コードギアス 久遠のアルカ   作:キナコもち

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いつもありがとうございます!


stage7 二人の異母姉

「おい、アルカ……そんなに泣くな………」

 

 紫色の髪の女性、コーネリアが、泣いているアルカを慰める。

 

「…でも、コウ、姉様……。母上、私にだけ…厳し、い………きっと、私の事、嫌い…なんだよ………」

 

 嗚咽を交えながらも、少女は答える。

 

「マリアンヌ様が? まさか、そんな筈がない。期待しているんだよ、お前に。」

「……私に…?」

「ああ、お前は筋が良い。KMFの操縦にしろ、剣の扱いにしろ。そのまま、騎士侯としての道を進めば、閃光にも届くだろう。」

「………」

「確かにあの方は厳しい。しかし、それはお前だけに対してではない。ルルーシュだって、泣かされていたぞ。」

 

 泣いていた少女は目を丸くする

 

「お兄ちゃんが……?」

「アルカ。兄上、だ。」

 

 コーネリアがアルカを咎める。

 その言葉を聞き、彼女はばつが悪そうな顔をし、兄上が、と言い直した。

 

「ふっ……。座学で…だったかな。ルルーシュも苦戦している様だ。マリアンヌ様の厳しさは、全てお前達の為なんだよ。」

「ブリタニアに、貢献できる様に……?」

「違う、まぁ結果的にはそうなるだろうが。弱肉強食のこの国で、お前達が生きていける様に、だ。」

 

 ・

 ・

 ・

 

「…………随分懐かしい、夢。」

 

 

 上半身を起こす。

 母上の指導に根をあげ、ヘソを曲げていた時の光景。

 異母姉であるコーネリアが、彼女なりに慰めてくれたのを良く憶えている。

 

(私に対しては、特に気に掛けてくれていたっけ)

 

 横で眠るC.C.へ視線を向ける。

 布団の端から白い肩が見えることから、服を着ていないのが分かる。

 ふと、肌寒さを感じ、自身の身体を確認する。

 私も着ていなかった。

 重力に従って落ちた布団を手繰り寄せ、部屋にある時計を確認する

 時刻は早朝、5時ちょうど。

 学校行く準備をするには、早過ぎる時間だ。

 

「かといって2度寝するのもなぁ……」

 

 私は寝起きがあまり良くない。

 今から寝てしまったら、確実に、寝坊する自信がある。

 

「…ふぁあ………」

 

 しかし、眠い。

 昨晩は寝れなかったから。横で心地良さそうに眠る、彼女の所為で。

 

(まぁ、私が起きれなくても、兄上が起こしてくれるでしょ。)

 

 他力本願思考に切り替えた私は、再び布団に入り込み、C.C.に身体を寄せる。

 ほどよく温かく、心地良い。

 瞼が、重くなってき、た……… 

 

 数時間後。

 結果、兄上は起こしに来ず、私は盛大に遅刻した。

 あの魔女、人払いは事前にしっかりしていたらしい。

 

 

◇◇◇

 

クラブハウス ルルーシュの部屋

 

「組織が必要だ。」

 

 部屋の主は重々しい口調でそう呟いた。

 

「ゼロを信用し、命令を忠実に遂行する組織が。」

「コーネリアに無様に負けたと思ったら、次は妹に泣きつくとは。情けない男だ。だから言っただろう?アルカも使えと。」

「黙れ魔女。」

 

 話を聞くと、兄上は一人でサイタマゲットーに向かい、コーネリア軍と戦闘。

 シンジュクの様に、現地のテロリストに指示を出すも、統率が取れず惨敗。

 窮地に陥った時、ゼロに紛したC.C.に助けられた……らしい。

 

「ゼロを信用…という点では、扇さん達が一番適してると思う。シンジュクとスザクさんの件もあるし。それにKMFの扱いもマシだしね。」

「お前が教えたんだっけか。」

「うん、あとカレンも一緒に。」

「……そうか。」

 

 あのブリタニアと戦争するのだから、KMFくらいは扱えてもらわないと困る。

 そう思って、扇さん達には操縦訓練をほぼ毎日、やって貰っていた。

 それが役に立ちそうで何よりだ。

 

