オリオンの使徒は自分の居場所を探し求め、守る力を欲する 作:凪斗2005
なのでキャラの口調がおかしかったりする場面があるかもしれません。その場合はコメントにて訂正して貰えると助かります。
王帝月ノ宮中サッカー部は思いのほか優秀で、世界に通用するほどではないにしろFFぐらいの大会なら優勝できてしまうほどには強い。特にキャプテンの野坂悠馬、GKの西蔭誠也は私が少し手を抜いた練習について来れるほど優秀だ。
「はい、今日の練習はここまでにします。分からないことがあれば聞くように。あと、苦手なことは無くすようにしてくださいこちらもしっかりと教えます。まあ強くなりたいならですが。」
言葉の節に煽りを混ぜるのは私が好きでそうしている訳では無い。王帝月ノ宮中のサッカー部メンバーはなぜがみんな目が死んでいて表情が乏しいのだ。
これもまだ内容は知らないがアレスシステムのせいなのかはたまた寮生活で疲れきってるのか知らないけれども、教えると言ったからには全力で教えるし全力で着いてきて欲しい。私は王帝月ノ宮中も私の居場所ではないとわかっているけど手助けくらい許されるだろう。
そんなわけで少しでも闘争心を煽って見てはいるものの反応は薄い。次のFFはもう1週間後に迫っているし私が来てもう半年は経つのに警戒をとかれていないのかと思うと少し悲しいが仕方ないのかもしれない。
そう考えながらシャワーを浴び自分に与えられた寮の部屋に戻ろうとするが
「待ってください。」
誰かに呼び止められてしまう。くるりと振り返るとそこに居たのは月光エレクトロニクスの研究員だ。
「あなたがオリオンの使徒ですね。これがアレスシステムの資料です。パーフェクトワールド計画に役立つかどうかはわかりませんが、遅くなってしまいすいませんと伝えてください。では、」
大きめのずっしりとした茶封筒を渡してきたかと思えば、焦ったように謝罪を伝えて欲しいということを言ってきた。自分で言って欲しいが私は所詮駒でお使いの犬は私なので伝えておこうと記憶する。
ふと、私がアレスシステムの内容を知らないことを思い出した。詳しいことはわからなくとも一応オリオン財団の代わりとして来ているので少しだけでも内容は知っておいた方がいい気がする。
部屋に戻り、茶封筒の中身をそっと開けて資料を読んでみた。
「…はぁ?」
アレスシステムの資料に書いてあったことは私が想像していたものよりも酷いものだった。
幼少期から遺伝子レベルを分析し、スーパーコンピュータによる最適なプログラムを提案して英才教育を受けるのが主なアレスシステムの内容だったが精神的にも肉体的にも成長できる一方でその副作用が問題だ。感情が抜け落ちたり、薬の作用で脳腫瘍ができたりと子供が背負っていいような内容ではない。オリオン財団も相当だったがこちらも酷いな。
そして、今のレギュラーメンバーの資料を見れば野坂悠馬は親に捨てられていたり、西蔭誠也は元ヤンだったりと色々なことが書いてあった。今のところアレスシステムの1番の成功例は野坂らしいが、その野坂も書いてあったような副作用に悩まされていると考えておかしくない。
「こんな資料はオリオン財団に必要とは思えないけど、一応FF前日にでも休みを貰って届けに行くか。」
こんな欠陥だらけのシステムはオリオン財団のオリオンの使徒には必要ない。でも命令には従っておかないと私のこれからがない可能性があるので念の為だ。
今のチームメイトが苦しんでいるかもしれないのに何も感じなくなってるなんて、特に考えるような要素じゃないなと切り捨てて、今日はさっさと寝ることにした。
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「野坂君すみませんね、無理言って練習を休ませてもらって。」
「大丈夫ですよ、今までも沢山教えてもらいましたし午前中の練習には参加してもらったので。相原さんも少しは休んでください。」
今日はFF開催前日でアレスシステムの資料を届けに行く日だ。届けに行く施設は少し遠くにあるから、午後の練習を休ませてもらい行くことになった。今までの頑張りが認めて貰えたのか少しの休みならいいとあっさり監督から許可を貰えて、今まさに野坂君に見送ってもらっている。外に出る場合はキャプテンである野坂くんが見送りをするらしい。まあ、十中八九見張りだろうけど。
