皇暦2017年
アッシュフォード学園 クラブハウス 自室
(バトレー将軍、 正式にエリア11総督補佐に就任…ねぇ……)
クラブハウス内にあてがわれた自室。
太陽はすでに昇っているのにも関わらず、この部屋の主はカーテンも開けずにパソコンの画面に映し出されているニュースの記事を眺めている。
久しぶりにブリタニア軍に動きがあった、と思い確認したらこのニュースだった。
私の欲しい情報に繋がるとは思えないが……
(まぁ、エリア11でレジスタンス活動する以上、全くの無関係でも無いしな)
この男についての情報を整理する。
バトレー・アスプリウス
クロヴィスの腹心の部下であり、生粋の研究者。
基本的には、本国にあるというクロヴィスお抱えの研究機関に在籍しており、直接的な補佐はせず、研究分野の面から間接的な支援をする男、らしい。
らしい、というのは私が元々知っていた訳では無く、ニュースから得た知識だからだ。
(武官でも無い男が何故……)
本国からの指示…は無い。政治も戦闘指揮もお世辞にも良いとはいえないクロヴィスに研究者を付けてどうする。
クロヴィス本人の指示…。が妥当だろうか。
問題はなぜクロヴィスがバトレーを呼び寄せたか。
正直、クロヴィスの元へこの男が加わったとしても、さして今のエリアの現状から変わるとは思えない。
ただただ、腹心だから?
いや、タイミングがおかしい。着任と同時ならわかるが、クロヴィスが着任してからもう大分経つ。
なんで今になって…
(バトレー将軍…バトレー………)
名前が何処か引っかかる。
聞き覚えがあるような。
(あ……)
C.C.といかがわしいホテルに宿泊する少し前に私達の前に現れた追手
ギアスにかかる前、彼の名前を口に出していた……
「この男が…私達を捕まえるよう指示していた…?」
仮にそうでなくても関係者である可能性は非常に高い。
「やっと見つけた…C.C.の手掛かり……!」
向こうの方から私の元へ来てくれるなんてありがたい。
自然と口元が緩む。
「この男を歓迎する準備、しとかないと」
そう呟く少女の顔は、年齢に似つかわしくない、狂気を孕んだ表情をしていた。
◇◇◇
トウキョウ租界 シンジュクゲットー
「ブリタニアの新兵器?」
扇をリーダーとするレジスタンスが集まるこの場所で、レジスタンスメンバーである永田さんが耳にしたという噂を聞いている。
「ああ、どうもバトレーとか言うこの間来た総督補佐が開発しているらしい。その兵器の研究施設が租界の外れの方にあるという話だ。」
「ブリタニアの新兵器か……内容は?」
扇さんが問う。
「化学兵器…毒ガスだ。」
「その情報、確かなの?」
「キョウトの使者からの情報だ、扇が居ない時に来て俺が対応した。」
「どうします?扇さん……」
カレンが扇さんに判断を仰ぐ。
このレジスタンスのリーダーは扇さん…しかし、この人は優柔不断な性格であり、自信が無い。
人望はあるがトップには向かない…オデュッセウスの様な男、というのが私の印象だ。
(後押しした方がいいかな)
バトレーが開発しているという化学兵器。
兵器自体には興味が無い。けど…
バトレーを炙り出す為の良い取引材料として利用できる。
レジスタンスが活動する
私としてはここで行動を起こしておきたい。
「ブリタニアがどのような意図で、このエリア11で化学兵器を開発しているかはわかりませんが…」
この場に居るメンバーが一斉に私の方を見る。
「ブリタニアの事です。碌な使い方はしないでしょう。最悪、虐殺の可能性もあります。」
「ぎゃ、虐殺……さすがにそこまでは………」
「ない。と言い切れますか。目的の為なら民間人ごと切り捨てる国ですよ。テロ組織の根絶をうたい、ゲットーに住む日本人を皆殺し。可能性として十分に考えられます。」
扇さんを始めとするみんなの顔色が青くなる。
日本占領時の戦争のことを思い出しているのだろうか。
「今私達がすべきことは……「未然に防ぐことだ」
私の言葉を遮り、扇さんが声をあげた。
「これ以上ブリタニアに日本人を殺させる訳にはいかない。完成する前にその兵器を俺達の手で確保する。」
「扇さん……」
よし、乗ってきた。
「決行日は追って連絡する。それまでは物資の調達に専念してくれ。この場に居ない玉城達にも伝えておいてくれ。カレン、アルカはグラスゴーの調整を頼む。一番大きな戦力だからな。」
扇さんの言葉を聞き、カレン、永田の表情に決意が宿る。
リーダーとしての素質は今一だが、人望はある。