「……アルカからして、扇グループはどう見える?」

「扇さんに対する信頼と、カレンのKMFの操縦技術だけで成り立っている……感じかな。」

 

 実際に、扇さんに対する信頼は厚い。

 元々知り合い同士だったのだろう。

 玉城さんは………まぁ除いて、割と全員、扇さんに対してはイエスマンな部分はある。

 

「……紅月カレンの操縦技術は間違いないんだな?」

「本国でもそうそう見ないくらいには。」

「………そうか。リーダーの扇さえ抑えれば、どうにでもなりそうだな。」

「間違い無く。」

 

 兄上の目に覚悟が宿る。

 そんな彼を見てC.C.はやれやれ、と肩をすくめた。

 

 

◇◇◇

 

 電車の窓からゲットーが見える。

 倒壊した建物、幽鬼の様に歩くイレヴン達。

 

(………ゲットーの姿は、何処も変わらないね)

 

 外の景色を眺めていると、

 

「私、トウキョウ租界を出るのって初めてなんですよ!」

 

 目の前から興奮を隠し切れない、といった様子の声が聞こえた。シャーリーさんだ。

 

「ルルーシュも来れると良かったのにねぇ。」

 

 私の隣に座るミレイさんは、意地悪な顔をしている。

 

「な…………」

「良いではないか。今宵は語り明かそうぞ。好きな男の子、教えあったりさぁ!」

「そんな人居るの……?ミレイちゃん………。」

 

 ミレイさんの発言にすかさず、ニーナさんが突っ込む。

 私も、ミレイさんには居ないと思う。

 

「ふふ、さあねぇ。」

 

 私達4人は今、河口湖にあるコンベンションセンターホテルに向かっている。

 なんでもサクラダイトの分配レートを決めるサクラダイト産出国会議が開かれるらしい。

 

 サクラダイト――

 エリア11で多く取れる鉱物資源。

 主にKMFの動力炉であるドライブの触媒として使われており、ブリタニアが日本を侵略したのも、これが目的だったと言われている。

 

 アッシュフォード家は、エリア11におけるサクラダイト利権を握っている家系の一つであり、ミレイさんはアッシュフォード家の代表として参加するらしい。

 会議と言っても、あらかじめ決定されている事項を確認するだけの場らしく、後に開かれるパーティーが、殆どメインになっているとか。

 そこで、1人で行くのは詰まらない、と考えたミレイさんは私達の声を掛けた。

 

(……でも、なんで私まで……)

 

 本来だったら今日は、ゼロと扇さん達の会合だったのに。

 私はそっちに参加するつもりだった。

 誘われた事を話したら、兄上にも、姉上にも、扇さんにも、カレンにも!

 皆が皆、口を揃えて、「たまには行ってこい」って言うんだもの。

 ちなみにC.C.だけは渋っていたが、最終的には「……まぁ、一泊くらいは許してやろう。」と言ってきた。

 

(止めて欲しかった……)

 

 結局、私はミレイさんやシャーリーさんの押しに負けて着いてきた。

 どうも昔から、人の頼みに弱い。

 

「それにしても、アルカが来れて良かったわぁ!ルルーシュ、口煩いったらなんの……」

「兄上、心配性だから……」

「まぁ、こんな可愛い子が妹に居たら分かるけどねぇ。」

 

 おりゃおりゃ、と言いながらミレイさんは、私の頭を撫でる。

 兄上が念入りにミレイさんに確認していたのも知っている。

 メディアの参加はあるか、どんな貴族が来る、ホテルのセキュリティ、治安etc………

 素性が素性だから、気にするのも仕方が無い。ミレイさんもそれは分かっているだろう。

 ………聞かれた後、やつれた顔していたけど。

 結果的に、兄上チェックリストは合格した様だった。

 

「アルカってこんなに可愛いのに、浮いた話、1つも無いの?」

「ないよ……私の学校での話、聞いているでしょ?」

「ええ!気になる男の子とかは!?」

 

 ミレイさん、シャーリーさんが矢継に質問してくる。

 ほんとに恋愛話好きだよね………

 男の子…男の子かぁ………居るわけが無い、だって

 

「居ない。だって私、男に興味無いもん。」

「「「え?」」」

 