「ところで相原さん、月光エレクトロニクスの研究員に貰った資料をどこに持っていくんです?」
「……見てたね、6日前のやり取りを。」
やられた、さすがに半年たっても警戒されてると思ってこちらも警戒していたというのにあのやり取りを見ていたなんて。少しずつ頑張る姿を見せてくれるメンバー達に気付かぬうちに絆されていたらしい。
「見ていたと言いますか、たまたま通りかかってしまって偶然聞いてしまったんですよ。相原さんあなたはなんなんですか?もし、僕達の邪魔をするのに動いてるのなら容赦はしない。」
僕達の邪魔とは、FF優勝の邪魔をするなということかそれとも…
「…もしかしてアレスシステムに関して邪魔をするなってこと?」
ぴくりと野坂悠馬のまゆが動く。やっぱりか、
「あの計画に賛同してるのはびっくりだけど、邪魔するつもりなんてない。というかよくアレスシステムのためにここまでするね、自分がそのアレスシステムに蝕まれているというのに。」
ここでさらに鎌をかける。自分の身になにか起きていて1番に気づくのは自分だ、野坂悠馬のような出来のいい子ほどそういう傾向にある。
少しでも私の情報を与えずに相手を揺さぶって退散する。それが今の最善だ。
「…そこまで知ってるとは思いませんでしたよ。でもひとつ訂正させて欲しい、僕はアレスシステムに賛同しているわけじゃないんです。どちらかと言うと逆、壊してやりたいんですよアレスシステムを。」
「へぇ、そのためにわざわざ脳腫瘍を残しアレスシステムの欠陥を証明しようと言うことか…」
「…その資料はやはりアレスシステムについてですね?でなければ僕を蝕むものが脳腫瘍とはわからないはずですから。」
「チッ」
いくら話をずらしても元の話に戻すのが上手い。私がぼろを出したって言うのもあるけど、さすがアレスシステムの1番の成功例なだけある。
「仕方ない、降参だ野坂君。私の何が知りたい?これから行く場所?性格が1年前と違うこと?それとも…私が繋がっているところ?」
「正直に言うと全部知りたいですが今はあなたが月光エレクトロニクスと繋がっていなければそれでいいし、僕の計画に協力してくれると嬉しいですね。相原さんほどすごいサッカープレイヤーを見たことがないので。」
結局これ以上言い合いを続けても私に勝機がないので降参すれば、協力して欲しいと来たものだ。どこ所属かも分からない私に、自分の命がかかった計画に協力して欲しいとは自己犠牲…気狂いもいいところだな。
「…お世辞が上手なようで。もとより何かあるのはわかってたからできるだけ君たちを強くするために務めためたのに警戒してきたのは君たちだろ?まあ、見逃してくれるならFF開催後も優勝のために全力でサポートさせてもらう。」
「見逃すって訳では無いですがそれは助かります。では、行ってらっしゃい相原さん。」
話が終われば用無しとでも言うように即刻話しを終わらせて無駄にイケメンな顔に万遍の笑みを浮かべてお見送りを再開する。…前よりも今の子の方が怖いな。中学生怖い。でも行かせて貰えるなら遠慮なく目的のために行こうかな。
「……では行ってきます。」
何とか野坂悠馬の誘導尋問を乗り越えて私は急いでオリオン財団の施設へと向かった。
「資料は確かに受け取ったが使えなさそうな資料だな…まあいい。お前にはやってもらうことがある、FFで活躍しFFIの日本代表選手になれ。理由ややることはおいおい伝える、帰っていいぞ。」
「はい、わかりました。」
…お使いの次はやってみろ…か…
それにFFIの開催はもう決まってるのか、皮肉なもんだな前と同じなんて。
私は資料を渡せば用済みと言わんばかりに施設を追い出されて帰ることになった。来た時のようにバスを利用して帰っていく。
ひとつ命令が終われば次の命令を告げられ実行する。本当に犬になったような気分だけど、私にはどうすることも出来ない。
居場所がない者…本来居てはいけない者は従うことでしか今の自分の価値を見いだせないなんて…
「嬢ちゃん足元気をつけてな、ご乗車ありがとうございました〜。」
プシューっと音が後ろで聞こえたかと思うと次はゴッっと風が吹いた。そして目の前に広がるのはバスの座席ではなく、半年前までいた雷門中校舎と正門…?
