光はカレンの胸のあたりを差していた。カレンがあっけにとられていると、光の向こう側から誰かがやってきた。それはアランでもエルフナインでも、集でも雪音司令でもなかった。
彼の前に現れたのは、水色の目をした少女だった。あっけにとられるカレンを前に、彼女はこう言った。
「あなたには、だれか大切な人がいるの?」
彼女の質問に、動揺しつつも答える。
「あ、あぁ…」
彼女の質問は続く。
「その人が大変な時、あなたはどうしたいの?」
「助けたい。けど俺には力がない…」
落ち込み気味なカレンを見、彼女はこう告げた。
「じゃあ、もし力があったら?あなたはその力を何に使うの?」
「俺は、その力で俺の大切な人を救いたい。そして、その人を支える存在になりたい!」
彼の答えに、その少女は満足したようだ。ふっと笑うと、彼女は手を差し出した。その手には、アランと同じペンダントがあった。
「じゃあ、これを受け取って…」
「これは――?」
「これは力。光も闇も、すべてを消し去ってしまうほどの大きなもの――だけど、大切な人を救いたいというあなたの言葉に揺らぎがないなら、"
カレンはペンダントを受け取った。瞬間、それは光に包まれ、カレンの胸へと吸い込まれていった。
「さぁ行って――そして、あなたの大切な人を救って、"陽だまり"になってあげて…!」
「待ってくれ!君は一体誰なんだ?」
カレンの言葉を無視して、少女は行ってしまった。残されたのは、ペンダントのみ。
「
カレンは、謎の少女から渡されたペンダントを握り締めた。
「俺に、力を貸してくれ…ッ!!」
気が付くと、彼は無意識に聖詠を口にしていた。
「Necro shen shou jing nova zizzl…」
瞬間、彼の体が光に包まれた。その体を、腕を、足を、光が包む。カレンが再び地に降り立った時、彼の全身は紫色の武装で覆われていた。顔部分は、獣の口のようなものが覆っていた。
「アウフヴァッヘン波形を確認!パターンの照合に移ります――ッ!?これは――」
「まさか――
雪音司令は自分の目を疑った。神獣鏡は数十年前に消失したという記録が残っており、この世界には存在しないはずなのだ。さらに――
彼の纏っているそのギアは、その名にふさわしくない容姿をしていた。
神獣鏡は、その名の通り鏡をモチーフとしたギアである。それゆえ、その装備は固定砲台とも形容できるほどの重装備だった。が、今目の前で顕現したそれは、こちらが不安になるほど装備が乏しい。さらに、右手には歪な拳をかたどっているであろうギアが形成されていた。これでは固定砲台というより、拳を振りかざして戦う特攻兵だ。
そして、男子である藤堂カレンがシンフォギアを纏っているという事実。アランの場合は彼の祖母である風冥翼の血が強く残っているため装着が可能だが、藤堂家にシンフォギア装者がいたという記録は残っていない。つまり、彼は装者の血も、LINKERもなくして、シンフォギアを纏えているのだ。が――戦力が多いに越したことはない。司令はすぐに頭を振って平生を取り戻すと、カレンと通信した。カレンの方は、自分の身に何が起こっているか分からないようだった。
「こ、これは!?」
「カレン君、聞こえるか?」
「――!!はい、雪音司令!」
「先ほどシンフォギアが形成されるときの波形を確認した――君が纏っているそれだ。」
「――!!それって、俺が適合者だったということですか!?」
「そうとしか言いようがないだろう――ではカレン君、君にシンフォギア装者としての最初の任務を――」
「言われなくても、アランさんは俺が助け出しますッ!!」
カレンは数体のKriegに突っ込んでいった。自分が纏っているギア――確かあの少女は"
「はぁぁ――っ!」
カレンはKriegの銃弾をかわすと、両足についているバーニアを噴射させて急加速し、その速度のまま右手を突き出してKriegの群れへと突っ込んでいった。たちまち数体のKriegの体に穴が開き、そのまま爆散した。
「これは…!」
カレンは、その威力に驚いた。それは雪音司令も、モニターの向こう側の集もそうだった。
「これが、『最弱にして最凶のギア』の破壊力…」
「さすがだ我が息子よ!初陣にもかかわらず、ここまでシンフォギアを扱えるとは!」
集はその場にいる残りのKriegに撤退命令を下した。Krieg達は、陸上をすべるように素早く立ち去っていった。
「さて、カレンよ…私と再び相見えるまでに、その力を磨いておくことだ。それでは、私も失礼するよ――Soldatの名に懸けて、我々の計画の邪魔はさせない」
そのKriegは特別仕様だったようだ。腰のスカート部分からエンジンが火を噴き、彼は飛び去って行った。
カレンはしばらくそれを眺めていた。やがて、
「――そうだ、アランさん!!」
アランはギアを解除した状態で倒れていた。口から血を流している。
「大丈夫ですか、アランさん!?」
「僕は心配いらないよ――それよりもそのギアは?」
「話すと長くなります。今はそれよりもS.O.N.G.の救護室に!」
傾きかけた夕日が、二人を優しく照らした。アランはフッと笑うと、カレンの手の中で気を失ってしまった。
翌日、カレンはエルフナインと共に司令に呼び出された。
「何でしょう、司令?」
「――もう、察しはついているんじゃないかな?」
「――
「そうとも。エルフナイン君、説明を頼めるかな?」
「分かりました。話せば長くなりますが…」
数十年前、フィーネと名乗った武装組織が世界に対し宣戦布告、あわや地球の蒸発を誘発させる寸前の状態にまでなったものの、当時のシンフォギア装者6人によって事態は収拾しました――俗に言う"フロンティア事変"です。そしてその際、
「――そうして、この世界では
「いえ、全くと言っていいほど心当たりがありません…」
「そうか、それでもいい。とにかく、君は適合者として覚醒した――この時をもって、彼をS.O.N.G.現二人目のシンフォギア装者として正式認定する。これからは、アラン君と共に戦ってくれるかな?」
「僕は妹を助け出したいだけです。この力は、そのために振るいます」
「そうか、ではそういうことにしておこう。何かを取り戻そうとする人間は強いからね、頼りにしているよ――さて、かなり遅れを取ってしまったが、アラン君が回復したら三人で再びドイツを目指してくれるかい?」
司令の言葉に、二人は口をそろえてこう言った。
「もちろんです!」
「よろしい。では、彼が回復次第、三人はドイツに向かいたまえ!」
「はいッ!!」
カレンは、自分の胸をさすった。これからはこの力で、アランさんと共に戦える。いや、それよりも、自らの手で妹を助け出せる――そう思うと、彼は自然と、これから来るであろう長い戦いにも怖気づくことはなかった。
今回もだいぶ更新が遅れてしまいました。
何せ聖詠を自分で考えるのがなかなか難しくて...次回もこれぐらいの投稿頻度になると思います、すみません。
さて次回は...
第二章突入!
ドイツを目指すカレン、アラン、エルフナインの前に現れたのはー!?
次回[森の老人]
お楽しみに!