 3人の声が車内に木霊した。

 

 

◇◇◇

 

 (………最悪)

 

 恐怖で震えるニーナさん。

 それを優しく抱きしめるミレイさん。

 恐怖を必死に堪えているであろう、シャーリーさん。

 ニーナさんに習って、肩を震わせ、シャーリーさんに抱き着く私。

 周りには怯える顔をしたブリタニア人達。

 今この場に、ホテルの食糧庫に連れてこられた人質(ブリタニア人)だ。

 

「諸君らは民間人であり、本来は巻き込むべきではない者達ではあるが……」

 

 男が口を開く。

 

「我々の日本を占領した、悪しき民族である事には変わりない。」

 

 後ろにきっちりと固めた黒髪。横に携えた日本刀。

 

「私は日本解放戦線中佐、草壁である。悪いが協力してもらう。」

 

 旧日本軍の生き残りで構成された、エリア11で最大のテロ組織。

 日本解放戦線。

 私達は今、彼らが起こしたホテルジャックの人質としてこの場に居る。

 

(本当に、最悪。)

 

 ブリタニア軍に人質の映像でも、送り付けるつもりなのだろう。

 クサカベと名乗った男の横に、カメラを持った兵士が居る。

 この映像をコーネリアが観ると考えると、下手に映る訳にはいかない。

 あれの所為で私は顔を上げることが出来ず、シャーリーさんの胸に顔を埋め、怖がっている演技をするしか無い。

 怯える私を哀れんで、シャーリーさんは背中を撫でてくれる。

 

(……子どもで良かった…………)

 

 こうしている内は、日本解放戦線も私に突っかかって来ない。

 今だけは実年齢に感謝である。

 

(カメラだけだったら、適当に隙を見てどうにかするんだけど……)

 

 いつまでもこうして撮影するわけでは無いだろう。

 ブリタニア軍との交渉もあるんだ、人質ばかりに人員を割くわけが無い。

 カメラより問題なのは、この部屋に居る少女。

 腰まで届くピンク色の髪。今は変装の為なのか眼鏡を掛けている。

 ブリタニア第3皇女 ユーフェミア・リ・ブリタニア。

 現総督、コーネリアの他でもない、妹である。

 

(こんな小さいパーティーに、皇族が自ら来ないでよ……)

 

 大方、ユフィ姉様が行きたいとでも我儘を言ったのだろう。

 昔からそういう傾向はあったが、今も健在らしい。

 市民との距離を詰めようとする皇女様、というのも困ったものだ。

 とにかく、仮にカメラが無くなろうとも、彼女が居る限り、私は行動できない。

 意外と記憶力の良い彼女の事だ。すぐに私だってわかるだろう。

 

(はぁ……誰か助けて………)

 

 彼女さえ居なければ、ギアスでどうとでもするのに。

 

 ・

 ・

 ・

 

 ここに集められて何時間経っただろうか。

 まだ数分の事にも思えるし、数時間経ったようにも思える。

 

「人質を1人殺したくらいで、交渉には応じないか。仕方ない、2人目だ。」

 

 今から15分事に1人ずつ殺していく、と言われてから30分が経過したらしい。

 

「人質の映像はもういい、その代わり、殺す時の映像を撮っておけ。ブリタニアに我らの覚悟を思い知らせるんだ。」

 

 ユフィ姉様の方へ、視線だけ向ける。

 何やら隣に居る女性と言い合っている様だった。

 SPだろうか。私が名乗り出ます、とか言っていそう。

 

「イ、イレヴン………」

 

 ふと、か細くて震えている声が、狭い室内に反響した。

 ニーナさんの声だ。

 

「今、なんと言った!?」

 

 兵士は銃をこちらに向け、激昂する。

 

「イレヴンだと?我々は日本人だ!!」

「分かってるわよ!だからやめて!」

「訂正しろ!我々はイレヴンではない!」

 

 兵士に対し、ミレイさんが声をあげる。

 ニーナさんの幼馴染としてか、彼女本来の正義感からか。私には判断出来ない。

 けど、これは非常に不味い。

 この密閉空間に加えて、人が死んでいるんだ。人質達のストレスも溜まっている。

 それに兵士達側も相当なものだろう。

 これだけの規模のホテルハイジャックだ、軍が出てこない筈が無い。恐らく、ホテルの周りにはコーネリア軍。テロリストからしてみれば、いつ攻めてくるか分からない。

 そんな両者緊迫した中で、ニーナさんが爆弾を投下してしまった。

 簡単には収まらないのは明白。

 