「な、なんで雷門なんかに……無意識に停車ボタンを押して乗車料払ってバスをおりた?はぁ?」
多分あっているであろう今の自分の状況を整理して見るも、訳が分からない。でも自分の行動に対して嫌気が……あ、もしかして私はまだ“雷門は私の居場所”だと思い込んでる……のか…
「はっ…惨めだな、私はもう戻れないしここにいることは出来ないのに。まあ、意味の無いことだ。それよりもどうやって帰ろうか、タクシー呼ぼうか「すいませーん❕避けてくださーい❕」…は?」
何かと思い声が聞こえた方を向けば目の前にはサッカーボールが迫っていて…
「ふん❕」
顔面シュートだけは避けたいと何とかボールを蹴りあげるものの、体制を崩してしまい変装用に深く被っていた帽子が落ちてしまう。まずい❕そう思った時のは遅く、ボールを飛ばしたであろう少年が雷門中から走ってきた。
「すいません❕怪我してないですか…え、もしかして元雷門中の相原…さん…?」
少年は私たちの頃とは違う雷門のユニフォームを着ている。ということは私たちの代わりに雷門中としてFFに出場する与那国島の人?なのだろうか?というか何で私の事知ってるんだ…
「よく知っていたね私のこと。公式戦だって2回しか出たことないのに。」
「わぁ❕本人だ❕あ、初めまして俺はFFで雷門中の代表として出させてもらう稲森明日人って言います❕2回しか出たことないなんて関係ないですよ❕FF決勝戦での仲間を思ってのプレイに感動したんです俺❕」
「そんなことまで知ってるなんてありがとう…稲森明日人君だよね、よろしく。って言ってもFFでは敵同士だけど。」
「そんなことないです❕相原さんみたいなすごい先輩とサッカー出来ると思うと俺、とってもワクワクします❕それで、もし良かったらサッカーしません?俺が相原さんのプレイを実際に見たいってだけなんですけどね。えへへ////」
「…いいよ、サッカーやろう。ただし条件で私のことを他の人に言わないこと、いいね?」
「ッ〜〜はい❕」
なんだろう、この子はなんだか守みたいな感じがするな。思わずいいよっと言ってしまったけどこれだけ素直な子ならきっと他の人には言わないだろうな。
私は、久しぶりの雷門で前に縋り続ける自分は、前みたいに疑うことを知らずに、ただ何も考えずに人を信じたい。そんな自分の甘さに嫌気がさしながらも明日人君と一緒にグラウンドへ向かった。
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「相原さん❕」
私を呼ぶ声と共に蹴られたボールがこちらに飛んでくる。
「うん、思ったよりも強い。明日人君、ポジションは?」
想像していたよりも少し強いボールを足で受けて質問を投げかけながら、来たボールより少し強めに蹴り返す。
「よっと、ポジションはFWです。でもまだドリブル技もなくて…」
蹴り返したボールをしっかり足で受け止めながら質問に答える明日人君は、MFらしいがなんだか少し以外だなと思うがバランスタイプっぽいのでそれも妥当かと考える。
そうだ、あれを教えよう。
「明日人君、いいもの見せてあげる。私では必殺技にまでしてあげることが出来なかった技なんだけど君の必殺技のいいヒントになるかも。」
「え、いいんですか❕」
素直な反応を見せる明日人君はなんだか立向居や壁山っぽくてなんだかんだ私は年下に甘いんだな〜。でもそんな甘さも捨てなくてはいけないのにいつまで心をそのままにするんだろう。
「じゃあ明日人君、ドリブルしながら走ってきて。」
「はい❕いきますよ❕」
