アルカはあまり出てきませんが、登場人物の回想とかセリフとかにはちょくちょく出てきます。
どうぞ
stage1 魔神が生まれた日
アッシュフォード学園 中庭
「ルルーシュは?」
「リヴァルさんが連れて行ったよ。次の授業までには戻るって言ってた。一緒にご飯食べようかと思っていたのに。ね、シャーリーさん。」
「えぇ!わ、私は、別に……。生徒会としての自覚を………。」
ミレイさんに聞かれ、兄上との最後の会話を思い出す。
また、チェスの代打ちに呼ばれているらしい。
「お金!賭けてるんですよ!!ルルったら頭良いのに使い方おかしいんです!!ちゃんと勉強すれば……ねぇ?」
オレンジ色の髪をした少女。シャーリーさんは私とニーナさんに同意を求める。
「うちのルルちゃんは本当は良い子なのに!って?可愛いわねぇ~」
新しいおもちゃを見つけたようにミレイさんは目を細めた。
「そ、そそそんなんじゃ!!」
シャーリーさんが慌てふためく。
「そろそろ認めよう?シャーリーさん。私、シャーリーさんだったら
「ア、アルカちゃんまで!!」
「良かったわね、シャーリー!
「か、会長……もう勘弁してください……」
顔を真っ赤にしながら意気消沈したシャーリーさんに、悪戯大好きミレイさん、その光景を会話には参加せず見守っているニーナさん。
アッシュフォード学園高等部 生徒会役員の面々だ。
全員年上…ではあるけど敬語を使うのはやめた。いや、やめさせられた。
「固い!固いわ!!アルカ!!!私達の関係に
とミレイさんに強く言われたからだ。
実際私の敬語が抜けるまで、色々な事…をされた。
あれはセクハラで訴えても良いのでは?
ともかく、ミレイさんの手によって使うのを早々にやめた。
閑話休題
ともかくこの場に兄上は居ない。
姉上も学友とご飯を食べている。
一緒にご飯を食べる人が居ない私は、自室で食べようと思い、クラブハウスに戻ろうとした。生徒会室の前を通りかかったその時、ちょうど彼女たちと会い、今に至る。
「じゃあ私、行くね。」
3人に声を掛ける。
「まだ授業まで時間あるよ?」
ニーナさんが時計を見ながら呟いた。
「ちょっと用事があって…、どうしても外せないの。お昼、誘ってくれてありがとう、楽しかった!」
そそくさと兄上特製弁当を片付け、その場を去る。
「ちゃんと授業には出るのよー!」
少し遠くからミレイさんの声がする。
返事代わりに振り返り、3人に手を振る。
(ちゃんと授業には出るのよ、か)
今日はもう恐らく学校には戻れないだろう、と思いながら制服の上に着ているパーカーのポケットに手を突っ込み。電子端末を取り出す。
その端末の画面にはトウキョウ租界の地図とその地図の上を移動する赤いポインターが表示されている。
(今は…租界の外側に通ってる高速の上か)
そろそろ軍が動いている頃合いだろうか。
イヤホンを取り出し、地図が表示されている端末に繋げる。
『クソ、玉城が作戦通りにやらないから!!』
仲間に対し、焦った様子で悪態を付く男の声が聞こえた。
捕まってはない、しかし穏便には遂行出来ていない、そんな様子だ。
その後も様々な情報が耳に入ってくる。
『帝国臣民の皆さん、そして協力していただいている。大多数のイレヴンの方々…』
『イレヴンじゃない!日本人だ!!』
クロヴィスの会見、カレンの強い否定、車の走る音、近くを飛んでいるであろうVTOL機の音。
そんな音を流し聞きしながら自室に着いたアルカは着替え始める。
着ていたピンク色の制服と皺一つ無いワイシャツをベットを脱ぎ捨てる。
胸は膨らんでおらず、まだまだ女性とは言えない身体。
しかしながら、無駄な肉など無く、体付きはしなやかで芸術作品の様な神聖さが宿る。
そんな彼女の身体が外気に晒される。
脱ぎ捨てた制服を気にも留めず、タンスから新たに服を引っ張り出す。
黒いスキニー、白い無地のTシャツ。オーバーサイズの黒いパーカー。キャップ付きの帽子。
