レイムの後を追った。そこはどこか知らない場所だった。真っ暗な洞窟の中で周囲を見渡しても闇が広がり何も見えない。目の前を見ると近くに赤い瞳が一瞬見えた。
「私?あれワタシ…そう私?」
その瞳を見た瞬間私の中の何かが音をたてて崩れ落ちた。それは失ってはいけないものだったような気がするけど今はもうそれすら忘れた。
―――何を忘れタ?
「あれ?何を忘れたんだっけ?」
なぜか急に師匠の顔を思い出す。忘れていたのは師匠の顔だったのかと少し安心する。
―――それだケ?そレダケ?
「違うようナ…ウーん」
―――オナマエおなまえお名前
名前そういわれてふと自分の名前が思いつかないような気がした。気がするだけでそもそもワタシに名前なんてなかったんだと思い出したような気がした。
「ワタシ?私の?名前…そう、名前……ナマエ?」
どんどん崩れていく私の中のナニカ。怖くなってそれを止めようとするけど止めようとすればするほど速度が増していきあと少しで全て崩れてしまうみたいだ。
「怖い?そうなの?コワイ…コワイってナニ?」
―――ワタシハナニダッタノダロウ
そして全てが壊れた。
――――――――――――
「鈴仙しっかりしなさい!!!」
手術を終え休憩していた時に外で大きな叫び声が聞こえそこに向かうと鈴仙が自分の両目を抉って倒れ伏していた。
「あぁ…あぁぁああああぁぁあああああああああああああぁっぁぁああああああああああああ」
鈴仙はえぐり出した両目を本来目があったであろう窪みの前にまるで自分を見つめるように摘んでいた。
「ッ仕方ない」
私は白衣の中の睡眠剤を取り出し鈴仙に強制的に注射する。そして鈴仙が段々と声が小さくなっていき意識を失った。
「どうしてこんなことに」
鈴仙の手の中にある目玉を見つめ私は暫く立ち尽くしていた。ふと気づくとここは靈夢の病室の前だということに気づく。私はこの状況でも出てこない靈夢が心配になり病室内に入った。だけどそこに靈夢の姿はなくそこにあったのは鈴仙が目を抉った時に出たであろう血が飛び散っていた。
「空間が穢れている?」
穢れが部屋中に充満しているにもかかわらず部屋の外に漏れないためここの空間そのものの穢れの濃度が高くなっていることに違和感を覚えたが別に大したことじゃないと私は認識しその場を去り急いで鈴仙に応急処置をして手術室に運ぶ。
―――ヒメを殺せばワタシは自由になれる
急に頭の中で声が響いた。だが私はそれを白衣の中にしまってあった薬を飲み静かにする
「精神汚染…思考誘導…いや今はそれより鈴仙の処置が優先ね」
あの部屋に誰も近寄らせないように封鎖することを部下達に命じ急いでオペの準備を始めた。
「やめなさい…後でゆっくり相手をしてあげるから」
未だ頭に響く声を聞きながら。
―――嫌だよ、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……。
―――そうだよ…ワタシが私になればいいんだ。そうすればワタシは死ななくてもいいんだ。