初投稿です。優しくしてください。
アニメ、小説版、ロスカラ辺りから知識を引っ張りだしています。
※12/14日 加筆
prequel1 アルカという少女
「立ちなさい、アルカ。」
母上の事が苦手だった。
鋭い眼光が私を射抜く。
目に涙を浮かべながら、地面に這いつくばる幼い私。
それを見下ろす私の母、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。
2人の手には、レプリカの剣が握られている。
「そんなんじゃ、お兄ちゃんとお姉ちゃん。守れないわよ?」
ああ、夢か。本国に居た時の夢。
母に稽古を……いや、訓練を受けている時の。
母上の事が苦手だったことについて、はっきりと言語化することは出来ない。
何となく、感じていただけだ。
母上が私達に時々向ける視線の違和感に。
兄上と姉上は気づいていなかったであろう。あの2人は心の底から母上の事が大好きだった。
私だけが感じた違和感だ。もしかしたら気のせいかもしれないし、彼女の厳しい教育が嫌だっただけかもしれない。
ただ、何となく私達を通して、別の何かを見ていた。そんな気がしただけだ。
しかし、今となっては私の疑問を解決する手段は無い。
殺されたからだ。
私が4歳になったばかりの出来事だ。
同腹の兄上と姉上が中心となって企画してくれていた、私の誕生日パーティー。
それを翌日に控えた夜に、母上は殺された。
身体中に穴が空き、その血で絨毯を濡らし。その場に居た姉上を庇う様に抱きかかえ、倒れていた。
「……………っ!!!」
その時の驚愕と絶望に入り混じった兄上の顔は、一生忘れる事は無いだろう。
世界有数の超大国である「神聖ブリタニア帝国」。
その次期皇帝の座を狙った覇権争いに、私たち皇族は生まれたその瞬間から、参加することを強いられる。
弱肉強食がブリタニアにおいての絶対の掟。
生き残った強いものだけが次期皇帝としてその椅子に座ることが出来る。
皇帝候補の母数を減らす為に殺された異母兄弟や継母は山ほど見てきた。
ブリタニア皇帝の椅子は、大勢の犠牲の上に成り立っている。
私の母もその犠牲の一人となったのであろう。
庶民の出でありながら、騎士侯として登り詰め、最終的には王妃として迎えられた母上。さぞ、敵も多かった筈だ。
ブリタニアに恨みを募らせたテロリストの犯行、というのがこの事件の表向きの真相だ。実際に実行犯のテロリストは捕まり、既に処刑されている。
だが、皇族に身を置く誰もが思ったことだろう。
――――消された、と。
その日の警護を任されていたコーネリアのリ家か。
何を考えているか分からないシュナイゼルのエル家か。
私達の事を目の敵にしていたカリーヌのネ家か。
誰が裏で引いているかは、わからない。
しかし、間違いなく断言できるのは、陰謀に巻き込まれたという事。
何故なら、母上の死後。私達に向く目は、哀れみ、同情などでは無く、悦に満ちていたのだから。
いくら母上の事が苦手といってもこの事件は流石に堪えた。
別に嫌だった訳では無い。人並には好いていたし、尊敬もしていた。
母上を心の底から慕っていた者達の悲しみに満ちた表情。
事件に巻き込まれ、足と目の機能が失われた痛々しい姉。
私に心配をかけまいと気丈に振る舞う兄の姿。
目まぐるしく変わる環境。
そして何も出来ない無力な私。
ただただ、泣く事しか出来なかった。
母上という支えを失ったヴィ家はこの後、没落の一途を辿る。
他の皇族からの攻撃は苛烈を極め、後ろ盾であるアッシュフォード家は本国を追われた。
私達を守る存在は、あそこには居なかった。
そして私達、
「ルルーシュ、ナナリーと共に日本に渡れ。」
神聖ブリタニア帝国第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアは言った。
経済大国である日本の首相の下に送ることで外交の道具にしようとしているのである。
表向きには留学、見方を変えれば人質。
母と後ろ盾を失った皇族に出来る事は殆ど無い。ましてや私達はまだ10にも満たない子どもだ。
当時の日本とブリタニアはいつ戦争を始めてもおかしくない程、緊迫していた。
そんな日本に皇子と皇女を送れば、どうなるか、誰もが容易に想像出来たであろう。
最悪、殺される。
今考えれば、父上はそれを望んでいたのかもしれない。
日本に攻め入る理由が出来るのだから。
「皇子と皇女なら、良い取引材料だ」
そして、兄上と姉上は日本へ渡った。
私を残して。
父が言った皇女の中に、私は含まれていなかった。
残された私はというと―――――。
◇◇◇
「ん……」
重たい瞼を開け、身体を起こす。