おしゃれに興味を持ち始める年頃の女の子からしてみると地味な恰好と言える。
が、アルカの目的はおしゃれすることではない。
『クソ、ちんたら走りやがって!!』
『やめろ、そっちは!!』
男女の言い合う声が聞こえたと思ったら、轟音が続いた。
イレギュラーが起きたらしい。
脱ぎ捨てた制服をそのままに、彼女はクラブハウスを後にした。
◇◇◇
「クソ、軍まで出てきた!どうする!?」
私が乗っているトラックの運転手、永田が叫ぶ。
私達は作戦通りに化学兵器の奪取に成功した。が、玉城のドジのせいで想定よりも早く感づかれ、先ほどから追われている。
今までは警告だけで終わっていたが、私達の様子に痺れを切らし、とうとう発砲してきた。
トラックだけで逃げるのはもう限界だろう。
「そのために私がいるんでしょ!!」
私は覚悟を決め、腰をあげる。
私がここに居る理由……それはアルカ以外の仲間の中で、私が一番KMFの操縦が上手いからだ。
後ろの荷台に積んであるKMFの元へ足を運ぶ。
赤いグラスゴー。レジスタンス唯一のKMF。
アルカがこの日の為に整備してくれた機体。
彼女が言っていた言葉を思い出す。
「このグラスゴーには脱出機能が無い。いや、あったけど私が外した。駆動系を整備するのに部品がどうしても足りなくてね。脱出機能に使われている部品で代用したの。」
つまり、と彼女は真剣な顔で私を見つめる。
「グラスゴーの破壊=カレンの死。私としては苦肉の策だった。けどKMFの戦力は無視出来ない程大きい。だから私は貴女の命を守ることより作戦の成功を優先した。」
だから、こんな非情な私が言えたことでは無いけれど
「死なないで、カレン。」
そう言ってアルカは何かを差し出した。日本の神社に売っている様な、お守りだ。交通安全と書いてある。
「これは?」
「ゲットーの外れにね、神社見つけて、そこにあった。日本人ってこういうのにお祈りするんでしょ?」
「交通安全……ってなんか少し違くない………?」
「……似たようなものでしょ!」
アルカは、はにかみながら私に笑いかけた。
操縦席に括り付けたお守りに目をやる。
「えぇ、やってやるわよ…。生きて帰ってやるんだから……!」
操縦桿を持つ手に力が入る。
グラスゴーを前進させ、私はトラックから飛び出した。
◇◇◇
カレンはKMFで戦闘に出た。
聞いてた会話からもそれはわかる。
しかし永田は?
(車に仕掛けた盗聴器…壊れたかな)
カレンが戦闘に出た後、発砲音や衝突音などが続いた。その拍子に壊れたのかもしれない。
残る情報源は仲間同士の通信の傍受……にはなるが、どうせ玉城辺りの愚痴しか聞こえないだろう。
私が今知りたいのは、前線に居ない仲間達の会話ではなく、化学兵器に関することだ。
(……使えないやつらめ)
内心、毒づき、シンジュクゲットーの方へ眼を向ける。黒煙が立ち込め、空にはブリタニアの輸送機。黒い小さい粒がそこから降下しているのが見える。
(……名誉ブリタニア人の歩兵と純血派を中心とするKMF部隊…ってところかな)
クロヴィスはシンジュクゲットーを壊滅させてでも毒ガスを奪い返したいらしい。
いや、この様子だと毒ガスかどうかも怪しく見えてくる。
いくらなんでも過剰すぎるのだ。
(ま、ある意味で毒かもしれないけど)
クロヴィスの地位を崩せる様な、毒。
その正体が何なのか、今の私には知る由もない。
◇◇◇
「なんなんだよ!お前は!!」
たまたま乗り合わせてしまったテロリストのトラック。
その積み荷であるカプセルを追うブリタニア軍。
7年振りに再会したブリタニア軍人になっていた親友。
毒ガスと思われていたカプセルから出てきた謎の少女。
そして…
俺を助けるために上官に反発し、撃たれた親友。
一度に色々な事が起き過ぎて、状況が整理出来ない。
「お前のせいなんだろ!なぁ!?しかもブリタニアが…スザクまでも……。」