「訂正するから!!」

 

 私の頭の上で、声が上がった。

 シャーリーさんの私を抱きしめる腕に力が入る。が、震えている。

 

(……………)

 

 怖いのだろう。触れてる部分から気持ちが伝わってくる様に、ハッキリとわかる。

 

「なんだその言い方は!?お前達、隣の部屋に来い!きっちり教え込んで………」

「っ!いい加減に―――――。」

 

 留まる事無く、ヒートアップする日本兵士にギアスを使おうと言葉を紡ぐ――――

 

「おやめなさい!!」

 

 ことは無かった。

 突如、響いた凛とした声に、遮られたからだ。

 

「なんだ貴様!!」

「私を、貴方達のリーダーに会わせなさい!」

「何!?」

「私は、ブリタニア帝国第3皇女 ユーフェミア・リ・ブリタニアです。」

 

 辺りがざわつく。

 それもそうだ、今まで表舞台に立つ事の無かった、第3皇女。

 エリア11の現副総督が、こんな所に居るのだから。

 

「貴女、大丈夫?怪我はない?」

 

 場違いな程に優しい声で、ユフィ姉様はニーナさんに問いかける。

 

「は、はい……。」

 

 ニーナさんは、まるで神を崇めるかの様な顔で、暗闇の中から光を見つけた時の様な表情で、彼女を見つめている。

 

「…草壁中佐がお会いになるそうだ……」

「ありがとうございます。私がここから離れている間は人質に手を出さないと、約束して頂けますか?」

「ああ、わかった。」

 

 ニーナさんに話している間に、通信機でクサカベに報告したらしい兵士がユーフェミアを連れていく。

 ふと、私の前を通り掛かった時、足を止めた。

 

「あら…?貴女………」

 

 シャーリーさんにしがみつき震えている…様に見える私の頭に手を乗せ、そのまま撫で始めた。

 

「ごめんなさいね?妹に似ていたものですから、つい………」

「おい、早くしろ!」

 

 痺れを切らした兵士が声を荒げる。

 

「大丈夫よ、安心して。私が何とかしてくるから。」

「…………………」

 

 頭の上の温もりが消え、足音が遠くなっていく。

 クサカベの元へ向かったのだろう。

 

(…何も……変わらない………)

 

 その真っ直ぐな優しさも。考えるよりに先に行動してしまう所も。

 

「おい、そこの子ども。次はお前だ。」

 

 そんな貴女だから。

 

「ちょっと!約束が違うじゃない!!」

「手出しはしない。連れて行くだけだ。まぁ尤も、さっきの皇女様がダメだった時の保険としてだがな。相手は血も涙も無いブリタニア人だ。これくらいの事をしても罰は当たらないだろう。」

「あんた達ねぇ…!」

 

 そんな貴女だから、嫌いになれないんだ。 

 

「…わかりました。」

 

 兵士に食らいつく、ミレイさんとシャーリーさんを静止させる。

 

「ほう?」

 

 兵士は少々意外そうな顔をして私を見る。

 

「大人を殺しても埒が明かない。子どもを殺す事で、ブリタニア軍に与える印象を強くしよう…と?」

 

 下種め。

 

「アルカ!?」

「……私1人の存在で、()()()が助かるのなら、それで良い。」

「………え?」

 

 まぁ、勿論死ぬ気は無い。

 まだ私の望む世界を創っていない。

 だが、これも嘘ではない。大切な人達は守らないといけないのだから。

 

「でも、大丈夫。私は死なないよ。」

 

 そう言葉を残し、私は部屋を後にした。

 目の前には銃を持った兵士1人。

 

(世話が焼けるお姉ちゃんだな………)

 

 私は兵士に気付かれない様、溜息を付いた。 

 




どうも主人公が原作と乖離し過ぎない様にする為、日々頭を使っております。
目指せ、本当に居そう系主人公(なんだそれ)
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