Nadir Song -天底ノ歌-   作:可惜夜ヒビキ

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かなり久しぶりの投稿になります…

さて、前回でようやくカレン君の妹であるマナちゃんが再登場したわけですが、、、果たして彼女の存在は、今後の物語にどう影響するのでしょうか?

少し後書きめいたことを書いてしまっていますが気にしないっと!それでは本編どうぞ。


3-2 望まぬ戦い、その果てに

「――ありえない」

 

アランさんが呟いた。エルフナインさんが続く。

 

「聖詠無しで、ギアを纏うなんて…それに、あのギアの輝き方は――」

「そうだ、君たちの予想通りだよ」

 

虚ろな目をしたマナの後ろで、集は口元に笑みを浮かべていた。

 

「彼女の纏うギアは、かつて数多の敵をその拳で沈めてきた、"伝説"のギア――

 

 

 

 

 

《ガングニール》だッ!!」

「ガングニール、だとぉッ!?」

 

声を上げたのはアランさんだった。それを無視して、俺は思考を続ける。

《ガングニール》――その名前は、俺でも知っている。元はとある神話に登場する槍の名前なのだが、その一部が込められたギアを、はるか昔に一人の少女が纏った時には、それは槍ではなく拳のギアだったという。そしてその拳は、呪われた神殺しとも――。

 

「待ってください!」

 

声を上げたのはエルフナインさんだった。

 

「そのギアは、誰かを傷つけるためのものではなく、誰かと手を握るためのもの――その志を引き継いでいないあなたに、ギアは最大出力では応えてくれないッ!!」

 

その言葉に、集は口元の笑みを消した。

 

「ほう、面白いことを言うな。しかし、君たちと理解を共有するために、そこまでの力は要しない。むしろ君たちの方から、我々を受け入れるだろう」

「戯言も大概にしとけよ、藤堂。俺達はお前の話を聞きに来たんじゃない――頭のおかしいお前と、お前の人工知能をぶっ壊しに来たんだッ!!」

 

アランさんの叫びが、小さな牢を揺らした。それに動じるそぶりも見せず、集は右手を胸のあたりで曲げ、服の袖をめくってその中を露わにした。

 

「嘘、だろ…」

 

呟いたのは俺だった。生身の腕がそこにあると思っていた彼の袖の中身は、機械でできた義手だったのだ。二の腕には操作盤と思わしき電子パネルが乗っている。そのパネルに集が振れた途端、俺の体が輝きだした。

 

「これは――!?」

 

一体何をした、と彼に言おうと、視線を前に向けたところで、俺は何を言おうとしていたかを忘れてしまっていた。マナの体も、俺と同じように輝きだしていたのだ。

 

「カレンの体に一体何をした、集!!」

 

代わりにアランさんが叫んだ。それに対し、彼は電子パネルを見ながら言った。

 

「貴様らに転移プログラムを組み込ませておいた。兄妹で込み入った話もあるだろうからな、じっくり言葉を交わしてくるがいい。時空座標はランダムだが――まぁ、帰って来れるだろう。それではカレン君、しばしの別れだ」

 

相変わらず不敵な笑みを浮かべる彼に対して、一発でも殴ってやろうと俺が一歩踏み込んだ瞬間、視界が白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレポートの余韻は一瞬だった。気が付くと、俺は数分前に立っていた金属の床ではなく、草地の上に立っていた。

辺りを見渡してみると、どうやらここは崖の上のようだ。俺の見下ろす下では、木々がうっそうと茂っている。空を見上げると、煙で黒く染まっていた先ほどまでの場所と違い、夜空に星が瞬いていた。

 

「ここは…?」

 

呟いてみるが、返事はない。代わりに、俺の背後で白い光が大きく瞬いたかと思うと、次の瞬間には、そこにマナがいた。

 

「マナ!!」

 

俺は彼女に駆け寄ったが、光を失った双眸は、俺を見ても何の反応も示さなかった。代わりに、両の拳をぎらつかせて、俺を間合いの外へと押しやった。

 