「大丈夫か?顔色が良くないが。」
そう言って一人の少女が私の顔を覗き込んだ。
金色の瞳が私を映す。
「うん、ちょっと昔の夢を見てて…。おはよう、
心配かけまいと私は笑顔を作り、返答した。
しまった、逆に心配させてしまったか。
「……まぁ良い。シャワーを浴びてきたらどうだ?寝汗で気持ち悪いだろう?」
彼女は何か言いたそうにしていたが、その言葉を飲み込み、淡々と告げる。
言われてみると確かに身体中が汗でベタベタだ。
「そうしようかな、誰かさんが昨夜、張り切り過ぎてそのまま寝ちゃったし。」
「気絶したみたいに寝てたもんな?楽しんでくれたようで何よりだよ。」
嫌味を言ってものらりくらりと躱される。
いつまで経っても口では勝てない。
・
・
・
身体のべたつきがシャワーによって流されていく。
少し腰に痛みを感じるものの、気持ちのいい朝だ。
昔の夢を見たことを除けば。
(日本……か………)
兄上と姉上が日本に送られてしばらくして、ブリタニアは日本に戦争を仕掛けた。
明確なきっかけは分からない。
2つの国の間には、常にいざこざが絶えなかったから。
一か月も経たないうちに日本は破れ、ブリタニアの支配下に置かれる事となる。
日本という名前は奪われ、代わりに数字が与えられた。
ブリタニアのナンバーズ制度である。
戦争に巻き込まれた兄上と姉上は無事だろうか、頼れる者が何も無い状況で、生活出来ているだろうか、姉上の身体は大丈夫なのだろうか。
(私の事は、憶えているだろうか。)
一度考え始めると、足を泥沼に取られたように、中々抜け出せない。
気分が沈んでしまう。
2人が日本に送られたのが5年前。
兄上が10歳で、姉上が7歳の時だ。
末妹である私は2人と一緒に居た時間がそもそも少ない。
加えて2人は次期皇帝を目指す方針だったのに対し、私は騎士侯になる方針だった。
普段の生活も、別行動が多く、夜くらいしか一緒に過ごせなかった。
その少ない時間の中でも、兄上と姉上は私を気にかけてくれたし、優しくしてくれた。
大好きだった。
どうして私だけが本国に残されたのだろう、どんなに辛くても2人と一緒に過ごしたかった。
「大丈夫か?」
思考に沈む私を、心配してか顔、
思っていたよりも、長い時間、シャワーを浴びていたらしい。
「ちょっと、家族の事をね……。大丈夫。」
シャワーから出るお湯を止め、タオルに手を取る。
「……お前には私が居る。前にも言ったが、あまり過去を引きずるなよ。」
不器用なアドバイスに私は口角を上げる。
思えば、肉親よりも長い間一緒に居る。
腰まで届く綺麗な緑色の髪。シルクの様な肌。吸い込まれそうな金色の瞳。人形の様に整った顔。
「ありがとう。」
そんな
「普段もそれくらい素直だと良いんだけどな。」
優しさを含めた声で、彼女はそう言いながら、私の頭を撫でる。
ああ、心地良い。
彼女の温もりを感じていると、外から複数の足音が聞こえるのに気が付いた。
(………っ、ゆっくりしている暇も無いか。)
内心、舌打ちをし、服を手に取る。
「追手だな。ブリタニアの。」
「そっか、ここの家、気に入ってたんだけど、潮時だね。」
私達が過ごしていたのは、まだ真新しい廃村。
争いが絶えないご時世だ。戦争にでも巻き込まれ、住処を追われたんだろう。
金目の物は無かったが、ライフラインは生きていた。私達には、丁度良かったんだけど。
溜息を吐きつつ、服を着て、私は家から出る。
「こちらA1。対象を発見しました。」
目の前のブリタニアの軍人が、私を確認した矢先、耳に手を当てながら、そう呟いた。
この場に居るのは3人。
目は隠れていない。
増援来る前に手早く済ませるか。
「対象を拘束後、バトレー将軍に…「ねぇ。」
言葉を遮り、私は声を掛ける。
意識をこちらに向けさせる必要があるから。
3人の銃口と視線が一斉に、私の方へ向く。
ヘルメットとかしてなくて良かった、楽に処理が出来る。
「死んでくれる?」
私がそう、
辺りに鮮血が飛び散り、嗅ぎなれた臭いが充満する。
身体にかからなくて良かった、お風呂入ったばっかだし。
「すぐに移動しないとな。」
いつの間にか、家から出てきた
彼女のひんやりとした手が気持ちいい。
「うん、行こう。」
私は
世界有数の超大国ブリタニアから、追われている私と
そんな私達は今、日本――エリア11へ向かっている。
私の兄上と姉上が消息を絶った地。
味方は存在しない。
そう、私達は選択できる未来が限られている。
手段を選んでいる暇はない。
邪魔するものは容赦しない。
口元を歪ませながら、心の中で呟いた。
専門用語はそのうち話の流れとかで説明するとは思います。
個別の説明欲しかったら言ってくれればここに書きます。