こんなことならアルカとの昼食を楽しむべきだった。
思わずルルーシュは自分の取らなかったもう一つの可能性を夢想する。
そんな様子を謎の少女、緑色の髪をした魔女、C.C.は品定めをするかの様な目つきでルルーシュを眺めていた。
数刻後
「いいか、そこで待っていろよ」
幾分かの落ち着きを取り戻したルルーシュはC.C.を連れ地上に出る階段へと向かう。
辺りには血の匂いが充満している。
「どうだ、様子は」
「イレヴンしかいないようです」
階段を上がった先で、男の声が聞こえる。
(この声は…さっきの軍人か……)
ルルーシュの親友、枢木スザク。彼を撃った軍人だ。
彼らの足音が遠のいていく。
その時幼い子供の泣き声が木霊した。
と同時に機関銃の発砲音が聞こえた。
発砲音が鳴り止んだと同時に、子どもの泣き声も途絶えた。
「………っ!!」
思わず声をあげそうになる口を手で押さえる。
そう、これがブリタニアだ。
子どもであろうが老人だろうが関係無い。
思わず吐きそうになる程の強い血の匂いが充満する。
『ピリリリリ』と唐突に乾いた電子音が響いた。
ルルーシュのケータイだ。
「!!」
ケータイの画面を確認する事無く、電源を切る、が。
時すでに遅し。ルルーシュは軍人に見つかってしまった。
◇◇◇
「んもぅ!切っちゃったよ!ルルのやつ~!!!!」
思わず、大きな声を出してしまった。
「アルカちゃんも繋がらないし……」
ほんとあの二人、どこで何をやっているんだろう。
もう午後の授業も終わり、放課後になった。
生徒会の仕事もたんまりある。
「ほんと、ナナちゃんは真面目なのに……」
ルルーシュ・ランペルージ…
アッシュフォード学園生徒会 副会長。学業は極めて優秀。だが、品行方正とは言い難い。
授業中の居眠り、さぼりは当たり前。暇さえあればギャンブルの代打ち、賭けギャンブル。
ナナちゃんを見習ってほしい。
アルカ・アングレカム…
アッシュフォード学園中等部の生徒。だがその腕を買われ、もとい会長に気に入られ次期生徒会メンバーとしてよくお手伝いに来ている。
ルルとナナちゃんの親戚の子で兄弟同然に育ったらしい。
彼女も学力面において非常に優秀、だが同じく品行方正ではない。
ルルとは違ってギャンブルはしないけど、授業はルル以上にさぼるらしい。
校則違反にも関わらず常に制服の上に私服のパーカーを着て過ごしている。
交友関係も非常に狭く、中等部ではナナちゃん以外とは話そうともしない…。
問題だらけの二人の優等生を思い浮かべ、溜息を付く。
「危険な事に巻き込まれてないといいんだけど……」
あの二人、どこか危なっかしいからなぁ……。
と考えながら私は、生徒会室へと足を運んだ。
◇◇◇
「テロリストの最後に相応しいロケーションだな。」
兵士達の銃口が俺と緑髪の少女の方へ向く。
「ま、学生にしては良く頑張った。さすがはブリタニアの子だ。」
しかし、と言葉を続けながら指揮官の男の銃口も俺ほうへ向く。
「お前の未来は、今、終わった」
「くっ!!」
殺される。思わず目の前の男から目を背ける。
「殺すなぁぁぁ!!」
少女の声が木霊した。
「あ……」
軍に追われている少女。緑髪の少女が俺の前に立ち、そして倒れる。
額に風穴を空けて。
「おい!!」
銃口を向けられていることを忘れ、少女に駆け寄る。
その目は閉じられ、額からは血が溢れ出る。
助からないだろう。
「…ふん。出来れば生かしておきたかったが……。上には、こう報告しよう。我々はテロリストのアジトを見つけ、殲滅。しかし人質はすでに嬲り殺されていた、と。どうだ即席にしては良く出来ているだろう?」
男が何か言っているが頭に入ってこない。
(なんだこれは……)
スザクもこの子も…ゲットーに住むイレブン達も……。
皆同じ命の筈だ。同じ血が流れている人間の筈だ。
それが、どうして。こんなにも。あっさり。
そして俺も…?