「おいマナ、俺の話を――」

 

しかし、俺が言い終わる前に、もう一度彼女の拳が飛んできた。俺は危うくそれをかわすと、再びマナと対峙した。

 

「戦おうよ、お兄ちゃん」

 

マナは同じく色を失った機械的な声でそう言った。

 

「戦う、だと――?違う、俺はお前の目を覚まそうとして」

「違うのはお兄ちゃんの方だよ。お兄ちゃんは何もわかってないから――お互いに拳をぶつけて、私があの場所でどんな風に生きてたのか教えてあげる」

 

最早戦いは止められないのか――俺は腹を括った。

 

「Necro sien shou jing nova zizzl…」

 

聖詠を唱えると、俺の体は紫色のギアに包まれた。マナと同じく、両の拳に攻撃用パーツが凝縮している。

 

「……」

「……ッ」

 

一瞬の空白の後、俺達は同時に地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<side アラン>

 

「ふぅ…」

 

カレンと、彼女の妹であるマナをどこかへ転移させた藤堂氏は、疲れたかのように腰を下ろして地べたに座った。

 

「あんた、カレンとマナをどこにやったんだよ?」

 

俺の質問に対する返答は、静かなものだった。

 

「――すまなかったな」

 

その目に、先程とは違う感情が込められているのに気づき、俺は戦慄した。

 

「あんた――」

「君たちと話をするためには、どうしてもあの二人を強制的にこの場から排除せねばならなかったのだ。心配はいらない、じき彼らは戻ってくる。我々への理解を深めたうえでな…」

「そこだ、そこ。何でおれたちは、世界の侵略者に同意を求めなきゃいけないんだ?」

 

目の前の初老は、すこし間をおいて話し始めた。

 

「話を始める前に、これだけはやっておかないとな」

 

彼が電子パネルのボタンを押すと、俺の両手に繋がれていた鎖が外れ、床に転がった。横を見ると、エルフナインも同じことをされているらしい。

 

「これでよし、と。それでは、私の話を始めようか――もう、40年以上も前の話だ。私が、いや――私たちがなぜ、この世界の侵略者とならねばならなかったのか」

 

 

 

それから語られた話は、驚くべきことに先日、別の人から――彼の父親から聞いた話と、全く同じだった。話の信憑性はともかく、彼の目が、話していることが真実であると物語っていた。

 

 

 

「――そして、Soldatは覚醒、いや暴走し、いまや世界中のネットワークをハッキングした。侵略したものが誰なのかは定かではないが、奴らの情報はほとんど筒抜けだといえよう。もっとも、彼らが我々の知らない別のネットワークを使用しているなら話は別だが――ともかく、カレン君の居場所はこちらから逐一わかるようになっているのだよ。だからペルシャ湾に、一足先にあの兵士たちを送り込むことができた」

 

その発言に、俺は思わず話を止めた。

 

「ちょっと待ってくれ、さっきから気になってたんだが――あいつの居場所が逐一わかってたって、どうやって知ったんだ?それにさっきも、あいつの体に転移プログラムだか何だかを組み込んだって言ってたし――あいつの体の中に、お前たちがヘンな機会でも組み込んだのか?」

 

すると、藤堂氏は少しためらったような顔をしてから、再び口を開けた。

 

「あいつの正体を知ることは、我々の正体を知ること――そして、世界を敵に回すかもしれない、ということだ。その覚悟が、君たちにあるというなら教えよう。だが――」

 

彼が言い終わるより早く、俺の隣でさっきからずっと黙って話を聞いていたエルフナインが叫んだ。

 

「問われるまでもありません!あの時、カレン君の装者としての覚醒を目にしてから、もう自分の中で決めていたんです――私は、最後まで付き合うって」

「エルフナイン、お前…」

 

すると、可憐な少女は(実年齢はともかくとして)、こちらにその顔を向けた。少女のようなあどけなさの中に、相当の覚悟があるのを俺は感じ、気が付くと俺は首を縦に動かしていた。

