彼には選択肢など最初からなかった。
彼女がコギトによって苦しんでいようと。
無視する
無視する
無視する
誰かが彼女の死に苦しみ、体を掻きむしっていようと。
強行する
強行する
強行する
ある少女が彼を裏切ろうと。
新聞記事を握りつぶす
新聞記事を握りつぶす
新聞記事を握りつぶす
嘘をついてまで、コギトの実験体にしようとしても。
コギトを投入する
コギトを投入する
コギトを投入する
これはほんの序の口だ。この世界に転生してからもそうだった。
あの時の彼に与えられた選択肢もそういうものだった。
ジュエルシードを取りに行く
ジュエルシードを取りに行く
ジュエルシードを取りに行く
結局、彼に与えられたのは選択肢ではなかった。選択死だった。
彼は選択によって、最後には自分の命すら落とすことになるのだろう。
だから、彼は選択死にあらがった。闇の書の研究を優先することにした。
「うまいこと言ったつもり?」
「うん」
「殴るで」
「すみませんでした」
彼には選択死すら与えられなかった。
「そのジュエルシードっていうの、世界を滅ぼすかもしれないんやろ?」
「まあ、そうだな。次元震とか引き起こすかもな」
「だったら、そっちを優先するべきや。この本のことは後でいいから」
「でも、君の足が・・・」
Aは前が見えなくなった!
「アホたれ!どう考えても世界の方が大事やろ!」
「前が見えねえ・・・」
「A君はそういうところがダメなんよ。一番大事なところを忘れるから」
「そうか?」
「A君ってネグレクトしそうで怖いわ」
「まさか。そんなことするわけないさ」
はやては溜息をついた。
「とにかく、ジュエルシードを取りに行くんや。一個も拾えなくてもいいから」
「えっ、それでいいのか?」
「そもそもA君はいったん日光を浴びるべきや。何日外に出てないと思ってるんや」
こうしてAは外に放り出された。日光が眩しく思えた。
さて、ジュエルシードはといえば、すぐに見つかった。普通に植え込みの中にあった。
「よし、これで一個目だ」
彼は特製の手袋でそれを注意深く拾い上げて、ポケットにしまった。
彼は誰にも見られてない事を確認した後、また別の場所に向かった。
魔力を持たない彼がジュエルシードを見つけれるのは、彼の発明のおかげであろう。
非生物魔力波原特定装置、と呼ばれるその装置は管理局でも採用されたレベルの代物だ。
「二個目発見」
だが、今度はそう簡単にはいかなかった。
「ジュエルシードを・・・渡してください」
明らかに病気の少女だった。
彼女に足りないのは
真っ直ぐ立てる意思
分別できる意思
の二つであろう。もし付け加えるとしたら
もっといい存在になれるという希望
存在意味に対する期待
のどちらかが足りないかもしれない。Aの心は痛んだ。
目の前の少女はカルメンに言わせれば病気なのだ。だが、明らかに話が通じそうにない。
話し合いを持ちかけても、相手は聞いてくれないのは間違いない。
Aはその人生経験でだいたいわかっていた。
治したいのに、治せない。Aの心はそれで痛んでいるのだ。
ジュエルシードを渡す
ジュエルシードを渡す
ジュエルシードを渡す
仕方がないので、手に持っているジュエルシードを渡すことにした。
何しろ、相手は魔力を有している。魔力がなく、武器もないAにはどうしようもないのだ。
「・・・もう一個持ってますよね?」
Aはぎくりとした。よく考えてみれば当然のことだろう。
彼女は魔力を有しているから、魔力の流れくらい当然わかるはずだ。
ここで、彼は数秒間、必死に考えて、ある言い訳を思いついた。
目の前の少女には、この言い訳が有効だと、なぜか確信を持った。
家族に頼まれてるんだ
家族に頼まれてるんだ
家族に頼まれてるんだ
別に嘘は言っていない。一応、居候先の家主だからだ。
そして、少女も恐らく同じようにジュエルシードを求めていたのだろう。
「・・・仕方ないですね。それでは、その一個は見逃すことにします」
「ありがとう、助かるよ」
そして、彼女は去り際に言った。
「・・・フェイト・テスタロッサ」
彼女が何を言ったことの意味はAに通じた。
「・・・Aだ」
こうして、ジュエルシードの回収に関しては平和裏に事は進んだ。
しかし、これでめでたしめでたしといかないのがLobotomyでありリリカルなのはである。
「ふうん、Aね・・・」
「知っているのですか。母さん」
「知っているも何も、アレは有名人よ。本当に白衣と黒い服を着てたの?」
「そうです」
「だったら、いいことを教えてあげるわ。アレは孤児よ」
「・・・えっ?」
Aは失態を犯していた。彼は自分自身が有名人だというのを忘れていたのだ。
「A君、嘘つくのはいけないと思うで」
「でも、一応家族だし・・・」
「確かに広い意味で言えばそうやけど・・・後でメンドクサイことになりそうやな」