この男さえ説得してしまえば、あとは勝手に周りがその気になる。
楽なことだ。
「ブリタニアと……戦う…」
うつむいているカレンが小さく呟く。
「不安?」
「少し、ね。」
「大丈夫だよ、心配しなくても。
目的の為に、ね。
◇◇◇
かつての繁栄の様を僅かに匂わせる、荒廃した瓦礫まみれの町。
こんな場所に似つかわしくない、黒髪の可憐な少女が一人、どこか不機嫌な様子で歩いている。
(日本人は情に流されやすい…とは知っていたけど、まさかここまでなんて……)
元々の淡いクリーム色の髪を変装の為に、黒く染めた少女、アルカだ。
やはり
(確かに情に訴える形で仲間には入ったけど、まさか作戦にすら参加させてくれないなんて)
彼女は自身の所属するレジスタンスのリーダー、扇要に言われたことを思い出す。
(アルカ、今回の化学兵器強奪には君は不参加だ。ブリタニアとの戦闘が予想されるんだ…。子供である君を参加させる訳にはいかない、か)
内心舌打ちをする。
ブリタニアだったらこうはいかない。
使えるものは何でも使うし、そこに性別も年齢も関係ない。
仮に今の日本とブリタニアの立場が逆だったとしたら、アルカは作戦に参加出来ていたであろう。
しかし、それはあくまでもブリタニアの尺度だ。
そして彼女はブリタニア人。日本人では無く、過去に日本で暮らした経験も無い。
日本人の考え、特色を知識として知っている。だが、知っているだけだ。
知っているのと理解出来るのは別である。
(扇が最初、私のレジスタンスへの参加を渋っていたのはわかってた。いや、扇だけではなく、玉城やカレンといった他の人達も)
なんとなくわかっていた、私を使うことに対して抵抗感を持っていることに。
(だからこそ、普通の子どもじゃないとわからせる為に、彼らの抵抗感を払拭させる為に今まで貢献してきた)
アルカが普段、レジスタンスでしていたことは到底、他のメンバーが出来るようなことでは無かった。
武器を始めとする物資の調達。銃火器の扱い方のレクチャー。KMFの操縦訓練と整備。etc……
本国で学んだことを、逃亡生活中に磨いたスキルを、時にはギアスを。
自身の持つ能力、全てを活用し貢献してきた。
その甲斐あってか、徐々に皆からの私に対する意識も変わってきた、と思っていたが。アルカ自身が考えているよりも日本人は、非情になれないらしい。
(だからブリタニアに負けたんだよ)
思わず毒づく。
今、レジスタンス内で一番ブリタニアとの戦闘に役立つのは他でもないアルカだ。
銃の取り扱いも飛び抜けて上手く、KMFの操縦も問題無い。
幼少期、母であるマリアンヌから叩き込まれてきたアルカ。彼女が持つ本来のポテンシャルも相まって、皇族の中でも目を見張るものがあった。
あの皇族きっての武闘派で知られるコーネリアが驚愕のあまり言葉を失ったほどには。
アルカを作戦に参加させない、という判断はリーダーとしてはお粗末な判断だと言える。
人としての面で見れば、当然の事とも言えるが、アルカにしてみれば、良識ある人としての判断など、どうでもいい。
(勝手に行動するのは、簡単。だけど、
一人の勝手な行動が、負け戦を招く…よくある話だ。
(はぁ…、少し離れた場所で様子見…かな。通信機の盗聴だけしよう。状況は把握したい)
こんな事になるなら最初に会ったあの時、配下としてではなく指導者としてレジスタンスに加わるべきだった。
ここまで根強いと私への意識は簡単には変わりそうにない。
扇は人望だけはある。今から私が組織の実権を握ろうとしても、ヘイトを集めるだけだろう。
リーダーが変わらない限りは。
「私の事を一つの戦力として認識できるクレバーな指導者…。ふ、そんな都合のいい人居るわけないか……」
他人に縋る様な思考に、アルカは思わず嘲笑する。
「とりあえず、今は目の前の事に専念しよう。早く帰らないと。」
もう日が落ちてきている。
少し足取りが早くなる。
ルルーシュが家に戻る前にヘアスプレーを落とし、普段の彼女に戻らないといけないからだ。
アルカはゲットーを後にした。
運命の日がすぐそこまで迫ってきている。
彼女が求める存在が、魔神が生まれる日まであと7日。
やっと原作に入れる……
カレンの兄であるナオトがいつ死んだのか分からない&アルカとの絡ませ方が思いつかなっかった為、彼発案の作戦という原作設定を変更しました。
許せ、ナオト。
バトレーの設定少し変更&独自解釈
扇に対する厚い偏見。
ご了承ください。