 

「分かった、世界が相手だろうが知ったこっちゃないさ――俺はただ、あんたたちの真相を知りたいだけだからな」

 

すると、エルフナインがちょっと笑ってから、

 

「なので、ボクたちの覚悟はとうにできています。それでは、ボクたちに教えてください――彼の正体と、あなた達の正体、そして――世界の真実を」

 

エルフナインの輝いた眼を見、藤堂氏は少し驚いた様子だったが、すぐに口元に微笑を浮かべた。

 

「分かった、では教えよう。この世界の真実を――」

 

途端、目の前の初老の顔がぐっと引き締まる。つられて、俺達は息をのんだ。

 

「まずは、彼の正体だったな」

「あいつは、一体何なんだ?やっぱりヘンな機械が――」

「いいや、少し違う。彼の体は、全身が機械なのだ」

「なんだって?あいつ、ロボットだったのか!?」

「いや、ただのロボットではない。彼はここで生まれたのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人類史初の、AI(完全人工知能)として」

 

予想外の答えに、俺もエルフナインも、しばし言葉を失った。しかし、次に発せられた言葉が、俺達にさらなる衝撃を与えた。

 

「そして、彼女も――マナもそうだ。彼らは私の実の子供ではない。第一、私は誰かを嫁として迎えたことはないからな…」

 

絶句する俺達を尻目に、彼は電子パネルのホログラム機能を起動させたようだ。俺達の目の前で、《Nadir Breaker》の文字が浮かび上がる。

 

Nadir Breaker(天低崩し)?これがどうしたっていうんだ?」

「まぁ、そこで見ているといい」

 

そう言いながら、彼は再び操作盤を動かしたようだ。文字列が浮かび上がり――いや、並び替えられていく。それが終わった時、俺の目の前に浮かび上がっていた文字列は――

 

 

 

 

 

 

 

 

《Karen Dirber》。

 

「《カレン・ディアベル》――それが彼の本名だ。そして、我々だけが彼につけたコードネームは、《Nadir Breaker》…我々は二つの願いを、カレンとマナに託したのだよ」

「二つの…願い?」

「そうだ。カレンには、その力でこの世界を底から力ずくでひっくり返せる存在。そしてマナは、乾ききったこの世界に潤いを与える存在として、我々が()()()のだ」

「なるほど、だから『ディアベル』ですか」

 

突然エルフナインが口を開いたので、俺は無意識に変な声を出していた。

 

「は…?」

「いや、ディアベルってイタリア語で『悪魔』って意味なんですよ。言ってしまえば悪魔的強さ、ってことですよね。でも、スペルが違うような気がしますが――」

「いいんだよ、造語なんだから。大事なのは何を込めるかさ。さて――ここで少々、困ったことがあってね」

 

俺とエルフナインは、同時に首を傾げた。

 

「困ったこと…?」

「あぁ。先程テレポートさせた2人なんだが――」

 

そこで言葉を止め、ため息を漏らしてから、彼は重苦しい一言を放った。

 

「現状、我々の力では回収不可能なのだ。彼女のガングニールの真の力が目覚めぬ限り、彼らは二度と戻って来れない」




えー前書きであらかた書き尽くしてしまったので書くことが殆どありません、はい。
他の小説を書いている方のも参考にしてますけどなかなか配分が難しいですね、、、

(ここからネタバレ注意!)

さて、今回から物語が大きく動き出します!
2人の正体がなんと人工知能だとか、Soldat側は敵ではなく味方だったとか、実は集さんは右手のタブレットで夜な夜なTwit●erを徘徊していたりだとか…
そんなこんなで展開がカオス状態になりかけていますが今後もよろしくお願いします、です。


それでは次回予告!

「お兄ちゃん、私――私は、なんてことを…」

凶刃により倒れるカイ、号哭するマナ、仲間との別れに絶望するアランとエルフナイン、動き出す謎の組織の陰謀。物語は、最終局面へと動き出す。

次回[翳り]

新章突入!お楽しみに!
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