私の声掛けと共に明日人君が走り出す。ドリブルのスピードもなかなかなものでこっちも考えていたのよりずっといい。
こっちに走ってくる明日人君に対して私は真正面から突っ込んでいく。
「え❕」
そして直ぐに当たるような距離まで近づいたら、明日人君の足がボールを話した瞬間ボールをポーンと高く上に羽根飛ばし、自分も明日人君を跳び越すくらい高く体をひねりながら飛び上がる。そしてそのまま空中でボールをキャッチし地面に着地、着地地点は明日人君よりも1mほど後ろだ。
少し大人げなかったかと思うけど、必殺技の参考になればと思ってやった事なので本気でやらなきゃ意味が無い。そして、あっけなくボールを取られた明日人君の方を見れば
「すっっっっごい❕一瞬で目の前に相原さんが来たと思ったら次はボールがなくて、相原さんが俺をとびこえて❕あれで必殺技じゃないってどうゆうことなんですか❕」
とっても目をキラキラさせて大興奮。
やっぱりこういうサッカーに対しての情熱が何となく守に似てるのかもな。
「ありがとう、それであれが必殺技じゃない理由は単に信頼能力だけでボールを奪ってるだけだから、つまり力技だ。それだと速さに付いてこられれば何も出来ない。だから君にはもっと確実に安定してボールを奪えるような“必殺技”にそて欲しいんだ。」
「でも、俺には相原さんみたいな速さは無い「いや、明日人君は瞬間的な速さなら私を抜ける。」え、」
私は持続して速いスピードで走れる分、一瞬のスピードが遅い。でも、明日人君は一瞬の速さがとても速いので彼ならきっと。
「明日人君なら光のようなダッシュができる、それを活かしてみて。」
「はい❕ありがとうございます❕」
ああ、なんて眩しいんだろう。私なんかでは押しつぶされてしまいそうな、消えてしまいそうな眩しい笑顔は、やっぱり私の幼なじみと似てる。
「君が今の“光”か…」
「?相原さん何か言いました?」
「ううんなんでもな「おーい❕グラウンドにいる人はもう帰ってくださいよー❕」あ、」
突然の声にびっくりするけど、この声はつくしちゃんの声…まずい、つくしちゃんにバレるとすぐに私が雷門にいたという噂が流れてしまう。
私は明日人君をほっぽってベンチにいおいていた帽子を再び深く被って校門へと全力で走り出す。
「マ、マネージャー❕今来ちゃダメ…て、ええぇぇ❕」
「じゃあまたね、明日人君。(ごめん)」
明日人君はいきなり走り出した私に随分驚いたようだけど、今はほっておくしかない。心の中でごめんと謝りながら別れの挨拶を済ますという高度な事をやりつつ私は雷門中グラウンドをあとにした。
やっぱりタクシーで帰ろう、ついでにそう決意した。
すごい速さで帰っていった相原さんを呆然と見送っていると、さっき声をかけてくれたマネージャーが走ってきてくれたのか肩を揺らし息を整えていた。
「さすがに帰るのが遅いすよ❕明日はFF開会式なんですからって、あれ?明日人君の他にもう1人いませんでしたか?」
マネージャーがはじめ居た位置からも相原さんは見えていたようでどう説明しようかと悩んでいると
『…いいよ、サッカーやろう。ただし条件で私のことを他の人に言わないこと、いいね?』
という相原さんの言葉を思い出した。
「ううん、誰もいませんでした。」
今日の秘密の特訓は俺と相原さんだけの秘密。
今まで画面の向こうでしか見た事なかったすごい人が、本当に俺の先輩なんだ❕これからはライバルなんだと思うとこれから始まるFFが楽しみで仕方がない❕
明日はついに開会式、何がなんでも勝ち進んで俺たちのサッカーを取り戻す❕
次でやっと本編?