死ぬのか?何も出来ないまま?
妹達と今まで過ごした光景がフラッシュバックする。
(ナナリー…アルカ……!!)
とその時、死んだはずの少女の手が俺の腕をつかむ。
「!!」
意識が現実から遠のく。思考が何かに絡め取られる。
そんな俺を気にも留めないといった様子で、感情のこもっていない声で少女は語り掛ける。
『終わりたくないのだな、
(なんだ、これは?)
『お前にも生きる為の理由があるらしい。力があれば生き残れるか?』
(さっきの女か?いや、ありえない)
彼女は淡々と語り掛ける。
これは契約と―――。
力を与える代わりに願いを叶えろ、と。
『王の力はお前を孤独にする…その覚悟があるのなら……』
様々な情報が、光景が頭の中を駆け巡る。
無機質な2つの星。大勢の巫女。翼を広げた鳥のような紋章。淡いミルク色の髪をした少女の後ろ姿。
そして、神殿の様な場所で、たたずむ。
「……っ!」
ああ、思い出した。俺のやるべきことを。復讐すべき存在を。
「良いだろう!結ぶぞ、その契約!!」
そう口にした途端、俺の中の歯車がカチリと音を立てて噛み合った。気がした。
思考が現実に引き戻される。
周りの光景は何も変わらない。充満した血の匂い。大量のイレヴンの死体。頭を打ち抜かれた少女の死体。銃を持った兵士達。
「なぁ」
何も変わらない光景、しかし
「ブリタニアを憎むブリタニア人は、どう生きればいい?」
「貴様、主義者か!」
変わらない光景の中で、変わったものが確かに一つここにある。
「どうした?撃たないのか?相手は学生だぞ。」
俺は抗う力を手に入れた。
「それとも気づいたか?撃って良いのは、撃たれる覚悟があるやつだけだと。」
左目に熱が集まるのを感じる。
どういう力かは分からない。だが、使い方は分かる。
「な、なんだ……?」
見えない力に怯える兵士達に俺は告げる。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様達は…死ね。」
「ヒッヒヒヒヒヒ……」
狂ったかのように男は肩を震わせ、笑う。
「Yes,Your Highness!!」
兵士達はその命令を本懐、とでもいう様な表情で首筋に銃を当て、引き金を引く。
首から血を吹き出しながら男達が倒れる。
この場での生存者は俺一人。
辺りには死体の山。目の前には俺が殺したブリタニア軍人達。
自分が引き起こした惨劇に思わず、顔を歪める。がそれも一瞬の事。
(あの日から俺は嘘をついて生きてきた。名前も経歴も嘘。全く変わらない世界に飽き飽きして、でも諦める事も出来なくて…)
だけど
(手に入れた、力を……抗う力を………!)
「だから…!!」
端正な顔立ちの少年は口元を歪ませながら呟いた。
◇◇◇
トウキョウ租界 展望台
突然強い風が吹く。
下からめくりあげる様に吹いた風は少女の被っていた帽子を吹き飛ばした。
外気に晒された淡いクリーム色の髪がなびく。
少女は帽子が飛ばされたにも関わらず、気にも留めない様子で、ただただ、黒煙が立ち込めるゲットーの方に目を向けている。
「…C.C.………?」
なんでそう感じたかは分からない。
ただ、何となく、彼女がすぐ傍に居る。
そんな気がした。